「なあ、ジミー。サナちゃんかわいいよな」
ジミーというのは俺のアダ名。
サナとは中学校まで一緒で、大学でまた一緒になった。
そんな話に食いついてきたのがこいつ、有人だ。
「幼なじみかぁー。いいよなー」
「なんで?」
「朝、起こしにきたり」
「ゲームのやりすぎだ」
「弁当作ってくれたり」
「マンガの見すぎだ」
どうやら有人は幼なじみというものに妙な幻想を抱いているようだ。
カーチャンでもなく、まして嫁でもなく、単なる友達だ。
「でもさ、エピソードの一つや二つはあるだろう?」
「うーん、高校のとき…女子校の友達を紹介してもらった」
「それで?」
「彼女ができました」
「ほう。それでそれで?」
「おわり」
すべったか。
有人の好きそうな話を考えてみる。
だが俺とサナとの間にはそんなマンガみたいな話はない。
「他にないの?お泊まりとかさ」
「そりゃ随分と小さい頃の話だ」
「じゃあ、風呂も?」
「まあ…な」
「くそーぅ、羨ましいぞコノヤロー!」
ようやく話に収拾がついた。
「いやー参った。有人がしつこくてさぁ」
「なに話してたの?」
「幼なじみの話」
「一緒にお風呂入ったこととか?」
「いきなりそれ出たか」
「チューしたよね」
「したっけ?」
「したよ。覚えてるもん」
「俺は覚えてない」
「じゃあまたお風呂入ってチューしたら思い出すかも」
なに言ってんだか。