バレンタインを前に控えて失恋。
そんなわけで休日はごろごろと寝て過ごすことにした。
――ピンポーン
まったく、せっかくの自由を妨げるのはどこの誰だ。
「警察だ」
「ここは警察じゃないよー」
お邪魔しに来たのはミキ。
同郷でいまだに付き合いのある数少ない友人だ。
「フラれたんだって?ヒマしてたでしょ」
「フラれたんじゃない、互いの合意のもと別れたんだ」
「なんだ、もっと落ち込んでるかと思った。心配して損したよ…あれ?」
ミキはあるものを発見し、手に取った。
「なにこれ」
「映画のチケットというものだ」
「そりゃ見ればわかるよ」
「あげる。カレと行ってきな」
「いないの知ってるくせに」
ミキは恋人を作ろうとしない。
かといって男嫌いというわけではない。
小さい頃から周りは男だらけだった。
そのせいか、男に特別な感情を持つことが苦手なようだ。
「こ…これは…」
「ミキちゃんにはまだ早いの!」
「没収!」
「そんなー。だいたい使い方わかるのか?」
俺がミキと奪いあっているのはコンドーム。
ミキはこれまで何人かと付き合ったが肉体だけは頑なに拒み続けてきた。
俺も協力してきたはずなのだがミキは経験しようとしない。
「使わなくてもこれはあたしが預かります」
「それ使ったら赤飯炊いてお祝いするよ」
「もう…さっさと着替えて行くよ!」
「ラブホ?」
「映画ッ!」