中学卒業
「あれあれ? ボタンが全く減ってませんけど?」
「うるせぇ。あまりに競争率が高くて全員断ったんだよ」
「へぇ〜、ほぉ〜」
「くっ……ムカつく顔しやがって」
「いやぁ、モテモテだねぇと感心してる顔だけど」
「違う。それは俺の不幸を楽しんでる顔だ」
「バレたか」
「どうせ俺には仲のいい女子なんてほとんどいねぇよ」
「拗ねない拗ねない。……じゃあ、お詫びにボタンは私がもらってあげる」
「え?」
「数少ない異性の友達、でしょ?」
「まぁ、確かに」
「それでは第一ボタン、ちょーだいな」
「第一かよ」
「同情ボタンってことで。さすがに第二は彼女にあげるもんだと思うし」
「彼女なんていねぇよ」
「知ってる。ま、次回は誰かにあげれるんじゃない?」
「次回って三年後かよ。……ほい、ボタン」
「はい、ありがと。……ね、また三年間、よろしくね?」
「ああ、よろしく」
高校卒業
「何度見ても壮観というか凄惨というか……」
「まぁ、我ながらどうかとは思うけどよ」
「袖のボタンまで無いなんて、さすがは全国二位に輝いた水泳部エースだこと」
「そんな怖い顔すんなよ」
「まさかぁ。モテモテでよかったねって祝福してる顔だけど?」
「……言っとくけどな、ほとんど話したこともない子達に、半ば強奪気味に毟り取られたんだからな」
「あ、そう。競争率高いなら断るんじゃなかったんだ?」
「何の話だ?」
「……覚えてないなら、いい」
「あぁ、そうだ。ほらこれ」
「え? これって……」
「第二ボタン。取られる前に外しといて正解だったな」
「どうして、わざわざ……」
「第二ボタンは彼女にあげるもんなんだろ?」
「……覚えてたんだ」
「何だよ、いらないのか」
「ううん、ありがとう」
「おう。じゃあ俺もボタンもらっていいか?」
「え? あ、ちょ、ちょっと、何し……」
「まずは制服のボタンを全部。それからブラウスのボタンを……」
「た、ただ外してるだけに見えるんだけど」
「のこのこ人の部屋に来る方が悪い。制服でできんのも最後かもしれないし」
「わぁ、変態だぁ」
「イヤか?」
「……答えません」
「じゃ、続けさせて頂きます。……と、言い忘れてた」
「何?」
「卒業、おめでとう。これからもよろしく」
「……うん。ずっと、よろしく」