「今日も客が少ないなぁ」  
田舎の寂れた一角にある古い銭湯の番台に座っている男の子は今日も暇そうにしている。  
彼の名は武。今年で中学3年になりこの銭湯の跡取り息子だったが、  
近年は客もすっかり減り近所のお年寄り専用銭湯に近い状態になっていた。  
 
ガラッ。  
突然古いドアが開き次の客がやってくる。  
 
「大人一人。お金はここに置きますね」  
顔を伏せながら白いブラウスを着た中学生ぐらいの女の子がお金をおいて奥に行った。  
この女の子は新規の客なんて殆ど来ない、この銭湯に突然やってくるようになった謎の子だ。  
深くかぶった帽子。あからさまに変なダテメガネ。口には大きなマスクと完全に顔を隠している。  
風呂から出る時も顔を伏せながら歩くので誰だかわからないが、  
身長や体つきからしても同じぐらいの年齢なのは間違いない。  
 
武も番台のマナーとしてお客さんをジロジロ見ないように教えられているので、  
最初は気にしなかったが、ここまで徹底的に隠されるとやはり気になってくる。  
彼女に興味を持ったのはそのわからない顔のせいだけではない。  
裸がとにかく綺麗だった。その裸体の綺麗さは武の心を虜にするのに十分であった。  
 
彼女は今日も番台から見えにくい隅っこに行き、服を脱ぎ始める。  
おそらく番台からの障害物を考えて、見えにくいあの場所を選んで脱ぐことを決めたのだろうが、  
実はあそこで脱いでも腰から下ははっきりと見える。  
確かに番台から障害物が邪魔で上半身は見えないが、  
裸体を見るにはむしろベストポジションで、少し視線を下げるだけで背中もお尻も丸見えになる。  
しかも、右の壁にある大きな鏡が斜め横から反射しており、  
鏡を見れば胸の形から股間の有様まではっきりと見える危険地帯だった。  
武はあの場所を銭湯初心者が飛びつき、大失敗する魔のゾーンと呼んでいた。  
 
そんなことも知らずに彼女は今日も魔のゾーンでスカートを脱いだ。  
当然のごとく番台からは綺麗な足と白いパンツが見える。  
 
(今日は白か)  
彼女のパンツの色は、大体5種類ほどありローテーションがあるようだ。  
武は彼女が来るたびに、今日のパンツの色を予想するのが密かな楽しみになっていた。  
女の子はシャツを脱ぎブラを外す。  
上半身を脱ぎ終わりバスタオルで前の体を隠しながらパンツを脱ぐ。  
鏡には肩から下の膨らみかけの綺麗な胸とピンク色の乳首。股間にはまだ生え掛けの陰毛が写っている  
魔のゾーンで脱ぐ子は、脱いだ服を少し下のロッカーに入れるのだが、  
これはまた罠であり、背を向けて屈むことにより性器が丸見えになる、  
綺麗な割れ目と、少しはみ出たピンク色のビラが見える。  
 
(あの割れ目の形がいいんだよな。成長途中のせいか他の人とは違うビラの歪みがあるのがいい)  
武は本人が決して見られたくない部分をマジマジを見つめながら失礼すぎる批評をしていた。  
 
彼女は、いつものように顔を伏せタオルで体を隠しながら風呂のドアへと向かっていく。  
人は前ばかり隠したがるが、一番危険なのは後ろからの視線。  
ここでも完全に隠していると思っているんだろうが、  
現実は後ろから尻がチラチラと見える。  
武は脱衣の時と浴槽に入る時の見える、この綺麗なお尻が大好きだった。  
あの子のお尻の右側にホクロがあるのも知っている。  
今日もその見えるお尻を眺めながら幸せを感じていると、  
 
「こら、なにジロジロみているのよ」  
入口のドアが開き小学生に間違えそうな身長の幼馴染が声を掛けてきた。  
彼女の名は立花。  
武が番台に座るようになってからは同級生たちは男女問わず来なくなったが、  
立花だけはずっと来てくれる。立花の心境はよくわからんがありがたいお客だった。  
 
「いや、ちょっとあの女の子の行動が……」  
プロの番台として女の裸に夢中だったことを知られるのは困るので、  
いかにも気になることがあったみたいな言い方をする。  
 
「あの女の子って、さっき見ていた、りっちゃんのこと?」  
「え、あの子は知り合いなのか」  
「同じクラスじゃない。何言ってるのよ」  
 
「いや、いつも顔を隠しているし誰なんだ」  
武は想い人の正体がわかると思い立花に詰め寄った。  
 
「そういや風呂屋に行かないといけなくなったけど恥ずかしくて。とか言ってたっけ  
なるほど。それで顔を隠しているのかぁ」  
立花は一人で納得し、少し意地悪そうな顔をしながら、  
 
「でも、そんな裸を見られたくない子をエロい目に見ている人には教えてあげない。  
私も今から入るんだけど見ないでよね。このエロ魔人」  
なんだが怒っているような言い方で立花は脱衣場のロッカーに向かっていった。  
 
「誰がエロ魔人だ。それにお前の裸には興味ないから見ないよ」  
武は本当に立花の裸には興味なかった。  
もちろん脱ぐところは何度も見ているし裸も見ているがなぜか全く面白くない。  
今では裸を見ることより今日のパンツの色だけ確認してすぐ視線を外す程度の扱いだった。  
(今日はいちご柄か。相変わらず立花はお子様だな……)  
 
 
翌日  
武はあの子がクラスメートだと知り、教室で想い人を探そうと女子生徒を見渡すがさっぱりわからない。  
顔は知らなくても裸の特徴はしっている。そしてその裸体に恋をした。  
武にとって淡い不思議な片思いの始まりだった。  
 

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