「やめて。怖い。」
「怖い? 何が怖いんだい?」
少女はちょっと押し黙った。
「知らない男に体の中に指を入れられるなんて。怖いに決まってるじゃない。」
「あのねえ。」
俺は呆れていった。
「俺は天使だぜ? その俺がどうしてこんな可愛い子にひどいことすると思う?」
「神の軍勢は冷たく冷酷だよ。」
「パンツを脱いでそんな風に足を広げたまま震えてる子をいとおしいと思わないやつは俺の知り合いにはいないよ。」
「震えてなんか、ない。」
かすれた声で彼女は言う。
「いいや、震えているよ。寒いの?」
俺は彼女の割れ目を撫でていた指を止めて、代わりにお腹の上に手を乗せた。
ヒヤリ。彼女の体は冷えきっていた。
「あれっ。もしかしてまじで寒い?」
「おしり冷たい。なんか、感覚がない。」
「なんだよ、バカだな。それは早く言えよ。」
バサッ。俺は脱いだ服をかき集めて、床に敷き詰めた。
大理石の床はヒヤリと冷たく、こんな場所に彼女をずっと寝かせていたのかとちょっと可愛そうになった。
「ほら、こっちこいよ。」
「いい。そんなのいいから、早く済ませて。」
「ためだ。取引の条件は『君の心と体を俺が満足するまで愛させてくれ』だ。」
「セックスの婉曲表現でしょ。変な言い回し。」
「何で悪魔ってこう、変に斜に構えて、理屈っぽいんだろうな。」
「なによう。」
俺はめんどくさくなって彼女の小さな体をひょいと抱き上げた。
チビだが肉付きはいいので、もっと重いかと思ったのだが、その体は軽かった。
「ほら。ちょっと暖めてやろう。」
彼女を即席のベッドに下ろし、上から覆い被さる。
その体は冷えきっていた。
ぎゅ。
強く抱き締める。
「よしよし。可愛いぞ。」
「いつになったら始まるの? 早くしてほしいんだけど?」
「もう、始まってるよ。」
「『ねえ、お願いよ。早くおちんちんちょうだい? あたしのとろとろのおまんこにあなたの固いのを入れて欲しいの。ね?』」
「その台詞はなかなかそそるが、無理にビッチぶらなくたっていいよ。」
俺はモソモソと彼女の股間を探った。
「それに、こんな乾いたまんまじゃ入らないよ。」
「『無理やり捩じ込んで?』」
「だめ。ってか、ちょっと黙りなさい。俺は今、君のどこを触ってるか、それだけに集中して。」
そうして俺は彼女の唇を吸った。
彼女は軽く歯と歯の間を開き、そこから控えめに差し出した舌の先で俺を迎えた。
控えめに開かれた歯は、それを舌で押し割って舌を差し入れるのを、俺が楽しめる様にだろう。
俺は誘いに乗って、彼女の口中に押し入った。
ねじ込んで、流し込み、吸い上げる。
さすがに上手いなあ、と思いながら、しばらく彼女の唇と、舌を楽しんだ。
丁寧に愛撫したお陰か、彼女がその気になったからかは分からないが、不意に指先に湿り気を感じた。
おっ?と思って襞を広げて指先を潜り込ませると、中は既に暖かい液体で満たされていた。
ずーっとそのまま指を差し込む。奥は熱く、潤っている。
その動きに、少女が軽く身震いする。
「大丈夫。」
執拗に舌を絡めてくる彼女の口撃を振りほどくと、俺はそっとささやいた。
「乱暴にされたことがあるの?」
「男なんてくずばかり。」
悪魔はレイプが禁じられていないからだ。
襲うのも、拒むのも、受け入れるのも個人の自由。
だから悪魔の女は無理やりやられるか、やられるのなら、楽しむか、どっちかを選ぶ。
この少女の悪魔はこの歳でもう、求められたら逆らわないのが吉とわかっているのだろう。
「やばい。すごい、上手だね。」
とろんとした声で彼女は「なんか、おまんこ気持ちよすぎてワケわかんないんだけど。」と言った。
それから俺の頭に腕を回すと、再び熱心にキスをし始める。
痛くしないセックスであれば、ひとまず彼女としては受け入れられるらしい。
その上で、相手が上手いのなら、もう、悪魔としてはとりあえず、安心してセックスを楽しむことにする、と言ったところか。
「あー。そこ、気持ちいいよう。あん、あ、んん。」
「ここ? これ?」
「そう!あ、や、いきそう。それやばい、あ。」
あえぎなが、無意識に手が俺のものを探している。
それを探り当てると、するりと指を絡ませ、柔らかくしごき始める。
「おちんちん、すごく固い。」
独り言のように呟く。
君が可愛いからだよ、と囁くと、くすぐったそうに笑う。
「ほんと?」
「ほんとだよ。他の女の子じゃこんなにならないよ。」
まあ、嘘だが。
「ねえ。もう、入れていいよ?」
「いや。もうちょっと弄ってたい。」
それを聞くと、彼女はまた、くふふ、と笑った。
「嬉しい。ホントはね? あたしももうちょっと触ってて欲しかったの。」
もう、完全にはまったな、と思う。基本的に、悪魔は愛を知らない。だから微量の愛でも容易く「愛に堕落」するのだ。
俺は優しく彼女のクリトリスを指先で撫で続けた。
もはや少女はただ、ただ、俺の指先に自分の敏感な部分をまさぐられる喜びに体を震わせている。
こんなちゃちな愛で申し訳ないとは思う。
別に俺が彼女に差し出している愛は、そんな大層なものではない。
自分の指で喘ぐ、まだ幼さの残る少女。おっぱいもおしりも、なかなか、いい感じに膨らみがあるが、でもまあ、それなりだ。それなりの可愛さに、それなりのいとおしさを抱くのは別に特別なことじゃない。
それでも彼女たち、悪魔の少女はその質の悪い、僅かばかりの愛に泥酔する。
どっちが悪魔か分かったもんじゃない……。
うちの部署の子に言われたことを思い出す。
ひとしきり指先で弄ぶと、彼女はきゃんきゃんと声を挙げて喜び、やがて達した。
それを見届けてから俺はおもむろに自分のものを彼女に差し込んだ。浅く引いて突く。浅く引いて突く。
彼女の中は温かくて、程よく締まり、すごく気持ちがいい。
俺はいくらもしないで達した。
最後のひとしぽりを出し終えてから、まだ固いちんぽこを彼女の中から引き抜く。
熱と湿り気で、冷えた空気の中で湯気でも立ちそうなそれを、彼女の口元に近づけると、特になにも指示しなくても、彼女はそれをすんなりと口にふくんだ。
中に残っていたものを吸い出してもらっていると、また、いとおしさが込み上げてくる。
彼女はそれを敏感に感じとり、くすぐったそうに笑う。俺のものに頬擦りしながら、ありがとう、と囁く。
その瞬間、光が彼女を包んで、黒かった髪と翼が、一瞬で金髪と白い翼に変わった。
「あれ?」
彼女は不思議そうに後ろを振り返った。
「あれ? 羽が、あれ?」
「さあ、立って立って!」
俺はわざと景気よく言った。
「だめだよ、女の子がいつまでもそんな格好でゴカイチョウしてちゃあ。膝を立ててると、全部見えちゃうって。ほら、パンツ履いて!着終わったら、すぐに行くよ。」
「う、え?行く?どこに?」彼女はもたもたとパンツを引き上げながら立ち上がった。戸惑いはかくせない。
「お前の新しい職場だよ。なに、すぐに慣れる、同じ境遇の先輩がいっぱいいるからな。今日から私の部下の仲間入りだよ。」
ブラジャーのホックを留めるのを手伝うついでに、俺はポケットから取り出した金色の輪っかを彼女の頭にちょいと乗せた。
おわり