【7.試合開始!】
「理緒……? 理緒ってば!」
私が声を掛けると、理緒は夢から覚めたようにハッと周囲を見回す。
そして、状況を把握するとバツが悪そうに悪戯っぽく舌を出した。
(また妄想の世界に入り込んでたのね……)
こういう時の理緒はかなり要注意だ。理緒の妄想はエッチなものが多い。その妄想から覚め
やらない状態の時に、私は何度エッチな事をされたか――。
「ウフフ……ごめんね、美緒。一人だけで楽しんでちゃダメだよね?」
とろんとした目つきで私を見る理緒。……やばい、悪い時の状態だ。
ゆっくり理緒が一歩踏み出すと私は一歩下がる。理緒がもう一歩前に、私は後ろに……。
そうして行くうちに私の背中にロープが触れた。あっ、と思ったがもう逃げられない。
理緒は私が行き止まったのを確認すると、前に進むのを止めて私の体を値踏みするように見る。
そして、突然、私の股間に向かって下から手を入れようとした。
「…………!!」
私は思わず横に飛び退る。理緒の手は空振りして宙を掴んだ。私を見てニヤリとする。
う〜〜、気味の悪い笑顔……。
「すっかり警戒されてるみたいね」
理緒は腰に手をやって、やれやれと言った感じのポーズを取る。ピンクのレオタードとリング
シューズがとても様になっていた。レオタードにも着こなしと言うものがあるようで、私の様に
着慣れない状態でオロオロしたりせず、堂々とビシッとしたカッコ良さを見せている。
(理緒に男の人だけじゃなく女の子達が夢中になるのもわかるなぁ……)
女の子達はそのカッコ良い色っぽさに引かれるのだろう。そんな双子の姉を持つ身としては
誇らしい事ではあるが、今の彼女はそれだけではない。私と言う生贄を狙う雌獣でもある。
「美緒だって可愛いよ。ねぇ、やっぱりプロレスに転向しない?」
私の内心を見透かしたように、にんまりと微笑む美緒。
「だ、だから……しないってば……」
プロレスが嫌なのではない。だけど、私は格闘技が好きだもん。真剣勝負で相手の攻撃を掻い
潜ってKOパンチを決めた時や関節技を一発で極めてタップを奪ったときの快哉はやったもの
でないとわからない。
(でも、今日の闘いには役に立たないんだけど……)
オンリーフォールマッチ。この聞きなれないルールで勝敗を決する。
リングもプロレス、ルールもプロレス。しかもエッチ攻撃・反則攻撃容認。
それだけならまだしも、急所攻撃・電気アンマ狙いだなんて――。
「二人とも、準備が良ければリング中央に戻って」
レフェリーを務める祐一さんの声が聞こえる。理緒は「はぁい♪」と言いながらニコニコと
祐一さんの隣に行き、その腕に抱きつく。困ったような表情の祐一さんの体を引き寄せ、理緒は
耳元で何かを囁いた。祐一さんが目を見開き、私を見る。
(理緒ったら……また何か企んでるのね)
私は二人から少し離れた位置で試合開始の合図を待った。理緒に抱きつかれて鼻の下を伸ばして
いる祐一さんが少し癪だったのは否めない。
* * *
「それじゃあ、始めるよ――ルールはオンリーフォール……だっけ? 相手をフォールする
まで決着はつかない特別ルールで。それ以外はプロレスの基本ルールと同じ。目潰し、噛み
つき、急所攻撃、凶器攻撃は反則。5秒以上の反則は即失格となるから気をつけて」
祐一さんがあってない様なルールの説明をする。急所攻撃は反則。でも5秒間以内なら失格
にはならない。5秒以上掛かる急所攻撃があるなら体験してみたいものだ、と私は内心の
憤慨を隠せない。
「ねぇ、祐一。電気アンマはどうなの? これは急所攻撃なのかな?」
「で、電気アンマは……」
理緒に聞かれ、狼狽したように私を見る祐一さん。
私は『知りません、自分で宣告してください』とばかりにそっぽを向く。勿論拗ねた表情で。
祐一さんの狼狽振りが激しくなり、理緒がクスクスと忍び笑いする。
「で、電気アンマは……その……サービス攻撃で……」
「何のサービスなんですか、それは!」
理緒の受け売りをそのまま口にする祐一さんがしどろもどろなのに私が突っ込む。
その理緒はお腹を抱えて大笑いしていた。
「電気アンマはエッチ攻撃だもんね、祐一? エッチ攻撃は認められるよね?」
「あ、ああ……」
理緒の助け舟に漸く落ち着いた祐一さんはコホンと咳払いし、再びルール説明に入る。
「えっと……その、胸とかお尻とか……こ、股間を狙うエッチ攻撃はあり。だけど、痛くする
のは急所攻撃とみなして5秒ルールを適用するから、そのつもりで……」
祐一さんは私の目を見ずに事務的に説明する。まったく、もう……。
「じゃあ、電気アンマで痛くするのは無しか……ああ、違った。4秒まではOKなんだよね」
理緒が私を見ながら言う。とろんとした蛇の様な目つき――4秒って……態々それを確認して
何をするつもりなのか――。
「以上でルール説明は終わり。何か質問はあるかな?」
私の目を見ながら訊きなさいよ――私から目を逸らして質問の有無を尋ねる祐一さんを、逆に
じっと見つめてやる。祐一さんは困ったように咳払いをした。風邪なんか引いてないでしょうに。
「そろそろ、始めようか……」
祐一さんが改めて私達の方を向き直る。いよいよ始まるのだ。理緒がレスリングの基本の
構えをする。私も応戦するように同じ構えをした。
「レディ………………ファイッ!」
祐一さんが腕を交錯させた。それと同時に私達は相手に向かってダッシュし、リング中央で
がっちりと組み合った。ついに試合が始まったのだ。
* * *
力比べの状態になり、お互い目一杯の力で相手を押し込もうとする。パワーは全くの互角だ。
同じ遺伝子を持った二人がそれぞれ鍛錬を積んできたのだから当然かもしれない。
「だったら……技で崩すしかないね」
理緒がにやっと微笑む。私がハッと気づいた時、理緒の蹴りが私の股間に向かってきた。
いきなりの急所蹴りだ。
「さ、させない!!」
私はその蹴りを足で受ける。バシッ!と激しい打撃音が鳴った。
(もう……)
女の子の急所を力一杯蹴ってくるなんて――私は理緒を睨んだ。
理緒の垂直蹴りはさっき見せてもらった。速いけど真っ直ぐに飛んでくるなら、不意を突かれ
なければ止められる。
「チェッ……流石格闘家だね。私の蹴り程度は素直には貰わないか」
理緒が残念そうに言う。そりゃあ、これだけ露骨に股間を狙ってきたら分かるでしょ……。
半ば呆れてそう思いながらも、私は理緒が本気で股間狙いに来ているのに不安を覚えた。
(今は当たらなかったけど、乱戦になってきて隙が出来てくれば……)
総合格闘でもそうだが集中力のある間は打撃も当たりにくいし、技も掛けにくい。だけど、
お互いにヒートアップして攻撃的になってくるとディフェンスの方は……。
「じゃあ、プロレス式に狙いを変えるかな♪」
理緒はいきなり力比べの状態で脱力した。
「……とっ!?」
私はつんのめりそうになるが、ある程度は予想していたので辛うじて踏みとどまる。
だけど、理緒にはそれで十分な時間だったようだ。
「バック、も〜らい!」
動きの止まった私の横を俊敏な動きで素早く抜け、背後に回りこんだ。そしてそのまま腰に
手を回し、反り返る。「ふんッ!」と理緒の気合が聞こえると同時に私の足はマットから
浮いていた。
「きゃ……ああっ!?」
体が重力から引き離されたように持ち上げられた感覚の後、急激な落下感と共に私は後方に
投げ飛ばされた。ズダァ〜〜ン!! とマットに腰から落ちる。
「ぐふっ……! や、やられた……」
私が腰を擦りながら起きようとした時、祐一さんの「あっ!」と言う声が聞こえた。
……理緒は!? 彼女の姿が一瞬消える。その時、ズザザザ〜〜ッ! とマットを擦る音が
した。視線を下に向ける。理緒だ。彼女は野球のスライディングの様に足から滑り込んできた。
私の股間をめがけて――。
「スライディング〜〜き〜〜〜〜〜っくッ!!」
「え……!? や、やだっ……!! …………☆◆%#&%$!!」
ずが〜〜〜ん☆!!
私は尻餅をついた状態から避けられず、理緒のスライディングキックは私の太股の間を通って
見事に股間を直撃した。
「やった命中〜〜! ……きゃああ〜〜!?」
勢いをつけて飛び込んできた理緒は私の股間に激突して止まると、その勢いを殺しきれずに
つんのめった状態で私に覆いかぶさってきた。二人の体が重なり、理緒の唇が私の唇に触れた。
「いたた……や、やだ……美緒とキスしちゃった♪」
理緒は嬉しそうにはしゃいでいるが、私はそれどころではない。理緒のトリッキーなキックが
股間を直撃したのだ。急所を打った痛みに私はキスをしてはしゃぐ理緒を突き飛ばして退け、
レオタードの股間を押さえてゴロゴロとマットを転がる。
「あああ……あああああぁああ〜〜ッ!!」
私は内股になった状態で股間を押さえ、コーナーまで転がってのた打ち回った。おそらく、
完璧な蹴りを食らった時ほどではないだろう。蹴り自体がトリッキーだったし、直撃度は
クリーンヒットには僅かに及ばない。だが、女の子の急所にダメージを与える分には十分だ。
「くぅ……うっ!!」
私は涙を滲ませながら懸命に股間の痛さに耐える。涙で霞む視界に理緒と祐一さんが見えた。
理緒は祐一さんの手を引っ張りながら私の方を指差して笑っている。祐一さんがオロオロした
表情をすると、理緒は自分の股間を指差し、押さえて痛がる真似をした――笑いながら。
状況が飲み込めなかった祐一さんに理緒が面白おかしく説明しているのだろう。私が股間を
打った事を。
(女の子だったら……その時の気持ちはわかるはずなのに)
股間がズキズキと痛むが、私はロープを掴んでよろよろと立ち上がる。どうしても内股に
なってしまい、乱れた髪が嫌な汗をかいた額に張り付く。
祐一さんと目が合った。彼はなんだか頬を染めてドキッとした表情をしていた。なぜか、
まるで女の子に見とれるような表情――。
(こ、ここは……心配するところじゃないの?)
私は不思議に思ったが、次の瞬間には祐一さんの事は頭から消えていた。
(理緒――許さないから!)
理緒はニヤニヤと余裕の笑顔で私を見ている。急所を打って苦しんでいる私を見て楽しんで
いるのだ。そういえば、理緒がデビュー戦で対戦した外国人レスラーが急所攻撃で苦しむ
理緒に同じような表情をしていた。
(妙な影響を受けて……。でも――)
あの時とは状況が違う事を理緒に教えてやらなければならない。私はロープを掴んで一旦
立ち上がったが、再び膝からマットに崩れて、理緒の前に四つんばいになった。
それは屈辱的な姿だっただろう。理緒は満足そうに嫌な笑顔でニヤリと微笑んだ。
【8.急所攻撃の応酬〜泥沼の姉妹バトルへ】
「フフフ……まともに当たったみたいだね♪」
理緒は嬉しそうに言うと、興奮で上気した顔をしながら私に近づいてくる。その瞳は欲望で
濡れて煌き、獲物を捕食する前の雌獣の様に舌で唇を舐めあげていた。
「狙いを定めないで飛び込んだから、まともに当たらないかも、って思ってたんだけど、美緒の
その表情を見れたから、やってよかったよ――ねぇ、もっと苦しんでる顔を見せて?」
理緒は私の髪を掴んで持ち上げた。私は髪を掴まれる苦痛に「うっ……!」と呻く。
「いい声……フフフ。まともに当たったみたいだから次は気持ちの良い事してあげないとね。
このまま押し倒して電気アンマしてあげよっか?」
理緒が私の顔を覗き込む。私と同じ色の、意地悪な煌きを湛えた瞳――。
「…………いい気なものね」
「えっ……?」
「デビュー戦からは何も学ばなかったの? 理緒、プロレスラーとして失格だよ」
「な、なにを言って…………はぐぅ☆!?」
ズムッ……☆!!
私の言葉に不審な表情を浮かべた途端、理緒の体は大きく反り返った。
その股間には私の拳が割れ目にめり込んでいた。力を溜めてタイミングを見計らった、
渾身のアッパーカット。それが理緒の股間の急所に炸裂したのだ。私の会心の一撃だった。
逆に痛恨の一撃を食らった理緒は股間を押さえた状態でそのまま両膝をマットにつく。
そして股間を押さえて前かがみになり、急所から全身に押し寄せる痛みに体を震わせて
苦悶する。
「くッ……うぉぉ……!! …………あああぁああっ!!!」
太股やお尻がプルプルと小刻みに震え、額にはぐっしょりと冷たい汗をかいていた。
ショートのカッコ良くて可愛らしい髪もぐっしょりと濡れてしまう。うずくまりながらの
荒い息使いがその前で仁王立ちする私の耳にまで聞こえてくる。
「ふぅ……」
私は長い髪をかきあげ、理緒の蹴りで痛めた股間を悠然と撫でた。祐一さんと目が合う。
「今のは、反則じゃないですよね?」
にっこりと微笑んで問いかける私に祐一さんは息を呑む表情をした。それに流し目を送り
ながら私は理緒の髪を掴んで引き寄せる。「くっ……!」呻き声をあげる理緒の顔を覗き込み、
私はねつい口調で囁いてやる。
「ねぇ、理緒……獲物を前に舌なめずりするなら、相手のダメージを確認しておいた方が
いいよ? 私程度の演技に騙されていて、ディアナ=ハミルトンに復讐なんかできる?」
理緒は何も言い返さない。私が押さえている両手の上から股間を蹴ってやると慌てて太股を
閉じた。両手越しに蹴られても響くらしい。
そう――私のは演技だった。演技と言っても痛くなかったわけではない。何とか震えながら
立つ事だけは出来そうだったが、そこから一歩も動けそうになかった。だから逆にそれ以上の
ダメージを負ったように演じたのだ。理緒はトリッキーな蹴りを決めた事でいい気になって
いた。だからそれに成功した。
そして、私の急所攻撃を食らった理緒の悶え方は演技ではない事も分かっていた。彼女に
見舞った股間へのアッパーはタイミングもパワーも完璧なものだった。命中した手応えも
しっかりと覚えている。
理緒の急所中の急所――クリトリスを僅かに下から打ち上げるポイント。そこが痛い事を
私は知っている。それは双子の妹である私が痛い所で――感じる所だからだ。
「公開番組での電気アンマもそこに入っちゃってたもんね……」
私はクスクスと理緒を見ながら笑う。人間はコミュニティの中にいると、その集団としての
バランスを取る様に行動すると聞いた事がある。だとしたら、一卵性双生児の姉妹と言う
最小限で最も結びつきが強い私と理緒のコミュニティの中では、どちらかがエキセントリッ
クな行動を取ればもう一人の方はバランスを取るためにその受けに回る――つまり、私達の
間では『攻めと受け』は簡単に逆転し、対極的になりやすいと言う事なのかも知れない。
今、私は理緒を責め苛んでいる。それは堪らなく気持ちが高揚する快感だった。
「この前の電気アンマのお礼をしてあげなきゃね……その前に!」
私はまだ急所打ちの衝撃で動けない理緒の髪を掴んでマットに叩きつけた。バン!と
前のめりに倒されて、理緒が呻く。今度は胸を打ったらしい。片手でアソコを押さえて
もう片手で胸を押さえている。理緒に反撃を食らわないように少し痛めつけておくか。
「電気アンマするには、その手が邪魔ね」
マットに苦悶している理緒の背中に続けざまにストンピングを放った。
「あっ! うっ!」
と理緒はストンピングがヒットするたびに体をくねらせてのた打ち回る。続けざまのラフ
プレイを受け、半ばグロッキー状態になった。ぐったりとマットに横たわる理緒の姿を見て
私は興奮で背筋がゾクゾクしてきた。
「こんなものかな……このままフォールなんてしてあげないから。まずは電気アンマの
仕返しをしてあげる」
私はこの前の理緒の見様見真似で両足を取った。そのままVの字に開く。
「だ、だめ……」
理緒が弱々しく股間を守ろうとする手を容赦なく蹴り飛ばして自分の足をそこに置いた。
これでチェックメイト――なんだ、簡単じゃない。
「み、美緒……お願い。少し手加減して……さっき打たれたのがまだ痛いの」
理緒が哀願する。しかし、私はそれを無視した。まずは電気アンマを掛けてから言い分を
聞いてあげる。今まで散々いやらしい事をされてきた仕返しだもん。
がっちりと両足首を脇に抱えてVの字型電気アンマを完成させると、私はそのまま股間に
あてがった右足をブルブルと振るわせた。ダダダダダダダダダ……リズミカルな振動が
理緒の急所を襲う。
「ああああああぁああ〜〜〜!!! ああっ……!!」
理緒のソプラノボイスの悲鳴がリング上に響き渡る。太股は激しく揺れ、体をくねらせて
艶めかしく電気アンマの振動にあわせて悶えている。両手は懸命に私の右足を外そうとする
が、しっかりと踏み込んでいるのでビクともしない。
「だ、だめぇ……! み、美緒……はぁあああああッ……!!!」
それでも理緒は右足を掴む両手に力を込めて悶えた。そうしないと耐えられないのだろう。
白くて綺麗な肌の太股もキュッと内股にすぼめて懸命に抵抗するが、右足は全然抜けない。
「ああああッ……!! み、美緒……いい加減にしないと……!!」
「いい加減にしないと……どうなの、理緒?」
「あ、後で……酷い……よ……うっ!? ああん…………はぁああんッ!!」
理緒が立場を弁えずに強気に出るところを、私は電気アンマしている足のポジションを踵に
してグリグリとねじる動きに変更する事で応えた。私を睨んでいた理緒は再び仰け反って
苦悶と快感の狭間に悶えるだけだ。
(女の子の急所って、二種類の責め方があるんだ……。すごい……)
私は今自分がやっている事ではあるが、その効果の高さに驚いていた。さっきまで私を嬲り者
にして苛めようとしていた驕慢な理緒は今ここにはいない。ここにいるのは急所攻撃を受けた
激痛で大きくスタミナを消耗し、今また電気アンマで同じ急所を今度は快感と苦悶を与え続け
られて悶絶寸前の理緒がいるだけだ。
しかも、容易には悶絶させてもらえない。私が拙いながらも電気アンマをコントロールし、
その中途半端な状態を続けさせているからだ。
急所攻撃による悶絶、電気アンマによる悶絶。その二つの効果が期待できる女の子の急所を
責める、悪魔の魅力に私はすっかり取り憑かれていた。自分が同じ事をされる宿命を持つ
女の子である事も、その危険な魅力にはまる一因なのかもしれない。
「このままじゃ……だめ……」
理緒が呟きながらも力が抜けている。私は理緒が観念したか限界が来たのだと思って油断した。
そのあたりがまだまだ甘いところだった。
「理緒、もう限界? それとも諦めて私にいじめられる気になった?」
私は電気アンマを続けながら前屈みになって理緒の表情を覗き込む。理緒は答えなかった。
ただ目を閉じて電気アンマをされることで股間から押し寄せる快感と苦悶に耐えている。
「フフフ……このまま逝かせてあげようか? フォールするかどうかは分からないけどね」
調子に乗った私が理緒を挑発した時――理緒が渾身の力を振り絞って体を跳ね上げた。
「なっ……!? ……あっ!!」
立ち状態で電気アンマを続けていた私は右足を電気アンマで股間にあてがっている為、片足
立ち状態だった。理緒の突然の跳ね上げに、思わずバランスを崩して右足を電気アンマから
外してしまった。
「今――!!」
理緒はここぞとばかり大きく体を捻る。両足を脇に抱えていた私はその回転力に傾倒させられ、
大きくバランスを崩してたたらを踏む格好になる。更に理緒の反撃は続き――。
「ええいっ!!」
「きゃああ!?」
私の体制が崩れた所で理緒は再び体を跳ね上げた。私の両脇から彼女の両足が抜け、彼女は
完全に電気アンマから解放された。
「しまった――!!」
私は獲物を逃したと思ったが、間を取ろうとした理緒はそのままへなへなと腰から崩れて
どすん、と尻餅をつく。
「な……!? あっ!!」
これは理緒にとっても想定外で慌てたそぶりを見せる。どうやら私の電気アンマに比較的
長時間かけられていたため、足腰がすぐに反応できなかったようだ。
「フフフ……電気アンマが効いて、逃げられないみたいね!」
私は再びチャンス到来と察し、グラウンディングして座位式電気アンマを敢行しようとした。
立位式よりこちらの方が安定するので一旦掛けられると今の理緒には逃げられないだろう。
そう思い、理緒の両足を掴んでその間に攻撃を担う右足を差し込もうとした。
しかし――。
「あんたの考えなんて……お見通しだもん!!」
理緒は素直に足をつかまれず、一旦腰を引いた。
「逃がさないっ!!」
私は追うようにして中腰で理緒の両足首を掴もうとした。それが失敗だった――。
「掛かったね!!」
突然、元気な声で理緒が叫ぶと彼女は腰を引くのを止め、逆に手を使って自分の下半身を
前に押しやった。そして――。
「食らえ、美緒!!」
私が足首を掴もうとした手を掻い潜り、理緒の足は私の中腰になっている体の中心に向かって
思い切り蹴り出された。そしてそれは狙い過たず、私の太股の間を通り抜け、踵が股間を
直撃した。
ドガッ☆!!!
「…………!!! きゃうううぅうううッ……☆!!!」
次の瞬間、私は股間を押さえたまま、もんどりうって転倒し、そのままゴロゴロと転がり
まわった。
理緒必殺の踵急所蹴りがカウンターでモロにヒットしたのだ。
恥骨と性器に直撃し、じ〜〜ん……☆、と全身の骨に響き渡る痛みと、性器を直撃し子宮に
ずずんと深く打ち込まれる様な痛みが瞬時に私の体を襲った。
「はぁああああああッ……!! ……あぁああ……!! ……ああああッ!!!!」
私は股間を押さえて足をバタつかせ、体を上下に揺り篭の様に揺れながらのた打ち回った。
体の奥に響き渡る、キュンとした痛み、恥骨から全身の骨が痺れるような鈍い痛み――。
急所攻撃で得た私の優位は、この同じ急所への一蹴りでチャラになった。
その理緒もさっきまでのダメージがあり、簡単には立ち上がれない。私たち姉妹はお互いに
自分の女の子の急所を押さえてリング上で悶えていた。
試合は振り出しに戻ったのだ。