【13.容赦なき責め】
「そ、そんな……!!」
私は思わず股間のガードを外し、上半身を起こして叫んだ。
(俺の事、どうでもいいと思ってんだろ、お前は――)
ちがう……ちがうよぉ……。私は否定するようにかぶりを振る。だけど、声に出しては
言わなかった。私が辛辣な事を言った時、どんな気持ちだったか、祐一さん自身が自分で
気づいて欲しいから――。
「いただき――!!」
祐一さんの声にハッと我に返り、慌てて内股になって股間を守る。ゴン☆!と股間が
鉄柱と衝突した重い衝撃が私の股間を襲った。
「うぐっ……!!」
息が詰まるよな呻き声を上げながら、私は打った股間を擦る。しかし、その痛さは先程
理緒にやられたのに比べれば全然ましだった。股間と鉄柱の距離も短かかったし、辛うじて
太股を内股にして鉄柱を挟み込み、祐一さんの引っ張る力にある程度ブレーキを掛けられた
からだ。
「ちっ……」
祐一さんの舌打ちが聞こえる。思ったようにヒットしなかったからだろう。
もう……どうしていきなりそんなに悪い人になっちゃうの? 極端なんだから。
(苛め抜いて、屈服させて、可愛らしい悲鳴を上げさせて――)
祐一さんの悪者ぶった言葉を思い出す。
(最後はその小さな唇で俺のものをしゃぶらせてやる。力づくでな――)
ホントに……する気なんだろうか? 私は尚も股間をグリグリしようとする祐一さんに
抵抗しながら内心ドキドキしていた。ああ、私って変だ――陵辱の言葉を叩きつけられて
一瞬でもワクワクしたなんて――ありえない。それはきっと何かの間違いだ。
「うっ……!? はぅ……んッ!!」
自分自身の心の中での葛藤に悩んでいた私は股間に食い込まされる圧迫感で私は現実に戻る。
鉄柱に跨がされ、男の人の力で引っ張られて続けているのだ。これだって結構痛い。
このいつ終わるとも思えない急所責めに耐えながら、私は祐一さんに対して確かめなければ
いけないことがあるのだ。それまでは、負けるわけにはいかない。絶対に。
だから私はこの不利な状況でも目一杯抵抗するつもりだ。例え耐えるだけの闘いになった
としても――だって、私……すっごく『悔しい事』があるんだもん――。
「理緒――。そいつの邪魔な手を退けさせろ」
えっ……? 私も理緒も目を丸くする。祐一さんはまさか――。
「だ、だめ……! それだけは、いやッ!!」
私は祐一さんを振りほどこうと足をバタつかせる。しかし、無駄な行為だった。祐一さんは
私の足首を掴んで離さないだけでいい。逃げられさえしなければ、どうとでもなるからだ。
なにしろ――。
「り、理緒……!」
理緒は私の顔を覗き込むようにして座ると、私をマットに押さえつけた。そして両手首を
掴んで動けないようにする。
「くっ……離してっ!」
私は懸命に理緒を振り解こうとしたが、理緒のほうが力の入る体勢なので両手は動かない。
そして……狙われている股間は完全に無防備になった。鉄柱と股間の間にあるのは水着だけ。
勿論そんなもので鉄柱の衝撃から急所を守れるわけは無い。
「もうすこし引っ張り上げるんだ」
祐一さんが理緒に命令する。私は身に迫ってる危機を感じながらもその光景を不思議な
気分で見ていた。今までは祐一さんは理緒の言いなりだったのに――。
理緒は祐一さんの命令通りに動く。私の体は鉄柱が足首の所になるまで引き上げられた。
何も言わずに今は自分がアシスタントとばかりに唯々諾々と命令に従う理緒。
でも、私を見る時はクスクスと面白そうに忍び笑いしていた。血を分けた妹が暴虐な男の
手で非道い目に遭わされようとしてるのに――私はこの姉に復讐を硬く誓った。
今度は遠慮なく、空手で鍛えた拳をアソコに叩き込んでやるから――と。
でも今は――私のピンチなのだ。鉄柱と自分の股間の距離を見て流石に息を呑む。
その距離は私の股下分ぐらい離れていた。器械体操部に誘われた時、見学に行った事が
あるが、その時に平均台から落下して股間をしたたかに打ちつけて悶絶している女の子を
見た事がある。もし、このまま祐一さんに引っ張られて股間を打ちつけられたら、その
落下した女の子ぐらいの衝撃はあるだろう。
(その子は……気絶しちゃってた――)
私は急に不安になり、背筋が寒くなった。このままだとやられちゃう……おそらく、
さっき理緒にされた時の何倍も痛いだろう。そんなのは……やだ……。
私はほんの一縷の望みを託して祐一さんを哀願の目で見た。祐一さんは男の人の大事な
所を蹴った仕返しだと言った。それは仕方が無いけど、でも、これはやりすぎだよ――。
「覚悟はいいか?」
祐一さんはマスクの奥から冷酷な目で私を見ただけだった。私の哀願は全く通じなかった。
元から聞く気もないのだろう。私は祐一さんの言うとおり覚悟を決めて目を閉じ、唇を
噛み締めて衝撃に備える。
理緒はどう思ってみているだろうか? 同じ女の子として同情してくれているか、それとも
嗜虐心を刺激されて興奮しているか――おそらく両方だろう。
「いくぞ――」
祐一さんがギュッと両足首を握り締める。やだ……来る――! 私は少しでも衝撃を緩め
ようと内股になる。しかし、祐一さんが足を広げたため、完全には閉じられなかった。
「そぉ……りゃ!」
グン! と私は体が引っ張られるのを感じ、そして次の瞬間――。
ガキィィィィ……ン☆!!
その時の事は頭が真っ白になって覚えていない。キィ……ンと耳鳴りがするような衝撃。
鉄柱の冷たい感覚だけが股間から感じられ、私は違う世界に飛んでしまったように思えた。
* * *
「……ううっ……。いたた……」
まだビリビリと股間の辺りが痺れている。最悪の痛みは瞬間的な気絶によって逃れられた
らしい。それって、運がよかったのか、悪かったのか――。
気がついた時には私はぐったりと動く事が出来なくなっていた。さっきの衝撃に体が耐える
為にスタミナを大きく消耗したようだ。
そして、両手はまだ理緒に掴まれたままで、両足は――。
「あううっ……!? だ、だめ……祐一さん! グリグリ……しないで!」
祐一さんはまたしても私の両足を引っ張り、股間を鉄柱にグリグリさせる。さっきの打撃の
痛さがぶり返し、私は腰を振って悶える。出来れば股間を押さえるか、鉄柱から少しでも
引き離そうとしたかったけど、理緒が両手を掴んでいるので全く出来ない。
無抵抗無防備で急所である股間を鉄柱でグリグリされる不安感――それは私の人生の中でも
最も恐怖を感じる体験でもあった。
「クックック……痛かったか?」
祐一さんが笑ってる。半ば意識が朦朧として額にびっしょり嫌な汗をかいている私を見れば
そのぐらいの事わかるでしょうに……。
「意地悪……」
「ん? なんだって?」
「祐一さんの意地悪って言ったの……酷い事ばっかりして……」
グスン……と私が涙ぐむのを見て、理緒が面白そうな顔をする。
「ねぇ、美緒。こんな目に遭ってもギブアップしないの?」
理緒の言葉に私はコクリと頷く。理緒はアハハハ、と楽しそうに笑う。
「どうして? ……まあ、勿論美緒がその大きな瞳をウルウルさせて『許して』なんて
言っても逆効果だろうけどね〜♪」
「……そうなの、祐一さん?」
私は理緒が言うように悲しげにじっと祐一さんを見た。祐一さんは虚を突かれた様に私の
表情に見入ってたが、また両足を緩めて引っ張る。
ゴン☆!
「はぁうん☆……!!」
股間と鉄柱との間が10cmぐらい開いた所を、引っ張られての股間攻撃。
さっきと比べると地味で全然小さい衝撃だが、これが効く。じ〜〜ん……とアソコが痺れて
思わず腰を引いて内股になってしまう。
「う……うう……」
「もう一回おまけだ……」
「…………! だ、だめ――!」
ゴォン☆!
「はぅう……!!」
今度は流石に暴れて理緒の手を振り解いき、鉄柱にしがみついた。これ以上鉄柱攻撃をされ
ないように密着する。
「〜〜〜〜☆」
私はぎゅっと鉄柱を抱きしめ、涙目でイヤイヤをしながら祐一さんを見た。けれど、密着して
いても両足はつかまれたままだ……つまり――。
「そうしててもこれは防げないだろ? フフフ……」
意地悪な祐一さんはさっき美緒がやったように片足ずつ交互に足を引っ張ったり、両足を
持って震わせたりした。また鉄柱電気アンマだ。しかもさっきの理緒がやったのより全然
力強い。
「ああうう……! あっ……!!」
(だめ……。これをやられると――)
私の股間はしっかり鉄柱に食い込み、そこに与えられる刺激は体の奥にまで響き渡って、
黒い高まりを昂じさせていく。この体の奥の疼きがたまらないのだ。
「あああぁああ……! もう……だめ……」
私は鉄柱にしがみついたまま仰け反って悶える。理緒は勿論助けてくれない。私を見て
頬を赤らめながらサディスティックな微笑を見せているだけだ。
「ううっ……! くううッ……」
私は悶えながらも、鉄柱にこすり付けてる部分がぬるぬるしているのに気がついていた。
(これって……やっぱり――)
それが何であるかに思い当たると、私はカァ……と体が熱くなった。恥かしさで一杯になる。
(こんな事されて感じるなんて――私って『淫乱』なのかも……)
尚もグリグリと股間を祐一さんに嬲られながら、私は理緒に隠れて読んでいたポルノ小説の
淫靡な語彙を思い出していた。
* * *
「ハァ……ハァ…………ハァ……」
私が鉄柱股間責めから解放されたのは、その後もたっぷりとアソコをグリグリされてから
だった。解放されても自分では動けない私を、理緒がリング中央に引っ張り上げる。
どうやらまだいじめ足りないようだ。
私を解放する時、祐一さんは鉄柱をじっと見ていた気がする。びっしょり濡れている事に
気づかれただろうか。それを考えると頬が熱くなるぐらい恥かしい。
(理緒には気づかれてるだろうな……)
そう思いながら、私は自分がまだまだ続くであろう責め苦にそれほど絶望していない事に
気づく。1対2でしかも相手は男女の本職のプロレスラー。しかも数々の急所攻撃やエッチ
攻撃――特に電気アンマでスタミナを消耗し、グロッキー状態――この不利極まる状況でも
私は負けるつもりはなかった。理緒が何か仕掛ける前によろよろと立ち上がる。
「へぇ……」
ひゅ〜♪と理緒が口笛を吹く。まだ自力で立つ元気があったのかと。
それに構わず、私はよろめく足取りで理緒に掴みかかった。
「ええ……い!」
理緒の体を引き寄せ、投げを打つが、理緒は咄嗟に踏ん張って動かない。プロレスの組み
付き方では私は上手く相手を抱え込む事が出来なかった。それでももう一度投げを打とうと
した時、理緒が片手を切り、私のサイドに回りこむ。そして腰を抱え上げようとした。
「くっ……!」
私はサイドスープレックスを受けまいと理緒の首を抱え込む。これで投げられないばかりか、
そのままヘッドロックで理緒のスタミナを消耗させようとした。しかし――。
パァン☆! ――またしても下の方からの衝撃が私を襲う。
「はぅん☆!?」
ヘッドロックの状態で前屈みになった理緒は振り上げた右手を振り降ろし、私のオマタに
命中させたのだ。拳をグーの形で。
「くぅ……ん!」
威力は強くないが散々やられたばかりの急所への打撃――たまらず私は理緒を離し、股間を
押さえて内股になる。この一撃は効く。地味だけど、とても効く。急所への攻撃だから強く
なくても十分に痛い。ましてや私はさっきまで鉄柱で股間責めされていたのだ。思わず顔を
しかめてピョンピョン飛んでいる私をクスクス笑いながら理緒は背後に回りこむ。
じ〜〜ん……とぶり返す恥かしい所の痛みに耐えていると、急に体がふわっと浮いた。
「きゃあああ〜〜!?」
ずだぁ〜〜ん! 結局スープレックスで投げ飛ばされ、私はマットに叩きつけられる。
「ううっ……」
腰から叩きつけられた衝撃に呻いていると、私の目の前に誰かが立った。この大きい影は
祐一さんだ。彼は私の両足を掴むと脇に抱えて引き寄せた。
「も……もうだめ!!」
私はまたしても咄嗟に股間をガードしてしまう。この体勢だとこの二人相手にはどうしても
股間攻撃を警戒してしまうのだ。しかし、さっきのジャイアントスイングと同じく、今度も
電気アンマでも股間蹴りでもなかった。祐一さんはステップオーバーして私の体をうつ伏せに
し、そのまま腰の位置で跨るようにした。この体勢は……。
「これはちょっとキツイぞ……我慢できるか?」
そう言うと、祐一さんは思い切り私の体を引き絞った。次の瞬間、私は絶叫する――。
「ぎゃあああああああああ〜〜〜〜〜!!!」
背骨がへし折れそうな凄まじい激痛――ボストンクラブ、逆海老固めを完璧に極められたのだ。
「いたい、いたい、いたぁい〜〜!!! やめて、やめて〜!!」
私はパニック状態になり、バンバン!と何度もマットを叩く。これほどの激痛の経験は
今まで一度も無かった。とてもじゃないが耐えられるレベルではない。
「ギ……ギブアップです! なんでもするから離して……あああ〜〜〜っ!!」
泣き叫びながら許しを請う私だが、祐一さんは一向に解放してくれる気配が無い。
そこでやっと、この試合はギブアップでは終わらない事を思い出す。私は、体がバラバラに
なりそうな激痛で、このルールの辛さをたっぷりと味わわされた。
「フフフ……辛そうね、美緒」
理緒の声が聞こえる。だが、苦悶に汗びっしょりで息も絶え絶えの私は返事も出来ない。
「このままじゃ可哀想だから、気持ちいい事をしてあげる。祐一の責めに耐えられるようにね」
私は嫌な予感がしたが、祐一さんの逆海老固めは完璧に決まってるので身動きできない。
すると――。
「――ひゃあうん!?」
私の悲鳴がリングに響き渡る。逆海老を耐えている声ではない。何か、もっと違う驚きの
声だった。
「だ……だめ……! やめて……理緒……!」
「そんな事言っちゃて。気持ちいいくせに……ウリウリ♪」
「ああ……ぁああ……ん……り、理緒……ああ……んッ!」
逆海老を極められながら悶え狂う私――理緒は逆海老で開いた私の股間をグリグリとあんま
しているのだ。爪先、足の裏、踵を使いながら楽しそうに私のアソコを突っついたり、
擦ったり、踏んだりしている。正に苦痛と快感の二重奏だった。
「電気アンマ担当は私だもんね〜。まだまだ攻撃のバリエーションがあるよ。ね、祐一♪」
「…………」
楽しそうな理緒と黙っている祐一さん――逆海老の痛さで朦朧とする頭で私は祐一さんの
心境を想像する。やっぱり、私があんな事を言ったから怒ってるのだろうか?
(少し、言い過ぎちゃたかもしれない――)
容赦なく私を痛めつける祐一さんを見て、もしかしたら彼は傷ついたのかも、と思っていた。
* * *
「ぐっ……うう……」
私はまた苦悶に呻いていた。今度は祐一さんに後ろから抱かれながら――とは言っても、
首には手が回ってるし、その締め付けは私の息を奪い、苦悶に喘がせていた。それだけで
なく、胴にも太い足が巻きつけられ、ギリギリと締め付けられる。
胴絞めスリーパーホールドだ。
「あぐ……あぅ……あ…………」
大蛇に巻きつかれる様な強烈な絞め――さっきの逆海老から解放されたのは、それを10分
以上も続けられて腰が立たなくなるまで責め抜かれてからだった。その後すぐに祐一さんは
息も絶え絶えの私を引き起こすと、抱え上げてバックブリーカーで更に背骨をギシギシと
痛めつけた。そしてマットに叩きつけられるや、この胴絞めスリーパーを極められる。
ハイアングルボディスラム、ベアハッグ、マンハッタンドロップ、ラリアット、ヘアー
ホイップ、ジャイアントスイング、逆海老固め、アルゼンチンバックブリーカー、そして
この胴絞めスリーパーホールド。祐一さんのこれだけの打撃技・固め技・投げ技・絞め技を
満遍なく食らったら男のプロレスラーでもグロッキーになってしまうに違いない。
そして、数々の急所攻撃とエッチ攻撃、その両方を兼ねた電気アンマ――。
その電気アンマは今また……。
「り……理緒……うぐっ……!」
スリーパーの苦悶に声が出ない。しかし、私の下半身は上半身と違う責めをされている。
「今度はしっかりと決まってるよ〜〜。ウリウリ♪」
胴絞めスリーパーでは完全にお留守になっている下半身を、理緒が責めてくる。両足を
がっちりと掴んだ座り式電気アンマだ。リングシューズの踵が股間に食い込むたびに私は
ビクン!と体を震わせる。
「うぐ……! ……ううっ!!」
懸命に内股になって電気アンマを軽減しようとするが、完全に股間を捕らえられた後では
効果はあまり無い。それに電気アンマに気をやると上半身の縛めの苦しさがモロに襲って
くる。逆にスリーパーに耐えようとすると電気アンマの快感と苦悶が一気に下から押し
寄せてくる。
「うあ……あ……。……うぐぅ……!」
結局どっちつかずで両方の威力をモロに受けてしまうのだ。苦痛と快感と苦悶と――私は
空しく身悶えしながら懸命に耐える。
(なんだか、今日は耐え続けっぱなし――)
朦朧とする意識で私は思う。どうしてここまで頑張るのだろう――? 何故私は負けたく
ないのだろう――と。負けたくないのは理緒に対してか、それとも――。
「美緒ちゃん……苦しい?」
えっ……? 祐一さんの声が耳元で聞こえる。しかし、それはさっきまでの逆上して粗悪
になった祐一さんとは違っていた。気の小さなブラック仮面でもない。
(祐一さん……いつもの祐一さんになった……?)
コク――と私は頷いた。苦しいのは当たり前であるが……それを何故今聞くのだろう?
「次にギブアップって言ったら、解放してあげるよ」
祐一さんの言葉を聞いて私は顔を少し動かして背後を見る。スリーパーは少し緩められて
いた。理緒には気づかれない程度に。
しばらく祐一さんを見つめていたが、私は目を閉じて前を向き、かぶりを振った。
降伏勧告を拒否したのだ。
「どうして……? これ以上苛められるともっと辛いよ」
祐一さんが優しく囁く。でも、私はまたかぶりを振った。
「辛いのは……とっくに辛いです。でも……」
私は祐一さんを見ないで言う。今ここで情けを受けたくは無い。
「私は負けたくないんです……この闘いに――だから祐一さんも……手を抜かないで下さい」
それだけ言うと、スリーパーが緩んでも、私は何も返事をしなかった。
「…………」
私の気持ちを聞いた祐一さんは再びスリーパーを絞め直した。さっきの息の詰まる苦しさが
また私を襲う。ボディシザースでお腹も苦しい。電気アンマで股間も責められている。
力が入らない下半身からは理緒が責め立てる切ない快感が絶え間なく押し寄せてくる。
「はぁ……はぁ……。うう…………ああああっ……!」
私の絶望的な闘いはいつ果てるとも思えなかった。
* * *
「はぁあ……うう……んッ!!」
スリーパーに苦しめられながら電気アンマされている美緒の悶える姿を見ると背筋が
ゾクゾクしてくる。ギブアップじゃ終わらないルールだから仕方が無いのかもしれない
けど、美緒は許しを請おうとしない。祐一にはその理由がわからないようだけど、私には
わかる。今も二人して内緒で話し合っているつもりだろうけど、私にもちゃんとわかって
るよ。まったく――祐一、あんた私を馬鹿だと思ってる?
「ん……! あああ………あ……んッ!」
美緒の下半身がブルブルと震えだす。また逝ってしまいそうになってるに違いない。
私はそこでピタリと電気アンマを止め、下半身を解放してやった。
「えっ……!?」
祐一が不審そうに私を見る。美緒の方は荒い息をついてぐったりしているだけだ。
私が途中で電気アンマを止めたのを不審に思う事も出来ないぐらい消耗しているらしい。
「離してあげて、祐一――美緒、ここからは私とあなたで勝負しましょ?」
私は欲望と――何かが混ざった目で美緒を見た。嫉妬ではない、と思う。二人で内緒話
してるのを見て仲間外れにされたように感じたのかもしれない。
どの道、祐一はもう役に立たそうだしね――私は決着を女同士でつける事に決めた。