【もしMSが女の子ロボだったら】  
 
「大尉用にも新型が用意されておりますが」  
デッキへ向かう俺にまだ若さの残る兵士が声をかける。見たところ一年戦争時には  
まだ小学生ぐらいだったのだろうな…俺も歳をとった…  
「新型か……」  
「性能は確かです。コストパフォーマンスも」  
「いや、俺はいい。こいつのほうがなれている」  
デッキにて整備を受ける巨大な少女のような外見を持つ人型機動兵器モビルスーツ。  
かつては連邦を震撼させたこともある名機ザク。一年戦争、星の屑、第一次ネオ・ジオン紛争…  
多くの戦場を俺と共に潜り抜けてきた愛機。  
「失礼ですが大尉のザクでは型遅れもいいところです。正直戦力とは」  
みんなそういう。まったく…パイロットの持つ機体への愛着を判っていない。  
「問題ない。各部位の改修は度々おこなっている。なれぬ新型よりいい働きをしてみせるよ」  
まだなにかいいたそうな兵を後に、俺は床をけってコクピットまで移動する。  
「整備は?」  
「問題ありません。パーツの型あわせに少々苦労しましたが」  
ふふ、正直な整備兵だな。  
「ありがとう。君たちの努力には答えるよ」  
整備兵に敬礼してコクピットに身を沈める。  
 
「やれやれ…どうだ、調子は」  
パネルコンソールに映し出される顔に話しかける。機体頭部と同じ顔。  
コクピット内なら頭部と直接会話をするよりこちらのほうが都合がいい。  
周囲の人間にも会話内容が漏れないしな。  
「良好だよ、整備のみんなが頑張ってくれたからね」  
そう言った後に少し顔を曇らせる。やれやれ、こいつもか…  
「あのさ、」  
「気にしているんだろ?くだらないな」  
ほぼ同時に口を開く  
「でも…」  
「デモ、もストもない。俺はお前以外に乗るつもりはない」  
「でも、私装甲柔いし、ビーム兵器使えないよ?」  
「当たらなければいいだけど。それと実弾兵器をバカにするな」  
「機動性も運動性も…」  
「機動力はサブフライトシステムで補える。動きは俺の腕で補える」  
「全天周コクピットでもアームレイカーも無いし…」  
「人の目は前にしかついていない。そう意味で全天は無意味。アームレイカーは、あれ衝撃で手が離れそうだぞ」  
「でもでも、脱出装置だって…」  
「あ〜もう、うるさいな。出撃前は滅入る様な話はするなって前から言っているだろ」  
まったく…最近では毎回これだ。  
「うぅ…だってだって私の性能不足でマスターが危険な目に…」  
「お前は俺の腕がそんなに信用できないのか?今まで生き残ってこれたのは伊達か?俺達だから生き残って来れたんだろ」  
「でも万が一ということも」  
「万が一の時は一緒に花火になればいいだけだ。俺はお前を気に入っている。いや、この際はっきり言っておこうか、  
俺はお前が好きだ。だから全てを預けられる。人と機械、サイズの差そんなものなんて関係ない。それとも俺とじゃ嫌か?」  
一気にまくし立てる。作戦終了時にでももっとロマンチックに言いたかったのだがなぁ  
「…嬉しい…マスター…嬉しいよ…」  
「ならもう言うことはないだろ。連邦を叩きに出るぞ?いいか?」  
「はい、マスター。アースのいどの皆さんに正義の鉄槌を!  
 整備の皆さんどいてくださーい。MS06ザクU出まーす」  
 
 

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