のどかな町、静かで豊かな自然、聞こえるのは小鳥の囀り。  
「ん〜・・・やっぱこの町っていいなあ」  
店のドアに掛けられている札を「CLOSE」から「OPEN」にしてから、俺は一度大きく伸びをした。  
それなりに発展している町から外へ目を向けると、緑豊かな山々が見える。  
俺は、そんな都会でもなければ、田舎ほど寂れてもいない平和なこの町で、自分の店を持っている。  
料理人で、この店のオーナーでもあった親父から受け継いだ洋食亭・・・名前は「LIGHTS」。  
店の規模は決して大きいとは言えず・・・ていうか、俺以外働いてる人いないし。  
まあ、それは親父がこの店を建てた時からずっと変わっていない。  
親父は「自分とお客さんが楽しけりゃそれでいい」って、よく言ってたっけ。  
さっきも言った通り、俺しか働いてる人がいないので、俺が料理人とウェイターを兼ねている。  
どこかのイタリア料理人みたいだけど、俺の料理は食っても即健康になったりはしない。  
そして今日も、いつものように開店だ。  
店内に戻ると、腕を捲って気合を入れる。  
「そうだ、こないだ仕込んどいたビーフシチューの様子を見よう」  
シチューなんかは、寝かせれば寝かせるほど旨みが増す。  
おまけに、使われている肉は知り合いの業者から格安で仕入れた牛のほほ肉と、かなり豪華。  
本当なら高くて手が出せないんだけど、特別にってことでなんとか手に入れたのだ。  
もちろん、お客さんに出す前に俺が堪能したくて仕込んであるんだけど。  
で、そのビーフシチューの様子を見ようと厨房に入ったら・・・。  
「もぐもぐ・・・」  
・・・え?  
あの・・・見知らぬ女の人が鍋の中のシチュー食ってるんですけど・・・。  
「もぐもぐ・・・おいし〜〜」  
頬が蕩け落ちそうな顔で嬉しそうに呟く女の人。いや〜、それは料理人冥利に・・・って  
「違う!違あああああああああああう!!」  
食われてる!食われてるんだよ!?  
なんで俺は常識的にそう考える前に料理人としての喜びを感じてるんだよバカヤロウ!  
「ん?」  
俺が叫んだ事で相手はようやくこちらに気づいたらしく、きょとんとした顔でこちらを見ている。  
「お前何者だ!」  
 
「お前ですって?相手をいきなりお前呼ばわりするなんて、失礼じゃない?」  
口の周りに付いていたシチューを舌で舐め取りながら眉間に皺を寄せる女性。  
「人の作った料理を勝手に食べている人に言われたくはないね」  
多分、額に青筋浮かんでたんじゃないだろうか。  
そんぐらい、高価な、特別に手に入れた素材をふんだんに使ったシチューを食われた怒りはでかかった。  
しかも、相手はかなり強気なタイプ。なんで全然負い目がなさそうに見えるのだろうか。  
「あ〜ら、言ってくれるじゃない。むしろ、アタシに食べてもらえた事を喜ぶべきなんじゃなくて?」  
・・・もしこの時俺の右手が寄生じゅ・・・じゃなくて刀だったら、間違いなく首を両断していただろう。  
「反省は?」  
「してるわけないじゃない」  
ピクッ。  
俺は相手がそう言ったのを確認すると、店の入り口の「OPEN」の看板を「CLOSE」に戻した。  
ついでに、裏口の鍵も閉める。店の入り口の鍵も閉める。  
「・・・?何してるの?」  
その問いには答えず、淡々と戸締まりの確認をしてから、店内を軽く整理する。  
火の元を確認し(この時鍋の中身を見てみたら、空だった)、空調、窓を点検。  
そして全てが完璧であり、店内が完全な密室空間になった事を確信すると、ゆらりと女の前に立つ。  
この時、何かオーラのような物が俺の身体から出たりもしていたのかもしれない。  
怪訝そうに俺を見つめている女。俺は、その女に無表情なまま向き合った。  
「あなた・・・『覚悟してきてる人』・・・・・・・・ですよね?」  
「・・・へ?」  
「他人の作った料理を勝手に『食べる』って事は・・・逆に自分が『食べられる』かもしれない、とい 
う危険を常に『覚悟して来ている人』ってわけですよね・・・」  
「ゴゴゴゴゴゴゴ」と効果音が出ていたかもしれない。  
「え・・・?食べられるって、何が?」  
よく分かっていないようだ。  
「幸いな事に、この店は防音設備が完璧でね・・・周りに人もいないし、元々客足が多いわけでもない」  
「え?え?」  
いまだ分からない様子の女を、俺はじっと見つめてみた。  
頭のてっぺんからつま先まで眺めてみたりもする。  
 
というわけで、ここで女の容姿について触れておこう。  
髪型はシャギー。髪の色は・・・きつね色?  
ついでに、着ている服もきつね色って感じだ。  
下はGパン。アクセサリー等は特になし・・・と。  
スタイルに関して言うと、けっこういい。  
胸はどっちかといえば大きめで、目算でCくらいだろうか。  
顔は、整ってこそいるものの、吊り目っぽくて、その強気な性格を表しているかのようである。  
 
さて、設定の羅列はこのくらいにして。  
俺の視線に対し、女は怪訝な顔をしたままだ。  
「・・・さっきから何なの?」  
「分からないかなあ〜」  
余裕ある俺は頭をポリポリ掻いたりもする。  
「食べるとかどうとか・・・よく分からないんだけど」  
そこまで言って分からないなら仕方ないか・・・。  
「然るべき報いを食らわせてやる、ってことさ」  
さりげなく女に近づく。  
女は、まだ分からないといった表情で、俺が近づいたのには気づいていない。  
「? アタシ何か悪い事でもした?」  
この期に及んでまだ言うか。  
まあその怒りは抑えて、俺はさらにさりげなく近づく。  
・・・そして。  
「あれ?なんで近づいて・・・きゃ!?」  
女が俺が近づいていた事に気づくと同時に、俺は女を押し倒した。  
「い、いきなり何をするのよ!」  
「だから言ってるだろ?・・・食うぜ」  
騒ごうとした女の身動きを取れなくさせるよう、覆い被さる。  
さすがに大の男に倒されると、動揺の色が濃くなった。  
「ア・・・アタシ何かした?」  
「いつまでそんな事言ってんだよ、俺の料理勝手に食ったじゃないか」  
 
「え?あれって、あらかじめ置いておいてくれたんじゃ・・・」  
へ?  
何を言ってますかこの人は。  
「だって、あの時約束してくれたじゃない」  
あの時って・・・?  
今度は俺の方が話が見えてこなくなり、俺も動揺してしまう。  
「だから、アタシもここに来たのに・・・」  
訳が分からない事を言い続ける女。  
俺はいつまでも話してては始まらないと思い、当初の目的通り、女の唇を突然奪った。  
「んっ!?」  
当然女は驚き、いきなりの事に目を見開いて困惑している。  
その無法備な女の口膣に、続いて舌を侵入させた。  
「んんっ、ん〜んんっ!!」  
満足に声も出せずに首を振ろうとするが、俺が舌を絡ませた事によりそれは遮られた。  
まさに貪るように女の舌に、俺の舌を絡める。  
「んぐっ、ちゅっ・・・んぐっ、んぐぅ!・・・・・・・ぷはっ」  
俺がようやく口を離すと、女は苦しそうに呼吸をした。  
だらしなく開かれたままの唇に、唾液の糸がわずかに引く。  
「い、いきなり何をっ!」  
「・・・悪いことしたらこれが当たり前」  
もちろん冗談。ていうか悪質な嘘。  
が、女はその言葉にはっとしたような、驚いたような顔で固まっている。  
「そ・・・そうなの?でも、あの時とまるで様子が違うね・・・」  
・・・さっきからなんなんだ?「あの時」って?  
解せない表情でいた俺に、女は何か納得したような表情になった。  
「あ、もしかして・・・憶えてない?」  
「憶えてないというか・・・」  
「ほら、名前も教えてくれたじゃない。・・・ノボル、だっけ?」  
え?昇・・・?それって・・・  
「親父の・・・名前?」  
 
昇・・・まぎれもなく俺の親父の名前だ。  
「親父?あなたのお父さんって事?」  
なんで、俺の料理をつまみ食いをした見た事もないこの女が、俺の親父の名前を知っているんだ?  
たしかに親父は一年前に失踪するまで、この店で今の俺と同じように、料理人として経営していた。  
俺と違うところがあるとすれば、もう一人働いていた人間がいたことだろうか。  
それが、俺の母さんだ。  
親父と母さんが知り合い、そして一緒になったいきさつを詳しく聞いた事はなかったけど、なんでも母 
さんが偶然にお客さんとしてこの店に来て、そこから知り合ったらしい。  
・・・まあ、それはどうでもいいんだ。  
とりあえず今この状況。この女の言う事の真相を、確かめねばならない。  
「それって・・・どういうことだよ?」  
覆い被さった体勢のままで聞く。・・・流石にどいたほうがいいか。  
「うん・・・」  
俺がどいても、女は特に逃げる様子もない。  
と、女が急に何かを思い出したような表情になった。  
「あの、えっと……一つ、いい?」  
「?」  
良く分からないまま頷く。  
「あのさ……アタシって、その……」  
言葉の途中でどもってしまう。何が言いたいのだろうか。  
「人間じゃ、ないのよね……」  
「……え?」  
何を言い出すかと思えば、人間じゃないという言葉。  
嘘かとも思ってしまったが、女の表情は真剣その物だ。  
言われてから、女の体を上から下へと改めて眺めてみる。  
……スタイルもよく、顔立ちも整っているし、服装も普通、ちゃんと狐の耳と尻尾も生えている。うん、 
普通じゃ  
「うおっ!?」  
いかん、思わず流してしまうところだった。  
今俺が言った通り、女の頭と背後には、さっきはなかった狐の耳と尻尾が生えている。  
 
ぴょこぴょこ動いたりもするそれを、じーっと見つめてみたりもする。……うーん、本物っぽい。  
女は、物珍しそうに耳を見る俺を、不安そうな表情で見ている。  
いやはや、まったくもって……  
「本当にいたんだなあ。びっくりだ」  
「…怖がったり、しないの?」  
「何で?」  
別に怖がるもんでもないだろう。食われるわけじゃあないんだし。  
だが女は、それが意外だとでも言わんばかりの表情でただただ俺を見つめている。  
「だって、人間じゃないんだよ?」  
「だから?」  
女がまた驚いたような表情になった。  
「いやー、俺子供の頃から、ずっと親父と母さんに言われ続けたんだよ。『神様や妖怪はいる』って。  
たしかに実際に見るのは初めてだけど、あんまり怖いとかは、ないかなあ」  
俺はそう続ける。  
先程も言った通りだが、俺は子供の頃からずーっと両親に、そう言い聞かされてきた。  
母さん曰く、「間違った考えをもってほしくないから」だそうだ。  
実際に幽霊や妖の類を見た事はなかったので、今回が初めてということになる。  
しかし、自分でもビックリするくらい落ち着いている。親の教育が効果を成したってわけか。  
女は平然とした俺の様子をみて、ふーん、とでもいいながら何度も頷いていた。  
「…何?」  
かなり気になる反応である。  
「ん?…あなた、お父さんに似てらっしゃるなあって」  
「何で」  
「その顔立ちも、アタシが会った時と顔がうりふたつだし、その反応も一緒」  
親父の若い頃と俺がそっくりなのは、俺が昔のアルバムを引っ張り出した時に実感している。  
自分でも驚くほど似ているのだ。まさに生き写しというか、なんというか。  
反応も一緒という事は、この女は親父にも自分が狐の化身であることを告げたのだろうか。  
というより、この女はどういう状況で親父と知り合ったんだ?話はそれだったはずだ。  
「んで、いい加減、お前と親父と何があったのか教えてくれよ」  
俺が言うと、女は眉間に皺を寄せた。  
 
「あのねえ、アタシにはかなめって名前があるの。ちゃんとそう呼んでよね」  
名前を教えられてなかったじゃん、と反論しようと思ったが、やめておいた。  
「いいから、教えてくれよ」  
女……かなめはコクリと頷き、思い出すように口を開いて、語り始めた。  
 
 
たしか、まだ雪が降ってた頃かな。アタシは、山を下りたの。  
(山を?)  
うん。アタシは、この街の、ほら、あの山の奥に住んでるのよ。  
(あそこって……お稲荷さんの神社があるとこだよな?古びた)  
そう、そこがアタシの家。  
……それで、アタシはその時初めて、この街へ来たの。当然、人間の姿でね。  
初めて見る街は変わってて、アタシにとってはなにもかもが新鮮だった。  
それで、周りをキョロキョロ見ながら街を歩いてたアタシは、ある物に引き寄せられてたの。  
(ある物?)  
その…おいしそうな、匂い。  
(…動物ですか?)  
狐よ。  
(そうでしたね。はい、続きをどうぞ。)  
なんか失礼ね…。それで、アタシはいつのまにか、このお店の前にいたのよ。  
そこで、あの人と出会った。  
(親父?)  
そういう事になるわね。  
…その時アタシがとっていた姿は、人間でいう12、3歳くらいの女の子だった。  
きっと、すごく物欲しそうな眼でお店を見つめていたんでしょうね。  
あの人の方から、「お嬢さん、お腹が空いたのかい?」って声をかけてきたから。  
(親父はおせっかいな奴だったからなあ)  
アタシは嬉しかったかな…人間の姿とはいえ、少しは妖気を出しちゃってるみたいなのよ。  
あなたも、アタシを見た時に独特の雰囲気なんか、感じなかった?  
(まあ、多少はね。でも、特別変ってわけでも…状況がアレだったし)  
 
え、えっと、それで、あの人から声をかけてくれたわけなのよ。  
(話をすりかえるな)  
いいじゃない。細かい事を気にしてたら妖なんてやっていられないわよ?  
(俺は人間なの)  
……それで、アタシは店内に入れさせてもらえたわけ。  
でも、アタシはお金を持ってなかった。  
(なんで?)  
だって、そんなのが必要だなんて知らなかったんだもん。  
(妖なら当たり前か)  
…そうなのよねえ。  
アタシが、自分から人間じゃないって言う前から、あの人気づいていたみたいなのよね。  
(どういうことだ?)  
お金がない、ってアタシが言ったら、「お嬢さんなら仕方ない、当たり前の事だ」って。  
今考えると、どうも引っかかるのよねえ…。  
(親父、昔から霊感強かったらしいし、それだからじゃないのか?)  
うーん、まあ、いいけど。  
それで、あの人はお金を持ってないアタシにも、料理を出してくれたの。  
あの時食べた「びーふんしちゆー」、おいしかったなあ…。  
(ビーフンじゃなくてビーフな。ビーフンのシチューなんざ食いたくないし)  
「びーるしちゅ」?  
(もういい)  
な、何よ!もう…。  
(それで、さっき言ってた「約束」って何の事だ?)  
あ、えっと、それはね…。  
アタシがお店を出る時に、あの人が言ってくれたの。「またいらっしゃい」って。  
その時は、また「びーるしちゅ」を御馳走してあげるよって。  
(そこで名前を教えてもらったと)  
そ。そういうこと。  
(なるほどねえ)  
 
「大体こんなところね」  
一通り語ってから、かなめが言った。  
これで、親父とかなめの間に何があったのかは大体理解できた。  
ただ気になるのは、いったいそれがいつなのかという事である。  
俺に親父が似ている時という事は…。  
「二十年は前の話じゃないか?」  
そのくらいのはずだ。  
「え?まだ一年も経ってないんじゃ…」  
…どうやら、狐の考える年数と、人間の年数は違うらしい。  
 
いまさらながら、つまみ食いの件を思い出した。  
どう責任をとらせようか、とも考えたが、そんな理由があるのでは仕方ない、とも言える。  
そうやって俺が悩んでいた時…。  
「あのさ…」  
かなめがおずおずとした様子で口を開いた。  
「何?」  
「えっと、つまみ食いの事なんだけど…」  
ちょうどいい時に言い出すのね。  
まさか、「許して」とでも言い出すのかと思ったら。  
「…やっぱり、責任とらないと、だよね?」  
本人がとりたいというならとってもらえれば嬉しいが。  
どうすればいいのだろうか。お金を請求するってのは多分無理、食ったものを出せというのは  
単なるアホの言う事だ。  
「それじゃ、やっぱり、するんだよね…」  
俯いて、指を弄りながら言った。  
「するって、何を?」  
「ほら、人間の間では、悪い事をした時には、その、当たり前なんでしょ?」  
え?ま、まさか…。  
俺が否定の声を出そうとした時には、かなめは意を決したような表情で俺に近づいていて。  
そして、俺の口はかなめの唇で塞がれていた。  
 
一度目とは遥かに違う感触が、俺の唇を襲った。  
驚いて目を見開くと、そのすぐ前に、瞳を閉じたかなめの姿が映る。  
ついには俺の首に手を回して、さらに身体を引き寄せてくる。  
そして、唇が離れた。  
「んっ…」  
「か、かなめ…?」  
俺は何を言えばいいのか分からず、動揺しながらかなめの名を呼んだ。  
すると、かなめは嬉しそうに、そして、少しだけ恥ずかしそうに目を薄めて微笑む。  
「えへへ…初めて、名前呼んでくれたね」  
「え?あ…」  
そういえばそうだ。  
…いや、そんなことよりこの状況。  
弁明すべきか?そんな事は決してないと。だが、この機会はかなりおいしい。  
というのも、かなめはかなり綺麗なのである。そこら中探してもいないくらい。やっぱり、妖だから?  
いつのまにか、ゴクリ、と生唾を飲み込んでいた。さらに、男としての欲望が首をもたげる。  
「つ…続き、しないと、ね?」  
結局俺の出した答えは…YESだった。  
かなめの言葉に頷き、自分の中の焦りや迷いを一気に排除する。  
…とはいえ。  
「それで、何をすればいいの…?」  
知るはずがない。ただでさえ人間の世界に疎いのである。貨幣経済すら理解していないのだから、かな 
めがそういう行為の詳しいやり方なんて、知る訳がない。  
ということは、俺が指南するのか?ていうか、指示するのか?  
…これって、めちゃくちゃおいしいんじゃないか?  
「ね、ねえ?」  
頭の中でとんでもないところまで話が進んでいた時に、かなめの声で現実に引き戻された。  
「どうすれば…」  
かなめの表情は不安そのものだ。  
さて、どうするか…。  
やはり物事には順序がある。やはり初めは…。  
 
「初めは俺に任せて」  
それだけ言って、俺はかなめを抱きかかえた。  
「きゃっ、何を…」  
適当なテーブルの上にかなめの身体を乗せる。  
そして、勢いよく、その上着を脱がせた。というより、胸が見えるくらいまで捲り上げた。  
「あっ…」  
「…あれ?」  
下着がない。ノーブラだった…。  
人間と変わらぬ乳房と、その中央に、同じく変わらぬ乳首が在る。  
形は良。俺の目算は常に正確だ。それはもうスカウターのごとく。  
乳首の色も良し。総合すると、「チッ、スカウターが爆発しやがった!」だ。  
これはまたずいぶんと魅力的な身体に変化してくれたものである。そして俺は幸運。  
「あの、いつまでも見てないで…恥ずかしい…」  
「はっ!そ、そうだな。それじゃ…」  
意識が軽く飛んでいた気がしたが気にしない。  
平静を装いつつ、その目算Cカップの胸にかぶりついた。…なんだか嫌な表現だ。  
「ひゃっ!?」  
驚いたような、むしろ甲高い声で反応するかなめ。  
かまわず、俺は乳首の辺りを口に含み、舌先でまだ柔らかい乳首を刺激する。  
「あんっ、舐めちゃ駄目ぇ…んっ」  
かなめが、両手をテーブルにつきながら、早くも息絶え絶えに言う。  
両手さえどかせばそのままテーブルに倒れこみそうな身体に片方の手を回して支えてやる。  
もう片方の手は、俺が口で刺激していない方の乳房を揉む。  
「んんっ!はぁっ、はっぁん!」  
その刺激に反射的に身体を下げようとするも、俺の腕にはばまれてそれは叶わない。  
そのため、身体と腕が微妙に震えながら、時折大きめにピクンと跳ねて快楽を感じている。  
一度、また一度と舌でつついたりして乳首を刺激していると、それが徐々に硬さを持ってくるのが  
その舌先からたしかに感じられた。  
片方の胸を揉んでいた手の指で乳首に触れてみても、それは硬くなっている。  
段々吐息も甘く切ないものに変わっていっており、それによって俺の興奮はさらに高まっていく。  
 
「あぁっ!んっ、はぁ・・・」  
いつのまにかかなめは、両手を俺の頭に置き、身体は引きながらも手は俺の頭を押し付けている。  
さっきより強く抱きしめてあげながら、口を離して舌先のみで乳首を転がす。  
そうやりながらかなめの顔色を伺おうと視線を上げてみたりする。  
そこには、紅潮した頬で未曾有の快楽に耐える、かなめの扇情的な顔があった。  
…やばい。エロイ。エロカワイイ。  
恥じらいを含んだ表情で眼を閉じていて、なんというか、いじめがいがあるというか。  
舌先を尖らせて、舐めるというよりはつつくというのが近い感覚で刺激を与える。  
「あっ、ん、ふぁあ!」  
前歯でこねくりまわしてみる。  
「ああんっ!やっ、硬っ、い…」  
さらに甘噛みしてみる。  
「ひゃん、あっ!駄目、噛んじゃ駄目…ひんっ!」  
敏感かつ多彩に変化する、かなめの反応が面白い。  
さっきまでの強気な態度はどこへ行ったのか、今はその吊り気味な瞳をとろんとさせて声を上げている。  
お仕置きなのか、単純に行為を楽しんでいるだけなのか。  
その境界線がやがて不明瞭になっていき、そして、俺の気分も高揚していく。  
かなめもようやくこの状況を楽しみ始めたのか、反射的な身体の拒否反応が薄くなってくる。  
「駄目?それなら、やめたほうがいいのか?」  
自分でも意地が悪いと思える質問だ。  
その質問にかなめは、羞恥に頬を朱に染めながら、ふるふると首を横に振る。  
「や、だ…もっと気持ち良く、なりたいよ…」  
そんな言葉まで口を突ついて出てきた。  
それならば、その期待に答えぬわけにはいかない。  
「それじゃあ、このGパンを脱いで」  
おそらく、衣類もかなめが知り得る限りの知識で、変化させたものだろう。  
その衣類の一つであるGパンに、かなめがまだ少しだけ迷いながら手をかけた。  
「さあ」  
「…うん」  
催促する俺の言葉に今度は頷き、ついにかなめがGパンを…脱いだ。  
 
かなめが、その真新しく見える、変化によって作り出されたGパンを脱いだ。  
…さすがにノーパンという事はなかった。なかったのだが…。  
「…なんだかなあ」  
「ぇ…変?」  
どこで得た知識なのか知らないが、そのパンティーが、黒のレースなのである。  
よくある勝負下着とか、大人のおねいさんに似合いそうなアレ。  
そのギャップがいいという声もあるかもしれないが、俺としては微妙だ。  
「んしょ…っ」  
最後にかなめが、テーブルに腰を乗せたまま、足を上げてGパンを脱ぎ捨てた。  
上は捲り上げられた上着のみ、下はパンティーのみ。  
これはこれでエロイ構図である。もっとも、そんなものにこだわる気はないが。  
 
不安そうなかなめの顔を見ながら、その黒い下着の上から、指で秘裂をなぞる。  
「…っ!」  
声を殺して、身体を一度跳ねさせて反応した。  
続けて、軽く指を押し付けるようにしてみる。  
「は…ぁ…!」  
またも声を殺そうとしたようだったが、口元から微妙に声が漏れた。  
その反応に気をよくし、押し付けた指をこねくり回すように動かす。  
「ん、ぅん…あっ!」  
段々と惚けた表情になり、口から漏れる声も大きくなっている。  
もはやかなめの手だけではその身体を支えられそうにないので、さきほどのように  
俺が片腕をまわして、身体を支えてやる。  
 
「ちょっと、お尻あげてくれるか?」  
「え…?」  
意識がはっきりとしていないような声で、かなめがこちらを向いた。  
視線は俺を捉えてはいるようだが、どこか別の場所を見ているようでもある。  
快感から来るのか、その瞳の端には、微妙ではあるが、潤みが見られた。  
俺に言われるまま、かなめが腰を上げた。  
 
腰が上げられると、当然お尻とテーブルの間に空間が生まれる。  
そこに手を入れ、最後の砦とばかりに身につけられていた下着に手をかける。  
「…や、駄目…」  
本心と正反対の、制止の言葉がかなめの口から漏れたが、かまわず手をかけた下着を剥がす。  
抵抗なく下着は脱がされていく。  
上げていた腰をぺたんとテーブルにつき、脱力するかなめ。  
その下着によって隠されていた陰部が、俺の目に飛び込んだ。  
それを見た瞬間俺はある事に気づき、それを裏付ける意味も含めて、秘裂に指で触れた。  
 
…くちゅり。  
 
「んっ、ふぁ…」  
かなめの声と同時に俺の耳に届いた液体の音は、間違いなくその秘所から奏でられた水音。  
それが何を示しているのかは、いわずもがな、かなめも理解できているようだった。  
「…濡れてるな」  
「やっ…!」  
突然耳元で囁くと、途端にかなめが顔を真っ赤にさせた。  
「い、言わないで、そんなこと…!」  
「違うわけじゃないだろ?」  
「そうだけ・・・んぁ!」  
いまだに出る否定の言葉を、愛撫によって遮る。  
もう一度しっかりと響いた水音が、かなめの羞恥をさらに強めた。  
 
「ひぁっ…ん、くぅっ」  
「…なあ、かなめ」  
秘裂をなぞるように上下する指を動かしたまま、耳元でもう一度囁く。  
「んっ、な…ぁ…何?」  
「ここ…自分で触った事あるだろ?」  
「ここ」がどこであるかわかるように、指でとんとん、と秘裂と触った。  
 
「なっ・・・!そんなわけ、ないで…んっ!」  
「ほんとに?」  
答えを求めつつも、指の動きは、ゆるやかに激しさを増していくばかり。  
「当たり前じゃない…ひゃっ」  
「じゃあ、なんで俺が「濡れてるな」って言った時、顔赤くしたんだよ?」  
「……!」  
かなめの顔に、かすかではあるが驚愕の色が見て取れた。  
俺はさらに続ける。  
「それってつまり、ここが濡れるってのはどういうことか理解してるって事じゃないのか?」  
「……」  
…俺ってSっ気あるのかも。  
いや、ただ単純に、恥じらうかなめを弄るのが面白かったということにしよう。  
かなめは、俺の言葉に、黙ってしまった。  
しかしここで終わる俺ではない。  
「寂しくなって、しちゃったのか?」  
「ちっ、違っ!ただ単に、その、気に、なって…」  
「自分で弄ったと」  
言ってから誘導尋問をかけられたことに気づいたらしく、そんな表情を浮かべたが、観念して  
さっきよりも顔を真っ赤にしながら、こくりと頷いた。  
「ねえ、お願い…そんな風にいじめないで…恥ずかしいよ…」  
瞳を潤ませて、俺の方を見つめながらかなめが言った。  
そんな切ない表情ですら、見ているのが楽しい。  
「どこまでしちゃったの?」  
俺の口は止まらない。  
「……ゆ、びを……に、入れ、て…うごか…」  
かすれるような声で、途中と最後がよく聞き取れない。  
それでも、どういうことをしたのかは分かった。  
「恥ずかしい、よぉ…ほんとに恥ずかしいの…」  
もうここらでやめてあげるとするか。  
すっかり林檎のように赤くなった頬に口付けてから、俺は一本の指を、膣内へと沈めていった。  
 
ずぷぷ…という音が聞こえそうなくらいに、指は、その濡れた秘裂へ飲み込まれていった。  
「んふぁ…はぁぁ…」  
指一本が侵入するのにすら、大きく息を吐くようにして敏感に反応するかなめ。  
かなめの言葉が正しいなら、彼女の膣内が、異物を受け入れるのは、これが二度目なのだろう。  
それを示すかのように、沈められた指の感じる締め付けは、中々にきつい。  
…ここで言っておくのもなんだが、俺は一応の女性経験はほどほどにあるのでそのつもりで。  
第二関節までが挿入されたというところで、俺は、微かに、内部の指を動かした。  
「んはっ!?」  
それが起爆剤になったかのように、もしくは爆薬を刺激してしまったかのように。  
慣れない異物の受け入れ、それが済んでからの、安堵に近い感触に包まれていた時に、敏感な  
箇所を愛撫されることにより、その箇所から、電流のように快感が流れる。  
その動きが微弱であれ、完全に力が抜けていた状態の身体には十分な刺激となったようで、  
再び頬を上気させながら、かなめが驚きと、妙な甘ったるさの二つを持った声を上げた。  
 
俺は器用に第一関節を曲げ、膣の上の壁(という表現は適切ではないだろうが)を軽く叩くように  
指を動かしたり、くちゅり、くちゅりという音を出しながら、指を出し入れしたりする。  
「くぁっ!んんっ、はっん……やっ、音、聞こえるよぅ…」  
時折ふにふにと揺れながら、今は快感を直に表現するかのようにぴんとなっている、その狐の  
耳の元へ口を寄せる。…そして、囁く。  
「どんな音が聞こえる?」  
ぶっちゃけた話、さっきの反応に味をしめたからである。  
「やっ、やだ、そんな事聞かな…あっ、んぅ!」  
音を先程よりも激しく、そして大きく。  
なまじ質問の答えを催促する言葉よりも、効果がある。  
「…えきた、いの…ん、ふぁあ…お、とぉ…ひんっ!」  
「どんな液体?」  
「やだ、そんなの…あ、ひゃうっ!」  
否定の言葉を出そうと、困ったような表情で俺の方に振り向くかなめだが、それは叶わない。  
そんな事を言う前に、それを遮るだけの刺激を持つ愛撫をすることで、言葉を止めてしまうからだ。  
ゆえに答えざるを、得ない。  
 
「……な、えきたい…」  
「重要な部分が聞こえないだけど?」  
こうなるともう止まらない。止める気もない。  
暖かい息を吹きかけるかのように、耳元で囁き続ける。  
「…っちな、液、たいぃ…あんっ!」  
激しさを増しつつあった指の動きを、今度は少しずつゆるやかにしていく。  
「あっ、や…なんで…?」  
与えられていた快感が弱まるのを感じて、かなめが聞いてくる。  
「かなめがちゃんと答えてくれないから」  
その時の俺の顔はかなりいやらしい笑みだったかもしれない。  
何か言おうとしたが、観念したようで、一度うつむいて、次に顔を上げた時には真っ赤になっていた。  
「…えっちな、液体…」  
「へぇ。…それじゃ、それはどこから出てるの?」  
「…うぅ…」  
終わるわけがない。かなめもそれは薄々予想していたようだが、改めて言われると恥ずかしいようだ。  
頬の紅潮が強まっていくのがわかる。  
「…アタシの…その…」  
「具体的じゃなくてもいいよ」  
名前が分からないのだろうか。単に恥ずかしいだけなのか。  
重要な部分で口篭もってしまうので、俺はそう告げた。  
「…アタシの…恥ずかしい、ところぉ……ねぇ、お願い、もう我慢できないよ…」  
かなめが、瞳を潤ませながら俺を見つめて、言ってきた。  
しかし、ここでそれに応えるわけにはいかない。仕上げにまだかかっていない。  
「まだ駄目だよ」  
悪戯的な、かなめにとっては小悪魔のような笑みに見えていたことだろう。  
そんな笑みを口元に浮かべてながら、俺はかなめを制する。  
「もう、やだよぅ…」  
か細い声で、文字通り泣くように呟くかなめ。  
「嫌なの?じゃあ、なんでここは濡れてるんだろ?」  
「…!」  
 
「…それもむしろ、増えてるような…」  
ためしに指を動かす。同時に響く、さきほどより大きくなった水音。  
かなめはついに否定の言葉も出せず、ただ顔を赤くして俯いたまま。  
羞恥に耐えるその表情に、段々と艶やかな色が混ざっているのに、本人は気づいているのだろうか。  
思わず見とれそうになるほど、扇情的で、初々しく、そして、可愛らしかった。  
「ほら、見てごらん。かなめの恥ずかしいところからでた、えっちな液体だよ」  
ねっとりとした口調で言いながら、指に付着した愛液を、かなめの目の前に持っていく。  
熱のこもった視線で、それを見つめて、そして、恥じらいながら顔を逸らした。  
「こんなになっちゃってるんだよ、かなめの恥ずかしいところ…」  
「やぁ……そんなの、聞きたくない…」  
弱々しく呟くが、もはやそれは、かなめ自身にも、あまり意味を成していないようだった。  
顔を逸らしながらも、依然視線は、俺の指…己の厭らしい感情の具現化に向けられているからだ。  
 
「ここが濡れちゃうってことは、どういう事か分かる?」  
ぶっちゃけた話、濡れるのは、身体の防衛反応というのが正しいところだろう。  
だが、かなめの場合、すでにそんな言い方では済まされないほど、濡れている。  
「それじゃ……どうしてこんなになってるのかも、分かるよね?」  
もう一度頷く。俺はその反応に満足すると、「自分で言ってごらん」と、促した。  
「…アタシ、は…恥ずかしい事を口にして、それで、いやらしい気分になっちゃうの…」  
「良く出来ました」  
「えっ…?あっ、んはぁぁぁ!!」  
指を再び膣内へと沈ませ、痛みを感じさせないようには気を付けながら、一気に突き動かした。  
今度は二本の指を挿入し、それを、縦横無尽に蠢かせる。  
突然のことに驚いたのか、嬌声は、むしろそういう感情の色が強かった。  
「あんっ、はっ、んぅ!駄目、激し…ふぁああ!」  
だが、すぐに甘ったるい、独特の、熱のこもった声に変わる。  
指の激しい動きに応えるように、愛液の奏でる淫音も、激しくなる。  
自然と、自分自身の興奮も、どんどん高まっていくのが分かった。  
「かなめ、気持ちいい?」  
指の激しさは相変わらず増していかせながら、耳元で囁いた。  
 
「ふぁっ!あっ…ひんっ!う、んっ…気持ち…あっ!…いい…のぉ!」  
途切れ途切れになりながらも、自分の意志を、かなめは恥じらう事なく表現する。  
さっきまでとは大違いの反応に、俺は、かなめの内面を見た気がした。  
 
「やだっ、なんか…ひゃうっ!…きちゃうよぅ…はぁんっ」  
「イッちゃいそう?」  
「イッちゃう…って…あっ!…な、に…?」  
……ああ、そっか。かなめが、イクなんてこと、知ってるわけがないんだ。  
あれ?でもそうすると、初めて自分で弄った時はどうしたんだ?途中でやめたのか?  
「自分でしちゃった時、どうしたの?」  
俺はそれが気になり、愛撫の手は休めないまま、聞いてみることにした。  
「えっと・・・あんっ!…あの、時はぁ…ひあっ!」  
言葉を紡ぐのがかなり難しそうなので、少しだけゆるめてやる。  
「はぁ…はぁ…あっ……あの時は、その…急に、気を失っちゃって…それで…」  
…なるほど、そういうことか。  
「それじゃ、イッたことはないんだ?」  
「だから、その「イク」って、何…?」  
「今に分かるさ」  
それだけ言って、かなめの頬に、軽く口付けた。  
そしてまた、愛撫の手を激しくしようとも思ったが、それはやめた。  
すっかりびしょ濡れになった二本の指を、膣内から抜き出す。  
「え、なんで…?やだ、やめないでよ…」  
困惑と、感じていた快楽が再び失われたことから、かなめが子供のような声を出す。  
「もっと気持ちよくなりたい?」  
そんなかなめをよそに、俺は少しだけ口元に笑みを浮かべつつ聞いた。  
よく分からない、といった表情でいながら、仕方なくかなめは頷く。  
「それじゃ…行くよ」  
言いながら俺は、自分のズボンのジッパーをおろす。  
そこから、もうすっかり興奮しきって硬くなった、俺のモノが飛び出した。  
 
俺は己の股間へ目をやってみた。  
控えめに存在を主張している欲望のシンボルを見て、思わず苦笑いをする。  
(こんなケダモノみたいなキャラじゃないと思ってたんだが……)  
そして次に、かなめの方へ目をむける。  
やはり人間の「そういう」行為は知らずとも、本能的に俺が露にしたものが何かは分かるらしい。  
頬を染めて、ただただ俺のモノを見つめていた。  
初々しいピンク色の頬が、どこかアンバランスさを感じさせる。  
官能よりむしろ、これから自分が行う行為に対しての、不安と、分かり得ない期待が感じられた。  
「そ、それじゃあ……」  
ここまできて、どうやら俺は緊張してしまったらしい。  
声を上ずらせかけて、なんとか平静を保とうとする。  
俺が何を言わんとしているのか察してくれたのか、かなめはゆっくりと頷いた。  
そしてテーブルから下り手をついて尻を向け………ってええ!?  
「こうで、いいのかな?」  
かなめがこちら側を向きながら聞いてくる。  
「ちょ、ちょっと待った!」  
緊張していたのも忘れるくらいに慌ててしまう。  
「え?だ、駄目だった?」  
「いや、駄目とかそういうのじゃなくて……なんで急に後ろからなんだ」  
「あ、あれ?普通、こうなんじゃ……」  
ああ、そうか。俺は心の中で納得した。  
彼女は、一応お稲荷さんである。  
つまりは狐である。まあ、今は見た目でも耳と尻尾が生えてきてるからよりわかりやすいけど。  
狐というのは基本的に四足歩行である。これは小学生だって分かる。  
四足歩行の動物の交尾の仕方は、まあ……後ろから、である。  
つまり、人間の世界の常識(常識なのか疑問だが)を知らないかなめにとっては、前からなんて普通ではないのだろう。  
それならば、この行動も仕方ないだろう。と俺は気を取り直す。  
 
臀部の間から見え隠れしている秘裂は、普通に前から見るのとは違うエロさを持っている。  
その光景に俺は、ごくり、と生唾を飲みこんだ。  
一応の女性経験があるとはいえ、バックは初めて。  
加えて、百戦錬磨というほど経験があるわけではない。  
さすがの俺でも緊張してしまうのである。  
「それじゃ、行くぞ」  
ゆっくりとかなめに近づき、自分のモノをその秘部に宛がう。  
「ひゃんっ……」  
割れ目に先端が当たる感触に、かなめが細い声を出して、身体をぴくりと震わせた。  
もう一度、自分を落ち着かせるために深呼吸。  
すぅ〜〜〜……はぁ〜〜〜……。  
「…ねえ」  
「な、なんだ?」  
人がやっと落ち着いたという時に、いきなりなんだというのだ。  
「その……やさしく、して、ね……」  
 
 
                ぶつん。  
 
 
切れた。俺の中で決定的な何かが切れた。  
そんな言葉を言われてしまって萌えない……もとい何かが切れない男なんぞいない!まず間違いなく!  
かなめのお願いなぞまったく聞かずに、モノを一気に挿入した。  
「!?」  
 
空白。  
 
「……あぐううぅぅっ!!」  
かなめの、苦しそうな声が響いた。  
 
とたんに、俺のモノにもかなりのきつい締め付けが襲って来た。  
濡れてこそいるのだが、あまりにきついので、痛みの方が強い気すらする。  
かろうじて、その熱い熱い愛液が、むず痒いような快感を与えてくれていた。  
中ほどまで入っていたモノを引き戻すために、腰を引く。  
「う、うあぁっ!」  
かなめの口から聞こえるのは、嬌声ではなく悲鳴であった。  
腰を前に出す。当然、モノは再び秘肉にうずまっていく。  
「あ、くぅ……」  
肺の中のすべての空気を吐き出すように、大きく息をするかなめ。  
相当辛いのか、テーブルに突く肘がカタカタ震えて、テーブル自体も震えている。  
俺は身体を前に倒して、かなめの顔の隣に自分の顔を持っていった。  
そうすると、かなめが苦しそうに息をしていることと、その瞳に涙が浮かんでいたのが分かった。  
「かなめ、大丈夫か?」  
かなめがふるふる、と首を横に振った。  
目の端にたまった涙が頬を伝う。  
「大丈夫じゃ、ないよぉ……」  
「痛いのか?」  
またも首を振る。それすらも苦しそうだ。  
「痛いって、はぁ、はぁ……いうより……苦しい、の……」  
「そうか。大丈夫、そのうち慣れてくる」  
「い、やぁ……抜い、て……」  
懇願するかなめの震える肩を、そっと抱きしめてやった。  
「大丈夫、次からは優しくする。な?」  
「で、も……んっ……」  
少しでもリラックスさせるために、俺はかなめに口づけた。  
「んっ、ちゅ……はぁ……んん、んぅ……」  
短い間隔で唇を離しながら、何度も。  
そうして、その重なり合った体勢のままで、俺は行為を続けることにした。  
 
リラックスさせようと努力はしている。  
しているのだが……。  
 
「あぐっ…ぁ……」  
かなめがまた、苦しそうな声を上げた。  
さっきから、ずっとこんな調子である。  
(まいったな……)  
俺は頭を掻いた。  
こういう行為に走る以上、苦痛を感じてもらうよりはむしろ、快感の方が万倍いいのだが。  
かなめが初めてのためか、その願いは叶っていなかった。  
さっきまでの興奮も緊張も、どこかへ行ってしまった。  
(どーすりゃいいかな……)  
そう考えながら、また頭を掻いた時。  
俺の腹の辺りをふわふわと撫でる、かなめの尻尾の感触を感じた。  
まさに狐色といった毛に覆われ、肌に当たる感触は、まったく嫌悪感を催させない。  
何の気なしに、俺はその尻尾に触れてみた。  
 
びくっ  
 
「んひゃっ!」  
……え?  
俺はきょとんとしていた。  
なぜなら、その尻尾に触れた瞬間に、かなめの身体が大きく震え、さらに甘い声も上げたからだ。  
もう一度触れてみる。  
 
びくんっ  
 
「ひゃうっ!」  
やっぱり尻尾に触ると反応している。  
と同時に、膣の締め付けが、ほんの少しだが、ちょうど良いくらいになっているのにも気づいた。  
 
これは……もしかすると、もしかするのではないのだろうか。  
俺はそう思い、さらにもう一度、尻尾を触ってみた。というより、今度は握ってみた。  
極端に強くするのではなく、ふわりふわりとした毛の、感触を楽しむように。  
その途端。  
「やっ、駄目、触っちゃ……あ、ああぁぁっ!」  
背筋に電流でも走ったかのように、かなめが身体を震わせた。  
そして同時に、秘肉が絡み付くように、俺のモノを飲み込んだ。  
握ったまま、その手をゆっくりと上下させてみる。  
「あうっん、やだっ、敏感に……んんっ!」  
ビンゴ。俺の予想は当たっていた。  
どうやら、獣の耳や尻尾は、一種の性感帯らしい。まさにお約束である。  
ん?と、いうことは……。  
「あっ……はぁ、はぁ……しっぽ、触っちゃ駄目だよぅ……」  
まったく効力のない抗議の声を上げるかなめの耳元に、口を近づけた。  
そう、尻尾と同じくきれいな黄金色の、狐の耳へと。  
ふぅ…と、息を吹きかけてみる。  
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」  
とたんに、ぞくぞくぞくっ、と、かなめが身体を震わせた。  
「はっ、ぁ……」  
艶やかな吐息が、その薄く開かれた口元から漏れる。  
やはり、耳も同様に性感帯だ。間違いない。  
「かなめ、ここが性感帯なんだな」  
「せい、かんたいって……な、に……?」  
息も絶え絶えのかなめが聞いてくる。  
「敏感な場所ってことさ。気持ちいいんだろ?」  
からかう口調で言ってやると、かなめが、再び頬を朱に染めた。  
「きっ、気持ちよくなんか、ないも……ひゃんっ!」  
認めようとしないかなめの尻尾を撫でる。  
ただ少し撫でただけでも、かなめにとってはかなりの刺激として伝わっているらしい。  
いまだに乱れた息と、上下する肩の動きはおさまっていない。  
 
「こんなに敏感なのに?」  
喋りかける時も、息を吹きかけるように、耳元で囁く。  
その度にぴくり、ぴくりと震えるかなめが可愛らしくて、また面白い。  
「く、くすぐったい、だけ、だもん……」  
「くすぐったいだけで濡れちゃうのかよ?」  
「あ、ぅ……」  
それきり、かなめは俯いて黙ってしまった。  
俺が言った通り、さっきよりも、秘肉の心地よい締め付けや、愛液の感触は高まっている。  
かなめの太股を伝って、俺の足に届いているくらいだ。  
これなら行ける。  
俺はそう確信すると、もう一度腰を動かし始めた。  
今度は、それと同時に、尻尾や耳を弄りながら。  
「あっ……ふぁあん!」  
予想通り、かなめの声は甘ったるい、艶やかな響きを持っていた。  
どうやら耳は、息を吹きかけられるよりも、舌で舐められた方が感じるらしい。  
さらさらとしている毛に。舌先を這わせる。  
「あん、あっ……んはっ……」  
「気持ちいいのか?」  
囁くように俺が言った。  
顔中を真っ赤にさせながら、こくりとかなめが頷く。  
「もっと気持ちよくなりたい?」  
もう一度頷く。  
「それじゃあ……もうくすぐったいだけなんて、嘘つくなよ?」  
「うん……ごめん、ね……」  
素直に謝ってしまうところが、やばいくらいに可愛い。  
腰の動きが速くなりそうになるのを制しながら、ゆっくり、ゆっくりと、かなめの緊張を解いてやっていった。  
 

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