『ふぇぇん、えぇぇん、えう、ひっく』  
ただ、どこまでも広いそこで、少女が一人泣いていた。  
 
───誰?  
 
『うえ〜ん、ひあ、えぐ‥‥‥ふぇぇ』  
少女の周りには無数にきらめく星たちがあるが、どれ一つとして少女を照らす光はない。薄れない闇が少女を笑う。  
 
───ああ、私だ。ちっちゃい頃の。また泣いてる。  
 
『やあぁ‥‥‥やだよぉ』  
どの星も遠く、少女が手を伸ばすが、その手は虚しく空をつかむ。  
 
───だめだよ。泣いててもだれも助けてなんかくれないから。だれも、来てくれないから。  
 
『やだ、やだよぉ。‥‥‥こわいよぅ‥‥‥』  
少女の瞳からはとめどなく涙が流れる。少女はぬぐおうともせず、泣き続ける。  
 
───だからね、‥‥‥だから‥‥‥‥。  
 
『‥‥‥うぅぅ。‥‥‥ふぇ‥‥‥??』  
そこに、ある変化が起きた。  
 
───‥‥‥え?  
 
少女のすぐ横、空間であるはずのそこに波紋が生じた。  
『‥‥‥??』  
 
───‥‥‥‥‥。  
 
泣くのを忘れ、少女はきょとんとそれを見つめる。波紋は等間隔に広がり、消えてはまた現れていった。  
少女は何を思ったか、そろそろとそれに向かって手を伸ばした。なにかを期待するように。  
そして、  
───『‥‥‥‥‥あ‥‥』  
その波紋から一本の手が伸びてきた。  
少女とそう変わらない大きさで、雪を思わせるほどの白い肌をしている。さらに、少女と同じく、何かを求めるように手が開かれている。  
 
おそるおそる、少女がそれに手を伸ばすと、  
───『ひゃぁっ!‥‥‥』  
たまらず、それは少女の手を掴んできた。  
少女は、柔らかく、冷たいその手を感じた。同時に、その手が弱々しくに震えていることに気がついた。  
───『‥‥‥‥‥』  
少女が、その手を、もう片方の手で優しげに撫でた。さらさら、さらさら、上質の絹のような音を奏でる。  
だんだんと、その手の震えは小さくなり、やがて止まった。  
少女は、今度はその白い手を両手で包んだ。ひざまずき、それを額に持っていった。  
───『‥‥‥あったかい‥‥‥』  
目を閉じ、確かにそう言った。  
そして、少女の姿はゆっくりと虚ろみ、消えていった。  
いつの間にか、泣きやんだ顔はかすかに微笑んでいる。  
 
そして、少女は、  
そして、ふたりは、  
 
そして、  
 
 

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