暗い夜中の路地裏、街の雑踏とは隔絶された場所。  
人一人いない、月明かりだけがぼんやりと照らす、闇の世界……  
   
そこを一人の少女が、ジーンズにシャツ、その上にジャンパーを着て、  
肩の高さより少し長い栗色の髪を、後ろで束ねた姿で歩いていた。  
   
ある程度歩いた所で立ち止まり、周囲を見渡し後ろを振り返る。  
「いい加減に姿を現したらどう?わざわざこんな所まで誘ってあげたんだから!」  
声を荒げて、暗闇に向かって言い放った。  
「助かったよ、正直、あのまま街を彷徨かれたら、接触すらできないからな」  
背後からの声に驚いて、ジャンパーの中に右手を入れて振り向き、眼前の暗闇に目を凝らす。  
その闇から一人の長身の男がゆっくりと進み出た。  
闇に溶け込むような黒髪と、黒いスーツ、その上に黒いコートを着て、同じ色のバックパックを  
片方の肩に背負っている。  
   
少女はじっと男を見つめていた。男もその視線に気づいたのか、自分の体を見て。  
「闇に紛れるにはこの方がいいんだ、別に葬式帰りというわけではない」  
低い声で静かにそう言い、肩をすくめる。  
「そんなことが気になったんじゃなくて、あなた……何者?」  
 
警戒しながら、前方の男を睨み、こちらも静かな口調で言葉を発する。  
「ずっと私のことを尾行てるわね、何か用?」  
「用件を言う前に確認なんだが……」  
少女の殺気立った剣幕に臆することなく、変わらず静かに話を続けた。  
「窃盗団『紅糸』のメンバー、立花瑞希(タチバナ ミズキ)、そうだな?」  
瑞希と呼ばれた少女は、男の話が終わるか終わらないかの瞬間に、  
ジャンパーからセミオートの拳銃を一瞬で取り出し、男に向ける。  
   
銃を見て驚くでもなく、ただ溜息をつき、バックパックに手を入れ、水の入ったペットボトルを一本取り出す。  
「そう殺気立つな、その気ならとっくに殺している」  
そう言いながら、ペットボトルの蓋を開ける。  
怪訝そうに見つめる瑞希に意を介さず、更に言葉を繋げる。  
   
「標的に自己紹介をするなんて初めてだ、本来なら、存在を悟られる前に始末してるんだがな……  
俺の名は斗雨真(トウマ)、『水使いの斗雨真』とも呼ばれている、『特選隊』の者だ」  
 
「特選隊!?」  
その言葉を聞いた途端、瑞希の顔色が変わる。  
「なるほど、あんたが……その『特選隊』がわざわざこんな形で、一体何のつもり!?」  
「いつぞやのこちらからの要求、その答えを聞きに来た」  
   
その言葉を聞いて銃を降ろし、廃墟と化したビルの間から見える月を見上げ、  
「フッ」と笑い、斗雨真に視線を戻した。  
「その答えはとっくに出てるじゃない、答えは……NO!」  
言葉の終わりと共に銃口を再び斗雨真に向け、三発の弾丸を放った。  
   
三発の銃声と、ほぼ同時にペットボトルから水が飛び出し、飛んでくる弾丸を包み、  
その動きを止め、球体になり、空中に静止した。  
   
眼前の光景に唖然としながらも、再び二発の弾丸を放つ。  
が、瞬時に水の塊が弾丸を捕らえる。  
「水の抵抗を増大させれば、弾丸を止めることなど造作のないことだ。  
これで俺が『水使い』、なんぞと呼ばれている理由が分かったと思うが。  
……言っておくが、これは俺が名乗った訳ではない、勝手についた、勘違いするなよ」  
瑞希が銃口を向けたまま、少し後ずさる。  
「無駄だ、俺に銃は通じん、降伏しろ。貴様に勝ち目はない」  
「降伏?笑わせないでよ!」  
 
銃を構えたまま、瑞希は表情を崩さずに眼前の男を睨み続ける。  
「でも、何故殺さないの?あんたの力なら……」  
「俺もできるならそうしている、だが『あの方』の命令なのでな」  
「あの方?」  
   
斗雨真は、溜息混じりに話を続けた。  
「我々のボスだ。  
お前達が要求を断り、その命を狙ったことで、その方は我々に命じた、  
『窃盗団紅糸の消滅』をな、その後にこうも言われた、  
『殺す必要はない』『我々の仲間になりたいと言うならそうしろ』とな」  
「自分の命を狙われたのに?なんで……」  
「強い能力者が必要なのさ、『組織』をより強力にするためにな、  
だからそう我々に命じられたのだ」  
「何それ?……言っとくけど、あんた達の仲間になんかならないから!」  
   
声を荒げる瑞希を前に、斗雨真は内ポケットから煙草を取り出し、口に咥える。  
「勘違いするな、『必要はない』だけで、『殺すな』とは言われていない……  
それに、俺はどちらでも構わん、仲間になろうと、なるまいと、どちらでもな」  
そう言って、斗雨真は全身から殺気を放った。  
 
突然瑞希の体に凄まじい悪寒が走る、手足が震え、呼吸が苦しくなり、全身から汗が吹き出る。  
体が萎縮し、心臓の鼓動が速まり、意識が遠退きそうになる。  
歯を食いしばり、残りの弾丸を放ちながら、近くの廃ビルへ飛び込んだ。  
   
放った弾丸は全て水の塊に包まれ、その動きを止める。  
煙草に火を着けながら、目の前の、十五発の弾丸を内包した水の塊を見て、  
「無駄なことを」と、小さく呟いた。  
   
廃ビル内の一階、廊下にあたる場所にある、ガラスの無い窓から、外の様子を伺う。  
まともにやり合って勝てる相手ではない、どうすべきか、瑞希は思考を巡らせていた。  
   
廊下の真ん中辺りまで来たところで、気配を感じ、息を殺して再び外を伺う。  
少しして、煙草を咥えた斗雨真が、その先に現れる。  
瑞希は再度、壁に隠れ、身を潜める。  
   
斗雨真はビルの壁に隠れている瑞希に向かって、話始める。  
「俺の能力について教えてやろう。わかっていると思うが、  
俺は『水』というより、『液体』を自由に支配できる、だが主に扱うのは『水』だ。  
一番扱い易いからだが、効果範囲はだいたい……『目の届く範囲』だ」  
言葉を切り、相手の出方を待つ。  
 
しばしの沈黙が流れた後、再び斗雨真は口を開いた。  
「液体と言っても汗などの分泌物までは支配しない。  
まあ、やれないこともないが、不純物が多すぎてな、消耗が激しい。  
それと、『目の届く範囲』と言ったが、数kmも先までは届かない、あくまで大体だ。  
半径100m以内なら、見えなくても液体があれば能力を発動できる。  
後、液体を介して、色々知覚することもできる。  
……まあ、大体こんなところだ」  
言い終わったところで、煙草の火を手でもみ消し、携帯灰皿に入れる。  
   
斗雨真の話に耳を傾けながら、壁越し向き合い目を閉じて意識を集中させる。  
壁を隔てて斗雨真の姿を『視る』。  
自分のいる位置がばれていることは、既に悟っていた。  
   
「自分の能力について私に教えるなんて、どういうつもり?」  
「お前が我々の仲間になるなら、知ってて損はない。  
仲間にならないなら、お前はここで死ぬので何の問題もない」  
「そうね、でも、ここで死ぬのは……私じゃなく、あんたの方よ!」  
   
壁の向こうの斗雨真を『視ながら』、窓から銃だけを出して引き金を引いた。  
 
即座に水が弾丸を捕らえる。  
「『視えて』いるのか?」  
そのまま、続けて四発発射するが、水の塊に阻まれ男に当たることはなかった。  
「答えろ、俺が『視えて』いるのか?」  
「……ええ、はっきりとね」  
一呼吸おいて、瑞希は静かに答える。虚を衝いたつもりが、全く効果が無いことに内心、動揺しながら。  
   
直線的な弾丸の動きでは、斗雨真には通用しない。  
マガジンを新しいものに取り替え、深呼吸をし、奥の手を使うことを決意する。  
これが外れれば自分は終わりだ、そう確信しながら……。  
   
「『透視能力』か……情報にないな……」  
斗雨真は二本目のペットボトルを取り出しながら、別に渡された資料に記されていた情報を、  
頭の中で整理していた。  
   
顔や名前、身体データまでが細かに記された資料には、  
当然のことながら、対象の能力も記されている。  
しかし、彼女、立花瑞希の資料には透視能力についての記載はなく、  
記されている能力についても、『銃に関わるもの』と言う、アバウトなものだった。  
   
「相変わらず肝心なところが抜けている、スリーサイズより重要だというのに……まったく」  
 
怒りを通り越し、半ば呆れていた。  
   
とは言え、そういった具体性に欠けるものにしっかり目を通すのも、  
『特選隊』の中ではこの男くらいで、大半の者は、それらの資料に目すら通さない。  
   
瑞希が先程から一切、なんの行動もしなくなったのが気になり、ゆっくりと近づく。  
その場から動いていないのは気配で分かった。  
「諦めたか?」  
と、声を掛けるが、返答はなく、静けさが辺りを包む。  
   
瑞希は只、壁の向こうにいる男に意識を集中していた。  
「まだ遠い、もっと近くに、もう少し……」  
徐々に銃を握る手に力がこもる。  
   
二人の距離が40m程になった時、瑞希が斗雨真の前に姿を見せ、銃を構える。  
「諦めたかと思ったのだがな、無駄だと言って……」  
「お願い、当たって」  
斗雨真の言葉の途中で小さくそう呟き、発砲する。  
が、弾道は斗雨真からわずかに左にそれて飛んでいく。  
それを確認して「止めるまでもない」と、思った瞬間。  
突如、弾丸が屈折して斗雨真の頬をかすめた。  
「なっ!?」  
今まで殆ど無表情だった男の顔が、驚きの表情を浮かべたまま固まる。  
 
驚愕したのは斗雨真だけではなかった。  
瑞希もまた似たような表情を浮かべていた。  
ただ違うのは、こちらは絶望の表情であると言うこと。  
   
「外した……そんな……くそっ!」  
続けざまに発砲する、多角方面に弾丸を放ち、それらが屈折して斗雨真の方角へ飛んでいく。  
ペットボトル、そして、水の塊が、数個に別れて、飛んでくる弾丸を捕らえ、無力化していく。  
そして、瑞希の持つ銃から、カチン、という金属音が響いた……  
   
「弾切れか、しかし驚いた、『弾丸を屈折させる能力』か……、油断していたよ。  
こんな能力もあるのだな」  
感心したように言い、瑞希の方を見た。  
再び身を隠し、その場にしゃがみ込んだ。  
「だが、屈折させられるのは一回だけ、命中精度も悪いな、効果範囲は50m程か。  
十五発中、俺の体に命中する筈のものが三発、かすったのも含めると四発、  
その内致命傷になり得たのは、ゼロ。  
お世辞にも、俺を殺せるとは言えんな」  
「解説どーも!」  
瑞希はぶっきらぼうに言い放つ、内心の動揺、恐怖心を悟られないように。  
声を抑えて、努めて冷静に……  
 
斗雨真は先程と変わらぬ、静かな口調で話した。  
「だが、訓練を積めば屈折させる回数も増やせるだろうし、命中精度も上がるな。  
効果距離もさらに広がるかもな、どうだ?」  
再び咥えた煙草に、火を着け、その場に立ったまま問いかけた。  
   
「どうだ?って言われても……」  
その様子を壁越しに『視ながら』瑞希は、息をついた。  
斗雨真の洞察力に感心しながらも、明らかな格の違い、そして、死の恐怖を感じていた。  
   
「我々の仲間になるつもりは?」  
「……答えは何度も言ってるわ、お断りよ」  
声を荒立てることなく、冷静に答える。体の震えを抑えながら。  
   
斗雨真は深く溜息をついて、二つになった水の塊を前方へ持ってくる。  
「そうか、ではそろそろこちらも攻撃に転じさせて貰おう」  
前へ出た水の塊が幾つにも別れ、無数の小さな水の粒になり、空中に留まる。  
「お前のいる区画を攻撃する、うまく避けろ、これで死なれては俺も困る」  
その言葉を聞いた後、瑞希は慌ててその場から走りだした。  
 
 
水の粒が勢いをつけ、無数の『水の弾丸』となって前方へ飛んで行く。  
   
豪雨が降り注いだような音と、コンクリートが砕け、崩れる轟音が背後から響く中、全力で廊下を駆け抜ける。  
その先にある、階段のある通路を目指して。  
   
転がり込むように、廊下を抜け、階段の前に辿り着き、息を切らせながら後ろを振り返る。  
その光景を見て瑞希に戦慄が走る。  
崩れ落ちた外側の壁と、幾つもの小さな穴の開いた反対側の壁。  
「もしも逃げ遅れていたら……」そう考えると背筋に冷たいものが走り、叫びそうになるのを必死に堪えた。  
自分の元へ近づいてくる足音に、気がつき、とっさに空の弾倉を取り替え、階段を駆け上がる。  
迫る足音から、少しでも遠ざかろうと……  
   
瓦礫を踏み越え、廃ビル内に入り、瑞希の逃げた方向を見つめ、ゆっくりと歩きだした。  
瓦礫の中から小さな水の塊が幾つも這い出て、斗雨真の後ろに集まり、  
大きな水の球体に戻る。  
階段の前に来て、空の弾倉を見つけ、上を見上げる。  
「上?……まだやる気か?」  
そう呟き、そのままの足取りで階段を登る。  
 
階段を一段ずつ登りながら、斗雨真は口元を歪めていた。  
これほど力の差があるにも関わらず、あの少女は未だ自分に抵抗を続けている。  
斗雨真はそれが、どこか楽しくなり、あの娘を自分達の仲間にすることを、少し真剣に考え始めていた。  
そして同時に、いつの頃からか忘れていた感覚を思い出す、『獲物を追いつめ、弄ぶ』  
と言う感覚を……  
斗雨真は只、静かに笑っていた……  
   
瑞希は月明かりが射し込む、三階の窓から階下を見下ろし、途方にくれていた。  
「落ちたら痛いんだろうなぁ……」  
誰にともなくそう呟く、軽いパニック状態に陥ったとは言え、  
よりにもよって、逃げ場のない上階へ逃げるとは……  
自分のバカさ加減に嫌気がさした。  
手に持った拳銃に視線を落とす、残弾数は先程撃ち残した、十発。  
これで形勢を変えることなどできないことは瑞希本人がよく分かっていた。  
廊下の壁にもたれ掛かり、溜息をこぼす。  
絶望的な状況だった、だが、ここで諦めるつもりも、斗雨真の仲間になるつもりも、  
瑞希にはなかった。  
銃をジャンパーにしまい、深く息を吸い込んだ……  
 
煙草を吸いながら、ビルの三階まで辿り着き、ふと、足を止め、そのまま廊下の方へ歩いて行く。  
通路に入り、左右を見る、その視線の先に少女が佇んでいた。  
少女が斗雨真に向けて、口を開く。  
「諦めたわ……銃も、能力も通じないんじゃ、勝ち目はないし」  
「ほう?」  
斗雨真が少しずつ近づく、ゆっくりと、少しずつ……  
   
瑞希は気づかれないように、腰に手を入れ、ナイフに触れ、斗雨真に手を伸ばした。  
その手を見て、斗雨真は眉をしかめるも、そっと手をとった。  
   
その刹那、伸ばした手で斗雨真の腕を掴み、ナイフを心臓めがけ、突きだした。  
が、その手は心臓を貫く寸前で斗雨真に掴まれ、動きを止める。  
「やはりな……銃も能力も通じない、なら懐に入り込み、一気に急所を突く、間違いではない」  
「くっ!」  
ナイフを持った手を引っ張り、よろめく体に膝蹴りを入れ、背中に肘打ちを食らわせる。  
「がはっ!」  
地面に倒れ、呻き声をあげる瑞希を見下ろし、落ちたナイフを遠くに蹴飛ばした。  
「な、んで……わかっ、たの?」  
「経験から来る答えだ、お前よりずっと場数は踏んでからな。  
それと、殺気ぐらい隠せ」  
 
「バカに、するなぁ!」  
瞬時に体を起こし、斗雨真の顔面めがけ、蹴りを放つ。  
「只のアドバイスだ」  
ポケットに手を突っ込んだまま、それを紙一重でかわす。  
   
続けざまに蹴りと拳打を繰り出すも、ことごとくかわされる。  
「いい動きだ、だが……」  
言葉を区切ったその時、斗雨真の腕が瑞希の放った拳を受け流し、腹に一撃を入れる。  
「がふっ!!」  
「まだまだだな……」  
背中から壁にぶつかり、腹を押さえ苦しげに呻く。  
それでも瑞希の目からは闘志は消えず、眼前の男を睨み続ける。  
   
「いい目だ、だが、やめておけ、体術も俺の方がずっと上だ、さっきので大体分かっただろう?」  
「だっ、たら……何?」  
「仲間になれ」  
「嫌よ」  
「強情だな……だが、気に入った」  
その次の瞬間、斗雨真の後方に控えていた水の塊の一つが、猛烈な勢いで瑞希の脇腹に、  
『水の槍』となって襲いかかった。  
防御も間に合わず、直撃を受け、その場から3m程体が飛び、固い床に叩きつけられる。  
本来なら、体を貫く『必殺の一撃』となった攻撃も、  
瑞希に強烈な打撃を与えるだけだった。  
 
叫び声をあげることも、呻くこともできず、呼吸すらままならない状態で、  
床の上にうずくまる。  
   
「骨は折れていない筈だ、加減したからな」  
斗雨真が両手を広げ歩きながら、静かな口調で、床にうずくまり、  
苦しげに呼吸をしている少女に語りかける。  
   
うずくまる瑞希の傍に立ち、見下ろしながら、静かに問いかける。  
「しかし、何故そうも頑なに拒む、プライドか?信念か?  
それとも、仲間に対する義理立てか?」  
「あん、たに……かんけぃ、ない」  
絞り出すような声を足元から聞き、倒れている瑞希の首元に手を伸ばした。  
水に濡れたジャンパーの襟元を掴み、片手で瑞希を持ち上げる。  
斗雨真は、自分の顔の近くまで瑞希の顔を寄せる。  
「只の興味だ、殺されるかもしれんのに、拒み続けるからな……  
何度も言うが、お前に勝ち目はない、仲間に……」  
その言葉の途中に、瑞希が斗雨真の顔に思い切り唾を吐きかけた。  
顔に唾を吐きかけられても、ほとんど表情を崩さず、もう片方の腕で唾液を拭う。  
「顔に唾を吐かれたのは久しぶりだ、この状況でこんな事をするとはな、面白い、  
ますます気に入った」  
 
怒るでもなく、冷静にそう言って笑みを浮かべ、瑞希の耳元に囁く。  
「次はさっきより弱めでいく、安心しろ」  
次の瞬間、『水の槍』が再び瑞希の腹部に直撃し、その勢いで、  
廊下の横にある部屋の壁まで吹き飛ばされた。  
   
壁にぶつかり衝撃と嘔吐感により、激しくむせかえり、床の一点を見つめた。  
   
「楽しんでる、あの男はこの状況を楽しんでいる」瑞希はぼやけた思考で、そう直感した。  
どう足掻いても勝ち目はほとんど無い、無力感と絶望に打ちひしがれ泣きそうになる。  
だが、むざむざこんな所で殺されたくはない、拳銃に手を伸ばし、耳をすませた。  
至近距離ならば、水が届く前に銃弾が先に男の体に当たる。  
そう確信して、銃に手を掛けるようとした瞬間。  
「動くな」  
斗雨真の低く冷たい声が響いた。  
   
はっと、顔を上げた瑞希の瞳に、無数の水の粒が映る。  
いつの間に在ったのか、それはすでに瑞希の身の回りを取り囲んでいた。  
「殺しなさいよ」  
体の力を抜いて、そのまま座り込み、斗雨真を見据え、落ち着いた口調で言う。  
そんな瑞希を見て、斗雨真は溜息をつく。  
 
「殺すつもりはないと言った筈だ、是非ともお前には『特選隊』に入って貰いたい」  
「どっちでもいいんじゃなかったの?」  
「気が変わった、俺にここまで追いつめられて、泣き言も命乞いもしなかった奴は、  
そうそういなかったのでね」  
煙草に火を着け、煙を吐き出し、瑞希を見つめる。  
   
水でびしょ濡れになり、体に張り付いたシャツから、うっすらと下着が透けている姿が、  
月明かりに照らされていた。  
「ちょ、ちょっと!どこ見てんのよ!」  
その視線に気がついたのか、胸を隠して怒鳴る。  
斗雨真が口元を歪めたちょうどその時、無数にあった水の粒が一つになり、  
瑞希の腕を後ろ手に拘束する。  
「なっ、何!?」  
手を動かそうとしても、『水の手錠』は外れず、手首を水圧で絞めあげる。  
「動かせんだろ?さて……絶体絶命だな、これでもまだ、俺の申し出を断るか?」  
静かに歩きながら煙草の火を消し、瑞希に目線を合わせる。  
「お断りよ、で、何をするつもり?」  
「ふむ、さて、何をしようか……」  
「私が仲間を呼んでいたらどうする?」  
睨み続ける瑞希を見て、「フッ」と鼻で笑う。  
 
「俺にとっては大した問題ではない、むしろ面白くなる、本当ならな。  
だが、お前は今、恐怖を感じているだろう?そんな余裕があったとは、思えんな」  
瑞希は驚きの表情を浮かべ、視線を外す。  
「まあ、これも経験上からな……」  
「何で、そんな……」  
「水を介して知覚できる、そう言っただろ?」  
瑞希は、自分の体にまとわりついた水を見つめた。  
   
少しの間、沈黙が続いた後、突然、斗雨真の手が瑞希のジャンパーの中に手を入れた。  
「なっ!?ちょっ、何すんのよ!」  
ホルスターから銃を抜き取ると、途端に瑞希の顔が青ざめる。  
マガジンを取り出し、残弾を確認する。  
「十発程度か、使わずに正解だったな」  
そう言って、銃身の弾丸も取り出し、マガジンと銃を、別方向に放り投げた。  
すると今度は、瑞希のシャツを捲り上げた。  
「ちょっ!やめ、離して!」  
身をよじっても、斗雨真の手は離れず、シャツの下からは濡れて少し透けた下着と、  
白い肌が露わになっていた。  
「ふむ、見た感じ、胸は83よりありそうだが?」  
「へ?何で知って……」  
「組織はこういう情報も集めることができる、と言うことだ」  
 
「くだらないわね」  
呆れた感じで瑞希が言い。  
「俺も同意見だ」  
斗雨真も、同じようにそう言って立ち上がり、コートを脱ぎ、傍らに倒れているロッカーの埃を払って、その上に置く。  
   
水の塊の一つが突如瑞希の体を覆った。  
「きゃっ!?何?」  
身をよじり、逃れようとも、体に絡みつく水は一向に離れず、その肌の上を流動し始めた。  
「くっ、ちょっとあんた!どういうつもりよ!」  
瑞希が声を荒げるも、斗雨真は先程と変わらぬ調子で話し始める。  
   
「お前のように気の強い奴は、体を痛めつけるより、こういった屈辱的なことをする方が効果的だ。  
まあ、『折れないのならば折れて貰う』、ということだ」  
「只単に、あんたがやりたいだけなんじゃないの?」  
「否定はせん」  
服を通し、直接体に水が伝い、下半身の方へ流れていく。  
「ひっ、や、ちょっ、やめて!」  
抗議の声を無視し、斗雨真は只、その様子を見続けていた。  
水がジーンズ、ショーツを伝い、下腹部に直に触れ、動き回る。  
それから逃れようと必死にもがくが、結局、徒労にすぎなかった。  
 
突然、水が動きを止める。不意に斗雨真の顔を見上げると、斗雨真は静かに口を開いた。  
   
「これが最後の忠告だ、我々の仲間になれ、悪いようにはしない、俺が約束しよう、  
酷い目に合いたくはないだろ?」  
「そこまでこだわる必要が?」  
「言った筈だ、俺はお前が気に入った、お前が必要なのだ、その能力も、その気質もな」  
「私……が?」  
「そうだ」  
「……で、でも、あんた達何かの仲間には、ならないから!」  
「そうか……」  
   
深く溜息をついた後、水が一気に下腹部に集まり、排泄器官、生殖器官に浸入する。  
「あ、え?や、ぐ、く、ひっ」  
体が前のめりに倒れ、腰を引く。  
「どうだ、苦しいか?」  
「こんな、程度、どう、てこと、ない、わよ」  
呼吸の合間から、途切れがちに斗雨真を睨みながら、そう答える。  
「そうか、では、もう一つ追加しよう」  
もう一つの水の塊がうねり、瑞希に向かい、そのまま先程と同じ場所に入り込む。  
「ひっ!あぐっ!う、く、ひぅっ」  
少女の口から、再び嗚咽が漏れる。  
   
「とても残念だ」  
呟くその言葉とは裏腹に、男は残忍な笑みを浮かべていた……  
 
瑞希の体内に入り込んだ水が蠢き、腹部にいびつな凹凸を創り出す。  
「ぐく、ぅあっく、ひう、くぅ」  
「苦しいだろう?我々の仲間になると言えば、解放してやる」  
「だ、誰、が、この、程度、なん、とも、ひぃっ!」  
言葉の途中で、腹部が更に大きく波打ち、瑞希は小さな悲鳴を揚げる。  
   
水が膣内と腸内、膀胱にまで入り込み、伸縮と膨張を繰り返して体内で蠢く。  
こみ上げる強烈な異物感と圧迫感、そして、無力感に支配され、  
その目から涙が溢れ出す。  
「やれやれ、しかし、その強情さは称賛に値するよ」  
斗雨真は、嘲笑を交えながら拍手を贈る。  
   
「これだけではあまり堪えんようだな、では、もう一本足そう」  
傍らに置いてあったバックパックから、三本目を取り出し蓋を開ける。  
途端に瑞希は体をこわばらせた。  
   
斗雨真は瑞希の後ろに廻り、その場にしゃがむ。  
「ひうっ!!」  
突然、瑞希の腰が突き上がる。下腹部に入り込んだ水が、腰ごと上へと動いたのだ。  
必然的に、斗雨真に向けて尻を突き出すような格好になる。  
濡れて肌に張り付いたジーンズと、そこにくっきりと浮かび上がったショーツが、  
月明かりに照らされ、斗雨真の目に入る。  
 
斗雨真は、手を伸ばしてジーンズをショーツごと脱がし始めた。  
「なっ、何、を、くう……」  
「このままでは、大変だと思ってな」  
「やめ、いやっ」  
腰をひねり、足をばたつかせ、激しく抵抗するが、腹に入った水が瑞希の動きを制限する。  
強引にジーンズを脱がされ、白い下腹部が露わになる。  
「ん?……毛が生えてない」  
「み、見る、なぁ……う、く」  
そう、瑞希のそこには、毛が一本も生えていなかったのだ。  
決して見られたくない場所を見られ、耳まで顔を紅くして歯を食いしばり、  
苦しみと羞恥心に耐え続ける。  
「なるほど、パイパンか……」  
「パイパン言うなぁ……」  
   
毛の無い秘部に好奇の視線を送りながら、腰の上から水を滴らせる。  
水がそのまま肌を伝い、前と後ろの穴に入り込む。  
「うあ!冷た、い、う、ぐ、あ、やめ、んぅ」  
呻き声を漏らしながら、腰を震わせ、身をよじる。  
「ひっ!あ?な、何……?」  
膣内で蠢いていた水が、入り口の所まで戻り、膣口を水圧で押し広げる。  
薄いピンク色の秘肉が水を介し、斗雨真の目に晒される。  
何がどうなっているのか、下腹部からの妙な感覚を理解できず、  
首だけで後ろにいる斗雨真に視線を送る。  
 
何がどうなっているのか、下腹部からの妙な感覚を理解できず、  
首だけで後ろにいる斗雨真に視線を送る。  
「割と綺麗な色をしているな……あまりしてないのか?」  
その一言で、自分が一体どういう状況におかれているのかを理解した。  
それが瑞希の羞恥心を一気に掻き立てる。  
「なっ、み、見るな、やめっ、見ないで!いやぁぁーー!!」  
初めて少女は、男の前で泣き叫ぶ、無様な姿で……  
斗雨真は含み笑いを浮かべ、その姿を見つめる。  
不意に、上がっていた瑞希の腰が床に落ちる。  
瑞希はその場で体を丸め、震えながら嗚咽を漏らした。  
   
抵抗する事も、状況を変えることも、何もできず、いいように弄ばれ、もっとも見られたくない場所を晒され。  
膣内までも視姦され、倒すべき敵である男の前で涙すら流し、その意志一つで、  
生死すら自由にされる。  
今まで味わった事のない屈辱に、瑞希は只、泣き崩れた。  
   
「ぐあっ!」  
突然瑞希は、びくんっ、と背中を大きく反らせ、膨らんだ腹を天へと突き出す。  
体内の水が一斉に動き出し、瑞希を先程より強く、内側から蹂躙し始めた。  
量を増した水が、膣内と腸内、膀胱の中で暴れ、体を内部から陵辱していく。  
 
あまりの異物感に吐き気を催し、未知の感覚に身を捩り、悲鳴を上げる。  
   
「っうああぁぁーーー!!あぅ、ああぁぁ!」  
叫び声を揚げながら体を痙攣させ、その苦しみから逃れようと、床の上でのたうち回る。  
だが、いくら足掻こうと、体から水を排出しようとしても、水は体内に留まり続け、  
さらに激しく流動し、体内を掻き回す。  
斗雨真は、その様子を無表情で見つめ、問いかける。  
「気分は?」  
それに合わせるように水の流動が弱まり、瑞希は床の上に突っ伏し、肩で息をする。  
「う、く、さ、最……悪、ぎひっ!」  
なんとか発せられた言葉の終わりに、腹部が一段と盛り上がり、水が体の中で暴れ出す。  
   
目と口を大きく開き、そこから流れる涙と涎を、拘束された手では拭う事もできず、なすがままの状態に陥る。  
白い下腹部を突き上げ、ぴくぴくと体を小刻みに痙攣させ、途切れがちになんとか肺に空気を入れる。  
膨れ上がった腹が波打つ度に、瑞希の体も波打ち、口から呻き声が漏れた。  
   
ほんの少し水の動きを抑え、瑞希を見下ろす。  
「も、もう、ゆるし、て、おなか、う、く、くるし……」  
限界に達したのか、縋るような目で、斗雨真を見上げる。  
 
濡れた髪が頬に貼り付き、涙でぐしゃぐしゃになった顔が、斗雨真の嗜虐性を刺激する。  
「やっとだな、では、仲間になるか?」  
「そ、それは……」  
言葉に詰まり、俯く瑞希を見て、溜息をつく。  
   
が、こういう反応が返ってくることを、斗雨真はほんの少し期待していた。  
「少々、アプローチの方法を変えてみるか」  
そう呟いた後、瑞希の上半身だけを引き起こし、顔を自分の方に向かせ、  
頬に貼り付いていた髪を指で払う。  
何をされるのか不安に駆られ、男の顔を見上げる。  
しばし瑞希の顔を見つめた後、斗雨真は口を開いた。  
「じゃあ、まずは、しゃぶって貰おうか……」  
   
「は?」  
唐突に出たその言葉に、瑞希は思わず聞き返した。  
「口でやってくれと言ったんだ、お前の姿を見てたら、ちょっとな……」  
「ちょっとな……じゃなくて、何でそんな……」  
「してくれんのか?」  
「あ、当たり前よ!」  
「なら仕方ないな、さっきのを続けるか、それとも……」  
足の先で、少し膨れた腹を小突く。  
「ひっ!や、やめっ!あうっ!」  
「ここを蹴り上げたら、どうなるかな?」  
瑞希の顔から血の気が引き、斗雨真を見上げる。  
 
斗雨真はその顔を見下ろし、薄ら笑いを浮かべ、股間から逸物を取り出し。  
「噛みつくなよ、上手くできたら、腹の中をすっきりさせてやる」  
そう言って、瑞希の眼前に突き出す。  
   
顔を真っ赤にし、それから目を背け、少し俯いた後、意を決した様に、  
そっと舌を目の前の肉棒へと伸ばした。  
先端を舐め、ゆっくりと口に咥え、舌に唾液を絡ませ、吸い上げた後、  
口を離し、根本から先の方へと舌を這わせる。  
「なかなか、上手じゃないか」  
斗雨真の眉間にしわがより、息をつく。  
片手で瑞希の頭の髪留めを外すと、束ねられていた髪が、そのまま背中に落ち、  
濡れた肩に貼り付く。  
   
「ん、んむ、うんぅ、んん」  
水とは対照的に、熱くたぎり始めた肉棒を口に含み、舌を絡ませ首を前後に動かす。  
手を使わないのは不慣れなのか、口の端から涎がこぼれ落ちる。  
手も足も出ない、とは言え、敵である男のモノに口で奉仕している。  
そんな自分の姿が脳裏をよぎり、情けなさから目から涙が溢れる。  
   
泣きながら、自分のイチモツに口で愛撫する少女の姿を見下ろし、斗雨真はほくそ笑んだ。  
口の中で、陰茎はさらに大きさと硬度を増し、少し苦しいのか、離れようとする。  
 
が、斗雨真の手が頭を掴み、それを阻む。  
口を離すこともできず、只行為を続ける。  
一刻も早く、この苦しみから逃れようと……  
   
「ん、ん、んん!んむぅ!」  
瑞希の体内で再び水がうねりだした、今度はゆっくりと撫でるように流動する。  
突然のことに、瑞希の口の動きが止まる。  
「どうした、続けろ」  
「んぶぅ、んう、うむ、むぅぅ」  
腰をひくつかせ、口の中の陰茎を吸い上げ、首の動きを加速させる。  
   
体内の冷たい刺激、口内の熱い感覚、上と下にある対極の刺激に、徐々に瑞希は、  
体の芯が熱くなるのを感じていた。  
「ん?お前……」  
斗雨真は、何かに気づいたような言葉を発する。  
   
舌で先端を舐め、湿った卑猥な音をたてながら、瑞希は頭を動かす。  
頭を掴んでいた斗雨真の手に、力がこもる。  
「そろそろ出そうだ、このまま出す、できれば飲んでくれ」  
少しうわずった様な声を上げ、自ら腰を動かし始めた。  
「ぐぶっ、うう、ぐむぅ、ごぶ」  
喉の奥まで入り込み、むせかえりながらも舌を動かす。  
   
「出すぞっ……」  
「んっ、んむ、むぐ、んんっ!!」  
斗雨真の腰が震え、瑞希の口に熱い精液を放った。  
 
大量に放たれた精液を、なんとか飲み下そうと喉を鳴らす。  
「ん、ん、んぅ、ぐっ、こはっ、がはっ、げほっ、げほっ、ごほっ」  
飲みきれなかった白濁を吐き出しながら、激しく咳き込む。  
口の端についた白濁液を手で拭い、肩で息をしながら、涙で潤んだ瞳で斗雨真を見上げる。  
「ふむ、しかし、気になってたんだが……」  
そう言ってしゃがみ、手を瑞希の股の間に滑り込ませる。  
「あっ!ちょっ、や、んん」  
「濡れてるな、しゃぶってて感じたのか?それとも別のか?」  
「ち、違っ、あ、んく、それっ、水、くぅ」  
「ほう、水にこんな粘性があるとは知らなかった」  
そう言って、透明な液体のついた指を瑞希に見せ、糸を引かせる。  
   
「あ、嘘……そんな……」  
頬を紅く染め、指から目を背ける。  
「こういうのが感じるのか?……ああ、そうだったな、腹の中を楽にしてやろう」  
下半身をもじもじとくねらせる瑞希を見て、斗雨真は優しい口調で言う。  
「?!あ、やだ、こんな……」  
「どうした?出さんのか?」  
今まで斗雨真の能力により、下腹部に留まっていた水が、支えを失ったかのように、  
瑞希に負担をかける。  
 
「うあ、や、だめぇ……もっ、だめ、見ないでぇ、いや、いやあぁぁーー!」  
少女の悲鳴が部屋に響き、それとほぼ同時に、下半身から大量の水を吐き出した……  
   
床に横たわり、嗚咽を漏らす瑞希を見下ろし、斗雨真は只静かに問い掛ける。  
「すっきりしたか?」  
瑞希は答えず、そのままの状態で、声を押し殺して泣き続けた。  
   
泣き崩れる瑞希の目の前に、四本目のペットボトルを置くと、驚愕の表情で、  
斗雨真の顔を見上げる。  
「仲間になるか?」  
再三の問い掛けに瑞希は、か細く震える声で答えた。  
「こんな、こと、しておいて、何を……」  
「フッ、それもそうだな……」  
そう言って斗雨真は、再び瑞希の体を起こした。  
   
後ろから瑞希の体に手を廻し、服越しに胸に触れる。  
「んっ」  
瑞希が体をこわばらせる。  
そのまま固くなっている乳首を指先で弄び、下腹部へと手を這わせる。  
「あ、ん、やめ……」  
手の動きと共に、呻き声とも、喘ぎ声ともつかない吐息が漏れる。  
「毛の無いアソコというのも、思えばなかなか卑猥なものだな。  
しかし、結構出たな、便秘と言う訳ではないようだが」  
「殺して、やる……」  
涙を流し、怒りに震える声で、瑞希は静かに呟いた。  
 
固くなっている乳首を、指で摘むと、瑞希は体を震わせ、小さく悲鳴を上げる。  
「ひっ!んぅ」  
下腹部へ這わせた手で、熱く湿った秘裂を指でなぞる。  
「やはり濡れている、手で触れてもいないのに、何故だ?」  
「う、く、知ら、ない……」  
   
指で勃起したクリトリスを探り出し、弄る。  
その度に、瑞希の身体に電流にも似た刺激が走る。  
「ひうっ!やっ、くっ、あう、っふあ!」  
秘裂から中へと指を入れ、膣内を掻き回す。  
「どんどん溢れてくるぞ、敏感なんだな」  
「うあ、やう、ああっ、だめぇ」  
「ふむ、指一本では足りんか?」  
「え?あ、なに言って……」  
言葉の途中で、今度は指を二本にして、一気に根本まで入れる。  
「ひくっ、……っ!」  
瑞希の背中が、大きく仰け反り、びくびくと痙攣する。  
手の動きを止めようと、太股を閉じるが、指の動きまでは止められない。  
   
指を動かす度に、湿った淫猥な水音が、瑞希の喘ぐような声と共に、室内に満ちていく。  
いつの間にか、体が喜びを感じ、さらなる快感を求め始めていた。  
瑞希は、それを頭の中で必死に否定しようとしていた。  
だが、それでも愛液の音と自らが発する喘ぎ声は、自分の耳に響いててくる。  
 
 
 

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