ドゥは『特選隊』の中でも浮いた存在である。
性格は残忍かつ、狡猾。ほっそりとした体に青白い肌。ギンギラに輝く目を持っていて、
作戦の大半は単独任務……大半が殺人技術を要する……を請け負っていた。
「……で、あの子を私に任せるってことは、どうしても良いって事?」
そうドゥは言う。ボスの前でエキセントリックな事を叫んでいた男だ。
「ボスが言った事を忘れなければな」
そう言って、目の前の黒服、蛙が言う。
「ボスを怒らせたらどうなるかは知ってるはずだ」
蛙はそう言って、目の前のコーヒー……彼は砂糖もミルクも入れない薄いのが好みだ…を飲み干す。
「それだけはわかってるわ」
かつて、ボスが怒ったのを見たことがある。そいつはあろうことかメイドとしてボスの所に潜入し、
組織の機密データを盗もうとしていたのだ。
「あの時のボスはすごかったわねー」
「いや、すごかったどころじゃないぞ、あれは」
それをボスに見つかって、そいつはつかまり……後は精神衛生上書かないことにしよう。
「それはともかく『丑三』はまあ他人の体を使うと色々不都合があるからな」
「へえ、それで私におはちが回ってきたと」
「そういうことだ」
蛙はそう言って、コーヒーを飲み干す。
「まあ、あいつがどうなろうと構わんさ」
そう言ってカードをすっと差し出す。
「そういえば、彼女の名前は?」
「篠原 優花だ」
「わかったかわ。それじゃあね」
そして淫獄の第二幕が開き始める……。
ドゥの『特選隊』に入ってきた経緯はかなり特殊だ。
元は同じ組織の別の部署で働いていたのだが、異常な行動……ここではあえて書くまい
……をし続け、その部署にいられなくなったのを今のボスが拾ったのだ。
その性格から、仲間からも嫌われてるが、その能力だけは皆が認めていた。
ドゥがカードを通すと、ピとつまらない機械音が鳴り響き、ドアが開いた。
「はぁい優花ちゃぁぁん。お・し・お・きタイムですよぉ〜〜」
興奮した雰囲気のままドアの中に入るドゥ。
「あれ……?」
ドアに入ってきたドゥを迎えたのは謎の人形。
ズガシッと人形に殴られ吹き飛ばされるドゥ。
「残念だったね、私の能力は『物に命を吹き込むこと』。あらかじめ命を『吹き込んで』おけば、
なんでも動かせるの。」
そう言ってぼろ布を体に巻きつけた優花がドアの外へと出てくる。
ドゥは倒れた格好のまま浮き上がる。否『何かに持ち上げられる』。
『診察開始====頭部異常無====脚部異常無=====問題無し』
『何か』がゆっくりとドゥを持ち上げ立ち上げさせる。
「へえ、そうなのなら私の能力も教えてあげる……私の能力は『悪霊による肉体操作』」
「悪霊ってその変なの?」
そう言って優花がドゥの横にあるのを指差す。
それは簡単に説明すれば巨大なカプセルに様々な液体の入った試験管、
謎のスピーカーや、アーム、モニターがついた代物であった。
「ええ、応急処置はもちろん、いろいろと話を聞く時にも使える優れた能力よ」
「でも、パワーもスピードもあまりなさそうね」
次の瞬間、優花の作り出した人形がドゥに襲い掛かる。
「こいつにパワーもスピードも必要ないわ」
そう言うと『悪霊』は注射器を取り出しドゥを刺す。
「なぜなら私はいくらでもパワーアップできるんですもの」
ドゥの肉体が膨れ上がり、服は破け、目は赤く燃え盛り、肌色は青から赤へと変化する。
「えっ???」
「幾十の毒を生物の体内で十日十晩寝かせ上げ、それと数種の栄養剤を混ぜ合わせた、私の切り札、
名づけてドーピングブラッド。その効果は……」
『人形』を捕まえて、そのまま片腕で持ち上げる。
「桁外れよ」
そのまま『人形』を握りつぶし、そのままポイと捨てる。
次の『人形』の準備をしようとした瞬間、首に強い圧迫感が生まれる。
「さあおじょうちゃん、お・し・お・きの時間よ!!」
桁外れの筋肉がついた腕で優花を持ち上げながらドゥはこれから何をしようか思案を始めていた。
ドゥは極端に肥大化した筋肉で優花の首をしっかりと掴む。
たちまちのうちに優花の顔が青くなり、そのままがくりと倒れこむ。
「あらら〜〜もう気絶?」
薬品で起こしても良いが、後が面倒だ。
「そうねえ〜〜」
自分好みの策を練り、良いアイディアが浮かびポンと腕を叩く。
そうと決まれば、この姿はまずいだろう。
さっそくドーピングブラッド用の解毒剤を取り出し、優花の肉体を『悪霊』……
名を『マーダーホスピタル』と言う……に押し込んだ。
「さてと……まずは……」
優花が目覚めたのは、カプセルの中であった。四肢は金属ともプラスチックともいえぬ素材で拘束されている。
「あらお目覚め?優花ちゃん?」
カプセルの外にはドゥがいていやらしい笑いを浮かべていた。
優花は理解に苦しんだ。この男のやることがまったく理解できない。
「はやく『仲間になる』って言った方があなたの為よ……。私は逆の方が良いんだけどね」
ドゥはそう言って指をぴんと鳴らす。
次の瞬間カプセルが開く。
「一体何をするの??」
ドゥがピンと優花の薄い胸を叩く。
「いやあああああああ!」
その次の瞬間、優花の悲鳴が狭い部屋の中に響き、胸から白い液体が流れ出す。
落ち着いた瞬間に、自らの胸から流れ出す白い液体を見て、優花が困惑する。
「なにこれ……」
「ちょっと貴方の肉体を改良したの。胸の母乳が出やすいようにね」
そして今度は胸をさする。硬くなった乳首の先から白い母乳が出てきて、優花の体を濡らす。
「嘘……」
「あら、私の能力ではこのぐらいのこと朝飯前よ」
そう言って、にやりと笑う。
「相手も超能力の使い手だってことを忘れないでね。」
ドゥはしかめっ面でそう言った。
〜〜回想〜〜
ドゥは桁外れのスピードでその諜報工作員達と戦っていた。
「あははははははははははっ!そんなもので私達を止められると思っているの?」
ドゥは大量の肉体強化薬を使いいい気になっていた。
次の瞬間だった。工作員の一人がドゥの腕に触った。
天と地が逆転する。体中の筋肉が捻じ曲がる。体中の骨が悲鳴を上げる。
次の瞬間、目の前が暗転しその工作員の言葉だけが重く残った。
「薬品による肉体強化大いに結構、だが、相手も能力者だということを忘れるな」
その後、目を覚ました後出されていた命令は『撤退』であった。
その後、その工作員の行方は知られていない。
狙撃、情報収集、撹乱、剣による白兵戦。その全てに能力が使われた痕跡があるため、
その男の能力の推測すら成り立っていない。
〜〜回想終わり〜〜
「うふふ、こんなにお乳を流して……良い感じだわ〜〜」
「いやっ何これ!止まらない!止まらないよぉ!!」
そう言って恍惚のドゥは恍惚の表情をした。
ドゥは笑いながら、母乳まみれの優花の体を見回す。
「一体なんでこんなことをするの?」
「それは貴方が私達の敵だからよ。それにね、私は人をいたぶるのがだぁいすきなの」
恍惚とした表情でドゥが答える。特選隊の中でも残酷なこの男は、それゆえに、仲間からも嫌われていた。
只、怪我を治せる人間としては結構優秀だった。
「ふざけないで……」
大声で叫ぼうとしたが、体中の力が抜けたかのように小さな声しか出ない。
「あらあら、お乳の出しすぎで疲れちゃったみたいねえ」
ドゥはそう言って、『マーダーホスピタル』から謎のコントロール機を取り出し、ピッピッとスイッチを押す。
「軽く栄養剤投与しとくからね、次からはきちんと口から投入するから」
『マーダーホスピタル』のアームが伸び、腕を掴むと針が出てきて、何か透明な液体を優花の体内へと送り込む。
「仲間になる?それともならない?」
仲間になるといえば、この男は拷問を止めるだろう、だが一緒に動いてきた仲間達に申し訳が立たない。
「嫌よ」
「あら、そう、だったら……」
ドゥはそう言って怪しく笑う。
「まだまだ、色んなことしないといけないようね」
その言葉と同時に『マーダーホスピタル』から別のアームが出てきて、優花の腹を掴む。
「まずは肉体をちょっといじくるから体力をつけなきゃ」
そう言うや否や『マーダーホスピタル』から謎のパイプを取り出し、口にくわえさせ、無理やり押し込む。
「むぐっむぐっ」
口ごもった瞬間、優花の口内に大量の白濁液が流し込まれる。
「安心して、只の栄養剤よ……もっとも栄養の塊で、味とかそういうのを考えてないから、
毎日飲んだから、1週間で相撲取りになれるわ」
白濁液が止まった後、さらに邪悪な笑顔を浮かべてこういった。
「でも、安心しなさい。そんなことは考えられないほど色々するから」
文章では表せない笑い声を上げて、ドゥは何をするかを考え始めた。
ドゥはひときしり笑った後、『マーダーホスピタル』のコンソールに手をかける。
アームの一本が彼女の秘所へともぐりこみ、彼女の子宮の中で展開を始める
「うふふふふふふ……あーっはははっははははははは!」
苦しみのため、もはやうめき声しか上げられない優花を見て、ドゥは笑い声を上げる。
「どう?苦しい?まだよまだこれからよ!」
アームの拡大が止まると、次の瞬間、優花の体内で何か音が鳴り始める。
「がっごっ!」
それから逃れようと優花は体を捻るが、四肢を拘束されてはそれもかなわない。
「何をするか教えてあげようか?人間の体内の生態電流ってしってる?」
もはや、優花の言葉も聴きもせず、ドゥは言葉を続ける。
「それを利用してね、貴方の体内に時計を作ろうと思うの。
まあ時刻を知らせるだけしか効果ないんだけど〜〜。忘れることがないから便利だと思うわ〜」
こいつは、すさまじく邪悪だ。優花はいまさらになって理解した。
金の為に人を殺す暗殺者が凄まじく善良に見えるその光景に、優花はもはや恐怖の一線を超えて叫びだした。
「許して!仲間になるから許して!!」
が、ドゥは止まらない。限界を超えた狂気がまわりの声を消していたのだ。
笑い声が止まらない。何もかもが止まらない。
恐怖の限界を超え、涙と鼻水、そして小便まみれになって優花は叫ぶがドゥは気にすることなく、
優花の体内で『マーダーホスピタル』を暴れさせる。
「ぐえ……がはっ……」
もはや、嗚咽しか出ない口で助けを言おうとするが、声が出ない。
「やだ……」
涙が止めどなく流れ出て、くちからはよだれが流れ出す。
次の瞬間、銃声が鳴り響き、ドゥの胴体から血が流れ出た。
「誰?一体誰?」
ドゥは周りを見渡し、そして一人の男を見つけ、驚愕する。
「ボス!!!!」
裏社会での権力と、年にとある国の国家予算に匹敵すると言われる財力、
『特選隊』『護衛超能力隊』と呼ばれる暴力、そしてルールをさだめる超能力、
そしてそれらを持ちながら、組織を積極的に動かす心力と知力。
「仲間になりたいと言うのが聞こえなかったのか?」
ドゥは理解した。頭を地べたに貼り付けて許しを請う。
「モウシワケアリマセン、モウシワケアリマセン」
ボスはドゥに一言二言言葉をかけると、優花に向き直り、仲間になるか聞いた。
優花は、仲間を説得したいと言ったが、ボスは相手が仲間になりたいならそれでも良いが、
抜けることだけは許さないと言った。
「怪我は自分で治せるな、ドゥ」
「ハイ、ナオセマス」
カチカチの台詞のままドゥは自らをマーダーホスピタルへと押し込む。
優花は、助かったことに安堵して、気が抜けたように倒れこんだ。
「『バベルバスター』」
ボスがそう言って、護衛の一人を呼ぶ。
「はい」
「彼女を医療室まで運んでいってくれ、私は大ボスと会ってくる」
「わかりました」
大ボスって誰だっけ?と一瞬『バベルバスター』は思ったが、口には出さず、優花を背負った。
母乳でスーツが濡れたが、気にせず『バベルバスター』は部屋の外へと出て行った。
部屋の片隅では、小さなカプセルががたがた震えていた。