ザザザー・・・・・・ヒュゥゥウウウ  
 
木々のざわめきが遠くなり、体を包むのは草の臭いとさっきより強くなる風。  
国境付近に続く森を抜けると、湖に面した崖の上に白い建物が見える・・・これが、俺と博士の新任地だ。  
 
今、俺と博士はその中でてんやわんや、真面目な仕事を色々やっている。  
ひょっとすると、今やってる申請書類作成やら、備品の搬入が一番助手の仕事としては"らしい"かもしれない。  
 
 
「ひゃああああ、くもくもくもくもーっ!?」  
「博士、蜘蛛ぐらいで驚かないで下さいよ・・・さっきなんて地下室にムカデうじゃうじゃいたんですよ・・・」  
これは酷かった・・・。  
何年人が入っていないのか分からない地下の倉庫に、何が残っているのか確認しにいったのだが、  
電灯をつけた途端に、虫の群れが一斉に逃げていった・・・それも俺の足の上を這いずりまわってである。  
 
「えーい、殺虫剤8本同時発射だーっ!!」  
白衣の上に三角巾とエプロンをつけて、触手にそれぞれ殺虫剤のスプレー缶と、  
手に箒をもった博士がそう叫ぶと、白い殺虫剤の霧が発生し鋭い臭いが俺の鼻を貫くと同時に、虫の屍骸が落っこちてくる。  
 
「わー!!やーっ!?とってとってとってとって・・・!!」  
どうやら、博士の上に落ちたらしい・・・意地悪をしても埒があかないので、軍手のままそれを叩き落とす。  
 
「ふええぇぇぇん、こわかったよ、助手くん・・・うっく・・・ひっく」  
「はいはい、がんばりましたね・・・良い子良い子」  
とまあ、ほのぼのした光景をさっきから何度もやっているため、作業は一向に進まない。  
 
「しっかし・・・ここ、元々はなんだったんですか?元々軍事基地や研究所だったようにも見えないんですが・・・」  
ここの構造は余りに単純で、敵の突入に備えて複雑な構造を持たせる軍事基地ではない。  
そして博士が研究室にすると言っていた部屋も、本格的な設備はあまり揃っていない・・・機材搬入すれば、それらしくはなるんだろうが。  
 
「偉い人のお話だと・・・・・・学校だったらしいよ」  
「学校?」  
「うん。イヌの国と小競り合いなかった頃は、全寮制の私立校だったんだけど、戦火が及んできたから、海の方に移転したんだって」  
「へえ・・・どおりで兵舎のベットの寝心地がいいわけだ」  
実は掃除を始める少し前、自分の部屋になる予定の部屋に荷物を運んだついでに、  
30分ほどベットに寝転がっていたのだが、柔らかすぎる訳でもないが、煎餅布団のような固さでもなく、ちょうど良い寝心地だった。  
 
「ふーん、後で助手くんの部屋に遊びに行くからね」  
「それは良いですけど・・・・・・先に、風呂をどうにかしません?」  
長年ほったらかしにされていたここは、大浴場も当然汚れ放題。  
当然、今日の夜までに掃除を終えなければ、ボイラーが動いても風呂に入れない。  
「うん、けど先にお昼ご飯にしよっ」  
「あ・・・そういえば、もうお昼か」  
今日は、食堂が開いているのでそこでお昼を食べることになる。  
 
ちなみに、今基地にいるのは食堂のオバちゃん、整備員(予定)の方々が数名。  
それと俺に博士で、実はほとんどの隊員がまだ来ていない。  
どうも猫の国ではバカンスの季節だそうで、みんな長期休暇を取って遊んでいる最中らしい。  
 
「助手くんは何食べるの?」  
「うーん、俺は鯖味噌定食ですか・・・魚好きなので」  
 
「助手くんって・・・・・・妙なところが年寄り臭いよね」  
博士の何気ない一言が、結構ざっくり心に響く。  
そういえば、向こうの世界で居酒屋で食事した時も、  
ヒジキの煮付けやら、フキの炒め物やら、キンピラ牛蒡やら・・・・・・爺臭いって言われたっけなぁ。  
相変わらず、言ってくれた相手の顔と名前は思い出せないんだけど。  
 
「そう?」  
とりあえず、気にしていないように返事を返す。  
「こないだも、作ってくれたおやつ、羊羹だったし・・・」  
「あれは、材料があれしか・・・冷蔵庫に餡子がキロ単位の袋で入ってる博士も博士ですよ」  
当時冷蔵庫に入っていたのは、本当に餡子と砂糖、寒天ぐらいだったのだ。  
 
「だって、鯛焼き作ろうとしたら、ホットケーキミックス買い忘れたんだもん・・・」  
「ん・・・そもそも博士の家には、鯛焼きプレートなんてありましたっけ?」  
「あ・・・それも忘れてた」  
というかドラ焼も鯛焼きも、甘味はホットケーキミックスみたいに砂糖だけじゃなくて、  
しっとりさせる目的で水あめもいくらか入れたような・・・というか、何故こんな知識まで知っているんだろう。  
 
「いただきまーす」  
「いただきまーす」  
程なくして、二人とも頼んだメニューが出てきて、一緒に食事をとる。  
博士はから揚げ定食を頼んだらしい。  
「あ、胡麻和えもらい・・・」  
「はしたないですよ、人のおかず取るなんて・・・んぐ」  
「からあげ1個あげるから」  
そういって、口に強引にから揚げを突っ込まれる。  
しかも食べかけなんだけど、これ・・・。  
 
「というわけで、昼飯も食べたし・・・」  
「よーし、がんばるぞ〜」  
今度は、流石に白衣を脱いで短パンにエプロン姿・・・触手と手には、それぞれスポンジを持っている。  
一方、俺はというといつもの夏服軍服のまま、ズボンに水がかからないように折っているだけ。  
「じゃあ、タイルの方は俺がどうにかするので、博士は蛇口の方お願いします」  
「はーい・・・んしょんしょ・・・」  
 
シャカシャカシャカ シャカシャカシャカ  
 
洗剤をつけたブラシが小気味良い音をたてて、タイルにこびり付いた垢や埃を取っていく。  
汚れは意外と簡単に落ちて、後は水で流せば問題なさそうだ。  
 
「んしょ・・・んしょんしょ」  
 
一方、屈んで蛇口やシャワーを掃除している博士は・・・  
服装が服装で姿勢が姿勢なので、フトモモやヒップのライン強調されて、俺の理性を突いてくる。  
 
「んしょ・・・んしょ」  
 
逝くな、俺の理性・・・頼むから。  
襲いたくなる衝動を抑えて、今度は浴槽の掃除に取り掛かる。  
 
ゴシゴシゴシ・・・ゴシゴシゴシ・・・・・・・・・ジャァァ・・・  
 
これは結構腰に来るなぁ・・・。  
何はともあれ早く終わらせないと、夜になってものんびりできない。  
 
「助手くーん、こっち終わったから手伝・・・わわわわわ!?」  
「え?・・・・・・・・・あ」  
 
気がついたときには既に遅い。  
お約束どおり、石鹸か何かで足を滑らせたと思われる博士は、もう眼前に迫っている。  
 
ゴチッ  
 
固いものが頭に当たって・・・火花が散る。  
 
「わーん、助手くん、しっかりしっかりして・・・」  
視界が遠くなっていくけど、不思議と気持ち良い感覚が襲ってくる。  
あ、そうか・・・これが気絶する時に感じる感覚ってやつなんだな。  
 
そうして、俺の意識は、闇に落ちていった。  
 
 
波の音・・・真っ赤な夕日・・・・・・飛んでくる波飛沫。  
 
「あなたは・・・・・・帰りなさい」  
あの時の女の子と・・・・・・俺がどこかの崖に立っていた。  
俺は・・・泣いてるのか・・・手にポタポタと雫が落ちて来る。  
 
「我侭言って、私を困らさないで・・・ほら、男の子は泣かないの」  
そう言って、頬に手を当てて慰めてくれている。  
「・・・・・・・・・っ」  
声を出そうとしても、声にならない・・・何かを、何かを伝えたいのに・・・。  
「さようなら・・・・・・」  
「・・・・・・・・・っ」  
まあ、夢だしな・・・それに過去は変えられない―――過去?  
夢じゃない・・・・・・俺は何か重大なことまで色々と忘れてる、これだけは事実だ。  
 
 
「つ・・・冷たッ・・・!?・・・なんだ、氷水・・・?」  
突如として上半身を襲う冷たさと、手に当たる冷たくてゴツゴツしたもの。  
 
「ひゃあ!?・・・びっくりした」  
「あ、やっと起きた」  
「博士、起きましたよ、彼・・・」  
 
聞き覚えのない声が聞こえる。  
頭を打った影響か、目の焦点が中々定まらない。  
 
ドンッ  
「うわぁぁあああん、心配したんだからね、心配したんだぞ、助手くんったら」  
 
何か重いものが俺に体当たりしてきて・・・・・・博士か。  
 
「あの・・・水かけちゃってごめんなさい」  
「まったく、来た途端上官が頭打って寝込んでるなんて・・・なんて部隊なんだか」  
「姉さん・・・そういう口聞くのはいけないんじゃないかな」  
 
博士に抱きつかれて呆けてる俺の横に立っている、女の子二人と男の子。  
 
「あ、あのね・・・ボクたち、あなたの部下として配属された兵士です」  
「・・・・・・本当に、隊長がこんなので大丈夫なの?」  
ネコ族らしき女の子二人が話し掛けてくる。  
 
言葉としては認識できても、頭が回らずそのまま沈黙が辺りを支配する。  
 
「・・・じゃあじゃあ、みんな助手くんに自己紹介してね」  
しばらく沈黙が続いたあと、博士の一言が静寂を破ってくれた。  
 
「それじゃ、私から。  
 名前はカレン、得物は戦斧で陸軍歩兵部隊出身。一応研究所で操作のレクチャーは受けてきたわ」  
と、背の高い茶髪のポニーテールの女の子が答える。  
「それじゃ、早速明日から実機で訓練できるな・・・」  
「ええ、勿論そのつもりだわ」  
 
「自分は、ゼノスであります。  
 カレン姉さんの弟で、以前は通信兵をやってましたでありますっ・・・それと、男ですから僕」  
緊張しているのか、少々言葉使いが変な華奢そうな男の子。  
 
「まあまあ、そんな堅くならずに・・・」  
といって、例のごとく肩を軽く叩く  
「は、はい・・・」  
「落ち着けっていっても、簡単に落ち着けないわな・・・」  
 
「さっきは、水かけちゃってホントにゴメンね・・・。  
 ボクは、ラピスラズリ・フォン・シュナムル。名前長いから、あだ名の"お嬢"で呼んでくれて良いよ」  
と、銅製の洗面器を持った銀髪でショートカットが女の子。  
 
「名前は良いけどさ・・・歳とか大丈夫なの?」  
他の2人は、年齢的に高校生以上で問題なさそうなのだか、彼女の場合はまだ中学生かそれ以下に見えた。  
「レディに向かって失礼だな〜。これでもボク、3人の中では一番年上なんだよ!」  
 
先に自己紹介を済ませたゼノスに視線を送る。  
 
「本当ですよ、お嬢は自分のいた部隊でも、最古参の方でしたから・・・。  
 自分も、最初は見た目と年齢のギャップに戸惑いましたけど」  
どうやら本当のようだ。  
 
「あれもこれも、あの時兎の国の魔女がボクにかけた魔法が悪いんだ!」  
「何だ・・・呪いか何かでも貰ってるの?」  
「忘れもしない30年ちょっと昔のある日・・・。  
 ちょーと、立ち入り禁止の看板かかったダンジョンで遊んでたら、  
 悪い魔女に実験台にされちゃって、時間止められたんだよ!  
 おかげでもう五十路近いのに、大人の玩具とか買いに入っても追い出されちゃうし、  
 自慢の艶やかな黒髪だって、こんな真っ白な白髪になっちゃうし〜」  
 
機嫌悪そうに答える。  
その容姿で大人の玩具なんて売ってるところにいけば、そりゃあなぁ・・・。  
 
「私はその歳なのにフニフニしたもち肌が羨ましいわよ・・・」  
とカレンが一言。  
 
「はいはーい、それじゃ、最後に助手くんも自己紹介して」  
 
「そういえば・・・俺自身の自己紹介まだだったんだな。  
 俺は名前思い出せないんで、書類上は"名無し"で通してる・・・ま、普段は"隊長"とでも呼んでくれれば。  
 こっちの世界に来て、まだ半年も経ってないから色々至らない所もあるだろうが、宜しく」  
 
「それじゃあ、解散!明日もみんなで基地のお掃除するから、早めに寝てね」  
博士による、明日の予定発表でその場は一応締めくくられた。  
 
 
ピチョーン・・・・・・ピシャーン  
 
湯気で満たされた巨大な空間の中で、時折水滴の落ちる音が響く。  
 
「はぁ・・・・・・5日ぶりの風呂だ・・・」  
俺は、倒れてる間に掃除が終わった大浴場で疲れを癒している。  
 
「男湯があるっていいですね・・・・・・」  
隣で涙を流しながら湯船に浸かっているのは、部下のうち唯一の男であるゼノス君である。  
 
「ん?・・・どういう意味なんだ、それって・・・」  
「じ・・・実は、前の基地って、ほとんど女性の人ばっかりで男湯がなかったんですよ」  
「・・・・・・な・・・なんだって・・・」  
「・・・・だから、姉さんとかお嬢が入るよりずっと早くとか遅くに入らないと、しょーもない悪戯されたり・・・」  
驚愕の事実である・・・そんな羨ましいようなもとい、かわいそうなような体験をしているとは。  
 
「一応、軍規だと時間帯で分かれてるんですけど・・・男が僕一人だと男扱いしてもらえなくて・・・」  
「顔つきも、女装すれば女に見えそうだしなぁ・・・」  
「うう・・・隊長までそんなこと言うなんて・・・しくしく・・・」  
「男がそれぐらいで泣くなよ・・・」  
「はい・・・しくしく」  
そんなのだから〜と言いかけたが、これ以上言うとかわいそうなので、湯船から上がって体を洗う。  
 
洗いながら、何でこっちの世界の風呂も、向こうと変わらないんだ・・・などという考えが一瞬浮かぶが、考えていてもしょうがない。  
きっと風呂職人の落ち物でもあったんだろうとか、いい加減な答えを自分に言い聞かせ、泡をシャワーで流す。  
 
「わー」  
 
ドッボ〜ン  
 
「こんなに広いお風呂に少人数で入れるなんて、すごく久々だね」  
女湯の方から、湯船に飛び込んだような音とお嬢の声が聞こえる。  
 
ザバザバザバ・・・・・・ドッポーン  
 
「こらっ、泳ぐなっていつも言ってるのに!!」  
しばらく泳いでると思われる音が続いた後、カレンらしき怒声が聞こえ・・・  
 
ヒュ     ・・・ゴンッ  
 
「痛いなあ、もう・・・そんな乱暴だから、嫁の貰い先がないんじゃないの?」  
「こ、この年増ガキは言わせておけばぁぁあ!!」  
どうやら、お嬢が桶でも投げつけらたようで、カレンも本気で怒ったらしい・・・。  
 
「ひいぃぃぃいいい・・・」  
こちら側で、まだ湯船に浸かっていたゼノスが、先ほどからガクガクと震えている。  
これを毎回間近で見ていたのなら、こうなるのも当然とも思えるような鈍い音が次々に響いてくる・・・。  
 
ガラガラガラ・・・  
 
「助手く〜ん・・・」  
「・・・博士?」  
まだ壁の向こうは罵詈雑言と危険そうな音が響いている中、博士が男湯の戸を開けて入ってくる。  
胸から腰にかけてバスタオルを巻いて、アヒルの玩具を手に抱えて目には涙が浮かんでいる。  
 
「あっち怖いから、こっち・・・良い?」  
「・・・・・・・・・別に、いいですが・・・」  
 
「あ、僕はあがってますね」  
「おー、湯冷めしないうちに寝ろよ」  
そそくさと出ていくゼノス・・・気を使ってくれてるのだろうか。  
あ、自販機のところでフルーツ牛乳飲んでる・・・微妙に贅沢なヤツ・・・。  
 
そうこうしているうちに、博士は体を洗い終えた俺の腕を掴んで、強引に湯船に招く。  
「ふう・・・・・・二人で一緒にお風呂に入るのって・・・初めてだよね・・・」  
「あ、そういえば・・・・・・あれだけ毎日ベタベタしてたのに・・・」  
確かに、あれだけ毎日一緒にいたのに、一緒に風呂に入ったことは一度もなかった。  
俺と博士の二人にとっては、風呂場という場所は意外と盲点であったらしい。  
 
「お風呂小さかったもんね・・・一人で入るだけでも」  
そういって、俺の肩に自分の体重をかけて来る博士。  
「博士・・・重いんですけど・・・」  
「良いじゃん・・・・・・さっきは、私が医務室までキミを運んだんだから・・・」  
「・・・・・・お互い様って所ですか・・・」  
俺は、腕を伸ばして寄りかかってきた博士を抱きとめ、軽く頬にキスをする。  
「そういうこと・・・他の人たちは、もうお風呂済ませちゃったし・・・今日はここでしよっか」  
 
湯船から上がり、タイルの上にバスタオルを敷いて仰向けになる博士。  
「博士・・・また胸大きくなった・・・」  
そう言って、俺は両手で博士の乳房を愛撫する。  
 
「助手くんが、いっつも揉むからだよ・・・・・・あ・・・」  
乳首を抓ると博士の体がビクンッと痙攣して、声が漏れる。  
 
「博士が・・・可愛い過ぎるからですよ・・・チュッ」  
胸全体揉むように動かしていた手を休めて、首筋に口付けをする。  
「ひゃあ・・・・・・首はぁ〜・・・・・・助手くんの意地悪・・・」  
 
「その意地悪な、助手相手に・・・こんなになってるのは・・・・」  
そう言って、博士の茂みに手を入れる・・・中は既にトロトロだ。  
 
「・・・指じゃない方が欲しいな・・・」  
指を口に入れて、物欲しそうに俺に向かっておねだりする博士。  
そんな誘惑に、俺は勝てるわけはない。  
 
「じゃ・・・・・・入れますよ・・・」  
博士は、いつものようにゆっくり俺を受け入れてくれる。  
「・・・ふう・・・入ったよね・・・・・・ふふふ」  
 
「・・・博士?」  
「・・・・・・なんでもないよ・・・ちょっと、嬉しかっただけだよっ」  
背中に回った博士の細腕が俺を強く抱きしめ、触手まで絡ませてくる。  
 
「それじゃ、動きますよ・・・」  
「うん」  
俺はゆっくり腰を動かす、博士を少しずつ味わうように。  
「あっ・・・・・・あん・・・あっ・・・助手くん・・・好きだよ」  
博士の爪が背中に食い込むと同時に、博士の中がキツくなる・・・感じてるんだ、博士。  
「う・・・・・博士の中・・・キツく・・・」  
「ふあ・・・・・・出して、出しちゃって良いよ、助手くん」  
「は、はい・・・・・・くっ」  
「ふう・・・いっぱい・・・助手くんのがいっぱい中に入ってきてる・・・・」  
抜いてない故、行く場所を失った精子が、博士のお腹を膨らませる。  
そのまま余韻を楽しんでいる博士だが、  
掃除でくたくたに疲れていた現状では正直、ずっとこの体性でいるのはきつい。  
 
「・・・ちょっと、この体性きつくなってきたんで、抜きますよ」  
と、博士の触手の何本かが俺の上半身を支え、或いは動けないように腕に絡みつく。  
 
「ダメ、あと5分ぐらいは、このままで・・・ね?」  
そう言って、満面の笑顔で俺に語りかける。  
その間も接合部から、少しずつ白濁液が漏れ出してきて、タイルの上に敷かれたバスタオルを汚していく。  
 
「俺の負け・・・だな。わかりましたよ、もうちょっとこのままで・・・」  
俺はあっさり折れた。どうにも、博士の笑顔には敵わないらしい。  
 
 
一方、女湯そのころの女湯では。  
 
「じー・・・・・・・・・若いって、良いなー・・・ボクもあんな頃があったよ・・・」  
「ちょっとお嬢、一人で覗いてないで、私にも見せなさいよ」  
「わわっ、暴れないでよ、ただでさえ滑ってバランスが・・・ひゃあああ」  
「え!?ちょっとそんなに倒れられたら私もバランスが・・・あっ  
 
バッシャーン ドッボーン  
 
「まったく・・・あんなとは腐れ縁だわ・・・今の音で、覗いてたのばれてなければ良いけど」  
「それはこっちの台詞だよー、まあカレンちゃんの弟は美味しかったし腐れ縁でも別に良いけど・・・」  
「・・・・・・!? ちょっと、あんたってば人の弟を一体何だと!!」  
 
再び、木でできた桶が宙を舞い、壁に当たっては床を転げまわる――再度の修羅場。  
 
 
「なんかまた大きい音が・・・・・・お、女湯の方が五月蝿くなった・・・」  
「騒がしい娘たちだよね・・・うまくやっていけるかな・・・」  
そう言って博士が伸ばした手に、自分の手を重ね合わせて、耳元で囁く。  
 
「大丈夫ですよ、きっと・・・」  
 
変な連中の集まった、湖の辺に建つネコの国の軍事基地の夜はとてもとても長く・・・・・・。  
 

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