ザザザザー  
「はぁ・・・ついてねぇなぁ、また雨かよ」  
「まあ、そのほうが来客も少なくて楽だがな」  
うっとおしい程の雨、こうも長く続くと、  
草原で駆け回るのが性に合う犬族には中々辛いものがある。  
 
チリーン  
 
「・・・今、鈴の音が聞こえなかったか?」  
「あん?・・・・・・・・・聞こえないじゃないか」  
短剣に手をかけて、あたりを見回す背の低い方の犬族の兵士。  
 
チリーン  
 
「ほ、ほら、聞こえただろ?な?」  
「首に鈴つけたペットかなにかでもいるんだろ、お前は心配しすぎだっつうの・・・」  
もう一人の背の高い男は、慣れた様子で答える。  
 
「すいません・・・」  
か細い、女性の声がその場に響く。  
 
「あれ・・・いつのまに、こんな近くに・・・」  
先ほどまで、そこには誰もいなかったはず・・・まさか、幽霊?  
そんなことを想像してしまい、声がぐもる背の低い男。  
 
「こら、レディに失礼なこというんじゃない・・・どうしました、お嬢さん」  
一方、女性の目線の高さまで腰を落とし、紳士的に対応する背の高い男。  
 
「ここが・・・・・・イヌ国陸軍基地ですか?」  
 
「そうですよ、何か御用ですかな、お嬢さん」  
 
小柄で華奢に見えるその女性は、基地の中に建っている砦の上の方を見つめていた。  
視線が合うのを思わず躊躇するような、澄んだ冷たい視線で。  
 
「・・・・・・遅かった、もう間に合わない・・・」  
 
間を置いて、女性の口から不可解な台詞が飛び出し、緊張がその場に走る。  
 
「?」  
 
「死にたくなければ、伏せなさい!」  
 
羽織っていたマントを脱ぎ捨てて、呪文のようなものを唱え始める女性。  
 
「・・・ヒトの女・・・まだガキじゃないか」  
「・・・で、何が伏せろって・・・ん」  
 
自分達の後ろで閉ざされている扉が、一瞬音をたてたが、  
それ以上に興味を引いたのが、目の前にいるヒトの少女。  
 
マントを羽織っていたのは、金髪のショートカットに整った顔立ちをしたヒトの少女だった。  
その顔には、真剣な眼差しが浮かんでいる。  
 
「死にたいの!扉から下がって!!」  
 
呪文を唱え終わり、二人に怒鳴りつける少女の右手には、吸い込まれそうなほど、紅く透き通った剣が握られていた。  
誰が見ても、その細腕で持てるのが不自然なほどに、重く巨大な剣が。  
 
 
メキ・・・・・・・・・ガチャガチャガチャガチャ  
 
「・・・!?・・・何かが、中から・・・」  
「な、なんだぁ・・・」  
 
木製の扉が割ける音と共に、少女は巨大な刃を構え地面を蹴った。  
 
「イヌの国の軍事施設が襲撃され、兵士職員が全滅か・・・こんなの新聞に載ってて良いの?」  
「良いの良いの。隊長が読んでるそれ、軍の新聞だから一般には流れないし」  
「へぇ・・・・・・どおりで、広告欄が軍関係の会社のばっかりだと・・・」  
 
行儀が悪いとは思いながらも、新聞を読みながら、朝食のベーコンをフォークで口に運ぶ。  
博士に4日分絞られたあの日から、1週間ぐらい経っただろうか。  
 
今朝はゼノスとカレンが実家に里帰り中、博士は仕上げたい物があるとかで研究室に篭りっきり。  
そんなわけで、お嬢と俺の2人だけが食堂のテーブルについている。  
 
「隊長って、洋食と和食を半々ぐらいで食べるよね・・・」  
「それがどうかした?」  
「ボクってさ、ずっと米食で育ってきたから、お米食べないとすぐにお腹空いてさ・・・。  
 隊長がちょっと羨ましいなーって」  
 
「嗚呼、そうか・・・お嬢ってその顔でも、数百歳の・・・あ・・・」  
伸びて来たお嬢の手が、俺の洋朝食についてきた安っぽいプリンに伸びる。  
 
「禁句だって、いつも言ってるじゃないかー。貰っちゃうもんね、デザートのプリン」  
プリンを持って、俺に向かってあかんべーをしているお嬢。  
ここら辺は、外見相応な行動である。  
 
「欲しいなら最初から言えばやるって、いっつも言ってるだろ・・・」  
珈琲を一口のみ、また新聞に目を落とす。  
「こういう、言葉のやり取りをして、人から没収するからこそ、  
 3個50センタで売ってるようなプリンでも美味しいんだよ」  
プリンの蓋を開けて、紙製のスプーンを手にとるお嬢。  
 
「へいへい、そうですか・・・本当に根性腐ってるな・・・」  
「べーだ、400年も500年も生きてて、ずっと子ども扱いされ続ければ人格も歪むよ」  
愚痴りながら不味そうに食べているが、それでもその姿はなんとなく幸せそうだ。  
 
「そいえば、今日の訓練って何するの?」  
「あー・・・・・・そういえば、俺とお嬢しかいないんだっけ・・・」  
改めて、周囲の風景を見渡す。  
 
本来200人ぐらいは余裕で食事ができる割に、50人も使ってない大食堂。  
いつもはそれでも20人ぐらいは座ってるのだが、連休で他にも何人かいない今朝は、  
俺とお嬢と、食堂のおばちゃんの3人しか姿がないので、一層寂しく感じる。  
 
「うーん・・・・・・・・・ペイント弾で撃ち合いするっても、  
 整備の人も、この連休で何人か王都に帰ったしなぁ・・・」  
「・・・・・・いっそ、中止にしちゃおうよ」  
とうとう、底のカラメル層に到達したプリンを口に運びながら、お嬢はそう言った。  
「けどな・・・・・・流石に急に休みってのも書類上不味いんだよな・・・」  
一応、年間の訓練時間は決まっているので、  
休みにしたらしたで、代わりに休日が潰れるのだ。  
「えー・・・休みにしようよ、休みにー」  
「・・・じゃあ、30分ぐらい、ストレッチでもやって基礎訓練ってことに・・・ん?」  
窓の外に、一筋の爆炎と煙が見えたかと思うと、  
 
ヒュゥゥゥウゥウン     ・・・・・・ズシィィイン  
 
何かが、空気を裂いて落下する轟音。  
 
「近いな、こりゃ」  
「あーもう、紅茶がこぼれちゃった・・・」  
「あんたら冷静だね・・・」  
一人唖然としていた食堂のおばちゃんはそういうが  
 
「慣れですよ・・・あんな大砲、毎日撃ってれば・・・」  
毎日、あんな騒音の中にいれば嫌でもこれぐらい慣れる。  
しかも、俺に至ってはこちらの世界に来る前に、  
演習中にエンジントラブルで航空機が墜落する現場も遭遇してるわけで、  
うう、思い出すだけでスプラッタ・・・。  
 
「ごちそうさま〜」  
そうこうしているうちに、お嬢がプリンを食べ終わったらしい。  
「さて・・・おばちゃん、留守頼みます」  
「あいよ、夕飯までにはしっかり帰ってきな」  
 
 
食堂を出た二人が向かうは格納庫。  
こういう、事故現場?こそ強靭な腕力と移動能力を持った人型戦車は真価を発揮するのだ。  
 
「一応、武器も持つように・・・相手は何者かわからん」  
そう言って、格納庫の壁にかけられた火器の中から、携帯するものを物色する。  
山賊退治の後も、色々な火器が搬入されて、随分種類が増えた。  
ひょっとすると向こうの世界で兵役についてた頃より、選べる種類が豊富かもしれない。  
 
そんな中から、180mmキャノン砲に手をかける。  
この世界で、人型戦車のような重装甲の近代兵器を脅かしうる旧来の兵種  
――重装備のクレイプニール騎兵や竜騎兵には、一番これが有効なのだ。  
いつもいつも接近戦では、カレンのような武人じゃない俺では、とても精神力が持たないし、  
何より歩兵の補助という意味では、射程外からの砲撃で仕留めたほうが圧倒的に被害は少ない。  
 
「また、そんな扱いにくそうなの選んじゃって・・・」  
「腰に予備のマシンガンもあるから、心配されるほどじゃないさ」  
「おやつは300円までだよね?」  
「・・・あのな・・・俺達が行くのは事故調査だぞ」  
 
「え、遠足じゃないの?」  
ふと、聞き覚えのある声が耳元を掠め、俺は振り返った。  
 
「・・・・・・博士、なんでいるんですか。しかも、真後ろの後部座席で大量のバナナ食べながら」  
博士だった。  
何故か、房のままの大量のバナナを抱えた。  
 
「えへへー、バナナはおやつに入らないんだよ。落ち物の漫画で言ってたし」  
「いや、そういうことじゃなくて・・・もご・・・・・・ゴクンッ」  
「おいしい?」  
「はい・・・まあ・・・」  
そんな他愛もない会話をしている間にも、格納庫の電動シャッターはゆっくりと上がっていき、  
結局、博士を乗せたまま、墜落現場に向かうことになる。  
 
 
すごい勢いで黒煙を上げる墜落現場が見えてきた頃だっただろうか。  
 
「助手くん、上、上、何か向かってくる」  
博士の言葉で、右手前の対空レーダーに視線を落とす。  
何かがこっちに接近してきていた。それも、飛竜の類で出せる速度ではない。  
 
「・・・お嬢伏せろ!」  
反射的に通信機に叫ぶと、腰に装備されたマシンガンを引き抜き、即座に地面を蹴る。  
 
直後襲ってくる、マシンガンの反動とは違う衝撃と、交差直後にレーダーから消える飛行物体の反応。  
重力が消えたような静かな時間の後にやってくる、不恰好な着地。  
・・・と、柔らかいものが顔の上に乗っかる感覚。  
 
「隊長、生きてる?」  
お嬢からの通信で飛びかけていた意識を引き戻し、手探りで通信機のスイッチを押す。  
「な、なんとか・・・」  
「やん、そんなとこ・・・昼間っからダメだよ助手くん・・・」  
「え?」  
 
「あ〜・・・仕事中に、そんなことする大人だったんだ、隊長って・・・」  
「は?」  
自分の置かれた状況を改めて整理してみる。  
まず、着地をミスった。  
ジャンプした時点で、博士はシートベルトをしていなかった。  
つけてれば、俺の横まで手の伸ばせるはずないし・・・。  
で、着地後むにっと柔らかいものが顔の上に。  
 
・・・そのむにっと柔らかいものを触ってみる。  
「あんっ・・・」  
え?・・・まさか触ったこれって・・・博士の胸!?  
 
「ご、ごめんなさい博士」  
「ひゃう、つかんじゃダメらって」  
「・・・ごめん」  
 
「隊長って、しっかりしてるようにみえてドジだよね」  
お嬢の台詞が動揺しまくって、ただでさえボロボロになっていたハートにざっくり刺さる。  
 
また、底辺に一歩近づいてしまったのは動かし難い事実だろう。  
 
それはそうと、こんなことしている場合じゃない。  
ついさっき撃墜した飛行物体を調べなければ・・・。  
 
「助手くん、さっきの調べたいからハッチ開けるね」  
 
というと、体制を直して俺の膝の上に乗っていた博士が俺より先に開閉スイッチを押してしまう。  
これじゃあ、俺の立場がない・・・。  
 
撃墜した飛行物体は、運良く道の端に墜落していたので、すぐに見つかった。  
それは良いんだけど、妙にこの残骸の形見覚えがあるような・・・。  
 
輸送機?にしちゃあ、しっかり武装して攻撃してきたし・・・。  
戦闘機や爆撃機にしては、あっさり機銃の撃ち合いで落ちた上に、爆発炎上の仕方が生ぬるい。  
 
とすると・・・偵察機の類だろうか。  
生存者がいたら話を聞いたほうが早そうだけど・・・。  
 
「隊長、人がいる!隊長と同じ耳なしの」  
 
「え・・・?あ、ホントだ・・・操縦席無事だったみたいだな」  
軽く風防ガラスを叩いてみるが、反応はない。  
 
「二人とも、ちょっと俺より後ろに下がってくれ」  
 
ガキンッ ガキンッ バキンッ  
 
取っ手が変形していて引っ張れないので、風防を止めている金具を拳銃で撃ち壊す。  
あっけないぐらい金具は簡単に壊れて、風防が手前がわに落ちてきた。  
 
「よし、開いた・・・て、女の子!?  
 しかも、耐Gスーツとかなしで作業用のツナギ着てるだけ?」  
 
中に乗っていたのは、作業着姿の三つあみ女の子だった。  
というか、よくよく尾翼のエンブレム見れば、  
俺の国の国旗と空軍のマーク・・・もしかして、さっき降って来たのも・・・。  
 
「隊長、顔真っ赤だよ」  
「と、とにかくだ」  
「怪我してるかもしれないし、基地まで運ぼう、助手くん」  
「う・・・はい」  
 
また、台詞取られた・・・。  
 
 
 
「ただいま・・・」  
古びた安宿の部屋の扉が、重苦しい音をたてて開くと、  
一人の血塗れの少女が部屋に入ってくる。  
 
「ご苦労さん、どうだった?連中の様子は」  
と、部屋で本を読んでいた青年が、視線を本に向けたまま返事を返す。  
 
「門番残して、ほとんど死んだわ。しかも、一昼夜も追いかけてきて・・・」  
少女は、血で赤黒く染まったマントを脱ぎ捨てながら、青年との会話を続ける。  
どうやら、血は彼女自身の怪我によるものではないようだ。  
 
「まったく馬鹿な犬たちだ・・・・・・ひとの会社の試作品半ば勝手に持っていった挙句、  
 君にまで、そんな簡単に手を出すなんて」  
青年が本を閉じ、少女の方に顔を向ける。  
 
「処分はしてきたわ・・・ちょっとシャワー浴びてくる、全身返り血で・・・」  
幾ら今が深夜で訪ねてくる者が皆無といえど、血塗れでいるのは、気持ちの良い物ではない。  
 
「嗚呼、ゆっくり浴びてくるといい」  
椅子に座っていた青年がベットに寝転びながら、そう返事を返した。  
 
「・・・・・・鼻の下伸ばしてるけど、覗く気起こしてるなら、やめておいた方が身のためよ」  
「ギクッ」  
間接照明で壁に映し出された青年の影が、一瞬ビクンと痙攣する。  
どうやら図星のようだ。  
 
「まったく・・・これじゃあ、どっちが主人なんだか・・・」  
思えば、こんな生活が始まったのは、彼女を拾ったときだった。  
あの時も今のように、黒ずくめの服装で、今は跡形もなく消し飛んだ我が家の庭に立っていた。  
 
それを何故拾う気を起こしたんだろう。  
普通はそんな怪しい人物を見れば、恐怖が先行するはずである。  
「彼女が言うように、私は極度の物好きだったんだろうなあ」  
 
と、男は自分の頭を抱えながら一人事を漏らす。  
本来なら彼が先ほどのヒトの少女の飼い主、或いは主人であるが、  
現状はどちらかと言えば、10人中9人がこの猫族のマダラの青年が飼われていると言うだろう。  
 
事実、経済的にみても、彼女に養われているも同然だし、  
魔法使いや戦士といった戦力としてみても、魔力・剣の腕ともに青年は少女に敵わない。  
唯一勝っているのが、情報収集や交渉術である。  
 
バタンッ  
 
「・・・どうしたんだタオルのままで・・・」  
「・・・着替える下着忘れた・・・顔赤らめてないで、ちょっとあっち向いてなさい」  
「あ、嗚呼・・・」  
 
彼女が着替える音がその場に響く。  
 
「・・・・・・・・・まだ?」  
「まだ」  
「・・・・・・・・・・・・・・・」  
「・・・・・・・・・いいわ」  
 
少女の声に、青年は振り向く。  
 
「・・・・・・・・・・・・」  
「・・・黙ってひとの顔ジロジロ見ないで」  
「悪い悪い、悪気はないんだ・・・あまりに綺麗でさ・・・」  
 
まだ、乾いていない髪が、尚更に少女の美しさを引き立て、  
見る者の視線を引きつけていた。  
 
「・・・だったら、久々にする?」  
 
唐突に、彼女は言う。  
 
「その代り・・・・・・」  
「その代り・・・なんだよ」  
「その代り、明日の朝ご飯奢ってちょうだい」  
拍子抜けした青年は、きょとんとした。  
いつも、無理難題を吹っ掛けてくる"怖い女"が、  
珍しく常識的な条件を提示してくるのだから、無理もないかもしれない。  
 
「・・・・・・安っぽい条件だな・・・なんか裏があるだろ?」  
「あなたも素直じゃないわね・・・別に私も、ただの女の子だってこと」  
 
「ただの女の子?よくいうよ・・・  
 ネコ族なんかよりよっぽど凶悪な魔法覚えてるし、  
 普段は腕力ないのに、あんな巨大な長剣扱えるし」  
一応、生物学的にはヒトに分類されるが、彼女の戦闘能力は特記に値するのは事実であった。  
 
「愚痴はそれぐらいになさい。するの、しないの?」  
「はい、します・・・させていただきます、アヤメ様」  
「宜しい・・・あなたが年上なんだから、しっかりリードしなさい」  
 
「それじゃ・・・」  
 
胸が早鐘のようにどきどきと鳴っているのが分かる。  
アヤメとするなんて、初めてではないのに・・・久々だから緊張してるのか?  
 
軽く息を飲み込んでから、アヤメの両肩に優しく手をかける。  
 
「アヤメ・・・好きだ・・・」  
 
そして、唇を重ねて何度も軽いキスをする。  
時々、軽く舌を入れたり、キスの合い間にお互いの顔を見つめたり。  
 
いつもの冷たいそれとは違い、脅えるように潤んだ瞳  
腕を掴んでくる柔らかな手に、まだシャンプーの匂いが香る髪  
 
「レオン・・・」  
名前を呼びながら、少女は彼の胸に顔を埋める。  
 
かわいい・・・いつもの悪魔のような表情と行動からは想像もつかない。  
優しく頭を撫でると、顔を赤らめてさらに抱きついてくる。  
こうしていると仕事の時の素っ気無い表情や、自分に対する乱暴な扱いが嘘みたいだ・・・。  
 
そんな彼女をたまらなく可愛く感じ、男は少女の小さな体を、優しくゆっくりと抱きしめる。  
彼女もそれに応え、青年の背中に細腕を回して、強く強く抱き着く。  
 
言葉はいらないとは、こういうことなんだろうな・・・。  
初めて会った時も、怖がってこんな風に胸の中で甘えてたっけ。  
ひょっとすると、いつものツンツンとした  
敵対感情剥き出しなのは偽りで、こっちが本性なのでは?  
 
「・・・・・・っ」  
そんな思考を遮るように、  
少女が不機嫌そうな顔で彼の顔を見つめてくる。  
 
おっと、そうだ。  
今日は自分が優しく抱いてあげなきゃならないんだ。  
 
そっと彼女の体を自分の胸から剥し、乱れた髪を優しく撫でて直す青年。  
 
「アヤメ、愛してる・・・」  
「うん・・・・・・」  
 
バスタオルをそっとめくると、彼女が好んでつけている黒い下着と、  
大きくはないが、形の整った胸のふくらみが見える。  
 
バスタオルを脱がせ取ると、彼女を後ろ向きに座らせて抱き寄せた。  
 
薄い桃色に染まった白い肌、直に感じることが許された彼女のぬくもり。  
彼女はいつも側にいるのに手の届かない所にあったが、今は現実的で生々しい可愛らしさが伝わってくる。  
 
軽く胸を撫でているだけなのに、敏感にビクンッと反応してくれるアヤメ。  
 
「綺麗だよ、アヤメ・・・大好きだ」  
 
耳打ちするように囁くと、今度は首に舌を這わせる。  
 
「あぁっ!あんっ!!」  
 
敏感すぎて面白いぐらい応えてくれる・・・。  
そのまま、その舌で、今度は背筋を舐める。  
 
「ひゃんっ!?」  
「ちょっと、大げさじゃないか?れろっ・・・」  
 
再び、首筋を一舐め。  
 
「あっんん・・・こんな感じ易い体の娘を・・・好きになったのは・・・ああっ・・・」  
 
甘くて柔らかい舌触り、それ以上に甘くて甘美な彼女の声。  
ごくごく普通の可憐で華奢な少女・・・自分が守ってやらなければならない。  
 
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」  
「・・・ごめん、ちょっとやり過ぎたな」  
 
押し寄せてくる快楽で、荒い息になるアヤメ。  
本当に、本当に可愛い・・・。  
 
「んん・・・」  
 
呼吸が落ち着いたのを見計らって、できるだけそっと、やさしくベットに寝かせる。  
目をトロンとまどろませて、夢心地に浸っている表情が、とてもいとおしい。  
 
もう一度軽く口付けをすると、  
黒いパンティの中に手を入れて、湿っている割れ目をなぞって刺激する。  
 
「あああっ・・・あぁあんっ!?」  
 
粘り気のある愛液が彼女の秘部と、割れ目をなぞった指の間に糸を引いている・・・。  
 
「いいよ・・・」  
 
潤んだ瞳でそういわれた瞬間、たまらなくなった自分は肉棒を出し、その先を秘部につける。  
 
「アヤメ・・・いいんだね」  
「・・・ぅん・・・・・・ちょうだい・・・」  
 
「・・・いくよ」  
「ぁ・・・・・・ぁあんっ」  
 
押し殺そうとしている濡れた声が、  
いつも主導権を取られている自分には一段と新鮮で、心地良い。  
 
「・・・くぅ・・・はぁ・・・はぁ」  
 
入ってくる快楽に耐え切れないのか、声が大きくなっていくアヤメ。  
自分も、彼女の膣が締め付ける快感に促されて、ついつい入れる速度を速めてしまう。  
 
「動くよ、いい?」  
 
コクリと彼女が頷いたのを確認すると、ゆっくりとピストン運動をはじめる。  
 
「アヤメ・・・愛してる・・・愛してるよ」  
「あん・・・いいっ・・・いいよ!もっと、もっとちょうだいっ!」  
 
いつのまにか快楽に乗っ取られ、本能のままに夢中で腰を振っている。  
アヤメも夢中になって、自分に身を任せながら髪をかき乱して喘ぎ声をあげている。  
 
二人の結合部から愛液が湿った音をたてて漏れ、  
肉のぶつかり合う音が部屋中に響く、そして・・・。  
 
「アヤメ、いくよ!」  
「うん・・・きてぇ!」  
 
快楽が全身を駆け巡って・・・互いに絶頂のままブルブルと震える。  
それからどのぐらい経っただろう、やがて自分の体は引力に引かれるように、アヤメの上に崩れ落ちた。  
 
アヤメの上から横に体をずらすと、冷たいものが腰のあたりに触れる。  
 
「ごめ・・・ベット汚しちゃった」  
「ひょっとして、潮噴いて・・・」  
顔を赤らめながら、コクンと頷く。  
「いいさ、どうせ汗でびしょびしょだろ・・・」  
「うん・・・・・・」  
 
 
日が昇って、二人で朝風呂に入って、食堂で食事を済ませた後だった。  
「・・・様はつけないように」  
 
「へ?」  
唐突な言葉に、彼は目を点にする。  
 
「本気で名実共に、私より下になったら・・・レオン、あなたはまがいなりにも、それなりの良家の一人息子でしょ」  
「あ、そういやそうだ・・・家は完全に吹き飛んだけど、別荘も各地にあるはずだし」  
 
レオンはネコの国でもかなり裕福な家の生まれで、半年までまではかなり優雅な暮らしをしていた。  
それが、何故またこんな異国を旅しているかといえば、彼の一族の会社が研究していた生物兵器のせいである。  
 
「この事件が完全に片付いたら、私と一緒にネコの国に戻って、家を継ぐ」  
「・・・」  
 
稼業を姉達に任せ、下手したら指名手配犯にでも間違われかねない旅を続けている手前、返す言葉すらなかった。  
 
「そして、私もこんな年中自分の体にネコ耳生やす魔法かけた生活からも開放される」  
「アヤメ先生しつもーん。それぐらいの魔法、あんまりきつく見えないんだけど・・・」  
 
彼女は、常に自分に猫人化の魔法をかけていた。  
大概は彼の前でも、寝るときでさえもそれを開放することはなく、戻るのは戦う時とエッチの時ぐらいだ。  
 
「気分の問題よ・・・それに、耳に触られると感じちゃうし・・・」  
耳をピクンと動かして、手を胸の前に置いてもじもじする。  
 
「それが本音か・・・・・・」  
ついつい、そんな光景を見ると刺激してみたくなるのが男の性。  
レオンもそういった感情には逆らえず、アヤメの耳に息を吹きかける。  
 
「え?・・・・・・ひゃううん!?」  
「労わってあげましょうか、次の目的地見つかるまでゆっくりね」  
「やんっ・・・やめなさいったら!」  
世の中で珍妙な二人組を10組選ぶとしたら、絶対にこの二人も入るだろう。  
 
ブゥゥン  
 
「・・・ハァハァ・・・今度やったら、斬るわよ・・・」  
「はは・・・わ、悪かった悪かった。剣、下ろしてくれないかなアヤメ・・・」  
突然、空中に紅い剣が現れ、レオンの胸元に突きつけられる。  
 
「様はどうしたの?人に物を頼む時は・・・」  
「さっきは、呼び捨てでも良いって・・・」  
「それとこれとは・・・話が違う!」  
 
世界情勢にほんの少し影響を与えるかもしれない、もう一組の変なカップルの旅。  
 

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