「あのさあ・・・・・・」 
「・・・はい」 
細いが力強い腕が俺の首に回され、胸板に柔らかい膨らみが当る。 
決して、悪い心地ではないが・・・悪い心地ではないのだが・・・。 
 
「離れてくれないかな・・・」 
「なんでですか?」 
「なんでって・・・なぁ・・・」 
博士が、元々赤い顔を赤くして怒っている。 
このままだと、今夜は荒れる程度では済まない嫌な予感が脳裏を過ぎる。 
 
「ごめんな、一人身じゃないんでさ・・・」 
首の後ろで組まれた腕を、少々強引に解いて、博士の横に戻る。 
 
「助手くん、浮気したらダメなんだぞっ!」 
抱きつかれて肩と首、両足にズシンと響く博士の重み。吸盤の着いた触手で抓られている頬がジンジンと傷む。 
「ははひゃ、ひゃへへふははいっへ(だから、やめてくださいって)」 
博士に両方の頬を引っ張られていては、口から吐き出される息が言葉にならない。 
「くすっ・・・」 
しかも、さっきまで抱きついてきていた女の子に、笑われてしまう。 
 
「あー痛かった・・・俺は博士のものですよ・・・」 
博士の額に軽くキスをすると、 
怒りで真っ赤だった顔が、ややピンクを帯びた恥かしさで真っ赤な顔に変わっていく。 
これで、最悪な夜だけは避けられたと思いたい。 
 
 
 
「はいはーい、バカップルのノロケはそこまでだよ〜」 
「隊長、おはようございます」 
ゼノスとお嬢のちんまいコンビが、部屋に入って来て、遅れてカレンも入ってくる。 
自分でもバカップルなのは承知しているが、面と向かって言われると照れ、少し顔が緩む。 
 
「えーと、これが新聞配達の人に撮影してきてもらった、現地の写真ですね」 
 
ゼノスが渡してきた写真に目を通す。 
いつのまにか、テーブルにはここら一帯の地図が広げられ、コンパスや定規も置かれている。 
そして、それらの小道具も質の良いプラスチックやアクリル製ではなく、 
古びた金属製だったり目盛が消えかかっている木製だったり・・・。 
さながら、世界第一次大戦あたりの作戦会議のような気分だ。 
 
「随分、古めかしい作戦会議ですね・・・。」 
「3Dディスプレイはおろか、衛星写真も使えないからねぇ・・・ま、こういうのも味があるさ」 
 
「それでは、まず先ほどの写真中央。これは今までイヌの国所属の落ち物としては確認されてない機械です。 
 多分、積荷じゃないかと思うんですが・・・」 
 
ゼノスが、問題の箇所を引き伸ばした写真を黒板に貼り付け、棒で軽く突いてみせる。 
 
「うーん・・・ちょっと手入れられてますけど、積荷に間違いないですね。 
 6足タイプの多足装甲車両、通称タカアシガニ型。主武装は30mm機銃砲と取り外し可能なロケットランチャー」 
 
と、さっき抱きついてきた、先日助けてきた女の子。 
名前はエリザベスで、オペレーターやってたとか言ってたっけ。 
 
 
タカアシガニ型は、作業用と戦闘用兼用という奇妙な設計の機体で、車輪のみから脱却した第一世代の戦闘車両でもある。 
従来機に比べ、山間部や森林などで良好な移動能力を誇ったが、 
ジャンプ能力などが低いため、市街戦は不得手であり支援火器を胴体にぶら下げて郊外から支援任務が主だった。 
 
第二世代以降である人型タイプにとっては、接近してしまえば大した敵ではない。 
接近すれば、というのはさっき言った運用方法のために、 
移動速度が低かった過渡期の人型は、射程外からタカアシガニ型にこっぴどく蜂の巣にされたという歴史がある。 
 
「後は2〜3人乗りの古い戦車が5台に・・・大砲・野砲がズラズラと・・・塹壕まで掘っちゃってるね、これ」 
「よくもまぁ・・・こんな数集めたものだ」 
 
その、タカアシガニの周りに、あまり大きくない戦車が数台で小隊を組んでいるといった形で布陣し、 
戦車を固定砲台に見立てて、さらにその外側に塹壕と移動式の大砲が所々に並べてある。 
前線砦としては、申し分ない戦力と設備。流石犬だけあって、穴掘りに関しては仕事が早い。 
 
「連中、そのまま住み着くつもりじゃないか?」 
「そこら辺、反政府派のゲリラなんかもいますからね・・・コンクリートや有刺鉄線で陣地囲めば、十分住めると思いますよ」 
 
苦笑しながら冗談で言ったつもりが、冗談になっていなかったらしい。 
 
そして、兵器開発をしている割に、こういうことに無頓着な博士は、 
のほほんとした柔和な顔と生暖かい視線で、こっちを見守っている。 
 
「とりあえず、移動も含めた作戦開始は明朝9時。 
我々以外のメンバーはいつものように、近隣の基地から集まった人たちです」 
 
ゼノスが、時間帯やら細かい人員配置を説明していく。 
 
「んじゃ、俺達の準備は明日の5時ごろからってことで・・・」 
 
俺のこの一言で、作戦会議は終了となった。 
 
 
それから、夕食を済ませ、早めに風呂に入り、約20分で投げやりに今日の報告書を書き上げる。 
元々書くスピードが遅いので、普段は1時間近くかかるのだが、 
博士から借りた古いタイプライターのおかげで、通常の3倍ぐらいの速度で白紙の原稿用紙に文章が書かれていく。 
 
これも落ち物らしいが、昔ながらのハンマーでカーボン紙を叩いて印字するタイプなので、 
こっちでも、模造品が細々作られているらしい。 
 
最後の行を書き終えて、改行キーを押そうとした時だった。 
「じょしゅくーん、見せたいものがあるんだけど・・・今いいかな?」 
「別に構いませんけど・・・」 
 
 
コンコン・・・カタンッ 
「はい、なんですか?・・・あなたは確か・・・えーと・・・」 
 
「エリザベスです、ベスで良いですわ。ゼノス君にちょっと用事があって・・・」 
「僕に用事・・・わわわ?!」 
 
そのまま、ベットに押し倒されるゼノス。 
マダラの中でも特に力がない彼は、例えヒトの女性にでも押し倒されてしまう。 
 
「じゅ、獣人強姦は猫の国でも重罪ですよ・・・エリザベスさん」 
襲われる空気を感じ取ったのか、反論に出るゼノス。 
「さっきラピスさんに聞きましたけど、女の子が男の子を襲っても強姦にならないですよ」 
あっさり論破されるその理論、現実に即してない面がある気もするが、事実なのだから仕方ない。 
 
二人の唇が、強引に重ねられる。 
ほんのり甘い味がゼノスの口に流れ込んでくるが、 
常習的に襲われる側にとっては、そんな甘美な味も、不快なものでしかない。 
 
「ふぁ・・・お嬢の名前が出てきてるってことは・・・・・・」 
「すべすべしてて美味しいから、食べておいでって言ってましたわ」 
少年の頭の中で、何かが崩れるような音が響く。 
 
「ヒドいよ、みんなして・・・」 
「・・・泣いてる顔が母性本能擽りますわね」 
涙を浮かべた目に指を添え、すくいとった涙を口に運ぶエリザベス。 
 
「さ、始めましょう」 
「・・・・・・・・・うう・・・」 
足の上に乗られ、なされるがまま服を脱がされていくゼノスと、自分で自分の服を脱いでいくエリザベス。 
完全に主導権は、ヒトの女性側にあった。これがプライドの高い男ならダメージも大きいが、 
既にそんなものはズタズタにされて微塵もないのは、果たして良いことなのか悪いことなのか。 
 
「さようなら・・・僕のプライド・・・」 
 
「なにか、言いました?初めてじゃないなら、大体はわかりますわよね?」 
「は、はい・・・けど、これじゃ動けないです・・・」 
腰の上に馬乗りに乗られて、腕の付け根あたりを捕まれていては、尻尾ぐらいしか動かせない。 
その尻尾とて、さっきの口付けのせいで、力なくだらんと垂れ下がっている。 
 
 
「そのままで良いんです、最初は口でしますから」 
「・・・口で?」 
 
きょとんとしているゼノスを尻目に、 
エリザベスは逆向きに座りなおして、ゼノスの股間に生えているものを掴む。 
「まだ綺麗ですわね・・・」 
「あ、あの、そんなにマジマジ見ないで・・・」 
その言葉に顔を真っ赤にしているものの、触られたせいか股間のものは対照的にすっくと立ち上がる 
「ピクンと立っちゃって・・・ますます好みかも」 
「あ・・・あう・・・」 
いたいけな少年には、耐える術しか残されていない。 
彼女の体に遮られ、いつどこが攻められるか分らない恐怖と、湧き上がってくる快感。 
袋の部分を、或いは竿の先、また或いは裏筋。 
 
攻めに、どれぐらい耐えただろう。 
さっき変えたばかりのシーツが、もう汗でぐしょぐしょになった所でやっと彼女の攻めが一段落する。 
 
「・・・お・・・わった・・・」 
「違います」 
「・・・・・・ひゃ・・・」 
もう、爆発寸前なほどにいきり立ったそれが再び強く握られ、声を漏らすゼノス。 
 
「本番は、これからですわ」 
腰を上げて、手で握ったものの真上に来るように体の位置を変える。 
 
「あ・・・あの、やっぱり乗るんですか?」 
脅える子犬のようにビクビクしながら聞いてくる少年に、女はこう答えた。 
 
「まあ、ゼノス君ってお尻の方が、お好みなんですね・・・」 
エリザベスが、茶化して頬を紅く染める。 
「・・・・・・・・・ぇ!?」 
無言で、首を振るいたいけな少年。その首にエリザベスの両腕が添えられる。 
「冗談ですよ、ウブなんですね、まだまだ・・・かわいい」 
少年にはその笑顔が、一瞬姉の顔と重なって見えたのか、怖がっていた顔が一瞬緩んだ。 
 
 
胸の音が、早くなっていくのがわかる。 
乗られたり押さえられているわけではないのに、油が切れたロボットのように体が動かない。 
 
「・・・ほらほら、堅くなってないで口開けないと・・・キス、してあげませんよ?」 
「っ」 
暖かくて張りのある唇が触れる。 
その心地良さについ噛み締めた唇がゆるんで、柔らかくてトロトロした舌が口の中に入ってきて・・・。 
 
「・・・ちゅく・・・フフ・・・情熱的な男の子は・・・ご褒美あげましょうね」 
「・・・はぁはぁ・・・ちゅく・・・・・・はぁはぁ・・・ご褒美・・・」 
 
「ゼノスくん、女の子はね・・・いつもここに・・・をれてくれる男の子を待ってるものなんですよ」 
 
グイッ 
 
理性がはじけてしまったっていうのは、あんな感じなのか。 
頭がぼうっとして、意識がはっきりした時には、エリザベスさんが僕の腰の上で喘いでいた。 
 
「ハァハァ・・・もっと、もっとください。壊れちゃうぐらいにっ」 
「あう・・・そんな締め付けられたらボク・・・ううっっ!!」 
 
 
ゴゴゴゴゴ・・・ 
「格納庫に何があるって・・・おおっ?!シート被ったこれですか・・・」 
「えっへへー・・・それじゃあ、らいとあっぷ!」 
「こ、これは・・・・・・」 
「使えそうな半導体が入手できたんで、作ってみたんだ♪」 
 
二人の目の前で、光を浴びるものは・・・球体の両サイドに足をつけたような不思議な物体だった。 
しかも、球形の胴体に不釣合いなほど巨大なガトリングガンが頭頂部?に装備されている。 
 
「でも、これ転んだらどうするんですか、手ないし・・・」 
「あ・・・忘れてた。で、でも、助手くんならきっと大丈夫だよ、強いし」 
「・・・・・・博士、まさか次の出撃これで行けと?」 
 
この場合"行く"というより、"逝く"と書いた方が正しそうな気が。 
昔、アニメか何かで見た物体に似てるけど、それも"棺桶"なんて呼ばれていたはずだ。 
 
「うん、助手くん乗ってた人型のは、電装系換装のためにバラしちゃった。 
 3人乗りのは解析で分解してから組み立ててないから、これで行って」 
 
"逝く"で、決定ですか、そうですか・・・。 
 
「助手くんなら、ダイジョウブだよ」 
「流石に、その自慢の助手でも、これは・・・・・・」 
 
いくら俺でも無理がある。 
 
「それじゃ・・・周り誰もないし、ついでにここでしよっか」 
「・・・どちらかというと、そっちの方が本命なんじゃないですか、博士」 
「そうだよー・・・えへへー」 
 
日は明けて・・・ 
 
「おはよーございます、さあ今日もシャキっと仕事こなしましょう!」 
 
「おかしいなー……ボクが襲ったときは肌カサカサでぐったりしてたのに、 
 なんでベスが襲うと、ああも活気に溢れてるの?」 
「ラピス姉様のやり方が、ちょっぴり強引過ぎるんですわ。 
 男の子なんてちょっと立ててあげれば、すぐにああやって自信取り戻します」 
「そういうものなのかなー・・・って、姉様?」 
「だって、お姉様のほうが私より、XXX才ほど年上ですわ」 
「ぐぬぅ・・・可愛くない妹分だなあ」 
 
「空が青いなぁ・・・嗚呼、作戦前だってのに体がダルい・・・」 
 
「カズヒロ隊長は相変わらず干からびてるね・・・」 
「あのウネウネしてひよひよしてる人って、そんなに夜激しいんでしょうか・・・」 
「なんったって、手が10本あるようなもんだもん・・・全身くすぐられるだけでも相当キツイんじゃないカナ」 
 
「おはよう、皆の衆・・・・・・なんだ、珍しくゼノスが生き生きしてる・・・」 
 
「あ、カレンお姉さま。おはようございます」 
「姉さん、おはよう」 
「おはよ・・・そういえば、カレンちゃんは一人身か」 
「???」 
 
「カ〜レ〜ン・・・」 
 
「ぎゃ!・・・って、隊長・・・またゾンビのように・・・」 
 
「悪いけど、今日は指揮代わってくれないか・・・。 
 体調が悪いし、いきな妙にショボい新型乗せられてるし・・・」 
 
「構いません、が・・・とりあえず、夜の営みをほどほどにしたほうが、宜しいのでは? 
 特に、私室以外で為されると、たまたま通ってしまった場合、目のやり場に・・・」 
 
「あ、カレンちゃん赤くなった・・・」 
「ひょっとして、カズヒロさん狙いなんでしょうか、カレン姉さまは」 
 
「・・・悪い、いろいろと・・・気をつけるよ、出来る限り・・・そういや、なんでゼノスが朝から元気なんだ?」 
 
第8話に続く 
 

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