(人物設定)
主人公:中条礼馬(なかじょう・れいま)。五歳頃にこちらの世界に落ちてくる。そのため、こっちの世界より異世界での経験が長く、まして漢字など知らない。
周囲からは(リュナ除く)「レーマ」と呼ばれている。
現在16歳。身長は165センチ程度、やや細身だがこっちの世界ではずっと山岳地帯で暮らしているため、見た目よりは肉体的には強い。
現在の環境は、アンシェル、リシェル姉妹のペット。名目上は召使なのだが、誰からもそう認識してもらえていない。
いちおう、愛玩動物と呼べる程度の可愛らしい顔立ちは持ち合わせている。
生きていくために、剣の腕も多少はあがったが、リュナはもとより、アンシェルにもとてもかなわないのが実情。
アンシェル:カモシカ族の少女。18歳。長い金髪を持つが、その中に見える二本の角がちょっと怖い。
女王派の騎士だったが、一度囚われの身となり、今は王弟派のリシェルの家で軟禁という名目で一緒に暮らしている。
しかし、軟禁とは名ばかりで実際にはいつも外に出ては鍛錬に余念がない。
真面目な性格で、気が強い。特に恋愛沙汰に関してはきわめて堅物。
他人にはそうでもないが、なぜかレーマに対しては必要以上に厳しく当たる。
レーマを何かと意識しているようだが、リシェルやリュナはわざと気づかぬふりをしている。
リシェル:アンシェルの妹。姉より少し幼く見える17歳。
王弟派の有力者、ルークス家の貴公子、リュナ卿と故意に落ち、そのまま結婚した。
レーマをずっと飼っていて、幼馴染以上ペット以下の微妙な関係が続いている。
天然系だが、それだけに周囲を(特にレーマを)困らせることが多い。が、悪意はなく、無邪気な笑顔がすべてを許す気にさせる。
姉とは対照的な甘えん坊だが、意外としっかりした部分も・・・まあ、なくはない。
リュナ:リシェルの夫、21歳。王弟派の有力者。
剣術に秀でた好漢で、レーマにとっては憧れの存在。
自分の妻の夜の相手をレーマに頼んだり、時々突拍子もないことをする。
アルナ
マイマイと呼ばれる種族の少女。13歳。
カタツムリの殻と触覚を持ったかわいい女の子。言動はちょっと子供っぽいが、明るくて人好きのする性格。
少し前は、誰かのペットだったらしいが、戦乱で主人を失い、そのまま野良マイマイになっていたところをレーマ達と出会い、一緒にしばらく旅をした。
現在は白のピラミッドにあるマイマイ保護施設で、他のマイマイの少女たちと一緒に仲良く暮らしている。
コウゼン
ライオン族の老武術家。年齢不詳だが外見的には60歳前後。
見た目は鬣にも白髪が混じっており、肉付きも若者に比べると落ちていて、あまりぱっとしない。
だが武術の達人で、およそ武芸全般に通じて扱えぬものはない。
気とよばれる生体エネルギーを使いこなし、遠距離の敵を指一つ触れずに吹き飛ばすことさえできる。
また、敵の気脈をよみ、その動きをことごとく見切るという離れ業の持ち主。
見た目の貧相さからは想像もつかないスタミナと攻撃の破壊力は、達人の域に達した気功のためらしい。
悪心を持っては気功の真髄は見えないと考えており、彼の道場では武芸のみならず、哲学や東洋医学などの学問も積極的に行っている。
リュナにとっては師匠にあたる人物。
ファリィ
コウゼンの娘。一説には養女とも。外見年齢は15歳。
コウゼンから武芸の手ほどきを受け、その腕は若くして一流で、リュナは彼女と18度も試合をして一度しか勝てなかったほど。
気功も扱うが、いまだ父の域には届いておらず、遠くの敵を気で撃つことや、敵の動きを気脈で見切るなどといったことはできない。
しかしそれでも、気を乗せた一撃は文字通り人間離れした破壊力を秘めており、また気功の成果か、疲労もほとんど感じないため、長期戦になればなるほど強い。
黄色いチャイナドレスの似合う元気少女。リュナいわく「夜行性」。
リュナとは何かと因縁のある少女で、いまでも定期的に連絡を取り合っている。
エグゼクターズ
国際犯罪者討伐のために作られたカモシカ族の国営特殊警備隊。
かつては陸の孤島に等しかったカモシカの国にも国際犯罪者の影が跳梁し始めることになると、従来の兵制では跳梁する国際犯罪者を追うことが困難になっていた。
そのため、従来の縦割り管轄による軍事体系とは分離した遊撃特殊警備隊の編成が急務となり誕生した。
国内における徹底追尾を許可したことでカモシカ国内での国際犯罪者の駆逐に大きく貢献するが、今度は国境付近で仕事を行い、そして越境して逃亡する国際犯罪者が増加した。
そのため、先代の統治時代、エグゼクターズの越境権限を求めて近隣諸国との外交が繰り返され、粘り強い外交の結果、越境権限は認められた。
しかしその代償として保有武力の大幅な制限と、近隣種族との多種族混合部隊への組織変更を求められることとなり、エグゼクターズは従来に比べて少ない武力での戦闘を余儀なくされた。
そのため特殊訓練による個人戦闘力の強化が行われることとなり、気を会得することによることで個人戦闘力の底上げを図ろうという動きになった。
数年前、同時期に100人以上の隊員が一斉に行方をくらませたことがあり、もしかするとそれと気功の習得に何らかの関係があるのかもしれない。
獅子の国
カモシカの国の南西、蛇の国のすこし北にあり、広大な平野を領有する帝政の大国。
ひとことでいうと中華風武術大国。なのだが他国に聞こえて有名なのはむしろ東洋医学と中華料理。ただし四川料理みたいな辛いのはあまりない。
武術は……というと、秘儀とか秘伝とか秘拳とかいう名目であまり公開されていないこともあり、そのため知名度は多種族では知る人ぞ知るという感じ。
ただしそのレベルは恐ろしく高い。その中身を知る人が見れば、もしかすると大陸トップクラスかもしれないと思わせるものがある。
国内では毎年四回、宮城の武闘場で春夏秋冬の節分にあわせて武術大会が開かれていて、その優勝者は国士と呼ばれる。
とりあえず、種族を問わず誰にでも門戸を開いてはいるが……少なくとも、変な仮面をつけたやたらと強い長身のネコは参加していないのではないだろうか。
まあ、そもそも他国には無名だし。
他国にあまり興味がないらしく、そのせいか独自の文化を築いてきた。