《岩と森の国ものがたり(仮》  
 
「この・・・愚か者めがあっ!!」  
その言葉が終わるより先に、少女の手に持った枕が少年の顔面に向かって飛んできた。  
横に飛びのくようにして、あわててそれをよける。よけたその先に布団が飛んできた。  
布団を払いのけるより先に、毛布、目覚まし時計、ぬいぐるみなど、少女の手の届く範囲にあるありとあらゆるものが投げつけられる。  
布団やら毛布やらぬいぐるみやらで山のようになった中から、少年が這い出してくる。  
這い出してきた少年の目の前に、抜き身の剣が突きつけられていた。  
「・・・きさまという男は・・・」  
剣をつきつける少女の目が冷たい。  
「ペットの分際で・・・」  
声も、怒りを隠そうともしていない。  
「主人の寝込みを襲うとはどういう了見だっ!!」  
 
「ね、寝込みを襲うって・・・」  
あわてて弁解しようとする。  
「もう八時になるから起こしにきただけ・・・」  
「黙れっ! 八時まで寝てはならんと誰が決めた!」  
「・・・だって食事が七時さんじ・・・」  
「ならば部屋の外からノックでもして呼べば済む話だろう!」  
(・・・十分以上ノックしたのに・・・)  
 
「あらあら・・・どうしましたの姉さま」  
下の階から、少女とよく似た、しかし少し幼い少女が上ってくる。  
「・・・リシェルか。見ての通りだ。この愚か者が、人の寝込みを襲いおったのでちと問い詰めておった」  
(だから起こしにきたんだって・・・)  
そういいたいが、この二人の前で言い訳するのは正直怖い。  
「あらあら・・・夜這いですか」  
そういって、リシェルは少し怪訝そうな表情をする。  
「夜這い・・・というにはもう日も昇ってますわね。朝這い・・・では変ですし・・・こういう場合なんていうんでしょう・・・」  
(そんなことどうでもいいっ! 起こしに行けって言ったのはアンタだ!)  
心の中で毒づく。口に出せないのが悲しい。  
「うーん・・・こういう場合は・・・ほふく前進・・・」  
(それは違うっ!)  
自分のおかれている立場をつい忘れて、そう突っ込みそうになる。  
「・・・なにか違いますわね・・・うーん・・・もっとそれっぽい言葉・・・陵辱・・・」  
(いや、それも違う!)  
「レイプ・・・強姦・・・暴行致傷・・・なかなかよい言葉が見つかりませんわ・・・」  
(当たり前だっ! ただ起こしに来ただけで何でレイプとか強姦とか・・・)  
「うーん・・・18歳金髪美少女を襲う恐怖の暴行魔・・・少し弱いかしら・・・」  
(・・・弱いって何がだよ!)  
「・・・美少女姉妹を襲う汚れた欲望・極悪非道16歳少年の心の闇・・・」  
(姉妹って増やすなよ! いやそれ以前に、極悪非道って何だよ・・・)  
リシェルは指を頬に当てて、物思いにふけりながら次々と変な言葉を口にする。  
「うーん・・・」  
(まだ何か増やす気かよ・・・)  
「アンシェル姉さま、何かもっといい言葉ありませんか?」  
その言葉に、アンシェルと呼ばれた姉の方がかぶりを振る。  
「呼び方などどうでもよい。いまはこの腐れ外道をどうするかだ」  
 
「そうですわね・・・」  
また考え込むリシェル。その横でアンシェルが言う。  
「私としては、火あぶりにしてもあきたらんのだが、まあお前との共有物でもあるし、独断で火あぶりにもできん」  
(わざわざ起こしにきて火あぶりにされてたまるか!)  
「・・・そうですわね。私としては・・・そこまで目くじら立てなくてもよいと思いますわ」  
「そういうがな、リシェル・・・この外道は」  
「だって動物ですもの、発情期だってございますわ」  
(・・・ちょっと待て!)  
少年の思いに関係なく、リシェルは言う。  
「うーむ・・・しかしなあ・・・」  
「ちゃんとしつけても、動物ですもの。発情期の欲情には勝てませんわ」  
(・・・発情期・・・動物・・・)  
もう、心の中でさえ反論する気力が失せていた。  
「・・・そういうものか。まあ・・・言われてみれば動物なのだな。われわれ人間と似ているから、ついつい同じように考えてしまうが」  
「そうですわ、姉さま」  
(・・・・・・)  
泣きそうな気持ちだった。  
 
少年・・・レーマが、この世界に落ちてきたのは今から10年近く前になる。  
まだ幼稚園に通う前だった。友達とかくれんぼしていたときに穴のようなものに落ちて、この世界に来たのだった。  
それで、泣きじゃくり、おなかがへって倒れこんでいるところを、まだ子供だったころのリシェルとアンシェルに見つけられたのである。  
それ以来、ペットとして飼われている。  
ペット・・・つまり、人間ではないということである。  
少なくともこの国において、人間とは耳か角か尻尾か・・・とにかく、ホモサピエンスに何かがくっついてる種族のことだった。  
彼女たち・・・アンシェルとリシェルの姉妹の例だと、きれいな尻尾と、ちょっと怖い二本の角がある。全身はすらっとしていて、運動神経が高い。  
カモシカ族、と言うらしい。  
 
彼女たちカモシカ族は、標高が高く、険しい山岳部に国を作って暮らしている。  
料理はもっぱら植物主体の精進料理。ただし高山植物や山菜をふんだんに使い、料理の種類は豊富だ。  
もっとも、平和というわけではない。  
数年前に前国王が崩御した後、王女のエリザベートが跡を継いだが、女性が王位を継ぐことに反発した一部貴族が反発し、前王の弟に当たるシャリアを擁立して内乱を起こした。  
その戦禍がいまや国土全体に広がっている。  
戦禍の中で、リシェルとアンシェルの家族は一度、離れ離れになっている。そのとき、レーマはリシェルに連れられていた。  
離れ離れになった姉妹は、それぞれ別の道を歩み、アンシェルは女王派の騎士になり、リシェルは王弟派貴族の貴公子と結婚した。  
その後、アンシェルは戦乱の中で王弟派に囚われたが、たまたま事情を知ったリシェルが、軟禁という名目で救い出した・・・という経緯がある。  
そして今、レーマはまた二人のペットということになっている。・・・もっとも、名目上は人間扱いされ、召使いということにランクアップされているはずなのだが、姉妹にはまったくその認識はない。  
十年近い歳月が過ぎ、凛々しい・・・というにはまだ心もとないが・・・少年に育っても相変わらず、かわいいペットにすぎないのである。  
 
「さて、そうはいってもしつけは必要だな」  
アンシェルが、ようやく剣を収めて言う。  
「まあ、それは必要ですわね」  
と、リシェル。自分が姉を起こしにレーマを走らせたことなど記憶にないらしい。  
「・・・さて、どうするべきか」  
「トレーニングにつき合わせてはいかがですか?」  
(・・・アレに付き合えって?)  
カモシカ族の動きは、人間がついていくにはあまりに素早い。ましてアンシェルは、騎士になっただけあってとてつもない運動神経を持つ。  
ぞっとしていると、アンシェルが言った。  
「そうだな。このようなことがおきるのも、たるんでいる証拠だ。一度きちんと鍛えなおしたほうがいい」  
(・・・勘弁してくれ・・・)  
「そうですわね」  
リシェルが無邪気に笑って言う。  
それで、決まりだった。  
 
そして一時間後。  
「遅いぞ! しっかりしろ!」  
アンシェルの叱咤が飛ぶ。  
「・・・・・・」  
声が出ない。が、何とかついていく。  
標高1500メートルの山岳地帯。空気の薄い上に足場の悪い山の中を、アンシェルは普通に走っていく。  
全身バネのような肢体と、ずばぬけた運動神経のたまものだ。・・・が、ヒトのレーマはそうもいかない。  
子供のころに比べればマシにはなったが、それでもついていくのがせいいっぱいである。  
「普段の鍛錬が足りぬのだ! それだから夜這いなどかけようということになる!」  
(だから・・・)  
反論する余力もない。息を切らしながら、ひたすらアンシェルの後ろをついていった。  
 
ランニングを終えると、屋敷の中で剣の鍛錬になる。  
もっとも、実際に仕合などやっても、レーマではとてもアンシェルの相手にならないため、二人で訓練する場合は、アンシェルがレーマを教えるような形になる。  
「もっと速く突けるはずだ! 左腕が遊んでいるから全身の速度が乗らんのだ!」  
「切りおろしから振り上げる返しが鈍い!」  
「一撃必殺! 最低限の動きで確実に敵をしとめられねば一対多では勝てん!」  
叱咤が次から次に飛ぶ。  
・・・レーマからみると、アンシェルは天才のようにさえ思えるが、アンシェルの技量でも一度は囚われの身となっているのが現実なのだ。  
 
剣の鍛錬が終わっても、解放されるわけではない。  
騎士の教養というものがいろいろとある。  
音楽、礼法、軍学・・・などなど。そういうのも、付きっ切りで教え込まれる。  
「よいか。騎士のペットというものには、それ相応の教養が必要だ。舞踏会や音楽界についていく事もある。主人とダンスも踊れなかったり、主人の伴奏ができぬようではペット失格だ」  
(・・・・・・)  
リシェルには旦那がいたから、レーマがそのようなものについて行くことはなかった。が、アンシェルはいまのところ一人身である。  
パートナー候補としての徹底したレッスンが夜まで続いた。  
 
トレーニングその他が終わったのは、もう9時過ぎのことだった。  
ぼろぼろに疲れ果てて戻ると、リシェルの主人であるリュナ卿がいた。  
美男子というよりは精悍な顔つきの好漢で、中身もそれに異ならず、身分をかさにかけず、誰とでも・・・妻のペットにさえも対等に口を利く。  
さらに剣術に秀で、アンシェルにとっては現在の剣術の師でもある。  
レーマにとっては、まさに男の理想像ともいえる存在だった。  
 
「レイマ君、お疲れのようだね」  
リュナ卿は、ちゃんと「レイマ」と呼ぶ。  
レーマの事をちゃんとなかじょう・れいま・・・中条礼馬という名で発音してくれるのは、彼だけだった。  
「あ・・・旦那様」  
「大変だろうけど、君はスジがいいみたいだ。アンシェルちゃんに鍛えてもらえれば、いずれはかなりの腕になるよ。・・・もしかすると、初の人間外の騎士になれるかもしれない」  
「・・・がんばります」  
正直、返事も大変だったが、リュナ卿の前ではそうも言っていられなかった。  
「それで・・・だ。実は、今日は会議があってね。」  
「会議・・・ですか」  
珍しいことではなかった。王弟派でも実力者であるリュナ卿は、会議とか軍議にはいつも呼ばれていた。  
「それで、妻の世話をおねがいしたいんだ」  
「・・・わかりました」  
リュナ卿が「妻の世話」という場合、することはひとつしかない。  
夜の相手、である。じっさい、カモシカ族ではそれも立派なペットの役目だった。  
まあそうはいっても、普通は他の男に夜の相手を頼むことはない。つまりは、レーマはまだまだ彼には「大人の男」扱いされてないということだった。  
「妻がいうには、少しづつだけとそっちも上達してるみたいだ。これからは僕も、会議で夜を空けることが増えるから、すこしづつ鍛えていけばいい」  
こんなことを言われる時点で、男としてはまだまだ眼中にないと言われているも同然だった。  
 
アンシェルに夜の事情を説明すると、そのままリシェルの部屋に向かう。  
・・・実は、まだ夜の鍛錬が待っていたのだが、それをやると正直身が持たなかったので、運がよかったのかもしれない。  
リシェルの部屋に着くと、すでにリシェルは寝間着に着替えていた。  
「おつかれだったわね」  
そういって笑う。  
「・・・はい、お疲れでした」  
「向こう、お風呂沸いてるから汗ながしてきて。それから・・・ね」  
「はい」  
 
風呂で汗を流す。サウナ風呂ではなく、湯を張った湯船である。気持ちよいが、長風呂するわけにもいかない。  
リシェルは先に風呂に入って、ずっと待っているのである。  
バスローブに着替えると、寝室に戻った。  
 
「・・・姉さまに、ついてけるようになったんだ」  
「まだまだですよ」  
「でも、子供のときなんて、姉さまどころか私にも追いつけなかったのに」  
「・・・そうでしたね。それで、いっつも泣いて」  
「いつのまにか、私を追い抜いちゃったよね。・・・いつか、姉さまも追い抜けるんじゃないかしら」  
「そう・・・なりたいですね」  
「なれるわよ。姉さまも、そう思ってるみたい」  
「アンシェル様が?」  
「うん。・・・姉さま、素直になれないから。でもレーマのこと、一番買ってるのは姉さまよ」  
「・・・・・・」  
「なのに、夜這いなんてしちゃだめ。・・・私がいるのに」  
そう言って、レーマの鼻の先にちょんと唇を合わせた。  
 
「夜這いなんかしてませんよ」  
そういいながら、リシェルの寝間着に手をかけ、脱がせる。しなやかな肢体と、小ぶりな乳房があらわになる。  
「リシェル様が、起こしに行けっておっしゃったんでしょう」  
「・・・そうだったっけ」  
「そうです」  
そういいながら、乳房をに顔を近づけ、淡い桃色の乳首を舌先でつつく。  
ぴくんと、体がしなる。  
「んっ・・・」  
小ぶりな乳房だが、感覚は良い。そのまま舌で乳輪をなぞるように這わせると、かすかな吐息が漏れる。  
そして一度、口を離す。そして、寝間着の帯を解き、それを脱がせる。寝間着の下には、何もつけていない。  
色白でしなやかな裸体。子供のころは、山の中を一緒に書けぐった肢体は、今でもしなやかさを失ってはいない。  
胸も尻も小ぶりだが、それは無駄な脂肪をつけていないがためであり、全体のバランスは美しいの一語に尽きる。  
「いいじゃない、そんなこと」  
「よくありません」  
そういいながら、リシェルの背に左手を回して支えると、右手で乳房を愛撫する。  
「・・・あっ・・・」  
「その上、夜這いとかレイプとかおっしゃられて」  
右手の動きをすこし激しくする。揉みしだきながら、時折乳首をつまみ、刺激する。  
「反省、してください」  
「ひゃんっ・・・は、反省って・・・あっ・・・」  
あえぎ声を上げて身を反らせるたびに、小さな耳が震える。かわいい二本の角は動かないが、それでも繊細な金色の頭髪が時おり絡みつき、妙になまめかしい。  
頬に、軽くキスをする。するとリシェルは、自ら求めるようにレーマの方に顔を向ける。  
「どうして、ほしいですか?」  
わざとそう口にする。その間も、胸を愛撫する手は止めない。  
「・・・きす・・・して・・・」  
頬を染め、とろんとした甘い声でそう求める。  
 
「はい」  
そう言って、鼻の頭にキスをする。駄々っ子のように首を左右に振るリシェル。  
「・・・違うよぉ・・・もっと下・・・」  
「はい」  
こんどは、胸の谷間のちょっとだけ上。  
「・・・違うよぉ〜・・・わかってるくせに・・・」  
「はい、わかってますよ」  
そういって微笑むと、唇を合わせる。  
唇を合わせるとすぐに、リシェルから舌を絡めてくる。  
「ん・・・ふぅん・・・んん・・・」  
熱い息が、顔に当たる。舌をからめながら、右の手の愛撫を少し変える。  
乳房を右手の刺激から解放すると、今度は脇腹に手を添え、軽くくすぐる。  
「ひゃんっ・・・あ・・・いやっ・・・ひゃは・・・やん・・・」  
くすぐられて、思わず笑う。たまらず、手ではねのけようとする。  
「・・・リシェル様も、我慢が足りないようですね」  
わざとそう言うレーマ。長い付き合いで、言葉責めと焦らしに弱いことはわかっている。  
「ちがうよぉ・・・我慢してるもん・・・」  
甘えたような声。夜のリシェルは、ずいぶんと甘えん坊になる。  
「言いましたね。じゃあ、ちょっとテストしてみますか?」  
そう言って、リシェルを寝かせると、両手をベッドの縁に皮ベルトでつなぐ。  
・・・リュナ卿なら、こんな小道具や口先三寸を使うまでも内容なのだが、レーマではまだまだその域には達していない。  
ばんざいしたような格好のリシェル。その上に馬乗りになって、軽く脇腹をくすぐる。  
「ひゃんっ! や・・・やだよっ・・・く・・・くすぐったいよ・・・あ・・・きゃんっ・・・」  
くすぐられるたびに、必死に身悶えてその責め苦から逃れようとするリシェル。だが、両手を拘束され、馬乗りになられているためどうにもできない。  
「我慢強いんですよね? こんなの、全然平気ですよね?」  
そう言って、さらにくすぐる。脇腹だけではなく、時折乳房を愛撫したり、乳首を指で弾いたりする。  
そのたびに、しなやかな裸体が大きく跳ね、身悶える。  
「や・・・やだっ・・・やだよぉ・・・こんな・・・きゃはっ・・・ひゃああんっ・・・」  
全身が、ずいぶん火照り、汗さえかいている。くすぐりに弱いのも、相変わらずらしい。  
 
息も絶え絶えになるまでくすぐると、ようやくレーマはくすぐるのをやめた。  
「・・・はあっ・・・はあ・・・れーまの・・・いじわるぅ・・・」  
荒い息の中で、そう口にするリシェル。恍惚に潤んだ瞳は、すでに半分焦点が合っていない。  
「ふふ・・・もうそんなこというんですか? いじわる、やめちゃいましょうか?」  
「・・・いじわるぅ・・・」  
甘えるような声。  
「じゃ、どうしてほしいんですか? 言ってもらえれば、ちゃんとその通りしますよ。・・・ペットですからね」  
「・・・あそこ・・・私の・・・大事なところ・・・お願い・・・」  
声は、すでに正気を失ったような官能の響きを持っている。  
「わかりました」  
そう言うと、馬乗りになっていた体を立ち上がらせて、ベッドの下に座った。  
そして、いつの間にか濡れきっている下腹部の茂みに口付け、舌を動かす。  
「あんっ・・・」  
両手は、まだベッドの縁に拘束されている。その上半身が、思わず大きく動き、そして皮ベルトに阻まれた。  
リシェルの恥部を責めるのも、もうずいぶんな回数になる。どこをどう責めればよいか、体が覚えていた。  
強くすったり、舌で愛撫されたりと、敏感な肉の芽に強い刺激が与えられるたび、自由を奪われた上半身が激しく暴れ、そして皮ベルトにさえぎられてそのままベッドに倒れる。  
「やっ・・・! ああっ! ・・・あっ・・・や・・・ふぅん・・・」  
言葉らしい言葉は、もう出てこない。  
あと少しで限界を迎えるというときに、レーマは舌での愛撫をやめた。  
「・・・・・・はあ・・・はあっ・・・」  
荒い息をするリシェル。その腕の戒めを解く。  
「・・・はあっ・・・はぁ・・・お願い・・・」  
目だけをレーマに向けて、懇願する。  
「はい、わかりました」  
そう言って、すでに硬くなった己の肉棒をレーマはリシェルの中に挿入する。  
「んっ・・・んん・・・ん・・・ああっ・・・あん・・・」  
ピストン運動は、わざとゆっくりと行う。ペットとご主人様の行為では、主人の余韻のほうが、ペットの欲望よりも大事だった。  
「あ・・・ん・・・ああぁぁぁっ!」  
ほんの数往復で、リシェルは歓喜の声を上げて果てた。  
 
リシェルは果てたが、レーマのほうはというと・・・愛撫ばかりしていて、挿入してもほんの数往復にすぎない。  
抜いた肉棒は、愛液まみれになっていたとはいえ、まだ硬くなっていた。  
肉棒についた愛液を、リシェルが絹布で拭く。そして、言う。  
「ねえ・・・今日のこと、反省・・・してもいい?」  
「うん」  
「じゃ・・・反省するね」  
そういって、肉棒を口にくわえる。そして、舌で刺激を加える。  
リシェルも、リュナ卿にいろいろと手ほどきを受けている。16歳の肉体では、それほど長くは耐えられなかった。  
声を上げて、果てる。肉棒の先端から溢れた白濁したものを飲み込むと、リシェルは舌なめずりして言う。  
「・・・やつぱり、発情期だ」  
「・・・そうですよ。悪いですか?」  
そういって、リシェルに覆い重なるようにベッドに倒れこむ。  
「・・・ううん。だって、ペットだもんね。仕方ないし」  
「そうですね。仕方ないですよ」  
そう言って、また唇を重ねた。  
 
翌日。  
「・・・貴様というやつは」  
アンシェルの機嫌がずいぶんと悪い。  
「ずいぶんと余力を残していたようだな」  
「・・・いや・・・その・・・」  
「言い訳は聞かぬ! 今日のトレーニングは昨日の倍だ!」  
(・・・死ねってことか?)  
そんなときに、リシェルがやってきた。  
「あら、姉さまおはようございます」  
(・・・・・・なんでこのタイミングで・・・)  
「ああ。昨日はずいぶん激しかったようだが」  
その言葉に、にこりと笑う。  
「ええ。彼も発情期ですから」  
その言葉に、アンシェルの目がさらに怖くなる。  
「・・・そうか。・・・レーマ、もはや言い訳は無用だ。朝食が終わればすぐにアップだ、いいな」  
(fin)  
 

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