仄暗く蒼い部屋。
小さな円窓から差し込む淡い光。
光の筋が映りこむ壁。水が絶え間なく流れ、伝い、壁面に水鏡を作り出していた。
そこに映るのは、部屋の様子。
ベッドの手前にあるサイドボードには食い散らかされた皿が幾つも重なっていて。
空になったグラスとサーバー。
手を拭くおしぼり。
そんなのが乱雑に積み重なっている。
ぴかぴかに磨き上げられた床に落ちている、蹴り出された掛布。脱ぎ捨てられたドレス。
その背後に映るキングサイズのベッドの上で、小さな喘ぎ声が時折、漏れる。
水音さえ聴こえない、とても静かな、部屋。
ううん、水音はしてる。
淫靡な、ぴちゃぴちゃって音が。
わざと立てられてる。
挿し入れられた優美な指によって。
腰を這う舌の感触。
尾てい骨の上をなぞられて、びくっと足が跳ねる。
何度目かの脱力。ぐったりと、マットレスにからだが沈み込んだ。
顔を上げると、媚態を晒すあたしが、水鏡の中であたしを覗き返している。
恥ずかしくて。
でも興奮して。
崩れた腰をまた、双つの腕が引き上げる。
あごをつけて、腰だけ上げる、そんな上半身の崩れた四つん這い姿で、舌が、あそこに差し込まれた。
「んっ、あっ……」
自分の指を噛んで、声を殺す。
まるで調べものをされてるように、幾度も肌の上を、指が、唇が、舌が、這い回る。
でも、いつまでも焦らされて、欲しくなるものは与えてもらえなくて。
だんだん自分がいけないコになっていく。
ごはんを食べてる間も、身を清める間も、こうしてベッドの上に引き上げられてからも。
おしおきは止まなくて。
すっかり太股は濡れている。
シーツの染みが薄く、でも確かに拡がっていって。
乾くひまもない。
「ふぁ、るむぅ」
おしりの圧迫感が少し遠のいた。
「ふふっ、欲しくてたまらない顔をしてるね?」
水鏡ごしに、皮肉げな笑みを浮かべたファルムと目が合う。
「でもだめさ。このぐらい、やられたんだろ?あの二人に。まだまだ甘いよ。このファルムが欲しくて欲しくて気が狂うくらい、躾けないとね」
もう狂ってるよぉ……。
なめたい。しゃぶりつきたい。あそこにほしい。
そんなピンクな考えしか頭に浮かばない。
「も、舌だけじゃ、やなのぉ」
口を開けて舌を出し、おねだりする。
「じゃあ、これでどうだい?」
あそこに指がまた挿し入れられる。
はあっ、一本、二本。
きゅっきゅっとあそこで締め付けた。
物足りない。
違うの、欲しい……。
「随分しめつけてくるねえ。もういやらしい気分が復活したのかい?」
中のイッちゃう場所をくいくいと刺激されて、また硬直した後、崩れ落ちる。
「そぉ、なの。ふぁるむがほしいのぉ……。ちょーだい?」
ファルムの指が引き抜かれて、あたしの口元に愛液にまみれた指が差し出された。迷わずあむっと口に含んで、舌をたっぷりからめて、唇でしごく。
ファルムの吐息が熱を帯びた。
「………そうだねえ。あの薬も抜いたし、このファルムの自制心もそろそろ限界だよ……いれてあげようね、シロ。ご褒美だよ」
腰を軽く持ち上げられて、あたしは自分からあそこを見せつけるように両手で拡げる。
近づいてきたものに腰をすりつけて、いれやすいように導く。
ぬちゅ、という音がして一気に貫かれた。
「あぅっ…!」
は、あ、き、もち、いい、よお……。
あたしはすぐに達してしまい、うつぶせに倒れ込む。
そのまま寝バックでファルムがあたしを責め立てる。
肉のぶつかる音と、あたしの鳴くような高い喘ぎ声と、いやらしい水音が一緒になって。
あたしはその度に、脚や上半身を反り返らせながら、懇願するようにファルムの名を呼ぶ。
「ちゃんと四つん這いにおなり……」
欲しくて、欲しくて、言う通りにする。
「も、もぉ、らめえ……」
「なにがだめなんだい?こんなにいやらしい姿でぱくぱく欲しがっているのにさ」
腰を打ち付けられながら、耳元であたしの様子を低く艶やかな声で実況される。
「らめなの。へんになっちゃうのぉ……」
みみたぶを舐められ、目の前が遠くなる。
「そうかい?じゃあ、欲しいものをいってごらん?」
意地悪なファルムの声。大好きなファルムの声。
「あっ、ふぁっ、るむの……どくどく、ほしいの。いっぱぃ…どくどくしてほしいの…」
目の前がちかちかする。目が見えない。
感じるのはファルムの感触だけ。快感だけ。荒い息だけ。
「出して欲しいのかい?じゃあちゃんとおねだりしないとねえ……」
「出してっ、出してくらひゃい……あんっ、もぉ、もぉげんかいらのぉ……っ!」
どくっ。
ファルムのが奥いっぱいに突き込まれて、動きが止まる。
でも中でたくさんびくびくしてる。
止まらない。
「あっ、あ……っ、いっぱい、でてるう。どく、どく、するう」
あたしは歓喜の声をあげながら合わせてまた達した。
おなかの中に吐き出されたものが熱く、うねるようにあたしを満たしていく。
ぐったりと倒れ込もうとしたあたしを、ファルムが抱き寄せて。
あたしたちは重なり合ってゆっくりと沈み込んだ。
余韻が冷めるまで、そのまま繋がっていた。