「アベア様、アベア様、どうぞいらしてください」  
深夜二時。  
紙に朱色で書いた魔法陣に向け呪文を唱える。  
「アベア様、アベア様、どうぞいらしてください」  
陣の中心にはナイフを突き立てられた写真。  
「アベア様、アベア様、我が望みを叶えたまえ」  
そして僕の側にはイケスに入った蛙。  
よく肥えたそれを掴み、用意しておいたもう一本のナイフを振り下ろす。  
ブシャという水音ともに溢れる血を魔方陣に振りかけ、  
僕は最後の呪文を口にする。  
「アベア様、アベア様、血の代償をもって我が敵に死を与えたまえ」  
 
アベア様がみてる  
 
僕の名は雪城正志。  
僕が大学二年の頃に両親が事故死して以来  
妹の加代子と二人でマンションに暮らしている。  
生活は楽じゃない。  
僕は近くの塾で講師を、加代子はコンビニでバイトをしている。  
それだけなら必死にがんばる。  
けど僕たちの周りには敵が多すぎる。  
僕の授業になんくせつけて給料を下げようとする塾の経営者。  
ただ若いからと言って加代子をいじめるマンションの住民たち。  
そして大事な加代子にセクハラをするコンビニの上司。  
 
何故だ、父さん母さんが死んでから僕たちがんばってきたじゃないか。  
加代子なんか同世代の子が化粧して遊んでいる間に手にあかぎれ作って仕事をしているのに。  
何故僕たちだけが不幸なんだ。  
そんな事を考えながら塾からの帰り道の途中、本を拾った。  
表紙には呪いの書と書いてあった。  
目次を拾い読みすればベーコンがまずくなる呪いとか  
一定周期で女になったり男にしたりすることが出来る呪いなどがあった。  
その一番最後、悪魔を召喚して敵対者を殺す呪いというものがあった。  
僕は一種の気晴らしのつもりでそれにチャレンジすることにした。  
近所のドブ川で蛙を捕まえて、本の通りに魔法陣を書いて。  
深夜二時、加代子が寝たことを確認して儀式を開始した。  
最初はほんのお遊びのだった。  
だが始めればそれにのめり込み蛙を本当に殺してしまった。  
まったく何をやっているのだろう。  
こんな事に真剣になって。  
そう思いつつ蛙を片付けようとした瞬間、魔方陣が強い光を発した。  
思わず目を瞑った僕が目を開けてみればそこには一人の女がいた。  
 
「我は悪魔アベア、水と土の生き物の血を代償にて汝の望みを果たす者。  
 人間、そなたの望みはなんじゃ?」  
 
極上の女だった。  
さらさらとした銀髪にやや吊り上った感じのルビーのような目。  
ぷっくりと膨らんだ唇には紫の紅が曳かれ皮製の服を押し上げる圧倒的な乳房。  
そのくせ腰はきゅっとしぼられ魅惑的な臀部を引き立てる。  
ただし。  
その頭には羊のような角があり、背には大きな蝙蝠の翼が広がっていた。  
 
「ほ、ホント…だったのか」  
 
「ふふ、ああ、ホントだよ人間、そう、真実汝は我を喚びだした。  
 さぁ、どうした何を怖がっておる」  
 
女、いや、悪魔は怯える僕を面白そうに眺める。  
僕と言えば恐怖に震えている。  
ホンの気晴らしのつもりだったのに何でこんなことになったんだ。  
 
「はっ、大方遊びのつもりだったのだろうが……ん、ふむ、身に抱えた憎悪は本物か  
 くく、面白い、本当なら我を侮辱したとして八つ裂きにするとこだが………」  
 
そう言いながら悪魔は僕に近づいてきた。  
僕はそれが恐ろしくて後ろに下がる…下がろうとしたに体が動かない。  
 
「な、何で」  
 
あまりの恐怖に声が裏返るがそんなことを気にしている余裕は僕にはない。  
 
「んふふふ、我の力よ、まぁ、そんなに怯えるな…悪いようにはせん」  
 
そんな事を言われても悪魔の動作一つ一つが僕には恐怖を増幅する何かでしかない。  
悪魔の手が近づいてくる。  
僕は眼をつぶった。  
そして何をされるのか待ち構えていた僕はズボンのジッパーが下げられる音を耳にした。  
 
「さぁて、おやまぁ、中々な立派だな」  
 
下半身が空気に晒される感覚に目を開ければ、恐怖のあまり勃起した僕のペニスに  
陶酔した表情を浮かべる悪魔が見えた。  
 
「な、何を…」  
 
「ん、何ってナニに決まってる、んちゅ、んん」  
 
悪魔はちらっと僕を見上げるとすぐに下を向き僕のペニスを口に含んだ。  
その瞬間の快楽といったら何と言えばよいのか。  
よくそのまま射精しなかったのかが不思議なくらいだったが、  
悪魔が舌を動かすとそれすら序の口でしかなかった。  
 
「うぁ、ああ」  
 
「ん、ちゅる、んん、んふ、ぷぁ、ふふ、女子のような声を上げて、  
 そんなに気持ちいいのか んぶ、ん、じゅる」  
 
悪魔は快楽に声を出す僕を笑った後再びペニスを口に入れた。  
亀頭を舐め回し、裏スジをつつき、尿道に舌先を挿す。  
右手で玉袋をやわやわと揉み、左手で前立腺に刺激を加える。  
それらがもたらす快楽に耐え切れなくなった僕はいとも簡単に悪魔の口内で果てた。  
「ん、んぐ、んぐ、んん、んぐ、ごっくん、ちゃぷ」  
どくどくと尽きないようにでていく僕の精子を悪魔は喉を鳴らして飲み込んでいく。  
少しだけ飲み干せずに口の端から零れたものを指でぬぐい口に含むと悪魔は微笑んだ。  
 
「ふふ、ずいぶんたくさん出たな。それに濃かったぞ、ははは」  
 
笑う悪魔に僕は答えることが出来ない。  
強力な快感に腰をくだけさせ後ろ手をついて座り尽くして放心してたからだ。  
そんな僕を見て悪魔は言った。  
 
「さて、今度は我を楽しませろ」  
 
その言葉とともに悪魔は服を脱いでいく。  
考えることも覚束ないはずの僕はそれに目が釘付けになる。  
脱いだ瞬間ぶるっと震える乳房。  
先の桜色の部分は痛そうなほどに立っている。  
スカートが脱がされればそこにはすでにしとどに濡れた女陰があった。  
僕の目が向いていることを感じた悪魔はこちらを一瞥して微笑むと、  
僕に近づきそのまま腰を降ろしていく。  
先ほどすごい勢いで精子を出したはずの僕のペニスは未だ固く  
降りてくる快楽をまだかまだかと待っている。  
そしてその時が来た。  
 
「おお、ぅあ、んん、ふう、どうかな私のあそこは、んぁ」  
 
じゅぷりと言う音ともに僕は飲み込まれた。  
ペニスだけではなく僕そのものが飲み込まれたかのような快感。  
 
「さて、開放してやる、好きにしろ」  
 
パチンと打ち鳴らされる指。  
体が自由に動くと思った瞬間、僕は一匹の獣になっていた。  
上体を前に出し悪魔を押したおす、そしてそのまま腰を動かす。  
入れてるだけでもいいが、動かせばもっと気持ちいいということを僕は知っていた。  
 
「あん、ああ、ん、んぁ、いい、いいぞ、はぁ、ああ、もっともっと激しく」  
 
もっとか、その言葉に答え僕は悪魔の腰をつかみ横にしさらに深いところにペニスを打ち込む。  
 
「おお、おぅ、ふ、ふかいっ、んあぁぁ、あん、あぅ、あああぁあ」  
 
悪魔も感じているようだがこれで終わりじゃない。  
僕はまた悪魔の腰をつかむと悪魔に肘と膝をつかせて獣のような姿勢をとらせる。  
 
「そらっ、どうだ、感じるのか悪魔」  
 
「あ、いい、感じる、感じるぞ、あ、ああ、す、すごい、こんあ、こんあことぉぉ」  
 
呂律が回らない悪魔をさらに感じさせるため僕はペニスを挿入したまま立ち上がる。  
そうすると自然悪魔の腰があがり膝が浮き手のひらが地につく。  
 
「ふ、ふかいぃぃ、あぁぁん、あぅ、ひぁ、ひゅ、ら、らめぇぇ、ひ、いく、ひっちゃう」  
 
「そらっ、いっちまえ、いっちまえよ」  
 
腰と腰を激しく打ち鳴らし悪魔を絶頂へもっていく。  
悪魔と同じように快楽に頭の中が霞むなかふと目に桜色のすぼまりが見えた。  
脳が溶けていた僕は迷わず親指をそこにねじりこんだ。  
 
「ぅあ、ふぁ、あぁぁぁぁ、ふぁぁぁあああああああああ」  
 
瞬間、悪魔が果てた。  
僕も果てた悪魔がぎゅっと膣をしぼったことで堰を切ったかのように  
精子を悪魔の子宮にぶちまけた。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ」  
 
「はぁ、はぁ、あ、あつい…」  
 
お互いつながったまましばらく荒く息をついていたが  
悪魔が先に起き上がった。  
 
「ああ、楽しかった、よし、お前の望みを叶えてやろう」  
 
白いものを股間から流しつつ悪魔は言った。  
それにしばらく反応できなかったが理解した瞬間僕は覚醒した。  
 
「ほ、ホントか」  
 
「ああ、久方ぶりにここまで感じさせてもらったしな」  
 
「じゃ、じゃあ」  
 
「ああ、全て我にまかせろ、事故死というかたちで汝の敵対者は遠からず死ぬ」  
 
悪魔の言葉に俺は驚喜した。  
これで、これで報われる。  
加代子も俺も報われるんだ。  
この思いは目前の悪魔がくれたものだ、だから俺は当然のように悪魔に感謝した。  
 
「や、やった!あ、ありがとう、何て言ったら分からないけど本当にありがとう」  
 
「くく、まぁな…それでな、まだ敵対者がいるならそいつらも殺してやっていいぞ」  
 
それに対して悪魔はさらに他のやつらも殺してくれるという。  
 
「え、いいのか」  
 
「ああ、正し、その度に我を抱いてもらうからな」  
 
信じられず思わず俺は聞き返していた。  
そうすると悪魔はそのたびに自分を抱けという。  
俺は思いっきり混乱した。  
こんな美女とやれる上に敵が消えていく。  
 
「え、あ」  
 
「返事は?」  
 
突如転がり込んできた幸運に目を点にしていた俺だが  
悪魔が催促したきたことで目を覚まし返事を返す。  
 
「わ、分かった」  
 
「良かろう、呼びたければ今夜と同じようにするばいい、ではな…」  
 
当然のように了承の意を返した俺に艶然と微笑んで悪魔は掻き消えた。  
 
■■■  
 
「ただいま〜」  
上機嫌で帰宅の挨拶をする。  
「あ、おかえりなさい、ふふ、最近お兄ちゃん機嫌いいね」  
「おお、なんと言っても人生、順風満帆って感じだからな」  
ころころと笑いながら夕飯を運んでいた加代子に返事をしながら、  
俺は自室に上着とかばんを放り込むと椅子に座った。  
悪魔アベアとの行為から半年。  
彼女の言葉は本当だった。  
あれから一週間後に塾の経営者が飲酒運転で死んだ。  
新しくやってきた塾の経営者はいい人で俺の今までの境遇に同情してくれて  
自給を50円上げてくれた。  
 
その後も彼女と交わり俺たちの生活に影を落としていたやつらを駆逐していった  
マンションの住民もコンビニの上司もいなくなり、新しくやってきた人は  
加代子によくしてくれるらしい。  
悪魔の力を得た俺に怖いものなんてない。  
 
夕飯を終え、風呂に入り、少しテレビを見て就寝時間になった。  
 
「じゃあね、お兄ちゃん、おやすみ」  
 
「ああ、おやすみ」  
 
今夜も彼女を呼び出そう。  
相手は高校の頃俺に殴りかかってきた不良だ。  
魔方陣を置いて押入れから蛙を取り出した時ふと尿意を覚えた。  
儀式の最中に我慢できなくるのも嫌だったのでトイレに向かう。  
その廊下の途中、加代子の部屋から話声が聞こえた。  
携帯かな、注意しないと、と思って加代子の部屋のドアに手をかけたところで  
中から聞こえる話の内容に俺は固まった。  
 
「ああ、アベア様、今度はっ、お、お兄ちゃんを」  
「ん、あら、もういいの、まぁ私はあなたがいればどうでもいいけど」  
「ああん、だって、お兄ちゃん、んぁ、調子にのって、アベア様をんっ、ああぅ」  
「ふふ、可愛いわね、加代子、分かったわ、じゃあ何が望みかしら」  
「あふぅ、わ、わが、兄、ゆきひ、ろ、まさ、志のっ、命、をもって  
 我に、幸福を授けためへっ、あああ、アベア様、アベア様ぁぁ」  
「願いを受けよう、ここに契約はなされる、ふふ、さぁ、加代子、もっと可愛がってあげる」  
 

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