昔々、あるところに  
  恐ろしい悪の魔法使いが住んでいました。  
 
  魔界から召喚した異形の魔物達を率いて  
  近辺の町や村から金品財産を巻き上げては、  
  攫ってきた若くて美しい娘達と  
  乱交な日々過ごしていました。  
 
  その悪行の数々は  
  まさに悪の魔法使いと呼ばれるに  
  相応しいものでした。  
 
幼いころに読んだ御伽話。  
 
小柄で、  
ケンカが弱く、  
勉強もダメ、  
スポーツもダメ、  
気弱で、  
いくじなしで  
小心者で、  
臆病者で、  
言いたいこともろくに言えない俺。  
しかも、ダメペニスまで付属ときたもんだ。  
 
そんな俺にとって  
強くて、  
賢くて、  
我侭で、  
自分勝手で、  
暴虐無人で、  
唯我独尊で、  
言いたいことは何でも言うし、  
なんでもかんでも自分のやりたい放題やってしまう  
悪の魔法使いというのは憧れの存在だった。  
 
テレビでやってる正義のスーパーヒーロなんかよりもずっとずっと憧れだったのは、  
秩序や規律などに縛られる正義なんかよりも  
自由奔放に生きられる悪の方が魅力的だと思ったから………  
なんて、幼い俺がそこまで思ってるはずもなく、  
単に、マジメ君よりもちょっと悪そうなヤツの方がモテるという極単純な考え方だったと思う。  
 
まぁ、そんなわけで、この俺、六神月は  
「よーし、俺も悪の魔法使いになって世界中の女を俺のものにしてやるぞっ!」  
と言いながら悪の魔法使い目指して野原をかけまわっていたものである。  
そんな俺のおバカな夢にいつも付き合ってくれたのが幼馴染の七月聖で  
「うん、でも月君の隣はいつも私のものだからね」  
と言ってたが、  
幼い俺にはよく意味がわからなかったので、  
なんとなく約束してしまった。  
 
 
そんなこんなで時がたち、  
俺も16歳の誕生日を迎えた。  
 
 
(月………)  
 
……声がする。  
俺を呼び覚まそうとする声。  
耳元でささやいてくる声は  
春風のように柔らかく、  
優しい声をしている。  
おかしい………。  
いつも俺を起こしにやってくる幼馴染は  
窓の外からでも鼓膜をついてくるような乱暴な声であるはずだ。  
うん………こんな優しく起こしてはくれない。  
 
それじゃあ、母さんか妹か、  
………。  
まあ親父は絶対ないだろう…。  
………。  
………確かめてみるか…。  
うっすらと両目を開いていくと、  
画面いっぱいに差し込んできたのは母さんの顔だった。  
 
「!」  
「おはよう」  
純粋無垢。  
そんな言葉がよく似合う。  
俺と母さんの顔は、もうあと少しでも近づけば  
キスでもできそうなほどに近かった。  
「う、うあああああああああっっっ!!!」  
悲鳴と絶叫。  
あんまりびっくりしたので下半身まで意味もなく立ち上がってしまった。  
母さんから少しでも離れようと、のけぞって、落ちて、  
そしてゴチンと大きな音。  
硬い、頑丈な石畳の床の上に俺の脳天が激突した。  
「ぎゃあああああ!!!」  
ベットで寝てると思ったら、ソファーだったようだ。  
座ったままの体制で寝ていたらしい俺は、  
のけぞった反動でソファーを乗り上げ、  
そのまま後ろに落ちてしまったのだ。  
「いたいっ!いたいーーー!し、し。し、しぬーーーーっ!!  
 うううーーー!ああーーーああああーーーっっっ!  
 ああああーーっぎゃああああっっ!」  
頭をかかえて転げまわる俺。  
頭のてっぺんから全身に駆け巡る例えようのない激痛。  
防御体制など全く取れなかったため、  
ダメージは計り知れないものがあった。  
泣きそうだった。16歳にもなって。  
 
「だ、大丈夫ですか王様っ!!」  
悪の元凶が駆け寄ってくる。  
なんだか…意識が朦朧としている…。  
それもそのはず。  
眼前が赤い。  
ありえない量の血液が流れてる。  
落下した場所はちょうど石畳と石畳の間にある隙間で、  
絨毯も敷かれていなかったため、頭はパックリと割れていた。  
…俺は死ぬのか………こんなところで…。  
「しっかりして!」  
うう、これも全て母さんのせいだ。  
この母親はいつもそう。  
寝ている息子の顔を覗き込むなどの  
突拍子もない行動をとりやがることなど朝飯前だ。  
それで大体被害を食うのがこの俺だ。  
今日という今日は我慢できない。  
こうなったら死ぬ前にせめて一言ぐらい言ってやる。  
俺は半泣き状態で母さんに怒鳴りつけた。  
「母さんっ!!  
 いつも勝手に俺の部屋に入るなって言って………」  
「………」  
「………」  
あれ………?  
時が止まった感じがした…。  
この時だけは頭の痛みも止まってた。  
俺は、ただ唖然とするだけで…。  
それは………きっと目の前の彼女も同じ。  
 
「………か、母さん………?」  
俺はうわごとのようにつぶやいた。  
母さんだと思っていた女性、  
………それは、似てるけど…少し違う。  
俺に突然『母さん』なんて言われて彼女も驚いていたようだが…。  
「も、もうっ。私、王様のお母さんになれるほど年はとってません!」  
言われてみればそのとおり。  
目の前の巫女さんのような格好をした少女は  
せいぜい俺と同じ年ほどにしか見えない。  
全くの別人だ。  
「だから、王様は、おばさんだって言ってんのよ」  
「やーい、おばさんだっ!おばさん」  
横から知らない子供達の声がする………?  
「こ、こらーっ!誰よっ!今おばさんなんて言ったの!!!」  
どうやら母さんに似た人が茶化されているらしい。  
たしかに俺の母さんなら『おばさん』と言われてもしょうがない。  
女性の歳を間違えるのも失礼な話だが、  
よりにもよって母さんなんかと間違えるなんて  
とんでもない暴言だったに違いない。  
後で、ちゃんと謝っておいたほうがよさそ…………って、  
うっ、うががああああああっっっ!!、  
ささ、っさ、さっきまで治まっていたはずの頭痛が鮮明に蘇ってきた。  
俺は再び頭を抑えて転げまわる。  
「お、王様、大丈夫?」  
「王様ー」  
「王ちゃまー。死んじゃやだー」  
なんか、ずいぶんたくさん人がいるようだけど…。  
と…とりあえず………救急車を呼んでくれ………早く………。  
 
「王様!今治しますからっ」  
母さんと間違えた少女。  
彼女は俺を抱きかかえると俺の頭に手をあてた。  
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!」  
それで痛みが倍増した。  
傷口に直にふれられたのだから当然だ。  
「あっ、ごめんなさいっ!」  
「ッ〜〜〜〜ッ〜〜〜〜〜〜」  
離せと言いたくても  
もはや痛すぎて言葉にならない。  
「ちょっと痛みますけど。我慢してくださいね」  
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ」  
頭が痛くて死にそうだった。  
必死に手足をジタバタさせて、暴れて  
我ながら、聞き分けのない子供みたいだと思う。  
 
その人が手をあててからしばらくすると、  
優しくて…気持ちが感じがしてきた。  
(………なんだろう…これ………すごく…心地いい…)  
ただ、手をあてられているだけだというのに  
不思議と痛みが治まっていくような感じがした。  
「はい、もういいわよ」  
「えっ…」  
頭痛は嘘のように治まっていた。  
(……血が止まってる………?)  
傷口はすっかり塞がれ、  
さわってみても頭にはコブ一つできていなかった。  
救急用具の一つも使わずにいったいどうやって………?。  
これは、ひょっとして噂の…………………ハンドパワーか?  
驚く俺に間髪いれずに、  
「王様ー」  
「よかったー!死んじゃうんじゃないかと思って、心配したよーっ!」  
「うわあああん」  
俺に抱きついてくる大量の女子達。  
中には泣いている子もいる…。  
しかも、どの子もこの子も可愛い子ばかりだった。  
「なななな」  
何がなんだかわからないまま、  
たくさんのおっぱいにうずめられる俺の顔。  
 
―――この娘たちはいったい?  
―――お、王様っていったいなんのことだよ?  
 
しかし、そんな疑問などどうでもよくなるほどに気持ちいい。  
すごくいいにおいがする。  
 
普段の俺はモテない君で、  
女の子から避けられることは数あれど、  
こんな風に抱きつかれることなど  
絶対に有り得ないことだった。  
嬉しくてつい頬が緩んでしまう。  
息ができないがそんなことは関係ないぜ。  
下半身も喜んで膨張して………  
わっ、だ、誰だーーっ!  
どさくさに紛れて俺の膨張した下半身を握っているやつはーーーっっっ!  
 
「こらーっ!王様が困ってるでしょ!離れなさいっ!」  
一喝。  
彼女達との混わいを止めたのは、母さんと間違えた少女。  
「はーい」  
言われて俺から離れる女子達。  
残念だ。  
 
「それじゃ、王様、戻りましょうか?」  
俺に前に差し伸べられた手。  
それは母さんと間違えた人の手。  
 
神聖な巫女の衣服からは清楚な感じがする。  
サラサラとした長い黒髪、  
スタイルは和服でわかりにくいけど、  
たぶん標準的なものだと思われる。  
まだ幼さを残した顔つきに、  
不思議な感じがする瞳。  
そして、柔らかそうな唇。  
母さんと間違えてしまったのは、声もそうだけど、  
なにより雰囲気的なものが似ている感じがした。  
 
俺の心臓は彼女を見ているだけで高鳴り続け、  
これが一目惚れをしているんだな、ということはすぐにわかった。  
 
「えっ…あっ……う、うん」  
あわてて右手を寝巻きで拭くと、  
俺は彼女と手を繋いだ。  
 
流されるままに元座っていたソファーに腰かけた。  
俺の隣には、母さんに似た少女が座っている。  
彼女の肩は俺と触れてしまうほどに近かった。  
目があうと、恥ずかしそうに微笑んでくれた。  
可愛い…。  
こ…こんな子が俺の彼女になってくれたらなぁ………。  
あれ………?  
そういえば、母さんが若いころの写真は、  
いつも巫女の格好をしてたような………。  
「………どうしました王様?」  
「あ…いや…なんでも………」  
あんまり見とれているのもなんので、他に目を移すことにした。  
 
「………」  
さて、  
寝ぼけてはいないと思う…たぶん。  
とりあえず状況から説明すると、  
複数のソファーは円を描くような配置になっている。  
真ん中には丸くて大きなテーブルがあり、  
テーブルの上にはお菓子やらジュースやら食べ物類がいろいろおかれている。  
そして、俺の視界には  
ビキニやらチャイナドレスやら看護婦やら婦警やら体操服やら裸Yシャツやら  
他にも多種多様な格好をした女の子達の姿が見える。  
年齢も幼女から熟女まで様々だ。  
しかも、どの子もこの子も母さんに似た少女に負けず劣らずの  
可愛い子たちばかりだった。  
………。  
 
!?  
 
………。  
いや訂正する。  
よく見ると、一人だけ場違いなヤツが存在していた。  
 
………。  
これがなんというか…その、  
殺人的なブスとでも言うべきなのか…。  
女版、子錦というか…カバが服着て歩いているというか…。  
褐色肌で、むやめやらたとバカデカイそいつは、  
そもそも女がどうこうというより、  
地球生命体かどうかも怪しい存在だった。  
しかも、よりにもよって俺のすぐ隣だった。  
一人で三席ぶんは確実にとっており、  
その重みでソファーからは、悲鳴が聞こえてきそうだった…。  
『がぶりっ!ぞぶりっ!』  
………!?  
なんかスイカをまるごと皮ごとかまわず食べていやがります…。  
スイカ汁か唾液かよくわからんものが俺に顔に向かって飛んでくる。  
なんだったか、最近やったゲーム…、  
半○ヒーロー対3Dにこんなんがいたような気がする…。  
触れあう肩からは、いやに生暖かい体温が伝わってきて………嫌だ。  
目があうと、まるで裂けているかのようなタラコ唇を不気味にゆがめた。  
………、  
背筋が凍りついたと思う。  
とにかく、こいつの強烈なインパクトのせいで、他の美女の印象は全部吹き飛んだ…。  
………そういえばこいつ、昔どこかでお会いしたことがあるような………。  
と思ったが、その考えはすぐに心の奥底に厳重に封印した。  
思い出したくない何かであることは確かだ。  
そしてこれ以上見てると目が腐りそうだったので、急遽、他のところに目を移した。  
 
さて、もう少し視界を広げてみると…、  
石畳の床、その上に敷かれた豪華な絨毯。  
石畳の壁、美しく飾られた窓、たくさんの肖像画。  
石畳の天井。それを支える白い柱の存在。  
まるでどこかの中世のお城のよう。  
家で寝てたはずの俺には、到底ありえない光景だった。  
ひょっとして……俺………まだ寝ぼけているのだろうか???  
 
状況はさっぱりわからない。  
どうして俺はこんなところにいるのだろうか…?  
まさか………また妹達のいたずらだろうか?  
いや、いたずらにしては少し手がこみすぎている…。  
なんか………、  
自分が置かれた状況が  
思いっきり不安になってきた。  
 
こうゆうとき、限りなくマイナスに考えるのが俺だ。  
某半島に拉致されたんじゃないかとか………。  
どこかの悪の組織の陰謀なんじゃないかとか……。  
色々な考えが頭の中を駆け巡る。  
 
だって…ここ…どう見てもお城だし、  
俺の視界に広がる女の子達は、  
どの子もこの子も愛しい人でも見るかのような視線で俺を見つめているし…。  
ぶっちゃげ…ありえない…。  
 
………。  
………う〜ん、  
わからん………。  
俺にいったい何が起こったというのだ………???  
「ハッ!」  
ぞくりと背中が凍りつくようなこの感覚。  
隣の異種生命体が俺のことを見て、ニタリと薄気味悪い笑いを見せていた…。  
………ぶ、不気味なやつ………。  
はっ!?  
ま、まさかっ!?こいつまで俺の童貞を狙っているのでは!?  
想像するだけで身震いしてしまった。  
 
「王様???」  
俺があんまりボーとしてるから  
あどけない顔で、母さんに似た少女が聞いてきた。  
「い、いい…いや…なんでも………」  
なんでもないようなふりをする。  
 
俺の性格に一つ付け加えておくと、重度の見栄っ張りなのだ。  
トイレに行きたくてしょうがないときでも、  
決して顔にはださずに我慢してしまうような性格なのだ。  
 
もっとも、  
平静こそ装っているものの、  
このよくわからん状況の前では  
小心者の俺の心拍数は不安で跳ね上がっている。  
(どうしよう…どうしよう…どうしよう…  
 なんで俺はこんなところで美女に囲まれているんだ…、  
 誰かに聞いたほうがいいのだろうか………?)  
しかし、こんな時でさえ、  
誰にも聞けない小心者の心が情けないと言えば情けなかった…。  
 
「え〜と。それじゃあ、どこまで話したっけ?」  
………???  
突然言い始めたのは白いスク水みたいなのを着ている女の子。  
背中からはみ出しているものは…なんだありゃ?天使の羽か?  
妹と同じぐらいの年齢にも見えるが…。  
ん?  
女の子達の視線が俺に集中していることに気づいた。  
………。  
これは…ひょっとして  
俺に聞いているのだろうか?  
無論、どこまで話したなんて聞かれても俺が知ってるはずがないのだが。  
 
「え…えと、だこまでだったかな…?」  
頬をポリポリと指でかきながら  
とりあえずは、そう答えた。  
「もうっ王様。ちゃんと聞いてよぉ。  
 町に買い物にいったところまでだよぉ」  
プンスカと頬を膨らませる白スク水着娘。  
「あ、…そ、そうだったナ………うん…」  
「うん、それでね、私…………」  
日常話をし始めた。  
とりあえず様子を探る意味を含めて聞いていたのだが、  
俺には何のことかよくわからない単語ばっかりでてきた。  
まるで未知の世界の会話だ。  
なんとか適当に頷いたりして話をあわせていたものの、  
その裏で俺は、ずっと『ここはどこなんだろうか』と考えていた。  
 
(何がなんだかさっぱりわからん。  
 何、言ってるんだっこいつっ!)  
彼女の話を聞いていると、だんだんと焦りが生じてきた。  
自分に置かれた状況が怖くなってきたのだ。  
まずいっ!弱い考えしか思い浮かばない。  
 
(こ…こは何処………こは我が家などに在らず………。  
 ………?  
 …??????  
 俺は誰だ………????)  
 
やばいっ!  
根本的な部分。  
ここが何処なのか依然に  
自分の名前まで忘れてしまっているっっっ!。  
(ああーー落ち着けーー。落ち着けよ、俺!)  
気持ちをよく整理して考えるんだ。  
自分のおかれた状況をよく整理しながら必死に何があったのかを考える。  
俺の容量の少ない脳みそから記憶データをしぼりだすのは  
そう難しいことではないはずだ。  
 
…。  
……。  
………。  
幼馴町………。  
それが俺の生まれた町…。  
俺の名前は六神月。16歳。  
六神家の長男で、今日から高校生だったはずだ。  
 
とりあえず、家族のことを思い出してみよう。  
 
父の名前は一夜。  
一家の大黒柱で会社では重役、部下からの信頼も厚い。  
若いころに習っていた剣道の腕は確かなものである。  
当然、俺とは気があうはずがなく  
顔をあわせるたびに小言ばっかり言ってくる。  
父に言わせればこのまま行けば俺の人生は負け犬以下らしい。ほっとけ。  
 
母の名前は双葉。専業主婦。  
若くて綺麗と近所で評判です。  
32歳なので、計算上16歳の時に俺を産んだことになる。  
突発的にわけのわからない行動をとって息子の俺を困らせる。  
彼女はどうやらお寺の生まれだったらしいが、  
どこでどう父さんと知り合ったのか………  
その辺のところはよく知らない。  
 
あとは妹が二人いる。  
まずは長女の五月。  
幼馴塚中学に通う三年生。  
こいつは父の気性を継いでおり、  
典型的な体育系で、乱暴者で、気性が荒く、すぐにキレる。  
おまけに口まで悪く、俺のことをバカ兄貴と呼ぶ。  
兄である俺をゴミクズのように扱っており、  
最近はなんだかいつも怒ってるように見える。  
我が妹ながら、まったく可愛げのないヤツで、  
逆らうと竹刀を振り回してくるので手がつけられない。  
 
で、末っ子に葉月がいる。  
こいつの名前は俺がつけた。  
月シリーズにも限界が来て、母さんが悩んでいたところに  
双葉の『葉』と『月』で葉月と言うのはどうかと、提案したら通ってしまった。  
幼馴塚小学に通う6年生で、  
五月に比べて、こいつはわりと俺に近い。  
大変落ちついて、ほのぼのとした印象をうけるが、  
実はなんでもないようなところで転ぶようなドジッ子だ。  
やたらと俺になついてきて、  
こいつのせいでろくにエロゲもできない。  
今のところ兄に対して反逆心らしきものは持っていないが、  
こいつも反抗期に入ると五月みたいにならないかと内心ビクビクしている…。  
なお、兄に対しての呼び方は『月兄(にぃ)』  
 
さて、最後に家族ではないが幼馴染に七月聖がいる。  
頭もよくて、真面目しっかり者で  
俺と違って何一つ欠点のなさそうな完璧超人ではあるが、  
唯一の欠点である幼女体型を本人はずいぶんと気になさっているようだ。  
聖とは全く一緒の時間に生まれたせいで近所では  
運命の幼馴染だとよく茶化されていた。  
 
………。  
うん、大丈夫。  
頭も回ってるし、記憶もちゃんとしっかりしている。  
俺が誰かは理解した。  
しかし、今、最も重要なのは、  
今日から近所の幼馴塚高校の生徒だったはずの俺が  
何故こんな中世ヨーロッパのお城だか宮廷みたいな場所で  
バラエティー豊かな格好と年齢を持った美少女達&謎の宇宙生命体と  
同じにソファーに腰をかけてるのかだ。  
 
俺は昨日の夜あたりから記憶を模索してみた。  
 
昨晩、  
来るべき新学期。  
運命の美少女達の出会いにそなえ  
俺は何度もイメトレを繰り返していた。  
その内容は『どうやったら女の子に嫌われないか』という我ながら情けないものである。  
それで、やれることを全てやり終えた俺は、まだ少し早いけど寝ることにした。  
よしっ、高校では絶対に可愛い彼女を作ってやるぞっと意気込みながらベットに入る。  
隣の部屋からの音がうるさい…  
五月のヤツが、またわけのわからない音楽を聴いてるなと思い、  
怒鳴りつけに行きたいのはヤマヤマだが、返り討ちにされそうなのでやめる。  
しかたなく耳栓して寝る。  
 
そこまでは問題ない。  
そこまでは間違いない。  
 
で、朝起きてみると、  
………お城みたいな場所で、美しい美女達に囲まれていた………。  
訳が分からないと思うが、  
俺にだってわからないのだから、なんともいえない…。  
 
「そこで私が言ってやったんですよ。  
 なんたらかんたらどーのこーの………  
 で、○×□△△×××△△□□□□○○○  
 ○○○××××△□○×○○○○……  
 それで、□△○×○○○□□□□○○  
 なので……………」  
それにしても、この白スク水娘、さっきからよくしゃべるな。  
いつ息継ぎしてるんだろう…?  
質問できるタイミングなど皆無。  
そして会話の腰を折るような度胸は俺にはない…。  
ああー。  
もー。  
此処がどこなのか聞きたい。  
言い出せない…情けない…。  
それでも顔はなんでもないようなフリをしてしまう。  
唯単に生来の見栄っ張りなだけなのか、  
それとも、兄という立場上あまり妹達に不安や心配をかけないように  
こうゆう技能がついてしまったのか?、  
とにかく見栄っ張りもここまで来るとあきれたものだ。  
そして、こうゆう見栄っ張りモードに入った俺から、  
本当は実は困っていることを見抜ける人物は少ない。  
せいぜい母さんか、聖ぐらいのもので………。  
 
「あの…王様?大丈夫ですか?  
 さっきから御気分が優れないようなのですが…」  
………!?  
俺の心配を見抜いたのは  
なんと母さんと似た少女だった。  
 
「あの………ひょっとしてまだ頭、痛みますか?」  
………。  
俺はただ純粋に驚いていた。  
「ご、ごめんなさい…私…治療術下手で………」  
自分のせいなんじゃないかとおろおろとしている。  
こんな可愛い子を心配させるなんて、  
俺はなんて不幸者なんだろうと思い全力で否定した。  
「あ、いや…全然大丈夫…っ!お、俺、体だけは頑丈だから」  
………なんか違う気がするが、自分でも何言ってるかわからなかった。  
「そうですか。それなら安心です」  
でも本気で安心してくれているあたり、すごくいい子だ。  
 
………。  
………芽生える浮気心。  
………いや、彼女もいないから浮気心も何もない…  
………ひょっとして聖のことで躊躇っているのだろうか?  
………でも聖は彼女でもなんでもないただの幼馴染でしかない…。  
………それにしても  
………うう、可愛いよぉ…。  
………もし本当にこんな子が彼女だったらなぁ…。  
………。  
………。  
………よく考えれば母さんに似てる人に恋をするなんて背徳的かもしれん  
………まずいぞ…まさか俺はマザコンか!?  
………。  
 
ん?  
気がつくと、白スク水娘の口が止まっていた。  
これはなんとなく聞けるタイミングじゃないだろうか?  
俺はありったけの勇気を振り絞って母さんに似た少女に聞いてみた。  
「……あ、…あの…ここは幼馴町ですよね…」  
「え?」  
俺の突然の質問に彼女は目をニ・三度パチクリさせた。  
返答に対して困っているようだった。  
むぅ。それほど難しい質問をしているつもりはないのだが…。  
幼馴町ではないのだろうか…?  
そういえば、彼女の衣装は幼馴寺のものだ…。  
俺は質問を変えた。  
「幼馴寺はどこでしょうか?」  
「おさ…ななじ?………さぁ」  
これならどうだと思ったが、  
彼女の様子は先ほど変わらなかった。  
やはり幼馴町ではないのか…?  
思い切って質問の範囲をおもいっきり拡大してみた。  
「………ここは日本なのでしょうか?」  
「………ニホン…?」  
「えと。王様の言うことは難しすぎて私にはちょっと…」  
「ねぇニホンってなに?」  
「おいしい?」  
「ねぇ、王様。ニホンってまた新しい子?」  
…。  
……。  
………。  
も、もはや日本ですらもないとは…。  
 
これ以上質問するのは逆に非常識人と思われそうなのでやめた…。  
さすがの俺も頭を抱えこまざるを得なかった。  
言うまでもなく不安はさっきよりもずっと重い。  
 
「王様どうしたんだろ?」  
「なんか変?」  
「でも悩める王様も素敵」  
俺の様子に何がおかしいのか、彼女達はクスクスと笑っていた。  
こっちはそれどころではないというのに…。  
まるで、絶望の淵に立たされたようだ、  
身動き一つできないまま、  
ただ確実に迫り来る死を待つだけのような…そんな感じ。  
 
しかしっ!その時、  
頭の上で電球がピキーンっと光った感じだった。  
(そうかっ!!ああ、そうか…!!!これは夢。夢なんだ!!!!)  
大急ぎで頬をつねってみたが  
「いで、いでででで」  
ひたすら痛いだけ。  
「お、王様?」  
ヒリヒリする…。  
どうやら夢でも幻でもないようだ。  
今度こそあらゆる可能性が閉ざされ、行き詰った感じだった。  
 
RPGで言えば、次にどこに行けばわからなくて、  
永遠とさまよい続けるといった感じ。  
昔のゲームではよくあった。  
 
(あーーーどうすればいんだよー。  
 ここどこだよーっ。家に帰りたいよー)  
だんだんと泣きが入ってきた俺、  
その時である、  
ちゅ。  
(えっ?)  
頬にふと優しい感触がした  
驚いてふりむくと、  
母さんに似た少女が照れた表情をしていた。  
「…………なっ…」  
何を思ったのか俺の頬に、突然キスをしたのだ!  
「なななな、何を…」  
俺の顔は熟れた林檎のように真っ赤に染まった。  
不意打ちだったうえに  
女性からキスをされたのは初めてだったからそれも仕方がない。  
それも一目惚れの女性から………。  
「え、えとね。  
 王様がまだ寝ぼけているみたいだから  
 それでお目覚めのキスで目を覚ませてあげようかなって…お……思っ………」  
「………!」  
言葉にしたのが相当恥ずかしかったのか。  
彼女は頬を真っ赤に染めて、うつむいてしまった。  
頭からは湯気が立ってるように見える。  
その恥らう姿だけで、またしても俺は勃起してしまった。  
 
「ちょっと、抜け駆けはずるーい」  
「王様は私のキスで起こしてあげるんだからー」  
「王様ー」  
「王様ー」  
そして、またしても俺に飛び掛って抱きついてくる女子達、  
その有様は、ちょうど蟻の巣にキャンディーを投じた時に似ている。  
一気に群がってきて、俺の体はあっという間に女の子で埋もれてしまった。  
きゃーきゃーと騒ぎながら俺の腕を取り合り、  
次々と俺に体にキスの連続砲火を浴びせてくる。  
「こらー暴れるな王様ーっ!」  
「わっ…ちょっ、ちょっと、ま、まって、わっ!わっ!あっ!」  
「こ、こらーっ!何してんのよっ!やめなさいっっ!」  
母さんに似た人が止めようとしているが、  
今度ばかりは彼女達は暴挙は止まらなかった。  
俺の下半身はさらに膨張を続け………  
って、またしてもどさくさに紛れて俺の下半身を握るやつがいるーーーっ!!  
そんな柔らかい手でそんなところをさわられちゃあっ…あひーーっ!  
思わず射精してしまいそうだった…。  
 
………。  
………しかし。  
………………天国。  
よくよく考えてみれば天国。  
 
生まれてこの方、彼女なし。  
近づいてくるのは、せいぜい妹か幼馴染だけ。  
そんな俺がこんなにも多く美少女達に囲まれるのは生涯最高の瞬間と言えよう。  
 
我が生涯に一片の悔いなし。  
 
最早、此処が何処だとか、  
わからないことを、いくら考えてもしょうがない。  
颯爽気持ちを切り替えた。  
 
俺は素直に下半身の欲望に従って  
この運命の美少女達とのハーレムを楽しむことにした。  
 
さて、  
キスの後も、  
彼女達との楽しい会話は続いていく。  
 
例えわけのわからない内容ではあっても  
その声を聞いているだけで俺の心ははずんでいく。  
俺を取り囲む美少女達は  
若干一名の異種生命体を除いて、  
その誰もが一緒に町を歩けば  
大衆から渇望の眼差しを受けること間違いなしのもの。  
 
そんな彼女達が、俺のことを王様と呼び親しんでいる。  
俺にはそれだけで十分だった。  
 
この空間はまさにハーレムだった。  
なんだ、気持ちを切り替えればこんなにも楽しいものじゃないか。  
今まで悩んでいた俺がバカみたいだ。  
選り取り緑の女の子達であるが、  
この中でも俺が特に気になっている人が…  
隣の彼女。  
「………どうしたの王様?」  
「あ、いや…なんでも」  
「ふふ、さっきから変な王様」  
俺の心は完全に彼女に奪われていた。  
………ぶっちゃげると俺の初恋の人は  
クラスの女の子でも、同年代の少女でも  
幼馴染でも妹達でもなく、若いころの母さんのだった。  
間違えないように断言しておくと俺は決してマザコンではない。  
マザコンではないが、初恋の人がたまたま母さんの写真だっただけだ。  
そして、その若いころの母さんの生き写しのような女性が目の前にいる。  
これほど嬉しいことはなかった。  
 
すでに俺の思考はどうやって彼女を落そうかななどと考え始めていた。  
恋人にしてしまうという願望だって、今の俺には決して不可能なことではない。  
こんなにも俺を親ってくれているのだから、やれないことはない。  
いや、やるのだ。この俺の手でっ!!  
 
「王様。お注ぐします」  
「ああ、ありがと」  
「おうさま。あーんして」  
「うむ、くるしゅうない」  
 
絶頂。  
この世の頂点に立ったかのような、  
そんな優越感に浸りながら文字通りの王様気分。  
全ての事象が自分中心に回り、  
今の俺にできないことなど、  
何一つしてないような感じがしていた。  
 
―――しかし、そんな俺の絶頂を脅かす恐るべき一言が放たれる  
 
「あんた?本当に王様?」  
地の底から響いてくるようなダメ声。  
えらくドスも聞いている。  
この世のなにか恐ろしいものを連想せざるを得ないその声の持ち主は  
確認するまでもなく、無論、あのブスだ…。  
先ほどから唯の一言も口にせず  
ひたすら食べ物ばかりを貪り続けていただけのブスが  
突然言い放った一言に、俺の心は凍りついた。  
「ななな…なにを…」  
『ガリガリガリ』  
伊勢海老を皮も向かずに頭から豪快に食べるブス。  
「あんたさぁ、ひょっとして偽者なんじゃないの?」  
核心を突かれた俺の心臓は、  
その伊勢海老のごとく噛み砕かれるようだった。  
 
―――確かにその通りかもしれん。  
てゆうか、むしろその通りだろう。  
自分でもこれは何かの間違いなんじゃないかと、  
………うすうす感ずいてはいたんだ。うすうす。  
だって俺がこんな美女達に慕われるような人物のはずがないのだから………。  
そもそも俺は王様などではない、ただの人だ。  
あぁ…俺のハーレムもここまでか…。  
「何言ってんのよ、本物に決まってんじゃん」  
(!?)  
と、誰かが口を出した。  
「王様じゃなかったら、いったいなんなのよ」  
そして、また別の誰かがフォローする。  
うんうん。  
よくぞ。言ってくれた。  
俺の口からそう言えば嘘になるからな…。  
俺はさっきからずっと一度も自分のことを王様とは言ってはいない。  
意識してそれを避けてきた。  
自分で言えば嘘になる。  
他人がそう思ってるだけなら嘘にはならない。  
これならもし何かあっても  
この子たちの勘違いでしたと済ませることが可能だ。  
「ふーん」  
なんと、ブスはタバコふかし始めやがったっ!  
お、俺はタバコを吸う女は大嫌いだ。  
しかも、その煙をわざわざ俺の方に吹きつけてきやがった。  
「ご、ごほごほっ」  
こここ、このドブスがーーーーーーーっっっ!  
王様に対してなんてことしやがるっっっ!!!  
怒りでハラワタが煮えくりかえりつつも、  
やめて下さいの一言も言えない、やっぱりヘタレな俺だった。  
 
「でも最近ね、フー。  
 変な魔術が横行しててねー。フー。  
 偽造王様を使った。フー。  
 なりきり詐欺が流行ってるらしいわよ。フー」  
「!!!!!」  
「えーーーー???」  
「そうなのーーーー????」  
………。  
何故、この子達はそんな大げさに驚いた声を上げるのだ?  
う、な、なんか、周囲から思いっきり不信な目で見つめられいる…。  
確実に人の事を疑っている目だ。  
ひょっとして彼女達もまた、  
俺と同じく、うすうす俺が王様とは違うと気づき始めていたのかもしれない………。  
 
 ざわざわ  
  ざわざわ  
 
辺にざわついた感じ。  
殺伐とした空気。  
「ねぇ?あんた?ホントに本物ー?」  
ブスが俺に問いただした。  
蛇がカエルを前にした時のような圧倒的な威圧感。  
それは、もし俺が王様だったとしたら失礼極まりない態度なのだろうが………  
残念ながら俺は王様ではない…。  
「本物だよね……」  
「王たまは…王たまだよね…」  
「王様!」  
不安そうな声。泣きそうな声。怒りが入り混じった声。  
そして不気味に静まりかえる空間。  
泣きそうな俺。  
俺を擁護する声はない。  
 
俺は王様ではない。  
唯の一介の高校生、  
六神月でしかない………。  
 
そもそも俺は彼女達のいう王様がどんな人物なのかも知らないし、  
これ以上王様のフリをするのにも普通に考えても無理がある。  
細かい質問を受ければ絶対にボロがでてしまうだろうし、  
それなら最早、素直に白状するしかないと思った。  
 
それに、今ならまだキズは浅いはずだ。  
………ハーレムが終わってしまうのは真に残念だが、  
それも仕方のないことだろう。  
 
「じ…実は」  
ついに観念した俺は、本当のことをを語ろうとした、  
 
―――その時である、  
 
俺は横にいる母さんに似た少女の瞳を見た。  
その目だけは、他の女子とは違う。  
この場において唯一俺のことを信じて疑っていない目だった。  
 
(………本当にこれでいいのか?)  
この期に及んで、  
彼女は俺のことをまだ信じている。  
信じ続けている。  
(………いや、だがしかし)  
もし、ここで俺が王様じゃないと言ってしまえば、  
結果として純粋無垢な彼女の心を裏切ってしまうことになるのではないだろうか?  
それは、ずっと彼女を騙し続けたことになってしまう。  
(………そんなのダメだっ!)  
そんなこと、この俺にできるはずがない。  
一目惚れの少女なのだ。  
彼女を裏切って、つらい思いをさせるのが何よりも嫌だ。  
耐えられないっ!  
(そんなことさせてたまるかっ!)  
俺は一つの決意を固めた。  
嘘をつくのは悪いことだ。  
でも、彼女のためなら俺は神の前ですらも嘘をついてみせる!!  
彼女が笑ってくれるなら、俺は悪にでもなる。  
ヘタレな俺が生まれて初め見せた確固たる決意だった。  
 
「もちろん、本物の王様に決まってるんじゃないかっ!」  
 
言いきった。  
後悔はない。  
むしろ清清とした感じだ。  
そして、母さんに似た少女の本当に嬉しそうな顔。  
これだ、この笑顔を守りたかったんだよ俺は。  
 
「ふーーん」  
それでも邪心の如き笑みを浮かべるドブス。  
嘘で固めたメッキをどうやって剥がそうとばかりの表情だ。  
や、やばいぞ…早くも冷や汗が…止まらない。  
 
「それじゃあ、どうやって証明しれもらおうかなー」  
お、俺は………どんな試練だって………耐えてみせる…。  
 
「そうだ!王様ならアレができるじゃん!」  
「そうだ、アレやってもらおうよ」  
「うん、久しぶりに王様のアレみたい」  
 
 
あ、アレってなんだっ!?  
 
嫌 な 予 感 が す る。  
 
 
…。  
……。  
………。  
そして…。  
 
俺の前に生ビール20杯並べられた。  
彼女達からはワクワクとした視線。  
 
カンの悪い俺ではあるが、  
これが何を意味しているのかはすぐに理解できた。  
 
………これは………その…  
………そうゆうことですか…  
………飲めと…  
………いや、だってねぇ…  
………俺…まだ未成年なんですが…  
………だいたい20杯なんて…  
………普通…水でも無理ですよ…  
………。  
………わかりました…  
………飲みます…  
………飲めばいんでしょう…  
 
もうヤケクソだった。  
 
「わかってるかもしれないけど」  
背中からドブスの声がする。  
「?」  
「もし、できなかったら………」  
 
ジャキンッ!ジャキンッ!  
 
突然、どこからか取り出された巨大バサミが音を立てた!  
ジャキンッ!ジャキンッ!  
空を切り裂くような音が金属音が何度も何度も響き渡る。  
それはまるで俺を威嚇するかのようで………。  
ジャキンッ!ジャキンッ!  
「ちょんぎる」  
ジャキンッ!ジャキンッ!  
(な、何を!?)  
ジャキンッ!ジャキンッ!  
何かはあえて聞かなかった。  
 
女の子達が一斉に音頭をとり始めた。  
「一気っ、一気っ、一気っ」  
「………」  
逃れようのない状態。  
こうして罪のない新入社員が毎年何人も殺されていくのだろうということを  
俺は16歳にして知った。  
向かい会う俺の鼻をつく強烈なアルコール臭。  
子供のころ麦茶と間違えて飲んだことがあったが、即座に俺は吐いた。  
なんで大人はこんなマズイものが飲めるのかと思ったものだ。  
だが、俺だって成長している。  
あのころのようには行かないはずだ。  
 
俺は、ビールに手をかけて、  
もう一度、母さんに似た人の顔を見た。  
きみのためなら死ねる。  
「うおおおおおおーーーーーーーーーっっっ!!!」  
死なばもろとも。  
ゴクゴクゴクゴク!  
俺は死地に飛び出す兵隊のような気持ちで。  
ついにビールに手をかけた。  
 
1杯。  
味なんか関係ない。  
味覚さえ閉ざせばこんなのただの水だっ!  
「いい飲みっぷりね」  
ニヤニヤとするドブス。  
俺は思った。  
そのニヤついた笑顔を消してやる。  
俺が王様であることを証明した暁にはテメェは永久追放だゆ!と。  
…なんか気分の発揚してる…。  
小躍りしたい気分だった。  
 
2杯。  
(こんなものーっ!こんなものぉぉぉぉぉ!!)  
ゴクゴクゴクゴク!  
「うぷっ」  
さっそく、吐きそうだ………。  
喉元までこみ上げてくる吐き気。  
でも我慢した。  
 
3杯。  
4杯。  
「うっ…!!!」  
なんか、目の前がクラクラしてきましたが…。  
足元がふらついて…  
世界がグルグルと回って見える。  
こ、これがもしかして酔うという気分なんだろうか………?  
あっ…母さんに似た少女が心配そうな顔で俺を見てる…  
いけない…頑張らなきゃ…へへへ…フフ………フ。  
「ペースが落ちてきたなぁ…?」  
ジャキンッ!ジャキンッ!ジャキンッ!  
敏感になった俺の聴覚に甲高いハサミの音が響き渡ってくる。  
うおおおおおおおお!  
 
5杯  
まだまだぁーっ!  
 
6杯  
7杯  
腹の中はたぷたぷだ。  
全身の感覚は既にない。  
目の前は真っ暗。  
思考は何を考えてるのかわからない。  
女の子の声もだんだん聞こえなくなってきて。  
聞こえてくるのは、ハサミの風きり音だけで。  
 
………8杯  
限界だった。  
三途の川の向こうで手招きしてるおじいちゃんが見えて………。  
 
!?  
 
…うぼぁ!  
「きゃあああーーーーー!」  
響き渡る女の子達の絶叫。  
酸味のある臭いが広がった。  
 
………これ以上飲んだら死ぬを思った瞬間  
………吐いた。  
 
「きゃあああーー!」  
「いやーーー」  
目標の半分も達成できないまま、俺はその場にひれ伏した。  
顔は真っ赤。  
全身は痙攣。  
血液中のアルコール濃度は飛躍的に高まっている。  
大量に摂取されたエタノールはある種の薬物中毒、  
急性アルコール中毒を引き起こしており、  
呼吸と心臓が止まりそうだった…。  
 
朦朧とする意識の中、  
女の子の悲鳴だけがずっと聞こえていた。  
 
うぅ…彼女のために死ねなかった。  
俺は…俺はなんというヘタレなんだ…。  
 
そこからの記憶はほとんどない。  
誰かに肩を担がれて、ずいぶんと歩いたような気がする。  
何もかも曖昧なまま、  
気がついたら…洗面所にいた。  
俺は思いっきり吐いていた。  
異の中のものを吐き続けていた。  
 
母さんに似た少女が背中をさすってくれている。  
どうやら彼女が付き添ってくれたらしい。  
「………も…もう………大丈夫……だから………」  
「………でも」  
「いいから…」  
彼女をムリヤリ一人で先に返したのは、  
こんなゲロ臭い場所にいつまでも一緒にさせるのは  
可愛そうだと思ったからだ。  
 
そして、一人になって見つめなおす。  
「………」  
鏡に映っている俺の顔は、  
そうは、もう、この上なくひどい顔だった。  
 
俺は号泣した。  
 
情けない。  
最低だ…。  
俺はいつもそうだ。  
カッコだけつけていつも中身がスカスカなのだ…。  
小さいころは女の子にいじめられてた。  
授業参観のときはあまりの緊張で失禁してしまった。  
スポーツ大会のサッカーでは俺の自殺点で負けた。  
文化祭で劇をやったときには台詞忘れた。  
運動会のリレーのときは、転んでしまって1位から一気に最下位へ…。  
林間学校ではずっと熱で倒れてた。  
近所のプールで足つって溺れた。  
テストは、徹夜でがんばっても下痢、腹痛で実力の半分もだせず…。  
満員電車に乗ったら痴漢と間違えられた。  
 
………。  
俺はダメだ………  
どうしようもないダメ人間なんだ…。  
これほど自分が情けないと思ったことはなかった。  
もはや生きていても仕方がない。  
そもそも生まれてしまったこと事態間違いだったんじゃないだろうか…  
こんな俺なんか…とっとと首をちょんぎられれてしまったほうが。  
 
俺の心を包み込んだ絶望感。失望感。  
生まれてくるものは、後悔と自責の念だけだった。  
 
フラフラとして足元がおぼつかない。  
モノは二重に三重に見える。  
俺は壁に肩をよせながら歩いた。  
まともに真っ直ぐ歩くことすれもできない。  
出よう。  
彼女達に会わせる顔などあるはずがない。  
誰にも見られることなくこの城から立ち去ろう。  
俺は、そう思っていた。  
しかし  
「あ…っ」  
洗面所の出口には彼女が待っていた。  
母さんに似た少女…。  
どうやら、俺を待っていたらしい。  
そうだよな。  
このまま、何事もなく立ち去るなんて  
そんな都合のいい話があるはずがない。  
 
彼女は何も言わずにじっと俺のことを見つめていた。  
しかし、今の俺には彼女の瞳を見ることすらもできない。  
ずっと王様だと騙し続け、  
ゲロを吐くという無様な姿を見せつけ、  
その上、こんな所まで付き添わせ、背中までさすってもらって…。  
 
きっと俺のことひどく幻滅したに違いない…。  
だから、彼女の視線が何よりもつらくて、見られなかった。  
一目惚れの女性だった。  
俺の恋は静かに終わりを迎えた。  
ジ…エンド…マイ…ラブ……。  
 
「やっぱり王様………ひょっとして………」  
恐る恐る口し始める彼女。  
潤んだ瞳。  
まるで、これから口にすることを認めたくないないかのように…。  
 
(ふっ…そうさ………。  
 ひょっとしなくても俺は偽者さ…。  
 俺は…君達みたいな美女達に敬まわれ、  
 囲まれる様なすごい人物じゃないんだ………。  
 ただのゲロ汚いダメ人間さ。  
 へっ、今まで騙して悪かったな…  
 でも、騙される君達も悪んだぜ。バーカ。  
 はは………ははは………は………  
 でも、バレ違ったらしょうがねぇ、  
 ………さぁ…遠慮なく、絞首台でもどこでも連れて行って  
 ちょんぎってくれ………)  
 
もう何もかもが、どうでもよかった。  
彼女は思いつめた表情のまま  
ずっと押し黙った後、………口を開いた。  
 
「ひょっとして…記憶喪失なんじゃ………」  
 
…。  
……。  
………。  
……………………はい?  
 
………どこからどう、そういう発想がでてくるのか不思議でしょうがなかった。  
「あの時なのね!私にびっくりして後頭部をうったとき」  
しかし、彼女の眼差しは真剣そのもの。  
彼女があんまり真剣な態度で聞いてくるから  
それを否定することもできず、  
「実は………自分がいったい何者かも思い出せないんだ」  
あんな醜態を晒しておきながら  
こんなことをさらり言える俺も俺だった。  
「やっぱり!!  
 ごめんなさい私のせいで………」  
肩を震わせて泣き始める少女。  
と、思えばすぐに元気になって、  
「分かりました。  
 王様の記憶は責任を取って私がなんとかしますっ!」  
………うーん。切り替えの早い娘だ………。  
でも、その元気に俺は圧倒されていた。  
思えば、この娘には最初っから振り回されっぱなしな気がする。  
「でも、他のみんなにはまだ伏せといたほうがいいわね。  
 民を不安にさせるのはよくないし…  
 それに、こんな事が知れ渡れば近辺の領主達がいつ攻め込んでくるか…。  
 うん。王様が記憶喪失なのは私と王様だけの秘密にしといて下さいね」  
「あ…ああ」  
「安心してください。  
 王様にわからないことは私がフォローしますから」  
「!」  
それは、何もわからない俺にとって、心強い一言だった。  
そして何よりも彼女からそんなことを言ってもらえたことが本当に嬉しかった。  
 
………。  
いつまでも母さんに似た少女じゃ呼びにくいと思った。  
「あの、その、悪いけど…キミの名前は?」  
「んもうっ、私の名前まで忘れちゃったんですか?」  
「ご…ごめん」  
シュンとする俺。  
でも彼女は笑いながら、  
「幼馴双葉です。  
 これでも王様との付き合いは一番長いんですよ」  
まんま母さんの旧姓じゃないか………。  
「…?どうかしました?ひょっとして何か思い出したとか?」  
「い、いや、何でも…」  
「ふふ、それじゃあ、これからもよろしくお願いしますね王様」  
そう言って差し出された手。  
まいった、  
手が何重にも見える。  
「うん。よろしく、双葉…」  
そして、俺の足元も当然フラついる。  
握手しようしたけど、  
あっ  
ドスン!!  
転んでしまったが、自分では何が起きたのかわからなかった。  
「きゃ!」  
「ご、ごめ」  
「きゃあーー。ちょっと王様っ!どこ触ってっ」  
「えっ…な、な……に…??」  
………しまった。  
床が目の前にある。  
どうやら握手しようとして  
倒れてしまったことにようやく気づいた。  
その際、双葉まで押し倒してしまったようだ。  
 
酔っているせいで思考も回らないし、  
まぶたもずいぶんと重い。  
すごく眠い。  
あんまり多くのことは考えられない。  
でも、とりあえず立たなくちゃと思った。  
なんとか立とうとして、とりあえず右手に力を込めた。  
「いやっ!いや!…やだっ、やめてぇ」  
………なんだぁ?  
床にしては、なんだかずいぶん柔らかい感触がするのだが…、  
手足の感覚がないので、そんなものアテにならなかった。  
気にせずにさらに手を動かしていく。  
今俺たちがどういう体制になっているかもわからないが、  
適当に手を動かしたらそのうち立てると思った。  
「あっ…やめっ…脱がしちゃあ」  
「???」  
さっきからなんか双葉の悲鳴が聞こえる気がするが………  
自分でも何やってるかわからなかった。  
俺…いったい何をしてるんだろう………?  
よくわからないけど、彼女が嫌がっているようなので  
なんとかしようと思い、さらに手を動かしてみるが  
それがさらによくなかったらしい。  
「きゃーっ!やだーっだめぇ!あっ、やあぁ」  
双葉の悲鳴がだんだんと大きくなる。  
しかたない。  
めんどくさいけど、  
目をあけて、  
ちゃんと考えて行動するか………。  
 
…。  
……。  
ぼんやりと見える双葉の顔は  
なんか頬を染めていていつもよりさらに可愛く見えた。  
いけない………また………眠くなってきた。  
意識を保たなくちゃ…  
意識を………  
………。  
………。  
………。  
!?  
いつの間にか、  
俺は双葉を四つん這いになって押し倒していた。  
「!!!!」  
しかも彼女の和服は乱れに乱れ、  
両肩、胸の上半分までが完全に露出していた。  
俺の手は双葉の胸の上に添えられている。  
「あんっ…」  
「ななななな?」  
頬を真っ赤にそめる俺。  
全身が硬直してしまった。  
何がどうやってこうなったのか、さっぱり覚えていない。  
俺の下半身は、勃起している。  
羞恥で泣きそうな双葉の声。  
「や、やだぁ!鎖骨見ちゃ…いやぁ!見ないでェ」  
鎖骨かよっ!  
………まぁ…普段から露出度の低い巫女にとっては  
鎖骨や肩を見られるだけでも大変な羞恥なのだろう。  
しかし、俺の視線が釘づけになっているのは、双葉のもっと恥ずかしい部分だった。  
 
和服のせいでわかりにくかったが、  
双葉のやつ…すごく大きな胸をしている。  
和服の中に窮屈そうに閉じ込められているそいつは  
…これは確実にDはあるぞ…。  
「ちょっとっ!王様ー」  
双葉の声は俺の心にまで届いていない。  
俺はごくりと生唾を飲んだ。  
俺の中の悪の心がささやいてくる。  
このまま酔った勢いで…ヤっちまえと………。  
!?  
い、いやっ!  
だ、だめだっ!!  
何考えてるんだ俺はっ!  
そんなことができるか………。  
犯罪だーーーっっっ!  
一目惚れの少女。  
母さんに似た少女。  
あの時だって、ずっと俺を信じてくれた。  
こんな純粋無垢な可愛い子をムリヤリ犯そうなんて  
どうにかしてる。鬼畜だっ!変態だっ!犬畜生以下だっ!  
それに、俺は彼女の笑顔を守ると決めたはずだ!  
こんなレイプまがいのことが許されるはずがない。  
………ククク、しかし、こんな可愛い子で童貞捨てられたら最高だぜ  
や、やめろっ!これ以上俺を惑わすなぁっ!  
 
良心の呵責。  
交差する思い。  
葛藤。  
ぶつかりあう理性と性欲。  
勝つのはッ!?  
 
気がつくと  
俺は…双葉の胸を揉みしだいていた。  
「あっ、やっ!」  
俺は下半身に意見に屈服したのだ。  
 
双葉の胸はたいへん弾力性がある。  
一方は服の上から  
もう一方を和服の下へ滑り込ませ直接揉んだ。  
ワックスを塗るかのように滑らかに滑らかに。  
「や、やめっっ!あっ…あっ…はっ…はぁはっっ」  
双葉が息も絶え絶えで、いやらしい声を上げている。  
ククク、どうやら俺に胸を揉まれて、感じているようだな。  
 
大丈夫。今の俺は酔っている。  
何やったって許される。  
俺は無敵の未成年様だぜ!!  
 
俺を振り払おうと、双葉の手が顔に向かって飛んできた。  
必死で俺を引き離そうと…  
いてててて、  
これは引っかき傷ができそうだな。  
だが、所詮は女、この俺の敵ではない。  
俺は硬なった下半身を使って双葉の秘所を袴の上からこすりつけた。  
 
「んっ。あはんっ」  
さらに双葉の挿入口を上から何度も何度も突いてやった。  
ずごんっ  
 ばこんっ  
次第に彼女の抵抗が弱まっていった。  
「ひ……だ、誰か助け……てぇ!!」  
叫び。必死に誰かに助けを求めて…。  
ハハハ!叫んでも誰も来やしねーよっ!!  
 
今度は、そのうるさい口をキスで黙らせようと思った。  
唇を、彼女に向かせた。  
が、よけられた。  
ちっ…しかたないので首筋にキスをしてやる  
「ひゃっ、あ、やん!」  
敏感に感じている、  
そして、ペロペロとなめてやる。  
「ひゃあ…あ、や…だめぇ」  
俺の舌使いに双葉のヤツもメロメロだ。  
 
双葉の豊乳は俺の腕に合わせて何度も何度も形をかえ、  
秘所部は服の上から俺の股間に突かれ続け、  
首スジは俺の舌の攻撃を受け続けている。  
 
俺の顔を掴んで引き剥がそうとする彼女の腕には  
もう、ほとんど力が残されていない。  
 
双葉の顔は完全に濡れてる女の顔だった。  
そして俺のペニスも十分に準備万全。  
(いれてやる!いれてやる!いれてやる!  
 だしてやる!だしてやる!だしてやる!)  
 
16歳の母さんに種を植え付け、  
俺を生ませた父さんは正直鬼畜だと思っていたが、  
今ならその気持ちが理解できる。  
神聖な巫女を俺の手で汚していく感覚がなによりたまらなかった。  
 
も、もう、我慢できない。  
俺の下半身は爆発寸前。  
すぐにでも双葉の処女を貫いて  
子宮にあふれるほど注いでやるっ!!  
 
あ、あれ?  
袴ってどうやって脱がすんだ?  
あっ?横のヒモか?  
………くっ…こんなものいちいち解いてられるか  
俺は乱暴にそれを引きちぎった。  
 
「いやあ!いやぁ!やめてぇーーー」  
必死に最後の抵抗をする双葉。  
その行為がよけいに俺の性欲を昂ぶらせることも知らずに………。  
 
ゆっくりと彼女の袴を上からずらして…  
もう少しで、もう少しで彼女の秘部が現れるっ!  
 
その時、  
 
ジャキンッ!ジャキンッ!  
………。  
………。  
………。  
………。  
後ろから嫌ーな音がする。  
 
聞かなかったことにしたい音。  
そして大量の殺気。  
恐る恐る振り向いて見ると。  
 
「何してるのカナーー王様」  
「いーけないんだー。いーけないんだー」  
「レイプ禁止。レイプ禁止」  
 
気がつくと、背後には  
先ほどのメンバーが全員集合していた。  
………。  
………。  
俺は言葉を失った。  
そしてようやく正気に戻った。  
「あっ………い、いや…その…これはですね………」  
しかし、俺は半裸の双葉に四つん這いのままだ。  
この状態では何をいっても説得力はないだろう。  
俺の腕もすぐに双葉に叩かれてしまい、  
双葉は乱れた和服で胸を隠しながら俺の下から逃げてしまった。  
 
さて…  
 
ブスに捕まってしまった、  
両手は後ろに回され、関節技をきめられてしまう。  
「痛いっ!こらっ、やめっ!」  
そしてそのまま  
ずるりっと。  
「うわああっ!」  
勢いよくズボンを下ろされ  
俺の最も醜い部分が衆人看視に晒された。  
しかもさっきまでの行動のせいで、  
俺のペニスは長く硬くなって天に向かってそそり立っていた。  
女の子達の中には幼女もいるというのに…  
こんな勃起した状態を見られるなんて恥ずかしすぎて顔から火がでそうだった。  
 
「仕置きつかまつりまする。  
 巫女様をかかるハメにおとしいれた  
 王様を仕置きつかまつりまする」  
(ぞぞぞっ!)  
全身の毛穴が広がるような感じだった。  
 
たくさんの美女達の前に晒された  
俺の果てしなく勃起したダメペニス。  
ううっ…この仕打ちは流石に、恥ずかしすぎる…。  
………しかし…この感じは……依然………どこかで…されたことがあるような…。  
………。  
あっ!ああ!!  
俺の頭のなかでモヤモヤしていたものが紐解けた。  
 
そうだっ、  
そういえば確かこのブスはッ!  
小学生のころに、よく俺をイジめていたブスじゃないかっ!  
あのころ小柄で女の子と間違われるぐらい可愛かった俺は、  
よく、こうやってズボンを奪われては、  
腕をとられ、足をとられ、身動きできない状態にされて  
クラスの女の子達の前にちんちんを晒された。  
しかも女子達は、俺のちんちんをいじり回して遊ぶ始末。  
彼女達からすれば俺にちんちんがついていることが、不思議で仕方なかったのだろう…。  
 
そうやって小さいころから陵辱され続けた結果、  
俺のペニスは、ちょっとしたことでもすぐに勃起してしまう  
ダメペニスになってしまったのだ。  
 
ぐにゅ!!  
 
ぎゃ!ぎゃあ、ブスが俺の硬くなったチンポを握ってきた。  
ううっ…しかも、この手の感触はっ!  
そ、そうかっ!  
さっきからドサクサに紛れて俺のチンポをさわりまくっていたのはっ、  
こいつだったのかーーーっ!!  
 
ブスの巧みな手コキによって、  
一気にこみあげてきた射精感。  
俺は恐ろしいことを想像せざるを得ない。  
このままいくと俺は………。  
い…嫌だ…。  
女の子に見守られる中  
こんなブスの手コキでイクなんて  
そんなの絶対嫌だーっ!  
 
「た、助けてくれー。双葉」  
完全に泣きの入った俺の声。  
ごめんなさいっ。俺が悪かった。許してください。  
そんな感情を全て込めた一言だったが。  
「知らないっ!」  
彼女の返答は余りにも冷たかいものだった。  
憎悪と侮蔑がこめられた視線。  
俺に対する全面の信頼は、  
すっかり地の底まで落ちてしまっていたのだ…。  
 
唯一の味方すらも失い…俺は…俺は…。  
 
必死に射精しまいしてと抗ってきたが、  
それも、もう限界だ…。  
お、おれは…女の子達が見ている前でゲロを吐くだけでなく、  
射精までしてしまうのか………  
でるっ!  
でてしまう…!  
その時、ブスが俺の耳元でささやいた。  
「聖ちゃんには見せられない姿ね」  
「!」  
な、なんでこいつが俺の幼馴染の名前をっっ!  
その言葉が止めだった。  
聖の裸を想像してしまって。  
あああああああーーー。  
「ぬふぅ!」  
どぴゅるるる。  
とうとう俺のダメペニスは…彼女達に見られるながら…勢いよく射精してしまった。  
 
白濁液は俺の顔にまで飛んで、  
口を空けていたため、口内まで入った。  
「ごほっごほっ…げほっ…」  
の…飲んでしまった。  
ものすごく…苦い味がした…。  
 
そしてそのまま  
俺は、力尽きたかのように大の字で仰向けに倒れた。  
 
俺の心は完全に放心状態。  
頭は、精子のように真っ白。  
うぅ………ブスの手コキで………  
しかも最後は幼馴染の名前でイクなんて…最低だ。  
 
あろうことか…それでも俺のダメペニスは勃起したまま、  
美女達による姦視を喜ぶかのように、白濁液を飛ばし続けていた………。  
俺は今日ほどこのダメペニスの存在を疎ましく思ったことはなかった………。  
 
顔や腹に飛んでくる生暖かい白濁液を受けながら思った。  
も…もうだめだ…  
俺は男として再起不能だと。  
 
くそーっ。  
な、なんてダメペニスだ…。  
あの時、双葉を犯そうとしたのも  
元はと言えばこいつが俺に悪の心を吹き込んだからだっ!  
全てこのダメペニスのせいだ!  
なにもかもこのダメペニスが悪いんだっ!  
ちくしょお!  
このダメペニスッ!  
ダメペニスッ!  
ダメペニスッ!  
こんなダメペニスさえっ  
こんなダメペニスさえ、なければーーーっっっ!!  
 
………心の底から切に願う。  
 
ジャキンッ!ジャキンッ!  
 
「じゃ、ちょんぎる?」  
「ややや、やめて下さい。お願いします!」  
 
もちろんそんな度胸も勇気も俺にあるはずはなかった………。  
 
 
 

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