「ただいまー、美秋。すぐにご飯に、・・・って。」  
ドアを開けた私を出迎えたのは、美秋ではなく、無人のアパートだった。  
「美秋は・・・、あの娘と旅行だったっけ・・・。」  
誰に言うわけでもなく、自分を納得させた。美秋とあの娘との絆はもはや確定的なものなのだろう。  
美秋はいずれそう遠くない未来、私のもとから離れ、彼女と共に生きることを選ぶ。  
ずっと前から覚悟していたことだった。むしろ、祝福すべきことなのかもしれない。  
けれど、私の中の空虚を埋めていたものが失われたようで。虚しく、悲しかった。  
「母親失格ね・・・。」  
自嘲的に呟いた言葉が比喩でもなんでもないことは、自分が一番よくわかっていた。  
 
美秋という名前を付けた時点で、私は母親の資格なんて放棄していたのだ。  
 
藤野義明、美秋の父親、私の愛した人。・・・私を置いて死んだ人。  
寂しさを誤魔化すため、義明の記憶を美秋で塗りつぶそうとした。  
悔しくて、美秋に父親―義明―のことを教えようとしなかった。  
「最低ね、私。本当、最低・・・。」  
私しかいないアパートの暗がりの中で、私は泣いていた。  
 
 
 
「えーと・・・。」  
とりあえず布団まで戻ってきて座って抱き合って。困った。これからどうすればいいんだろう?  
さっきまで抱いていた劣情のようなものがリセットされ、何をすればよいか見失ってしまった。  
「秋ちゃん。困ったらね、秋ちゃんがしたいことをすればいいと思うよ。」  
そう言って、ちゅっ、と。僕の頬にキスした。赤らめた顔で僕をみつめた。心臓が一瞬  
止まるような錯覚。ドキドキした。  
「あ、えっと。じゃあ、服脱いで欲しいな。」  
ちょっと直球すぎたかな、とも思ったけど、もみじは了承してくれた。タイを外すしゅる  
しゅるという音が聞こえる。タイに着いたブローチが月光を反射してほんのりと輝いて  
いた。ブラウスのボタンを外す指の動きがあまりなめらかじゃない気がする。  
ひとつひとつ、ボタンを外していくごとに、もみじの素肌の見える範囲も広がっていく。  
もみじがボタンを全部外すのを見て、僕はもみじの肩からブラウスをおとして、腕から抜いた。  
あらわになったもみじの肩とかおなかとか。きれいだな、って。  
「あ、下着、とって欲しいかな・・・。僕、外し方知らないし。」  
なんだかよくわからなくなって、間抜けなお願いをした。もみじは一瞬あっけにとられて、  
次に笑って、僕の手をとって背中に回した。  
「ここをこうするとね、・・・ほら外れた。」  
ぱち、って音がしたようなしなかったような。ブラがするりと落ちたから気づかなかった。  
小さめのもみじの胸と、その先端のピンクと。ただでさえ白いもみじの肌は、月明かりで  
尚のこと真っ白に思えた。ただただ綺麗だって、呆然とした。  
「そんなに見られたら恥ずかしいかな・・・って。えと、どうかな?わたし?」  
どことなく不安そうな声。  
「え・・・。いや、ただただ綺麗だなって、みとれてた。」  
なんの躊躇もなく、そんな言葉が漏れた。それ以外、いうべき言葉が見つからなかった。  
「そ、そうかな?なら、よかった。」  
誇らしげな、照れたような、いろんな感情の入り混じった声。肌にかかった黒い髪もさら  
さらと輝いてた。しばしの沈黙。  
 
「触って、いい?」  
本当馬鹿なこと言ってるな、と思考が回るのはほんの一瞬で、僕は実際大真面目に尋ねていた。  
もみじはたまらずふきだしていた。目を細め、僕の首に腕を回す。僕の唇にもみじの唇が  
触れる。虚をつかれた。もみじの腕に引っ張られ、もみじと一緒に布団に倒れる。  
ふにふにと顔にやわらかい感触。頭が押し付けられた先はもみじの胸。伝わるもみじの心  
音、体温。  
「秋ちゃん、さっきまでやってたことほんとに忘れてるのね。」  
「あ。」  
頭の上から聞こえるクスクスという笑い声。好き勝手触ってたさっきの行為を今更思い出  
して顔が熱くなる。  
「秋ちゃんはどうかは知らないけど、私はさっきからずっとドキドキしてるんだからね。」  
僕が泣いてたときもずっと興奮してた、ってことなのだろうか?  
「それにね・・・。」  
続ける。  
 
「言ったでしょ?好きにしていいって。」  
 
好きなように、か。まあえっちなことするときに平常の精神じゃできないよな、とは思う  
けど。さっきのこともあるし抑えようとは思う。けれど。  
(こうやって胸におしつけられちゃ・・・。)  
ふわふわな胸の感触と呼吸にあわせて上下するもみじそのものの感触と。  
素朴な感動が湧き上がり、もっと深く、もみじに触れたいと思った。  
右手でもみじの小さめな胸を包みこむように触れた。はふ、ともみじがひとつ大きく息を  
吐く。てのひらからはたとえようも無いやわらかさと、とく、とくというわずかな振動と  
が伝わってくる。その感触が、僕から何かを引き出したのかもしれない。  
「え・・・、ちょっ、美秋くん!はぅ・・・。」  
気がつくと、僕はもみじの胸に口をあてていた。そこの頂点、他のやわらかな部分とは違  
う感触。舌をはわせるともみじの味。ほんのり甘い気がしたのは、僕の脳が勝手にそう  
思っただけだろうけど。  
「ちょっと、ふぁ、美秋くん、そこばっかり・・・あぅ。」  
唇でふにふにとそこをはさむと、聞いたことのないような声が漏れてきた。  
弱々しいような、求めるような、細く、儚げな声。こんな声も出せるのか、という感動と、  
ほんとかわいいな、という感動と。この想いを伝えたくなって、胸から口を離し、キスをした。  
「もみじ、・・・すごく、かわいい・・・。」  
僕の目を見ないで、もみじは言う。  
「・・・あたりまえだよ。」と。  
 
「いつまでも胸で遊んでないで・・・、先、いこ?」  
僕の手をとってもみじが自分の下腹部に導く。  
「っ!って!!」  
そんなとこ触ったら犯罪じゃないか!なんて、一瞬考えてから今は同意のもとでしてるん  
だっけな、なんてしょうもないことを考えて。そんなこと思いながらも僕の手は意外に強  
いもみじの力でもみじの下着に押し付けれられていて。  
「あ・・・。」  
「つまらない感想は言わなくていいからね。・・・恥ずかしいから。」  
湿ってる、って言おうとして先に封じられた。気になるものなのかな。  
「あ、うん・・・。」  
とだけ答えてそこをいじることに専念する。やわらかいようなコリコリしてるような。  
筋にそって指をあて押し込むと、下着に染み込んだ水気が染み出して指にまとわり付く。  
「ふっ、んん・・・。」  
しばらくそうしてると押し殺したようなもみじの声が聞こえてきた。声のする方を見てみ  
ると、涙を目じりに浮かべ真っ赤な顔をしたもみじが僕を睨んでいた。  
「美秋くんの、ばかぁ・・・。」  
ぷいと顔を背け、目をきゅっと閉じて送られる刺激に耐えて。そんなもみじの姿も新鮮で。  
「もみじ・・・、んっ。」  
僕たちは、キスを交わす。もっと深いところで交わるように。深く、舌を絡めた。  
 
「ねえ、全部見せて・・・?」  
お願いを、する。恥ずかしいとか、そういう感情も麻痺したのか、ぽーっと僕を見つめ、  
もみじはそのお願いに応じる。ゆっくりと体を起こし、僕の肩を借りてのろのろと立ち上  
がる。脚を上げてソックスを指先から抜いた。ホックを外してスカートを落とす。その  
間ふと見やったもみじの下着、濡れて少し変色して食い込んでいるのが僕をすごく興奮  
させた。最後、下着一枚になったのにも構わず、下着の端に指をかけて一気に下ろした。  
 
全裸のもみじが、立っていた。  
 
最後に二人でお風呂に入ったのはいつだっけな、なんて考えが浮かんでくるはずもなかっ  
た。胸が小さいとは言え、記憶の中のどのもみじにも当てはまらないほど、それは女性の  
身体だった。これまでの行為でわかっいたはずなのに、改めて認識させられた。もう、幼  
いころのような関係ではないこと。もっと、直接的な行為によって絆を結ぶということ。  
今日このときを境に世界が変わるような、そんな漠然とした予感を抱いて。  
月の光を背負ったもみじが、ひざ立ちになって僕と向かい合う。月光に似た光を宿す瞳に  
見つめられる。魅入られるような、そんな瞳。ずっと昔から、僕はこの瞳と過ごしてきた。  
唇同士が触れる。もみじそのものが流れ込んでくるような感覚。  
 
私が脱ぐ間、ずっと見てたでしょ?美秋くんのえっち。  
 
瞳とキスと。言葉以外で僕に伝えたのか、はたまた囁きが聞こえただけか。  
真っ赤になって、仕方ないじゃないか、なんてことを言って。  
 
「私だけ裸って不公平だよ。・・・美秋くんも脱いで。」  
「え?僕も脱ぐの?」  
思ってもみないことだった。実に意外だと思った。  
「いや、でも僕の裸なんて見たっておもしろくなんてないよ・・・。」  
「だめ。それは私が決めること。」  
それってもみじが見たいってこと?聞こうとして、また、もみじの瞳に遮られる。  
「それじゃ、脱ぎましょうね。」  
裸のまま、もみじは僕の服を脱がす。裸になると恥ずかしいとか思わないのかな。  
「え、ちょっと、パンツも!?」  
「あたりまえでしょ。美秋くんも全部脱ぐの!」  
あっという間に全部取られる。僕のアレもあらわになる。あうあう。  
「あー、もみじ。ちょっと、恥ずかしいかな、って。」  
「美秋くんのばか。私だって同じなんだから。・・・うわ、すごい。」  
僕の言葉など意にも介さず、ふにふにと僕のあれを触る。  
「う、もみじ、ちょっと、やめ・・・。」  
「やめない。・・・んむ。」  
手を動かしたまま、もみじは僕に覆いかぶさり、キスをする。僕の身体にもみじの髪がさらさらと落ちた。  
ぴちゃぴちゃと、舌を絡める音。胸に感じる、もみじのやわらかな感触。  
「ん・・・。ふぁ、もっと、もっと、欲しいよね・・・?」  
まっすぐに、僕を見た。意味を解するにちょっと時間が必要だったけど。その時がきたん  
だな、っていうのを感じた。  
 
「あ。」  
 
母さんにもらった避妊具、持ってきてたんだった。いかにも「準備してきました」って感  
じでもみじに嫌われないだろうか。懸念はあるけど、まあもみじと僕のためだし。  
「あー、もみじ、ちょっといい?」  
至近距離で見つめあう。疑問を浮かべた表情を僕に向けた。  
「避妊具、もってきたんだけど・・・。」  
言い終わらないうちに、もみじは険しい表情になる。やっぱり言わなきゃよかったかな。  
「やっぱり、夕美さんに言われたの?」  
「え?・・・うん、そうだけど。」  
やはり意外な言葉が返ってきた。そんなにわかるものなのか、それとも他に思うところで  
もあるのだろうか?  
もみじが僕に関して鋭くなるのと同様、僕だってこれでもみじのことには誰より鋭い自信  
はある。一体もみじは何を考えているのか。  
「そうだ、ねえ、美秋くん。んふふ・・・。」  
うってかわって、にやにやと僕を眺める。僕にまたがった腰を擦り付けるように動かす。  
下腹部がぬるぬるになる。  
「今子供ができたら、中学校にあがっても私まだ20代だよ?いいと思わない?」  
 

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