白昼の町はこの瞬間が来るまでは、平穏を保っていた。  
明るかった空がみるみるうちに暗くなり、不安を感じさせるような暗雲に包まれていく。  
異様な空の変化に人々は一斉に空を見上げる。  
そして彼らは見た。雲間を裂き、現れた巨人の姿を。  
「ダーク…ラウド…」  
降下する巨人の直下にいた男性がそう呟いた時には、彼は巨大な脚に踏み潰されていた。  
 
 
 
「もう…せっかくチョココロネ買えたのに…!!」  
紺のプリーツスカートを揺らしながら、制服姿の美少女・桃園 香織が町を駆ける。購買で人気ナンバーワンの菓子パン・『由美子おばさんの手作りチョココロネ』をゲットし、気分良く昼休みを迎えた直後の敵襲に、香織の怒りは爆発寸前だった。  
「…絶対昼休みが終わるまでにやっつけてやる!!」  
携帯が普及した今でも一つだけ何故か撤去されない電話ボックスに駆け込み、IDカードとナンバーを打ち込む。  
するとボックスが地下へと降下し始める。  
人類を守る最後の砦・E.D.E.Nの本部へ。  
エレベーターの中の少女は、これから自分が晒される事となる、受難の運命にまだ気付いていなかった…  
 
 
「チーフ、状況は?」  
パイロットスーツに着替えた香織はモニターを見る君島 哲哉の後ろに立つ。  
「来たか…桃園君…」  
哲哉はスーツ姿の香織の方を振り返る。  
ミニスカートとニーソックスの間から覗く健康的な太もも、ベストを遠慮気味に押し上げる小さな胸の膨らみ、そして幼さを残した可憐な顔立ちと、下から上へ、舐めるように香織の姿を眺める。  
「…」  
露骨ないやらしい目線に、香織は顔を赤らめ、俯いた。  
「いやぁ、すまないね…つい見とれてしまったよ…」  
眼鏡を怪しく光らせながら、君島は状況説明を始めた。  
「今暴れている敵は新型機だ。カブトムシのような角を持っている。なので取りあえずビートルと故障する。」  
「…ビートル…」  
香織はモニターに映った敵を見る。今までの敵・モスキートとは違う姿に、胸騒ぎを感じた。  
「まぁセルフィードの性能と君の才能の前には奴は消しゴムみたいなものさ。思う存分やっちゃいなさい。正義は…?」  
「…勝ちます…」  
そう言い、不安を抱きながら香織はセルフィードのコクピットへと向かった。  
「セルフィード、ハンガーアウト…行けますか?」  
香織はシートベルトを締め、誘導灯を振る整備班に機体をピースさせて答えた。  
「セルフィード、ハンガーアウト…行きます!!」  
加速したセルフィードは海底トンネルを抜け、海を裂いて出撃した。  
飛び立つ香織とセルフィードを、君島はまだいやらしい目で見送っていた。  
 
「雑魚相手に…つまんねぇ仕事だぜ…」  
足止めに来た自衛隊の戦車隊を指からのビームで一掃しながら、ビートルのパイロットは呟いた。  
「何て強さだ…逃げましょうよ…!?」  
「馬鹿を言うな!貴様、それでも軍人か!?」  
「…自衛隊は…軍隊じゃないですよ…」  
運良く生き延び、なお言い争いをする自衛官A・Bに気付いたビートルは二人を踏み潰すべく、大きく片足を上げる。  
「死ねよ…虫けら…!!」  
「…?…ひぃぃぃぃっ!?」  
自分達の危機的な状況を遅くも飲み込んだ自衛官A・Bは抱き合い、泣きながら叫ぶ。  
「待ちなさい!!」  
足が彼らに到達する寸前に、光の矢を受けたビートルが倒れた。  
「…あ、あれは…」  
「…出たな…天使様…!」  
自衛官A・Bとビートルのパイロットが呟き、空を見る。その視線の先には、天使の様な羽を広げた女性型のロボット・セルフィードの姿があった。  
「…来やがったな…今日こそ倒してやる…!」  
ビートルが吼える。  
ターゲットから逃れた自衛官A・Bは、その隙に撤退した。  
「…行くわよ…!!」  
周辺の生体反応が無い事を確認し、セルフィードはスナッパーアローから光の矢を連射する。  
「つっ…高い所から卑怯だな…!?」  
ビートルは軽口を叩く。その機体には、傷一つ付いていない。  
 
(アローが効かない…?なら…!!)  
スナッパーアローが剣に変形する。  
「接近戦で…!!」  
翼から光を放ち、ビートルに接近したセルフィードは擦れ違いざまに敵の胴体を斬り裂いた。  
(やった…?)  
香織の表情が緩んだ瞬間、異変が起きた。  
ビートルの傷口から、樹液の様なオイルが吹き出し始める。  
「…!?」  
香織は慌てて緊急回避を取るが、避けきれずに、右の翼がオイルにまみれた。  
(あぁ…汚しちゃった…チーフにお仕置きされちゃうよ…)  
香織は戦闘で何かミスを犯す度に、君島からお仕置きという名の数々のセクハラを受けていた。その恐るべき内容はまた別の機会に譲るとしよう。  
「もう…許さない…!」  
空中でビートルと睨み合うセルフィード。  
状況は香織が有利だったが、機体に起きた異常がその状況を打破する。  
「…え…!?」  
状態異常を示すランプが点灯する。  
「何が…?」  
香織は落ち着いてコンソールを叩き、状況を確認した。  
「…羽が…!?」  
自己診断プログラムの情報によると、右翼のスラスターが詰まっているらしい。  
確かに右翼に付いた液は硬化していた。  
(しまった…これじゃ速く動けないよ…)  
 
「迂闊だったな、天使様!!」  
焦る香織をあざ笑う様に、ビートルがセルフィードを指さす。  
「後先考えずに…」  
ビートルの背中が開き、中から大量の小型ミサイルの弾頭が現れる。  
「…近付くからだぜ…!!」  
放たれたミサイルの大群が、セルフィードに迫る。  
(よ、避けなきゃ…)  
香織は回避を試みるが、今のセルフィードは空に留まる事が精一杯だった。  
激しい爆発音と共に、炎に包まれるセルフィード。  
「きゃぁぁぁぁっ!!」バランスを失い、真っ逆さまに落下する。  
「うぅ…痛いよぉ…」地面に叩きつけられ、身体を強く打った香織は涙目で呻いた。  
「いいザマだな…」  
「!?」  
俯せ倒れたセルフィードに、一歩ずつビートルが迫る。  
「お、起きて、起きてよ!!」  
香織は立ち上がろうと必死にレバーを動かすが、焦りに阻まれなかなか立ち上がる事が出来ない。  
「もう天使じゃなくて…  
ビートルがセルフィードの背中を踏みにじる。  
「亀だな…?」  
「うぅっ…」  
機体が軋む音と、踏みつけられる屈辱に、香織は唇を噛んで耐えた。  
「もううろちょろされちゃあたまんねえからな…」  
ビートルがセルフィードの翼を掴む。  
「!?」  
その意図を感じ取った香織の顔が青ざめた。  
「や、やめて…」  
香織の懇願を無視し、その腕に力を込める。  
「いただきだ…!!」  
騒音と共に、セルフィードの翼が引きちぎられる。  
翼の動きに引かれ、その胴体が激しく海老反った。  
「いやぁぁぁぁぁっ!!」  
愛機の翼が奪われる…  
まるで自分の身を引き裂かれた様な感覚に陥った香織は成す術もなく、ただ恐怖の叫びを上げるしか無かった…  
 
「これで空は飛べねぇな!?」  
ビートルは引きちぎった翼を放り投げ、セルフィードの首を掴んだ。  
「捕まえたぜ、天使ちゃん…!!」「うぅ…」  
片手で易々とセルフィードを持ち上げるビートル。並んで初めて分かる事だが、二機の体格差は小柄な女性とプロレスラーほどあった。  
(ど…どうしよう…)  
セルフィードの象徴とも言える翼をもぎ取られた香織の動揺は大きい。その上、戦闘の要は翼による飛行能力だ。それを失った以上、苦戦は免れない。必死に作戦を考える香織の耳に、本部からの通信が届く。  
「大丈夫かい…?何だかこっぴどくやられているようだね…?」  
「チ、チーフ!!」  
彼なら何か逆転の方法を教えてくれるかもしれない。香織は人生十六年目にして初めて、地獄に仏の意味を知った。  
「羽が壊されちゃって、アローも落としちゃいました…」  
「…見れば分かりますよ…」「ど、どうしましょう…」  
モニター越しの君島に眼を潤ませ、上目遣いでピンチを訴える香織。  
しかし彼女に返ってきたのは、君島による冷酷な答えだった。  
「現場の判断に任せます。」「…はぃ?」  
「君の判断に任せると言っているんです。…こんな無様な姿を晒されては、私達の存在意義に関わる…帰ってきたら、お仕置きですからね。今日は『リコーダー』と『一気飲み』をして貰いますから。」「そんなぁ…」  
途方にくれる香織を置き去りにして、君島は通信を切った。  
 
(…一気飲みなんかやだ…それならまだお馬さんごっこの方がましだよぉ…)  
過ぎた事を悔やむ前に、取り合えずこの状況を何とかせねばならない。  
首を掴む腕を解くべく、セルフィードは必死にビートルの腕を殴った。  
「放せ、放せ、放せぇ!!」  
だが、ビートルの装甲は厚い。素手では振り解くどころか、装甲をへこませる事も出来ない。  
「しょっぱい攻撃だな…?」  
ビートルは高層ビルの壁にセルフィードを叩きつけた。  
「あぁっ!!」  
「攻撃ってのはな…こうするんだよ!」  
そう言いながら、何度もビルにセルフィードを叩きつける。  
「きゃぁっ!…あぅっ!…くうっ!」  
コクピットに備えられたショックアブソーバーと、パイロットスーツに守られているとはいえ、衝撃が0になる事は無い。何度も繰り返される激しい振動に、香織はたまらずレバーから手を放してしまった。  
「…歯ごたえが無さ過ぎる…」  
ビートルはセルフィードの首を放す。  
「あぅぅ…」  
ビルにもたれ掛かるように倒れたセルフィードの上に、半壊したビルの残骸が降り積もる。  
コクピットで奮闘する香織の姿をモニター越しに鑑賞する君島の股間はすっかり硬くなっていた。  
 
「さて、と…」  
ビートルが動かないセルフィードの右手首を掴む。  
「…あれでいいか…」  
そう呟き、セルフィードを引きずりながら進むビートル。  
その先には東京都庁があった。  
(な、何をする気…?)  
都庁に辿り着いたビートルは、片手でセルフィードの機体を持ち上げると、手首から放たれたワイヤーでセルフィードの右手首を都庁に縛り付けた。  
「…!?」  
香織が敵の狙いに気付いた時にはすでに、セルフィードは両手首を縛られ、都庁に磔にされてしまった。  
「ははっ!いい格好だな!!」  
ビートルは数歩離れて、磔にされた美少女ロボットの惨めな姿を嘲笑った。  
「…うぅ…こんな事って…」  
嫌でも敗北を認識させられた香織はコクピットで俯き、悔しさに涙を流した。  
「そ…そんな…」  
「セルフィードが…負けちゃったの…?」  
大多数の人々が絶望に打ちひしがれたその光景を見て、君島を含む一握りの特殊な趣味を持った人々は同時に呟いた。  
「…美しい…」と。  
 
 
 
「こんな糸…切ればいいのよ…!」  
香織の操作の通りに、セルフィードは腕に力を込める。しかし細いワイヤーは、見た目以上の強度を持っていた。  
「なんで…なんで切れないのよぉ!!」  
叫ぶ香織の声は完全に涙声だ。  
 
「こいつの装甲と同じ、特殊鋼で出来たワイヤーだからな…それに…こんな事も出来る…!!」  
その声に答える様に、ワイヤーから高圧電流が流された。  
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」  
機内への漏電が、香織を容赦なく責める。  
髪留めが焼き切れ、少女の黒髪がぱさりとほどけた。  
「…なかなかいい声で泣くんだな…?」  
香織の悲痛な声が、ビートルの加虐嗜好に火を付けた。  
「はぁ…はぁ…」  
電流が止まり、苦痛から解放され、額に汗を浮かべながら肩で息をする香織。  
(やだよ…負けたくないよ…)  
顔を上げ、機体の状態の確認をした彼女の表情が凍り付いた。さっきの電撃によってエネルギーラインが焼き切れ、出力が段違いに落ちていたのだ。  
(嘘ぉ…!?)  
試しにレバーを引く。機体の動きに支障は無いが、束縛を解くだけの力は無かった。  
「よくも今まで俺達をコケにしてくれたな…」  
ビートルが腰に携帯していた棍棒を握った。  
「お返しだ!!」  
全体重を掛けた一撃を、セルフィードの胸に振り下ろす。  
「うぅぅっ!!」  
セルフィードのコクピットは、胸の二つの膨らみの間に位置していた。  
今までよりも激しい衝撃に、歯を食いしばって香織は耐える。  
胸を守るアーマーにひびが入る。  
「泣いて謝るなら今だぜ…?」  
勝ち誇ったビートルの声が街に響いた。  
 
「…敵の言う通りになんか…ならないもん…!!」  
圧倒的に不利な状況でも、香織の眼は死んではいない。  
例え無様な姿でも、戦士としての誇りだけは放さない。そう彼女は決意した。  
「…まだ口答えするか…ぶっ壊す…!!」  
ビートルが狂ったように、何度も何度もセルフィードの胸部を攻撃する。(うぅ…もうアーマーが保たないよぉ…)  
強がってはいるものの、抵抗出来ない香織は必死に恐怖心を抑えた。  
「これで終わりだ…!!」この一撃によって、セルフィードの胸部アーマーは粉々に崩れ落ちた。  
「うぅ…!!」  
アーマーの下の構造を知る香織は顔を赤らめ、思わず顔を背けた。  
そしてセルフィードの姿に爆笑するビートル。  
「ぶっ…はははっ!!何だよ、それ!?」  
アーマーの下の胸部は控え目に膨らみ、その頂にはちゃんと突起が添えられていた。  
ビートルは試しに人差し指でその先端を弾く。するとまるで本物の少女の乳房の様に、ぷるんと揺れた。  
「は、腹痛ぇ…誰の趣味だよ、それ…!!」  
それは内部への衝撃を緩和するための素材選定だったが、ビートルにとってはそんな事は関係無い。その興味はまた別の部分に向けられた。  
 
ビートルの目が、セルフィードのスカートへと向かった。  
「この中はどうなってるのかな…?」  
ビートルの指先が、スカートの裾を摘む。  
「ちょっと…やめてよ!!」  
自分の体ではないとはいえ、共に戦ってきた愛機が弄ばれるのは耐えられない。せめてもの抵抗と、拘束されていない脚でビートルを蹴り上げる。しかしパワーダウンしたセルフィードのキックは、ビートルの体勢を崩す事すら出来ない。  
あっさりと剥ぎ取られるスカート。  
そこもまるで本物の様に、丸みのある装甲に、割れ目が走ってる。  
「み、見ないで…!!」  
「本っ当にいい趣味だな…」  
機体を蹴り続けるセルフィードの右脚を捕まえ、左肩に抱えるビートル。  
続いて左脚も右肩に抱える。セルフィードの丸い尻が、完全に宙に浮いた。  
「何処まで作ってんだ…?」  
そう言いながらしゃがみ、眼前にセルフィードの恥部を捉えた状態で、その脚をゆっくりと開脚させる。  
「つっ…!?」  
機体が揺れ、股関節から火花が散った。  
少しずつ恥部が開いていく…その全貌が明らかになる寸前に、無理矢理限界まで開かれたセルフィードの右脚が付け根から千切れた。  
コクピット内に警報が響きわたる。香織には、それがセルフィードの悲鳴の様に聞こえた。  
 
「おっと、取れちまった。悪ィ悪ィ…名残惜しいが、そろそろ仕上げだ…」  
もぎ取った右脚を捨て、ビートルの動きが止まる。  
「な…何を…」  
こちらを舐めるように眺めるビートルの視線に、香織は眉をひそめた。  
「…スキャン完了…へぇ…天使ちゃんのプラグコネクターは『ここ』にあるのか…」  
ビートルの指先が、セルフィードの恥部を撫でる。  
(…しまった…)  
帰投した後のデータの更新は、股間にあるプラグコネクターを本部のコンピュータに接続する事によって行われる。ここから直接ハッキングを受ければ、敵にデータを確実に奪われてしまう…  
「偶然だが、こいつのハッキングユニットも『ここ』にあるんだよ…」  
ビートルの股間の装甲が開き、そこから太いプラグが伸びる。それはまるで、男性器の様に見えた。  
「…いや…」  
目の前に現れた異質なモノに、香織の表情がひきつる。  
「その機体のデータはいただくからな。じゃぁ…挿れるぜ…?」  
残された左足を脇に抱え、ビートルのプラグが少しずつ、セルフィードの恥部へと伸びる。  
「…やだ…そんなの…入れないでよぉ…」  
何とか逃れようと腰を引く。しかし、がっちりと脚を掴まれたセルフィードに逃れる術は無い。  
ビートルの先端が、目標に触れた。  
 
「そ、そんなおっきいの…入らないよぉ…」  
確かにセルフィードの小さなコネクターに収まるほど、ビートルのプラグは細くは無い。  
「大丈夫だ…俺達の科学力をナメんな…?」  
意味の分からない台詞を吐きつつ、ついにプラグは浸入を始める。  
「あぅっ!!」  
バキバキと音を鳴らしながら、どんどん深く刺さっていくプラグ。それが三分の一ほど入った時、香織は嫌悪感に大きく顔を背けた。それに連動し、セルフィードの頭部も同じ動きを取る。  
「へへへ…まるで本物みたいな反応だな…?」  
気を良くしたビートルは、腰を激しく動かし始める。  
「やだ…セルフィードの…あそこが…壊れちゃうよぉ…!!」  
ガクガクと激しい上下運動に揺れるコクピット。  
その動きの影響で、香織の太ももの間を這うシートベルトの一部が、少女の恥部に少しずつ食い込んでいった。  
「ちょっ…やんっ…!!」  
股間を襲う予期せぬハプニングと、機体を陵辱される恐怖に香織の、そしてセルフィードの首の動きが激しくなっていく。  
「ふぅ…このくらいでいいか…見ろよ…」  
運動を止め、ビートルの腕がセルフィードの頭部を掴み、接合面を無理矢理見せ付ける。  
「あぁ…!!」  
食い込んだアンダーを正しながら、香織はその光景に、声を上げた。  
太いビートルのプラグが完全に挿入され、ぼろぼろに破損した恥部からは、まるで処女血の様に、セルフィードのオイルが滴り落ちていた。  
 
(…ごめん…ごめんね…セルフィード…)  
モニターに映し出された悪夢の様な光景を見せ付けられた香織は、胸の中で、ただただ愛機に詫び続けた。  
「さて…機体ばかりじゃアレだからな…」  
「…!?」  
「データの吸い出しが終わるまで、せいぜい楽しんでもらおうか!」  
ビートルの言葉の直後に、サブモニターが異常を知らせる。  
「何これ…異物…侵入…?」  
警告音だけがけたたましく鳴り響く。  
香織は非常用に備え付けられた銃を手に取り、警戒を続けた。  
「…そろそろ、だな…?」  
コクピットブロックの外壁から、ゴツゴツと何かが当たる音がする。  
「…!?」  
香織はその音を聞く度にびくっと反応する。  
コクピットという閉鎖空間の心細さを、彼女は初めて認識した。  
そしてコクピットの天井から、触手が一本伸びる。  
「…!!」  
香織はそれを銃で撃ち抜いた。  
「…へぇ…やるじゃん…!!」  
まるでもぐら叩きの様に次々と、あらゆる場所から触手が伸びた。香織はそれを撃ち続けるが、ついに弾が尽きる。  
「!?」  
カチカチという乾いた音が、少女の絶望を煽る。やがて、抵抗する力を失った香織を、鋼鉄の触手が襲った…  
(続く)  
 

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