じっと己を見詰める視線。大塚為五郎がそれに気づいたのは、彼がひいきにしている  
スーパー銭湯の浴槽での事だった。  
(なんだ、あのおちびちゃん)  
為五郎を見詰めているのは、小学生くらいの女の子。丸顔で愛らしい美少女だった。  
(変だなあ・・・なんで俺を見詰めるんだろう)  
ここは男湯である。父親が幼い娘を連れて入る事もあろうが、辺りにはそれらしい人物  
がおらず、少女はただ一人で為五郎と正対していた。  
 
「お父さんとはぐれたのかい?」  
為五郎が問うても、少女は頭を左右に振るだけ。迷子ではない。そう言っているらしい。  
「まさか、俺に一目惚れ?」  
色男には程遠いが、大学出たての若い為五郎。気に入られぬ事もなかろうと思い聞く  
のだが、少女はまたもや左右に頭を振る。生憎、一目惚れでは無いようだ。  
(バツが悪いな)  
少女は相変わらず為五郎を見詰めている。傍から見ると、これが非常にまずい絵と  
相成った。女性と縁遠そうな青年とチビッコ。この構図はいかにもきわどい。  
 
(場所を替えよう)  
為五郎はそう思い立つと、浴槽に体を浮かして少女の前を横切った。それも、股間は  
丸出しで、あおむけのまま器用にバタ足だけで進むのである。  
「秘技、ローレライ」  
体を潜水艦に見立て、湯の温みで半萎えになった男根を潜望鏡に見立てている。あ  
ほらしいが時事ネタなので、どうかご容赦を──為五郎はそんな気持ちで少女の前を  
やり過ごす。しかし、その時少女の目が光った。  
 
むんず──  
「ぎゃっ」  
緊急事態発生。潜望鏡が少女の手に捕まれた。  
「ぐわあ!」  
「コレ、なに?」  
「は、離すんだ・・・キミ、これは大事な・・・へもッ!」  
ぐぐぐ・・・と少女の手に力が込められる。哀れ、為五郎は急所を捕まれ、虜囚の身と相  
成った。晴朗なれど波高し。  
 
「は・・・な・・す・・ん・・・だ」  
「キノコかな?いや、ウインナーに近いかな?匂いは肉っぽいな」  
少女が男根に顔を近づけて、鼻をすんすんと鳴らす。はて、これは野菜かはたまた肉で  
あろうかと、好奇心いっぱいの表情で。  
「お味は・・・と・・・うん?」  
ぺろりとまずは舌先で男根の先を舐める少女。眉間に皺が寄った所を見ると、美味には  
程遠いようである。しかしめげずに、今度は唇で半萎えの男根を頬張ってみた。  
 
「おおう!」  
にゅるり──少女の口の中に、己の分身が包まれた。為五郎はそうと知って、一気に血を  
そこへ流入させる。こうなれば恥とか外聞は二の次で、ただ若さに任せて股間を熱くする  
のみ。  
「おおひふ、なっれひら(大きくなってきた!)」  
男根を咥えたままなので、少女はあやふやな言葉で驚きを表現した。そして、これはどう  
やら野菜でもなければ肉でもないらしいという確証を得る。  
 
「お兄さん、こんなとこにカメを飼ってるんだね。さっきから、コレが気になってたんだ」  
少女は得意げな顔でそう言うと、男根を上下に擦りだす。なるほど、言われてみれば  
亀に見えぬ事もない。亀頭とも言う表現もある。が、それは置いといて、この少女の興  
味は為五郎自身にではなく、その股間にあったようだ。今も、手にした亀まがいをシコ  
シコと擦りつつ、瞳を好奇心で光らせている。  
 
「なんでココにカメがいるの?ねえ、教えて、お兄さん」  
「こ、擦っては、マズイ!う、おお!」  
「え?擦って欲すい?いいわよ、メキメキ擦ってあげる!」  
「おお!別れ話に、ノーリアクション・ラブ!つうか、口淫!・・・じゃなくて、強引!」  
男根がわななくと同時に、為五郎館長機は早々に強チン・・・ではなく、轟沈。白旗が  
わりの子種汁を、少女の顔に降り注がせた。  
「キャー!カメさんが何か出した!何コレ?ミルク?」  
幼き少女の悲鳴──それが浴室内に響き渡ると、サウナやスチーム風呂にいたお客  
たちが一斉に飛び出してきた。その中から、少女の父親らしき男性が進み出て、  
「貴様!俺の娘に何をさせている!」  
と、言い様に為五郎へグーパンチをお見舞いする。後に知るのだが、少女の父親は  
プロボクサーだそうな。  
 
「役所さーん、ゴメンナサイ!」  
糸の切れた人形のように吹っ飛ぶ為五郎。彼に罪がある訳ではないが、この場合は  
どうにも分が悪い。だが、吹っ飛ばされながらも為五郎は、今年の最高傑作と名高い  
あの映画を見ようと、心に誓うのであった。  
 
おしまい  
 

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