ゴトリ…  
 
日の光の入らない洞窟を利用して作られた遺跡の奥。  
ワタシの指に微かな手応えを残し、ワタシが押したブロックが石壁の中に沈み込んで行き、  
壁の奥でカチリと何かがはまった音がし、  
それからワンテンポ遅れ、床の下からほこりっぽいを空気を振動させる音を響かせながら、壁が序々に扉のように穴が開いていき、その穴の奥に本物の金属製の扉が姿を現す。  
 
ワタシの名は金刀(コンドウ)駆(カケル)、  
世界で最も勇気有る職の一つ、冒険家(副業:大学で考古学の非常勤、一応は博士号持ち)についてる。  
もっとも実際には、ワタシが発掘するに相応しい遺跡などほとんど皆無なのが現実だ。  
たまに冒険と呼べるほどの危険があっても、  
学術的価値も解らないテロリストがアジトにしてたりするような面白みのない物ばかりだ。  
だが、今回は違った。  
この遺跡には、幾多の大がかりな罠が有り、その都度、危険だが職業的な満足の得られる目に合いながらようやくここまでたどり着いた。  
 
「ふう…」  
ワタシはため息をつき自分を落ち着けると、指先で慎重に扉の表面をなぞり丹念に調べていく…  
「青銅…だな」  
結構、良い鋳造技術だ…鉄器に勝るとも劣らない強度があるかも知れない。  
何らかの罠を警戒し、丹念に扉と周りを調べる。  
……  
…………  
………………  
「……どうやら、罠は打ち止めらしい」  
勝利を確信し口もとに笑みを浮かべ、扉に手を掛けようとした、その瞬間、ワタシは頭上で風が動くのを感じ舌打ちをした。  
 
扉に関しては何らかのミスはしていない。  
おそらくは、すでにそれ以前の扉を現すための先ほどのスイッチは、同時に罠を動かす仕組みだったのだろう……  
ワタシの頭上の天井が、ゆっくりだが確実に下がって来ている。  
時間が有る程度たつと、天井が落ちてくる罠。  
この罠を知っている者はさっさと中に入る、知らない物は慎重に調べている内に押し潰される。  
ワタシは急いで扉のノブに手をかけると、扉を開け中に入ろうとする。  
が、扉はびくともしない……  
どうやら罠が作動すると扉に鍵らしき物がかかるらしい。  
「当然といえば、当然な処置だな」  
扉が開くなら、この罠の意味が無い。  
「経年劣化で脆くなってくれていると助かるんだが」  
ワタシは、ほこりで真っ白になったネクタイを少し緩めると、  
息を小さく吸い、  
吐き出すと同時に右手に左手を合わせ、左腕で右腕を押すような形で前身の力を込め、扉に体当りに近い肘打ちを当てた。  
 
ガッゴッと肘の硬い部分に金属の当たった衝撃が腕を伝わり、肩にぶつかり、痛みが走り思わず歯の間から息が洩れる。  
「くっ…」  
が、扉の方も私の肘の当たった場所を中心にきしみ歪んだ感触は確かに痛みと一緒に伝わってくる。  
 
私は、その歪みに向かってもう一度足に力を込め踏み込み、万力の力を込め肘を押し歪みに更に圧力をかける。  
ギシリ…ギシリ…と、あせる私の気持ちと裏腹に扉はゆっくりと歪みながらみ、頑なにその場を開けようとせずに私を拒む。  
「ちっ」  
ラチが開かない…  
すでに天井は私の身長、187cmまで頭一つ二つという高さまで迫っている。  
一方、扉の方は時間があればこのまま、押して曲げ続ければ破損しそうだが、急ぎの今はこのまま押し続けてもラチが開かない……  
「それなりに歪んだんだ…金属疲労を起こしてくれていると有り難いのだが」  
私は意を決して肘を一度、扉から外し一歩下がり、  
「…ふう…すぅ…」  
一呼吸ついて、息を整え、  
一気に再び、肘打ちを扉にぶつけた。  
 
ゴっという鈍い音が、肘から腕の骨にきしみ、それに伴う鈍い痛みが走る。  
「くっ…」  
ワタシは、それを歯を喰いしばり更に強く踏み込む、  
ギシリ…ギシリ…  
と冷たい青銅の扉が踏み込んだ分、たわみ歪む。  
ワタシはその機を逃さす、一気に全身の力を肘に込める。  
その瞬間、頑なに侵入を拒んできた扉が突然、  
バキンッ!!  
と、耳が痛くなるような音を狭い音響効果バッチリの石造りの通路に響かせながら、  
幾年つきの経年と先の一撃とその力の負荷に耐えかねた扉がワタシの肘が当たった場所を中心に横に真っ二つに割れ、  
その上の部分が、ガランっと音を立て向こうの部屋内部に崩れ落ちる。  
「せいっ」  
ワタシは急ぎ迫ってくる天井に手をつけ腕をつっかえ棒にし体を固定して、力を後ろに逃がさないようにして力一杯、残った扉の半分を蹴り上げた。  
ガガッと、蹴り上げられた青銅が周囲で自らを固定した石を削りながら外れ、部屋の奥に転がっていく。  
ワタシはそれに着いて行くように続いて、腰に結わえつけた懐中電灯を庇いながら片手で脇に置いてあった鞄をひっ掴んで扉のあった空間に転がり込んだ。  
 
「…ふう……」  
部屋の中に転がり込んだワタシは振り返り、ゆっくりだが確実に力強く降りてくる天井を眺めながら立ち上がり、スーツについたほこりを払いため息をついた。  
「参ったな」  
すでに天井は私の胸元ほどの高さまで降り、まだ下がり続けている。  
「下手すると、悟(サトル)の所に逝くことになりそうだな」  
ワタシは10年以上前に亡くなった弟の名を冗談めかして呟いた。  
子供の頃から身近に親しんだ弟の名を呟くことで、非常から常なものへ思考を切り替え自分を落ち着けたワタシは辺りを見渡す為に、腰に結わえた懐中電灯に手を延ばした。  
ゆっくり天井が降りてきたのは、おそらくはこの遺跡を壊さない気遣いのはず。  
地下水の流れか、それとももっと単純に重りか何か動力を使ってるはずだが、  
わざわざそんな手間をかけるという事はここを造った奴は盗掘者もろともここを使えなくする気が無かったってことだろう。  
この部屋は息苦しくないし、多分通気もしてる。  
「出れるようにしてある可能性は大いに有る」  
ワタシは自分に言い聞かせるように、考えをはっきりと言葉に出し、腰から外した懐中電灯の光を部屋の奥に照らして、固まった。  
「…こういう落ちか…どうやら天国の悟とは会えないかもな」  
ワタシは懐中電灯の明かりに照らされたモノを見て呟いた。  
「…どうやら、もうすでに地獄らしい」  
どの辺りで死んだのか覚えがないが、目の前のソレがここが地獄だと言う何よりの証拠だ。  
 
……懐中電灯の光に照らし出されたソレはのそりと起き上がり体の向きをこちらに向けると、  
6つの瞳孔が光を反射してランランと赤く輝いた。  
そう、そいつは6つの目を持っていた。  
目だけじゃない、金色の頭を中心に左右に白銀と漆黒の計3つもの頭があり、  
その全てに犬科の肉食獣特有の大きく口が真っ赤に裂け、  
そこには白い鋭い牙が凶々しく光を反射し輝いていた。  
しかも、大きさが半端じゃない。  
ライオンや虎などの猫型の大型肉食獣より二回りはでかい。  
まるでその姿はギリシャ神話にある、地獄の番犬ケルベロスそのものだ……  
 
「いやいやいや、待て」  
冷静になれ……  
ワタシはまだ死んではないぞ。  
だが、あんなモノが居るわけ…  
そこまでワタシが考えた所でワタシは考察を中止せざる負えなくなった。  
その怪犬がワタシに向かって飛びかかって…  
いや…大きさが違いすぎる、飛びかかるではなくこれは覆い被さって来た。  
の方が適切だろう。  
ワタシはそれを牙と爪に注意しながら、相手のでかい体の隙を突いてかわすと、  
真ん中の首に腕を回し肩に、くるりと体を捻るとその首を肩に担ぐように乗せ、  
あとはこの怪犬の覆い被さって来た勢いを利用してワタシの後ろにあった、先ほどこの部屋に入ってきた扉の有る壁に巨体の方向を向けた。  
幾ら重かろうと大きかろうと、自分で動ける以上はその力を利用してやればなんとかなる。  
 
「キミが何なのかは、どこかの生物学者に任せるとして、  
 ワタシにはワタシの仕事がある、邪魔しないでもらおう」  
怪犬の向かう力の方向を確実に壁に向け、その命運を掌握したことで、相手の様相に圧っせられていた調子を取り戻したワタシは掴んだ首を思いっきり壁に向け叩きつけ、  
腕と肩にその手応えを確認すると素早く怪犬から離れ、再び向かって来た時のために残心を取ろうとした。  
 
その時、  
「なんて事するんだっ!!痛いじゃないかよっ!!」  
……はぁ?  
言葉?  
次に備えて構えようとしてた事さえも忘れるほど……  
この怪犬の姿を見た時以上の衝撃。  
なんと鼻面を壁に叩きつけてやった黒い頭が急に喋り出した。  
…いや、その頭だけじゃない。  
真ん中の金色の頭も  
「あらあら…鼻血出てますわよ」  
と、その黒い頭に話しかけている……  
「…本当にこれはワタシは死んだか夢を見ているんだな」  
学問に従じる者としては不本意だが、現状認識しようと努めるよりも、認めたくないという思考の方が先走る。  
が、  
「いえいえ、貴方はちゃんと生きてお目覚めになってますよ」  
先ほどまで黒い頭をいたわる言葉をかけていた金色の首がこちらを向き、  
わざわざワタシの言葉を否定してくれる。  
……小さな親切、大きなお世話という言葉を知らないらしい。  
「だいたい、おじさん何なんだよ!!」  
いや、待て、それはワタシの台詞だ。  
「それはこっちの台詞だ。君らは一体なんなんだ?  
 しかも日本語っ?  
 それにワタシはまだ42だ。おじさんではない、しかも東洋人だから若く見えるって大学では言われているんだぞ」  
「……初老過ぎてる…」  
ワタシが切り返した質問に初めて口を開いた銀の頭が、ワタシにぼそりとだが確実に痛い一言を叩きつけ返す。  
 
「……もう、どうにでもしてくれ」  
痛いところを突かれた事に最後の一押しをされ、  
ワタシの体の中で常識と気力が音を立てて崩れさるのを感じながら、ワタシはつぶやく。  
「あらまぁ…自暴自棄は良く有りませんよ」  
金色の頭がワタシに慰めの言葉をかけてくれる。  
……が、原因そのものに言われたくはない。  
「大体、おじさんは何なのさ、  
 勝手に他人の家にずかずか入って来やがって」  
「それはワタシの台詞…」  
金色の頭の言葉に次いでかけられた、黒い頭の言葉にワタシは反射的に、聞き返そうとしてしまった言葉を飲み込む、  
ここで聞き返すとさっきと同じ会話だ。  
 
そこでワタシは、とりあえずその怪犬への疑問は後回しとし、  
一呼吸つき、  
「ワタシの名は金刀 駆、冒険家という職に就いている。  
 ここの遺跡の歴史的価値の調査に来ただけで、君たちをどうこうしようという気はない」  
黒い頭の問いに答えた。  
すると、  
「イセキ?レキシテキカチ?」  
まず黒い頭が首をかしげ、  
「聞いたことがない単語ですわね」  
それに金色の頭が相づちを打つ、  
銀色の頭は先ほどの一言、以来何も言わない、というよりワタシに興味無さげだ。  
 
銀色の頭は突っ込みは痛かったが、それ以外はずっと黙っているのは煩わしくなくて良い…三つの頭が全部、こうなら良いんだが……  
そんな思考がふと頭に浮かんだ時、  
「で、イセキとレキシテキカチって何のことなんだよ」  
分からない言葉に苛立った黒い頭がこちらを睨みまた質問してくる。  
ふっきれて状況に慣れはじめたワタシはその黒い頭の様子に、思わず苦笑とふと浮かんだ言葉が滑り出てしまう。  
「…ふっ…犬相手に受け答えっていうのは、違和感の有るものだな」  
「あらら、そうでしたか?気づきませんでしたわ」  
 
その私の呟きに答えたのは、また金色の頭だった。  
その頭がその言葉を言い終わるか終わらないかの内に怪犬におそろしい速度で変化が現れる。  
首と首の間に裂け目が出来、  
前足、後足が二つに裂けそれぞれが人間の手と足らしき形を形成し始め、  
首から始まった裂け目が体全体に縦に広がり三つに裂け分かれ、真ん中の胸部から腕らしきものが、腰部から足らしきものが現れ始め、  
それと同時に全体を構成する大きさが小さくスマートになっていき、身体のサイズに対して相対的に長くなった毛に身体が全体が隠れ、  
その変体の様子が判らなくなった所でようやくワタシは言葉を絞り出す。  
「まるで悪夢だ」  
早回しで胎児が構成されていく様子を見るような、その変化に思わずワタシは呟く。  
驚異的な速度で怪犬が変体を遂げると、三つに分かれた毛の塊がむくりと起き上がる。  
 
三つに分かれた毛の塊はどうやら先ほどの怪犬の頭の毛の色に対応しているらしい。  
細部は懐中電灯一本の暗さでは良く分からないが、  
少なくとも、大きさはばらばら…一番丈の大きいのが金色、中程のが黒、一番小さいのが銀色。  
「あら…あらら……」  
その内、一番背丈の高い金色が気に抜けた声を上げながらフラフラフラとこちらの方に向かって来て…こけた。  
「おっと……ん?」  
それをワタシは反射的に二歩ほど飛び出て、胸元で受け止めると恐ろしく柔らかい感触がワタシの手に伝わった。  
その感触に違和感を覚えたワタシは、つい好奇心からそれの金色の毛をかき分けて調べる。  
 
「……嘘だろ?」  
金色の毛をワタシの指がかき分けて見て、思わずワタシの声が漏れる。  
そこには本日、最大の驚きがあった。  
そこには女性の顔があった、  
しかも、小さめの顔は整い、  
髪が避けられたことで、ほのかに当たった光にすこし垂れ目がちながらぱっちりとした目にある髪と同色の瞳は明るく、厚めの真っ赤な唇は艶やかに輝いている。  
 
「有り難う御座います。  
 久しぶりですから、うまく歩けませんでした」  
彼女…そう呼ぶべきだろうかは判らないが……  
彼女はそう言い微笑むと、彼女に見取れたまま固まったワタシの腕からするりと抜けた。  
「あ…あ……」  
ワタシは返事をしながら、彼女が離れたことで釘付けになってた視線が自由になり、その視線をワタシは残りの二つの塊に移す。  
 
どうやら、残りの二つも同じように犬から女性になっているらしい。  
ワタシは懐中電灯の光を当てて、彼女らを観る。  
金色の女性が身長175cm前後なのに対して、遠目に見ての感じだが黒い女性は大体身長165cm程度、銀色の女性は150cmも無いのでは無いだろか。  
二人とも金色の女性と同じく容姿も判らないくらいに髪が伸びきっている。  
「…ははは…これは、うちの馬鹿がまだ普通の人間に思えるな」  
驚くことに疲れはじめたワタシの顔に皮肉の苦笑が浮かぶ、  
人間、常識を破壊されると笑うしかないらしい……  
 
「それで、先ほどのお話なんですが」  
「あぁ…なんだっけ?」  
二人を見てたワタシは金色の彼女に、不意に話しかけられ脳の回路がうまく繋がらず間抜けな質問返しをする。  
「イセキとレキシテキカチだよ。  
 おっさん、ボケてんのか?」  
「…そうだったな」  
ワタシとしては、その前に君たちが何者なのかの方を聞いておきたいのだが、押し問答になっても仕方ない。  
こちらが説明してから、ゆっくり聞けば良いと疑問を頭の片隅に押し込む。  
ただ、これだけははっきりさせておかねば、  
「おっさんじゃない、お兄さんだ」  
ワタシは念を押し、彼女らの疑問に一つ一つ答えていった。  
 
一通りワタシの事を説明した後、  
ようやくに彼女たちが何なのかを聞き出したワタシは自分の頭を整理するためにも、彼女たちに聞き返す。  
「つまり…君たちは姉妹で一匹の地獄の番犬だったが、天の神に反乱を起こして地獄に堕とされた天使が地獄を征服したせいで失職して、それからずっとここで寝てた……と」  
「はい」  
ワタシの目の前にちょこんと座った金色の彼女がワタシの確認ににこやかに答える。  
 
彼女たちはかなり知能は高い。  
概念が全く無かったワタシの職の話を即座に理解したし、  
特に語学に関しては地獄には多種多様、それこそ宇宙中から死人が集まるため、某星間戦争映画の金色ロボ並。  
日本語はワタシに合わせてくれてのことらしい。  
全く信じ難いが、少なくとも目の前で怪犬が三人の女性になったのは再現性だの何だの言う余地もない事実だ。  
ちなみに、彼女たちは金色の彼女が一番上の姉ジェーン君、彼女の見かけは25才ほど、  
黒髪の子は真ん中のキャシー君、18才程度、  
最後に銀髪の子がドミニク君、10才行くか行かないにしか見えない。  
しかし、彼女らの話を信じるならば、あくまで見かけの話だけであって実年齢は全然、ワタシより上なのだろう。  
 
「で、君たちはどうするんだ?」  
認めはしても扱兼ねる事実にワタシのは判断がつかず、  
いや、そもそも何を考えれば良いからえ判らず彼女らに声をかけると、  
「それはこっちの台詞」  
キャシー君がつっけんどんに答える。  
「もっともな意見だな…」  
彼女らはただ寝てた所に、土足でずかずか来たのはワタシの方だ。  
ワタシとしては世紀の大発見だが正直そんな事よりも、大人しく寝てたなら、やはり彼女らを放っておいてやりたい。  
が、放っておくのも寝覚めの悪いことになりそうだ。  
なぜなら、  
「ふむ…君たちには迷惑かも知れないが、現代にはワタシのような職の人間は他にも居る。  
 言い難いが彼らに君たちが見つかれば、あまり芳しくない状況に君たちが追い詰められることになるだろう」  
 
「俺たちが人間なんかにどうこうされるわけないじゃないかっ!!」  
ワタシの言葉に対して、キャシー君が精悍なその見かけに似合う、勇ましく少し頼もしそうなはっきりとした声で激昂する。  
「しかし、実際問題として、ワタシが何とか出来そうだった気がするが?」  
先ほど、ワタシに襲いかかった時に投げ飛ばされていては説得力は皆無だ。  
もっとも、素手で何とか出来るのはそうは居ないのかも知れないが、それを差し引いても、ワタシには彼女の言葉を切り返す余地は有る。  
ワタシは落ち着いて彼女に言葉を返す。  
「あ…あれは…手加減、そうっ!手加減してやったんだっ!  
 別に驚かして追い出すだけのつもりだったからな。  
 ウンっ!!」  
最初にどもった事といい、最後に自分の言葉に納得したように頷くことといい、凄く怪しい……  
が、ここで反論すれば向こうは依怙地になり兼ねない、ワタシは  
「一人二人ならそうだろうが、人間は徒党を組んで武器を持ってくるぞ。  
 武器だって君たちが知っている物よりも進歩している。  
 今の武器は一昔前なら魔法と言って差し支えはない物だぞ」  
敢えて彼女の言葉に反論せずに話を続けて行くと、  
「確かにそれは困るかも知れませんね」  
ジェーンさんがワタシの話を肯定してくれる。  
しかし、彼女は、  
「でも、私たちは此処を動けないんですわ」  
ワタシが提案しようとした、寝床の移動は先手を討って断って来た。  
 
「まず、ここを出て何処に行けってのさ?」  
キャシー君が横から不満気な声を出す。  
「…それは、どこか山奥にでも隠れ……」  
それに答えたワタシの言葉を遮り、彼女が怒鳴る。  
「御免だねっ!!  
 ここは俺達の神殿なんだぞっ!!  
 なんだって、俺達がここを出て山奥に隠れなきゃならないんだっ!!」  
……そりゃあ、そうだが、  
人間という生き物は人間以外の正論…いや、人間同士の正論でさえ民族や宗教主義主張が違えば通さない懐の狭い生き物だ。  
ここは何とか説得せねば、  
とワタシが考えた横からキャシー君の言葉に続けて、  
「それに、貴方が居らっしゃるまでずっと人は来ませんでしたし、きっとこれからもここまでたどり着けませんよ」  
とすごく楽天的な意見をジェーン君が出す。  
が、気の毒だけど、  
「それはないな。  
 資料や伝承を調べて考えれば、ここには行き着ける。  
 脳味噌は人間全員に有る、早いか遅いかの違いだけでワタシがここに来たのだから、誰かはまた来るよ」  
ワタシは彼女の希望をきっぱりと否定する。  
と、その言葉に言い出したジェーン君だけでなくキャシー君の表情も曇る、どうやら先ほどの発言の裏にはここまで人間はたどり着けないという考えが彼女にもあったらしい。  
 
これで説得し易くなったかな?  
彼女らの表情を見て取ったワタシはそう考え、再度切り出す。  
「どうだい?どこかに隠れてくれる気になったかい?」  
が、彼女らから返って来た答はまたも煮えきらない返事だった。  
「しかし…許可が有りませんから」  
いや、煮えきらないというより、意味の通らない言葉、  
「許可?」  
誰かの許可がいると言うのか?  
「当然だろ?  
 俺達は番犬なんだから、飼い主の許可もないのに勝手に動くなんて出来ないに決まっているじゃないか」  
……決まっているじゃないかって常識みたいに言われても困っているし、それに、  
「君らは今、無職で飼い主は居ないんじゃないのか?」  
思い付いた言葉を何気なく言うと、  
「そうですわ、貴方に飼い主になって頂けば良いのですわ」  
パンと手を叩いて、その言葉を聞いたジェーン君が明るい声で言う。  
 
「ちょっと待ってよっ!姉貴ッ!こいつはたかが人間だよっ!」  
名案とばかりに明るく言ったジェーン君の言葉にキャシー君が言葉を荒だてて反論する。  
ジェーン君はそれに落ち着いて、  
「あらまあ…?  
 ではキャシーには何か名案でもあるのですか?」  
聞き返し、  
「…来た人間は皆殺しにしとくとか?」  
しばらく間が開いてから、キャシー君の答えた物騒この上ない答えを聞いてから、それを流してワタシに話かける。  
「で…どう致します?」  
もちろん、飼い主の件だろう。ワタシはその程度で彼女たちも、最初に来るだろう武装してない人間も助かるなら安いものだと、考え。  
「ああ、それくらいなら構わない」  
と安易に答えてしまった。  
 
「ちょっと、待っ」  
ワタシがした返事に、また文句を言おうとしたキャシーの口をジェーンは押さえ言葉を遮り、  
そのまま後ろに倒して押し退けると、  
「それでは…」  
と、ワタシの唇にその厚めの柔らかい押し当ててくる。  
「な…何をするんだ!君はっ!!」  
予想だにしなかった突然のその口付けに動揺し思わず声を荒だてワタシは、慌てて彼女を引き剥した。  
「何とおっしゃられても……契約ですが?」  
「待ってくれ…契約って今の口付けがか?」  
あっけらかんと答える彼女に、毒気を抜かれたワタシは幾分落ち着いて彼女に質問すると、  
「いえ、きちんと私と交わっていただきますわ」  
先ほどと同じように、彼女はあっさりと答える。  
 
「……諦めよう…実験動物生活もオツな物かも知れないぞ。  
 現代なら身体の中の調査まで解剖しなくても出来る。貴重なサンプルだ、案外大切にしてもらえるかも知れない」  
気の毒だが、今がしか会ったばかりの行きずりの女性を抱くのはワタシの主義に反する。  
「ひどっ!!  
 俺たちを見捨てるのかよっ!!」  
ワタシの言葉に、先ほどまでワタシを飼い主にする事に反対してたはずのキャシー君がすぐに反論してくる。  
「……キャシー君…君はワタシに一体、どうしろと言うんだ?」  
ワタシはその声にため息をつき彼女にながら答えると、  
今度はすすり泣くような声が聞こえる、ジェーン君だ。  
「よよよ……  
 所詮、人間には私たちなどどうなっても良いのですね……  
 最初に襲いかかった事を根に持っているのですね……」  
わざとらしい泣き声だが、それ故にやけに気が重くなることを言いながら泣いている。  
そして、止めとばかりにずっと黙っていたドミニク君が、  
「……外道?…ここまで脅して見捨てる?」  
とぼそりと鋭い一言を発っする。  
 
「わかったっ!  
 わかったから、そんな目で人を見ないでくれっ!!」  
ワタシは三人に負け、半ば投げやりに言ってから、言葉を続ける。  
「……で、普通にすれば良いのか?」  
契約だと言っていた以上、もしかすると特殊な手順が必要なのかも知れない。  
そう思ってした質問だが、  
「ええ、普通でけっこうですよ」  
質問して難だが、その質問を口にした事で浮かんだ疑問にワタシの思考が捕らわれてしまう。  
そもそも、いくら相手が妖怪地味ているからと言って、こういう契約方式は有り得るものなのか?  
彼女たちの有する文化系統、つまり彼女たちの言うところで地獄の契約方式なのだろうか?  
ならば、古代に地獄を信仰対象としていた文明に関してはどうなのだろうか?  
質問だけしっぱなしのまま、ワタシはふと浮かんだ考古学者としての疑問に意図してではないが、結果として彼女たちを放置して考えに耽ってしまった。  
 
「あの〜これ、どうやって脱がすのでしょう?」  
「動き難そうだな、ここまでこんなん着てきたのか?」  
その間にワタシの服を掴んだ、彼女たちがめいめいに勝手なことを言いながら、ワタシのスーツを脱がし、  
ワタシが気づいた時には、すでに上着を剥されネクタイにジェーンが四苦八苦しているところであった。  
 
「ちょ…待ってくれ……」  
ワタシはかなり強引にはぎ取られたらしく、すっかりボタンの糸が緩んでしまった上着を手繰り寄せ、後ろにひいて彼女らから離れる。  
「待ってたら話が進まないだろ。  
 人間は年取っと血の巡りが悪くなって嫌だねえ」  
「あのなぁ…」  
ワタシは混乱して取り乱したりするのが嫌だから、必死で自分を落ち着かせようとし、結果時間がかかるのは仕方無いだろう。  
ワタシはキャシーの言葉に、そう言い返そうとして止めた。  
確かに今までのワタシのペースでやっていたら、進まない。  
ワタシはジェーンにいじられ少し結び目が固くなったネクタイを外し、そこから順番に手際良く衣服を全て脱ぎ捨てる。  
 
「あらまぁ、凄い身体ですね〜」  
ワタシの身体を見てジェーンが言葉を漏らす。  
「親父の道楽のお蔭でな……  
 そのせいでワタシも随分、世界中に敵を作ったよ…」  
つい昔を思い出し呟くワタシを、  
「遠い目して、おっさんまた流れを止める気かよ」  
またキャシー君の言葉が現実に引き戻す。  
…いかんな、本当にこの状況から思考が逃げたがっているらしい。  
契約だろうが、これから体を重ねるのに度々の思考の逃避はさすが女性に失礼だ。  
ワタシはこれ以上、余計な事を考えない内に  
「あんっ」  
ジェーン君の体を抱き寄せた。  
 
抱き寄せた腕に触れた彼女の髪が、さらりとした感触を伝える。  
正直、伸びっぱなしの状況から油髪を予想していたが、それが良い意味で予想が外れた。  
しかも、このほこりっぽい遺跡の中に居たとは思えない甘い匂いが、さらりと髪がゆらめく度にワタシを誘うように香りたつ。  
それらの感覚に興奮を僅かに覚えたワタシは、  
彼女の身体を抱き締めたまま、足で脱ぎ捨てたスーツを床の伸ばして敷き、そこにゆっくりと彼女の身体を押し倒した。  
 
「あん」  
彼女の口から可愛らしい声が洩れると同時に、ワタシの腕に床に跳ね返された彼女の弾力が伝わる。  
その柔らかさを感じながら、彼女の髪をかき分けその白い滑らかな身体を露にする。  
「……綺麗だ」  
思わず、ワタシの口から声が洩れる。  
 
仰向けになったことで、胸はそのボリューム故に形こそ多少は崩れているが、それでも張りのある肌に支えられたそれは美しく上を向き、  
すでに彼女の方も興奮しているのか、その先端を固く尖らせそれが更にその形状の美しさを増している。  
 
その美しさに引き込まれるように、ワタシの指が白い彼女の体の上を滑るようになぞる。  
「…あ」  
指が動くたびに彼女の口から、声にならない小さな母音が吐息とともに吐き出される。  
その息の匂いを甘いと感じ、ワタシはその息が、冷たくほこりっぽかった周囲の空気さえも変えてしまうような錯覚を与えるほどに、ワタシを興奮させている事に気づいた。  
「……まるで」  
10代のガキみたいだな。  
その感覚とに久しく感じなかった軽い切迫感に戸惑いを覚えながら、ワタシは軽く指でなぞる愛撫を胸からへそ、そして彼女の大切な場所にたどり着くように続け、  
「…あっ」  
彼女自身の準備がどうかを指の感覚から判断する。  
が、ワタシの奥から差し迫る切迫感に似た感覚に反して、彼女のそこはまだ多少の体温の熱気程度の湿り気で無かった。  
まだ撫でた程度の愛撫ではあるが唾液で、濡らした方が良いかも知れない。  
ワタシがそう考え、体を沈め彼女の身体…耳に舌を這わせる。  
「ん…」  
軽く彼女の耳タブを噛むと、彼女の鼻からくぐもった息が漏れ、  
そのまま、唾液で滑らせながら首筋をなぞれば、  
「……くぅん…」  
食いしばられた歯の隙間から洩れ出るような、声が洩れる。  
 
ワタシはその息遣いを聞きながら、鎖骨、胸と滑らかな彼女の肌に舌を這わせ下をめざし進める。  
「さっさとしろよ。  
 年寄りはメンド臭いなあ」  
「……立たない?」  
さすがに暇なのだろう、キャシー君とドミニク君がワタシの舌がようやくヘソの辺りにたどり着いた所で届く。  
考えてみれば見られながらするわけだ……  
「…君らは後ろでも向いててくれ……」  
キャシー君はともかく、ドミニク君に見せては教育上良くないような気もする、  
が、そう思って言ったをワタシの言葉を彼女たちは無視する。  
そういう常識的な話はその範囲外な彼女らに対して気にしても仕方ないのかも知れない……  
 
ワタシは気を取り直し、再び舌を動かしていく。  
ヘソの周りに丹念に舌を這わせ、舌をへその中に入れ、舌先で突つくように刺激を与えると、  
「ああっ…あぅ…あぁ」  
ジェーン君は、なまめかしい白い身体をのけぞらせ断続的な声を上げて答えてくれる。  
ワタシはその動きにを振り落とされないように、彼女の体を強く押さえ付け、  
舌を彼女の体から離さず、彼女の金色の茂みまで進める。  
 
彼女の茂みは人間のものより、獣毛に近いらしくやや細く柔らかかった。  
ワタシはそこに鼻面を埋めながら、茂みに捕らわれ充満した彼女の熱気と体臭に多少の興奮を感じながら、たっぷりと唾液を絡ませた舌で彼女の裂け目の周りを丁寧になぞり、  
少しづつ、彼女の裂け目に舌を差し込む。  
「くふん……あぅ…きゃうん……あぁっ」  
そして、ワタシの彼女の中で最初はゆっくり、  
序々に、その動きを激しくしていくとそれに伴い彼女の声も激しくなって行き、  
その声に引きづられるように、舌先にさらりとした唾液とは明らかに違う粘度の高い液体が絡みつきはじめる。  
その液体を舌に絡ませ、味わいながら唾液を混ぜのばし広げ塗りたり、そのまま滑った舌先で裂け目の上部に隠れた突起を刺激してやる。  
「あっあっ…そ…そんなの駄目っ」  
その行為に、ジェーン君が久しぶりに意味をなした語を口から発したが、  
ワタシはそれを無視し、更にめくれかけていたその突起の包皮を舌先で剥き、剥き出しになったソレに前歯を軽く立ててやる。  
「あっあぁああっ!!」  
その瞬間、彼女はピンと背筋を弓なりになるほど伸ばし絶叫に近い声をあげ、  
その声が治まるとがっくりと全身の力を抜き崩れ落ちた。  
 
ワタシは彼女が最後の瞬間に大きく放った、彼女の潤いと呼ぶのには多すぎる潤いにベタベタになった顔を彼女から離すと、  
軽くそれを腕で拭い、まだ力の抜けたままの彼女の体に覆いかぶさり、  
いきり立った私自身を、べとべとに濡れそぼった彼女の大切な部分に当てがう。  
「あぅ…ん」  
ワタシのモノが彼女のそこに触れた時、  
彼女の唇から、吐息とともに甘い声が漏れ出、  
「あ…あ…あ…」  
少しづつ、深く繋がっていくに従ってその声は震えた濡れた声に変わっていく。  
 
ワタシは、その声を聞きながら更に彼女の奥にモノを進めた。  
「あ…はぁあっ」  
そして、最も奥にワタシがたどり着いたところで、彼女の口から大きく息が吐き出され、その後何度か大きく形の良い乳房の乗った胸を大きく上下させ深呼吸される。  
ワタシは、その呼吸が落ち着くのを一番奥まで繋がった姿勢のまま待ち、  
彼女の呼吸が落ち着いたところで、  
「動くぞ」  
と、宣言し彼女の返事を待たずに全身を揺するようにゆっくり動き出した。  
 
「あっ…あ…ああぁ」  
彼女はしばらくその動きにワタシの動きに揺れ、震えた声を出していたが、  
ワタシが少しづつ腰を使い出すのに合わせて、自ら腰を持ち上げ、二人の体に少し隙間を作りあくまでワタシの動きを邪魔しないように、  
もちろん、ワタシも彼女の動きに合わせて体勢に気を使ったが、それを差し引いても、  
彼女は実に鮮やかにワタシの体の下で体を捻りワタシのモノを抜け落とす事もなく四つん這いで、きゅっと締まった白い尻をこちらに向ける体位に変え、  
「私は…こちらの方が」  
と、小さく呟く。  
 
その呟きに答えて、ワタシは彼女の背に覆いかぶさり尻に腰を打ちつける。  
正常位よりも、遥かにスムーズに動ける…  
が、抜こうとする時はワタシ自身によくある絡み付くという表現よりも強く、巻き付くようにと表現するしかない程に抵抗をかけてくる。  
ワタシは、動きやすくなった体位に合わせその抵抗に抗う為に込める力の作用で、自然に強く彼女に突き入れてしまう。  
 
「あっ…あああっ…くぅん…ぅあん」  
強く突き入れる度、彼女の声が漏れ、  
その声に段々、と犬が鼻を鳴らすような音が混じり、  
「くん…あっん…くぅん…すん……」  
ワタシの高まりと、おそらくは彼女の高まりの度に段々、  
その鼻を鳴らすような音が増ていく。  
その声を聞きながら、年甲斐もなく行為に没頭していたワタシは限界を感じ、  
我に返って抜こうとすると、聡くそれを感じた彼女が、  
「それじゃあ…駄目…ですよ」  
と、ワタシを逃がすまいと締め付けを更にきつくする。  
「キャウンっ!!」  
彼女の締め付けに抵抗し切れずにワタシがモノを押し戻し、それが彼女の最も奥に達した時、彼女が大きく退け反りながら叫び、  
その瞬間、締め付けが僅かに緩んだ瞬間に、ワタシのモノは弾けるのではないかという位の勢いで堰を切ったように訪れた。  
 
 
ー・ー・ー・エピローグ・ー・ー・ー・  
 
変わった体験だった。  
 
二箇月後、  
ワタシは、主の居なくなった後の彼女たちの寝室だった遺跡の論文を書きながら、ふと手を止め感慨に耽る。  
もちろん、論文には彼女たちのことは書かない。  
書いても誰にも信じて貰えないどころか、下手をすれば誰にも相手にされなくなる。  
これから大学進学を控え金のかかる高二の甥と高一の姪を養う身でそんな事は出来ない。  
それが無くとも、彼女らの平穏の為には彼女たちの事はワタシの胸だけに止めておくと決めている。  
 
……そう決めたのだが……  
「なんで…君らはワタシの借家に居るかな?」  
ペンを止めたワタシは振り返り、  
長い髪を頭の後ろでひっつめて纏めている金髪の女性、  
黒髪をショートに切り揃えた少女、  
銀色のロングヘアーの女の子、  
有り体に言えば、現代風に小綺麗な髪型、服装になってい  
るジェーン君、キャシー君、ドミニク君の三人に声をかける。  
 
「ですから、私たちは番犬で金刀様は私たちの飼い主」  
ジェーン君、  
「番犬が飼い主のそばに居るのは当然」  
続いてキャシー君、  
「…因みに飼い主であって、主人では有りませんから扶養義務は発生しても命令権は有りません」  
最後にきっぱりと言い切るドミニク君。  
そう、この最後の一言のせいで山奥にでも隠れろというワタシの言葉はあっさり却下。  
しかも、ワタシが資料の本など大量になるため、無理して借りた少し広めの館に、番犬だからと無理に押し掛け現代生活をエンジョイしている。  
 
やはり釈然としない。  
…釈然としないが、  
「ところで、金刀様。  
 今日の晩ご飯は何に致しましょう?」  
話の途中にも関わらず、少しづつ家事などを覚えてやってくれるジェーン君がにこりと微笑んでワタシに聞いてくる。  
ワタシは話を続けるのを所詮、男は正体が何であろうと美人には勝てないと諦めることにして、ジェーン君の質問に答えた。  
 
 

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