ハッキリ言えば、私は欲求不満だ。  
生活に置いては、これと言った不満はない。  
いや、むしろ日本に来てからの私生活は充実しきっている。  
行動制限はされているが、日の光を堂々と受けられ  
洋館に自分の部屋を持ち、沢山の友人が出来た。  
そして好きな手芸を方々から頼られるのも、  
自分で吐き出す糸では足りなくなる程忙しいが、充実している。  
今では「デザイナー」なんていう仕事に就いている。  
まあもっとも、こちらの仕事に関して、私は直接人間と交渉出来ないので  
若干現実味が欠けているのだが  
私がデザインした制服を着た娘達が  
……中身はもちろん人間ではないのだが……  
時折遊びに来るのを見ると、その都度心温まる思いだ。  
これだけ生きるという事を満喫していながら、  
いやむしろ、これだけ充実しているからだろうか  
私は欲求不満に陥っている。  
どんな欲求か。それは、その……  
まあ、有り体に「欲求不満」と聞いて思い当たるのは一つくらいだろう。  
まさか「お腹でも空いているのか」など思う者もおるまい。  
「……はぁ」  
深い溜息。どうやら今日も作業がはかどりそうにない。  
日本語では「殿様商売」などと言うそうだが  
私は仕事に利益を求めないが、代わりに納期を定めない。  
その為作業を長期的に止めても、誰からも文句は言われないしさせない。  
とは言え……ここ最近、作業の手を止めてばかりだ。  
「参ったわねぇ……」  
頭をわしゃわしゃと掻きむしりながら、私は又大きく溜息。  
ギリシャにいた頃は、こんなに「求める」事はなかったのになぁ  
ぼーっと天井を軽く見上げ、そしてまぶたを閉じる。頭をがくりと落として、また溜息。  
どうしてしまったのだろうか。自分で自分が判らない。  
 
「……するか」  
ここ最近は日課にすらなってしまっている行為。  
あまり褒められる行為ではないが、今の自分は「これ」をしないと落ち着かない。  
私は作業台を片づけ、念入りに「角」を綺麗にふきんで拭く。  
角の丸い作業台。私がわざわざ「角が丸い」を優先して選んだ作業台。  
「よっ……」  
私は上半身を持ち上げ、綺麗にした作業台の角に、腹部と足の付け根の間を軽く乗せた。  
「んっ」  
まだ何の準備も出来ていない、私の……敏感な部分。  
あえて「蜘蛛」らしく言うなら……生殖器。  
私は、元は人間だった。  
それを機織りもろくに出来ないくせに威張り散らす愚かな女神に、  
下半身を蜘蛛にさせられてしまった。  
その為、上半身は人間の頃と変わらないのだが、腰より下はだいぶ変わった。  
まず、脚が六本に増えた。  
蜘蛛の脚は八本なのだが、私には腕もあるので差し引いて六本なのだろう。  
そして、排泄する箇所が変わった。  
私の生殖器は、かなり「奥」へと、手も届かない程奥へと移動している。  
蜘蛛なら問題のない場所。でも私は半分人間。この位置には問題がある。  
蜘蛛はしないが人はする行為……それが安易に出来なくなってしまった。  
 
「んっ……」  
弧を描くように、ゆっくりと、しかし小さく、私は腰を動かした。  
軽く角に押し当てるように。  
私はこのようにして、手が届かないハンデを克服している。  
「はぁ……んっ」  
たまに反対方向へ回したり、あるいは前後に揺すってみたり、  
色々と動きに変化を付けながら、私は次第に腰の動きへ没頭していく。  
自分でも気付かぬうちに、両手は己の両胸をまさぐっている。  
「……いいわ、脱いじゃえ」  
服の上からではまどろっこしい。私は上着も下着も、脱ぎ捨てた。  
もちろん、その間も腰の動きは止めない。  
「あっ、そこ……」  
小さな突起物。興奮する事で僅かに大きくなるその部分を、私は角で刺激を与える。  
「いいよ、ん……もっと……」  
まるで誰かに、ねだるような独り言。  
私の脳内では、その「誰か」が鮮明なイメージになって浮かび上がろうとしていた。  
「お願い、もっと……あっ!」  
腰の動きも激しくなり、胸を掴む手にもかなりの力が加わっている。  
 
欲しい。  
本当は、こんな暖かみのない作業台の角なんかではない、熱い熱い、「あいつ」のが……。  
「あっ、ダメ! こんなので、いっちゃう! でも、でも……あん、ふあっ、もう!」  
作業台が揺れる。私の腰も、激しく揺れる。  
まぶたを閉じ、私は自分の手も作業台の角も、全てがまぶたの裏に浮かび上がった「あの男」からの感触だと、自分に言い聞かせる。  
欲しい。  
欲しいのに。  
快楽からなのか、それとも寂しさか。私はうっすらと瞳を濡らしている自分に気付いた。  
「いくっ、いっちゃう! いっちゃうの!」  
私は、「あいつ」の名を叫びながら頂点に達する……つもりだった。  
「アルケニーさぁ〜ん。頼んでた衣装出来ました?」  
ノックも無しに、部屋の扉が開かれた。  
視線が合う。  
行きかかり火照った身体は、急速に冷めていく。  
そして今までとは意味の異なる火照り……羞恥によって全身がゆであがるほどに熱くなる。  
「あっ……」  
ドアノブを握ったまま、視線の先にいる娘は固まっている。  
私もしばらく、身動きが取れなかった。  
裸になり、両手で胸を鷲掴み、秘所を作業台の角に押し当てたまま。  
やっと動かせたのは、唇から。  
私はまず、悲鳴を上げていた。  
 
*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*  
 
「いや、まさかね、あははは」  
まったく、笑い事じゃないわよ。  
私は脱ぎ捨てた服を再び着ると、訪問者を正座させた。  
正座と言っても、彼女……スキュラも私同様、下半身に人間の脚はついていない。  
脚は私よりも多い十二本。おまけに蛇の頭が六つも付いている。  
故に正座と言うよりは姿勢を低くさせたと言うべきなのか。  
「前にも言ったけど、作業は急かさない。そういう約束でしょ?」  
彼女は、自分が頼んだ「衣装」が出来上がったかどうか、その状況を確認しに来ていた。  
普段なら、もう出来上がっても良い頃。しかし全くと言っていい程に彼女の衣装制作は進んでいない。  
それほど長い期間、私の手は止まったままなのだ。  
「ゴメンね。なんだか待ちきれなくって」  
ぺろっと舌を出す姿からは、反省の姿勢は伺えない。しかし特に怒鳴り散らすつもりはない。  
共にギリシャから日本に来た友人の性格を良く知っているから。  
「仕方ない、今度は原点に返ってこの服で「やろう」かな」  
彼女は今着ている「衣装」を両手の指で軽くつまみ上げながら言った。  
今彼女が着ている服はメイド服。ここ最近彼女の「普段着」になりつつある、私の作品。  
初めに彼女からメイド服を頼まれた時には驚いた。  
注文された服そのものもだが、それをねだる理由について驚かされた。  
そして、羨ましかった。  
彼女は私と違い、下半身を複数の脚と蛇にされた事で、生殖器を失っている。  
その為、私以上に「欲求」が貯まりやすく、また自己処理が出来ない。  
そうして鬱積が貯まると、元々制御の難しかった下半身のコントロールがより難しくなり危険だ。  
そこで、私が住み彼女が働いている館、つまり今いるこの館の主に、  
「性欲処理」を彼女はお願いしている。  
これは彼女が人間世界で生きていくには重要な事。  
そこまで判っていながら、  
私は楽しげにその「性欲処理」の約束日を待ちわびる彼女がとても羨ましかった。  
 
「なんだか、浮かない顔してるね。大丈夫?」  
顔には出さないようにしていたつもりだが、  
どこかで羨ましく眺めているのが判ってしまうのだろうか。  
いや……妬んでいるのかもしれない。  
恥ずべき事だ。私は自分の欲求不満から友人を妬むなんて。  
「あの……やっぱり、まだ怒ってる?」  
まあ、怒っているというか……落ち着かないのは事実だ。  
なにぶん、私は「自己処理」を完了間近で止められてしまっているのだから。  
「怒ってはないけどね……」  
そんな不安定な気持ちが、曖昧な返事となって表れてしまった。  
これでは、「まだ怒ってる」と思われても仕方ないかもしれない。  
「……とにかく、衣装はもう少し待って。ちょっと今、スランプなのよ……」  
ますます、誤解されそうな発言。  
違うのよと取り繕う事も出来るだろうが、どうも、私はそういう事が苦手だ。  
気が強い分、優しくなる事に不器用。  
こんな自分の性格を理解しながら、それを直せない自分に又苛つく。  
つくづく、損で嫌な性格だ。  
スキュラが眉をひそめて困った顔をしている。ああ、そんなつもりはないのに……。  
彼女はとても明るく、そして人なつっこい。  
それだけに、困った顔をされると  
こちらがよほど悪い事をしたように感じてしまい、いたたまれなくなる。  
こんな時、気の利いた一言で誤解を解ければいいのに、その一言が思いつかない。  
 
「……衣装、出来るだけ早くできるよう「作業に」戻るから……」  
どうして良いか判らず、私は止まっていた仕事に逃げる事しか思いつかなかった。  
クルリと背を向け、私は作業台へ向かおうとした。  
「そっか!」  
パン、と手を叩き、スキュラが突然声を上げた。  
驚いた私は振り返った。そこには、満面の笑みで私を見るスキュラがいた。  
「お手伝いしてあげるよ。ちょっと待っててね!」  
言うが早いか、彼女はそそくさと部屋を出て行ってしまった。  
手伝う? まぁ確かに、人手が増えれば作業もはかどるのは間違いないが  
糸の生成から始まる私の服作りは、どれも専門的な知識と技術を要する。  
何も知らず何も出来ないスキュラに手伝える行程はあまり無い。  
まあそれでも……彼女の「お詫び」という気が済むのなら、  
糸車でも回して貰うのも良いかもしれない。  
この時の私は、そう思っていた。  
他に「手伝う事」があるとは思っても見なかったから。  
 
*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*  
 
戻ってきた彼女は、着替えを済ませて来た。  
ファミリーレストランのウェイトレスの格好に。  
「何故その衣装に?」  
手作業するに不適切とは言わないが、適切でもなく、着替えてくる理由が見あたらない。  
白と桃色が良く映え、フリルだけでなくヘッドドレスまだ付いたその衣装は  
メイド服の色違いと言われてもおかしくないデザイン。  
違いは、胸を強調したようなデザインになっている事と  
「すきゅら」と書かれたハート形のネームプレートがあるくらいか。  
ウエイトレスとしての作業に適したデザインと言うよりは、  
客の目を惹く為のデザインと言った方が良いだろう。  
つまりそれだけ、手作業とはかけ離れた衣装なはず。  
「アルケニーさんなら、「ご主人様」とか「旦那様」より、「お客様」って呼んだ方が良いかなぁって思って」  
何の話?  
その「ご主人様」とかは、あいつと「やる時」の……  
え? もしかして……  
「さあお客様、お洋服をお脱ぎ下さいませ」  
必要以上に「お」を入れた、ちょっとおかしな丁寧語で、  
ウエイトレスの「設定」でスキュラが私に脱ぐよう迫ってきた。  
「ちょっ、ちょっと、もしかして……「手伝う」って、こっち?」  
「はい。お客様の「作業」をお手伝いさせて頂きます」  
作業って、「こっちの作業」じゃないわよぉ!  
どうやら彼女は、私の「作業」を「仕事」ではなく  
直前までしていた……彼女が目撃した私の「自慰」という「作業」の事だと勘違いしたらしい。  
「待って、ちょっと、別にわた……しぃっ!」  
「あら、こちらの準備は完全にお済みではありませんでしたね」  
長い彼女の脚が一本、いつの間にか私の秘所にまで伸びていた。  
ぬめりけのある彼女の脚がそこを軽く撫でるだけで、  
私は全身に軽い電気が走ったかのような「快楽」を感じた。  
中断されてからそれなりに時間が経っていた為、ある程度乾いてしまってはいたが  
完全にいけなかっただけに、敏感さは残ったままだったよう。  
 
「いかがですか? お客様」  
作業台の角とは違い、柔らかく、しかし力のこもった彼女の脚が、  
的確に私の性器をなで回していく。  
久しく感じる事の出来なかった、温もりある悦楽。  
私はその悦楽に、あっさりと飲み込まれた。  
「んっ、はあ……あんっ! いいわ……ん、いいわ……よ」  
既に息も荒く、秘所より伝わる悦楽に神経を集中させられている。  
いつの間にか服を脱がされている事にすら気付かぬ程に。  
「あは、お客様……とっても気持ちよさそうな顔……」  
うっとりと、スキュラが私の顔を眺めている。  
性器を失った彼女は、人より精神的な快楽を得やすくなっている。  
彼女にとってこういった性的奉仕は、まさに快楽そのもの。  
「スキュラぁ……ねぇ、スキュラぁ」  
舌なめずりをしながら、私は別の刺激を求めた。  
「かしこまりました、お客様」  
注文は、彼女の唇。ウエイトレスは早速注文の品を届けに来た。  
「んっ……ちゅっ、くちゅ……はぁ、んっ……ふあ、ん……」  
唇を押し付け合いながら、互いの舌を絡ませる。  
じゃれあうと言うよりは、統合しようとする程に、二枚の舌はねっとりと絡みついている。  
ぴちゃぴちゃと、唇と舌が音を立てる。その音も、耳からの快楽になっていくよう。  
私は上と下の唇から与えられる快楽に酔いしれながら、  
さらなる快楽を求め自分の胸を下から持ち上げるように鷲掴みにしていた。  
 
その胸に、新たな刺激。  
いつの間にか胸を露わにしていたウエイトレスが、私と同じように自分の胸を掴み、  
胸の先端を私の胸の先端にこすりつけてきた。  
「あん、乳首いい……」  
元々、スキュラの衣装は私が実用的よりは奉仕用にデザインした物。  
衣装を脱ぐことなく胸を出せるようにしていたのだが  
胸だけを露出したウエイトレスの格好が、これほど素敵に見えるとは思ってもいなかった。  
怪しく美しいウエイトレスは、ふくよかな胸を押しつけたり軽く擦らせたりと変化を付け  
互いの胸から伝わる快楽を楽しんでいる。  
「あっ! そこ……あん! もっと、舐めて……」  
秘所は脚だけでなく、蛇の頭も参戦してきた。  
充血し突起した、最も敏感な部分を中心に、チロチロと蛇が私の秘所を舐めている。  
脚先は秘所の中へと、まるで男根のように突き入れられ、激しく出し入れが繰り返されている。  
脚に付いた吸盤が男根の「かり」のように、動くたびに中を刺激していく。  
ビリビリと、激しい快楽が下から上へと突き抜ける。  
他の蛇は、私とウエイトレスの胸を横から舐めている。これもまた心地良い。  
 
「もっと、もっと感じてくださいませお客様……ん、くちゅ、あはぁ……んっ」  
紅潮した顔。ウエイトレスの興奮も頂点に達しそうな勢い。  
「んっ!」  
不意に、ぐっと引き寄せられる。  
残ったウエイトレスの脚が私を抱きしめている。  
私も腕をウエイトレスの背中に回し、力を込める。  
押しつぶされた胸。圧迫され少し息苦しいが、それすらも快楽に感じている。  
もう言葉は入らない。  
唇と舌がピチャピチャと、私の秘所と蛇の舌がクチュクチュと  
エロティックなメロディーを奏で、私達の脳を悦楽で満たしていく。  
もう、快楽の二文字しか感じない。全身がそれだけを求め感じている。  
「んっ、はふっ、んっ……ん! ふぁっ、も、もう……いく……で、出ちゃう!」  
「いって、いって下さいませお客……さま、んっ! 私も、いく、いきま、あはっ!」  
跳ねる。二人の全身が、大きな快楽の波にのまれ跳ねる。  
男が精子をまき散らすように、私はお尻から大量の糸をまき散らし、  
久しぶりの頂点へと達していた。  
 
*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*  
 
「なんだか……ゴメンね」  
私は久しぶりに、素直な謝罪を口にした。  
「え? 何がですか?」  
謝られる理由が思い当たらない彼女は聞き返したが、私はそれに答えなかった。  
「はぁ……おかげでスッキリしたわ」  
晴れやかな気持ちで、私は語りかけた。彼女は満面の笑みで返す。  
「ちょっとご無沙汰だったからねぇ……これで「仕事の方の」作業も進めそうだわ」  
滞っていた仕事も、やっと進められそうだ。  
待たせてしまっている彼女の為にも、また頑張って仕上げなければ。  
今頼まれている衣装は……エプロンドレス。  
普段着と化しているスキュラのメイド服。その二着目というところだが  
使い方は色々。エプロンだけを着て「裸エプロン」も出来る。  
その時は「あなた」なんて呼びながら楽しむのだろうか?  
その様子をふと思い浮かべて……私はまた、軽く嫉妬してしまうのを無理矢理押さえ込んだ。  
「アルケニーさんも、して貰えばいいのに」  
私の心を見透かしたのか、スキュラが突然言い出した。  
「しっ、して貰えばって……誰に、何を……」  
あっさりと動揺を始めた私に、スキュラは笑顔で諭すよう語りかけてきた。  
「あの人なら、頼まれて嫌とはいわないと思うよ?」  
そうだろう。あの男なら喜んで相手をしてくれると思う。  
だが……それが言えないから私は苦労し苦悩している。  
私は普段、あの男の服を作る時だけ、  
「寸法を測り直す」事を名目に相手をして貰っている。  
素直に、抱いて欲しいとは、言えない。  
私はあの男を意識すればする程、言えなくなっている。  
そんな自分の性格が……本当に嫌だ。  
「そうだ! これからは、アルケニーさんも私の相手をしてよ。  
その分、私の代わりにアルケニーさんがあの人に相手してもらうといいよ」  
唐突な提案に、私は戸惑った。  
 
「えっ、いや、でも……」  
正直、これほどありがたい提案はない。  
あいつともそうだが、スキュラにも相手をして貰えるなら、これほど嬉しい事はないから。  
私達には、同性同士での「行為」にあまり抵抗はない。  
人間のモラルがない……というのもあるが  
そもそも「異教徒」の唱えるモラルに耳を貸す気はない。  
故に、スキュラの提案は抱きしめたくなる程嬉しいのだが……。  
「気を使わなくても良いわよ。私なら大丈夫だから……」  
強がりもほどほどにしなさいよ。私は心中で自分に激怒した。  
そんな私を、スキュラはただにっこりと微笑み見つめる。  
「あは、相変わらずだよねぇ〜」  
見透かされている。  
私が彼女の性格を良く知っていると同時に、彼女も私の性格を良く知っている。  
思えば、彼女が部屋に訪れた時から察していたのだろう。  
「作業」も勘違いしていたわけではなく、そう思わせる「気遣い」なのだ。  
「……人づてにお願いするのも格好悪いわよ。私から……言うから」  
何時でも、背中を押してくれたのは彼女だった。  
気が強く素直でない私の手を、いつも引っ張ってくれたのは彼女だ。  
「……ありがとう」  
頬に軽くキス。二人して照れ笑い。  
自分の性格は嫌いだが、そんな私を嫌わず付き合ってくれる彼女が、私は大好きだ。  
 

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