俺は妖精学者(フェアリードクター)という職に就いている。  
その事もあり、俺が住む屋敷には様々な「人ならざる者達」がやってくる。  
そもそもこの屋敷には人間は俺一人。  
来客はおろか、住人も皆人ではない者達ばかり。  
そんな屋敷の管理を取り仕切っているのが、  
屋敷に取り憑いているシルキーなのだが  
言い方を変えると、彼女一人で屋敷の全てを取り仕切っている事になる。  
真っ白なシルクで出来たメイド服に身を包みながら、彼女はよく働いてくれている。  
だが、やはり一人ではどうしても全てに手が行き届かない事もある。  
そんな時は俺も手を貸すのだが、それでも足りない時は応援を呼ぶ事もある。  
今日、その応援が駆けつけてきた。  
「えへへ、メイド服って一度着てみたかったんだよね」  
アルケニーが仕立てたメイド服を着込んだ応援者が、  
スカートの裾を持ち上げヒラヒラと振りながらはしゃいでいる。  
その様子はとても愛らしく、見ている俺の顔がついつい緩んでしまう。  
だが、緩めてばかりもいられない。  
ヒラヒラと舞うスカートの下には、蛇の顔が六つ、  
こちらをシューシューと威嚇しながら睨んでいるのだから。  
駆けつけた応援者は、スキュラ。  
上半身はとても愛らしい女性そのものなのだが、  
下半身には蛇の頭が六つにタコの脚が十二本も生えている。  
彼女が言うには、大まかな動作……歩くとか脚で物を掴むとか、  
そのような動作は自分の意志で動かせるらしいのだが  
時折、自分の意志とは無関係に蛇の頭が人を襲う事があるらしい。  
昔に比べれば随分と制御出来るようになったらしいが  
油断すると危ないらしい。  
つまり、彼女が浮かれている今のような時こそ、俺は下半身に気を付けなければならないのだ。  
シルキーのメイド服とは異なり、オーソドックスな黒のワンピースを貴重としたメイド服。  
それを着込んだスキュラを、俺はずっと見ていたいのだが  
シャーシャーと蛇の威嚇する呼吸音が俺を現実に引き戻してしまう。  
 
「で、今日は何をすればいいの?」  
現実に引き戻したのは蛇だけではない。スキュラが今日のスケジュールを尋ねてきた。  
「詳しくはシルキーに聞いて欲しいんだけど、窓ふきをお願いしたいようだよ」  
屋敷には至る所に窓があり、ステンドグラスが飾られているところもある。  
これを全て拭くのは、やはり一人では大変らしい。  
そこで、スキュラである。  
猫の手も借りたい時には、十二本も脚があればまさに十二分な働きをして貰えるだろう。  
「シルキーは奥にいるから、彼女に指示を貰ってきて」  
「かしこまりました、ご主人様」  
突然の名称に、俺は驚いた。  
ご主人様?  
メイド服を着ているとはいえ、  
これはあくまで「形から入りたい」という彼女の要望で着ているだけで  
彼女は屋敷のメイドではなく、むろん俺は彼女のご主人様ではない。  
「なんだよ、急に」  
驚きから、じわじわと気恥ずかしさへとシフトしていく俺の感情。  
可愛らしいメイドさんにご主人様と呼ばれる。それはある意味男の願望。  
別に秋葉原の喫茶店に通うような事はしていなくとも、  
やはり憧れるシチュエーションである事は間違いない。  
我が屋敷にはメイドが一人いるが、  
彼女は俺の事を主人と認めていないという理由で「ご主人様」とは呼んでくれない。  
だから尚更、ご主人様と呼ばれた事が段々恥ずかしくなってきた。  
「だって、今日は一日メイドだもん。だから、ゴ・シュ・ジ・ン・サ・マ」  
形からはいる為にメイド服を着た彼女は、言葉も形から入りたいようだ。  
「ま、まぁとにかく、よろしく頼むよ・・・」  
冷静を装いながらも、顔の赤みはごまかせない。  
そんな俺の様子をニコニコと微笑みながら眺めている臨時メイド。  
なんだか、今日は心臓の稼働率が増す一日になりそうだ。  
 
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スキュラの十二本の脚を持ってしても、  
やはり屋敷中の窓を全て磨くのはかなりの労力を必要とした。  
全てが終わった頃には、もう日が暮れ始めていた。  
こうなると、このまま臨時メイドを帰すわけにもいかず、俺は一泊する事を勧めた。  
どうも初めから泊まっていく気だったようで、  
スキュラは「今日一日メイドしています」と、夕飯の支度まで始めた。  
俺は、気付くべきだった。  
彼女の語った「今日一日」という言葉と、  
そしてディナーに、ニンニクたっぷりのステーキに  
キムチチャーハンという「スタミナ料理」が並んだこの時に。  
俺は出された料理を全て綺麗に平らげ、  
そして窓ふきの疲れか、すぐにベッドへと倒れ込んでしまった。  
そして、夜がやってきた。  
 
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うっすらと目が覚めた時は、まだ疲れからかけだるい感じが体につきまとっていた。  
にもかかわらず、なにやら下半身が涼しい。  
そして、ピチャピチャと何かを舐めるような水っぽい音と、  
その音に反応するかのように伝わる、独特の痺れるような快楽。  
「なっ……なにしてんだよ!」  
慌てて部屋の明かりを付けてみれば、  
信じられない光景ながら半ば予想通りの光景が映し出されていた。  
布団をはだけ、俺の下半身を裸にしたスキュラが  
メイド服を着たまま俺の「蛇」を愛らしい唇と下で舐めあげている。  
「あは、起きた?」  
俺の質問には答えず、にっこりと微笑む臨時メイド。  
その間も、手で俺の蛇をゆっくりと上下に揺すり刺激を絶やさない。  
「いや、だから何をしてるのかと……」  
ナニをしているのは明らかなのだが、何故このような事をしているのかと再度尋ねた。  
「言ったじゃない。今日は一日メイドするって」  
答えになってないだろうと、俺は眉をしかめた。  
俺が理解し切れていない事を読み取った彼女は、とんでもない事を口走った。  
「夜伽ですよ。これもメイドの仕事でしょ?」  
一般的なメイドはそこまでしない……はず。  
少なくとも、俺の常識には無い。  
常識にはないが、「憧れ」には含まれる。  
そのシチュエーション・・・いや妄想が体を刺激したのか、  
それともいまだ続いている「攻め」が功を奏したのか、  
俺の蛇が一気に肥大していった。  
「わっ、こんなに……ステキです、ご主人様」  
彼女の言う「ご主人様」というフレーズに酔ったのか、  
それとも再開された舌の猛攻の為なのか、  
まだまだ行けるとばかりに、俺の蛇がずんずん大きくなろうとしている。  
 
袋の下、付け根から舌をべったりと貼り付け、そして舐めあげる。  
頂点を通過した舌は、頂にある「蛇の口」に先をねじ入れるように押し込まれた。  
その攻めに、俺は軽く声を上げてしまう。  
その漏れた声が聞けて満足なのか、メイドは軽く笑みをこぼす。  
舌を離し、今度は中腹に唇を当てる。  
軽く噛むように挟み、そして舌先は蛇の腹をぺろぺろと往復する。  
そして唇を離さず、そのまま下へとゆっくり移動していく。  
かなりの手練れだ。  
彼女が何処でこんなテクニックを身につけたのか興味あるが、それを聞く余裕など俺にはない。  
このままでは、俺が終わってしまう。  
「そろそろ、くわえても宜しいでしょうか、ご主人様」  
俺の限界を感じ取ったのか、メイドの方から申し出があった。  
あくまで、まず主人に伺いを立ててから事をなそうとするメイド。  
寝込みを襲ったのは彼女の方からだが、  
ここに来て「プレイ」のルールを明確にして楽しみたいようだ。  
「ああ……」  
俺はとても主人らしい風格など無く、切羽詰まりながら頷いた。  
「かしこまりました」  
待ちきれない俺を焦らすように、彼女はゆっくりと「蛇」をくわえていく。  
完全にくわえ込まれたところで、俺の蛇が果てそうになる。  
しかしそれをどうにか踏ん張り、少しでも長くメイドの奉仕を楽しむよう努力する。  
が、やはりそう長くは持たない。  
三擦り半とは言ったもので、三度の往復で俺はメイドの口内奥に白い「褒美」を放ってしまった。  
一瞬驚いたメイドだが、くわえたまま上目遣いに俺を見つめながら、「ご褒美」をコクコクと飲み込んでいく。  
 
「……はぁ。ごちそうさまでした、ご主人様」  
僅か、唇に残る白い褒美。そして嬉しそうに微笑むメイド。そしてご主人様という言葉。  
たった今果てたばかりだというのに、  
俺はまだ興奮冷めやらぬと血の巡りが早まっているのを感じていた。  
それは当然、倒れようとしていた蛇の鎌首をもたげる事になる。  
「まあ、ご主人様にはまだ満足して頂けなかったようで……申し訳ありません、私の不手際で」  
普段気さくに話すスキュラが、  
メイドという役割を演じる為か生真面目にそしてわざとらしく謝罪する。  
「では、今度こそ満足して頂けるようがんばりますわ」  
微笑むと言うよりは、何かを企んでいるような含み笑いを浮かべ、  
彼女はベッドの上に立ち上がった。  
すると同時に、彼女の脚が勢いよく俺に襲いかかってきた。  
瞬く間に、まだ着たままだったパジャマの上着をはぎ取り、  
そして全身をガッチリと締め付け、持ち上げた。  
唯一あらわになっている「蛇」の部分を、メイドの胸元に当たるように引き寄せていく。  
いつの間にか、メイドも胸をあらわにしていた。  
形良く、そして大きめのバストが、俺の蛇を挟み込んだ。  
「いかがですか?ご主人様」  
既にメイドの唾液でベトベトになっていた蛇は、メイドの胸でよく滑った。  
円滑に滑りながらも、ぐっと手で胸を押し挟んだ圧迫感も感じる。  
「うっ……ああ……」  
言葉になるような声を発する余裕など無い程に、気持ち良い。  
 
しごかれる蛇もそうだが、  
なにより俺の全身を持ち上げているメイドの脚も快楽に一役買っている。  
タコの吸盤が体に吸い付き、そしてほどよく締め付ける。  
それだけではない。時折緩めたり締め上げたりを繰り返し、脚を全身にこすりつけていく。  
その度に吸盤がぬめぬめと全身をはいずり、言いようのない快楽を与えてくる。  
まるで、全身が蛇になりしごかれているようだ。  
「あら、ご満足頂けませんか?」  
充分満足している。だがそれを解っていながらメイドは自分の至らなさを嘆いた。  
「では、このような「奉仕」はいかがでしょうか?」  
不意に、ズニュッと体の中へ、下の穴からタコの脚が一本侵入してきた。  
「くわっ、そこ、ちっ、がっあ!」  
「ああ、ご満足頂けましたかご主人様」  
よもやメイドに掘られるとは。などと感傷的になる暇などもちろん無い。  
ゆっくりと、回しながら出し入れされる脚。  
吸盤が突起物になり、入り口を何度も刺激する。  
初めて体験する快楽に、俺は嫌悪感が急速に薄らいでいくのを感じていた。  
むしろ、求めている。  
「その顔……ああ、ご主人様のその恍惚としたお顔が……ああ、私の悦びでございます」  
奉仕の悦びに酔いしれているメイドは、脚だけでなく胸での奉仕にも力が入ってきた。  
「あっ、ああっ、いい、胸、気持ち……いい」  
まるで膣に入れられているかのように、顔を紅潮させあえぎの声を漏らす。  
胸で擦るクチュクチュという音。全身を締め付けるぬちゃぬちゃという音。  
そして出し入れされるぐちゅぐちゅという音。  
部屋全体が、様々な粘着性の音に包まれる。  
 
満身創痍。攻められるだけ攻められていると思っていたが、  
まだまだ奉仕はしつくされてはいなかった。  
蛇の口に、チロチロと何かが当たっている。  
蛇だ。俺のではなくメイドの蛇が三匹、俺の蛇を長い舌で舐めてきた。  
そして残りの三匹は、下の入り口付近を舐めている。  
この期に及んで新たな快楽。もう、何をされているのかすらあやふやになってきた。  
ただただ、全身をくまなく奉仕される悦びに打ち震えるだけ。  
「ご主人様!ああ……嬉しい、ご主人様……私も……はぁ、ああ!ひぃやぁあん……」  
いつ果てたのだろう。俺にはそれすらあやふやだった。  
気が付いた時には、すぅっと心地よく快楽の波が引いていき、  
静かにベッドに下ろされていた。  
もうろうとする意識の中で、  
俺からの「ご褒美」で胸と顔を汚されたメイドが映し出されていた。  
満足げに微笑みながら、胸にこびりついたご褒美を指ですくい、  
そして美味しそうに舐めている姿が見える。  
可愛い。  
彼女本来の美しさと、はだけたメイド服。そしてみだらな仕草。  
全てが愛おしかった。  
……などと考えた為なのか。それともディナーのスタミナ料理が効いているのか。  
俺の蛇がまたまた鎌首をもたげた。  
「まあ大変!まだご主人様にご満足頂けていないなんて。申し訳ございません。すぐにまたご奉仕を……」  
まだ?また?  
勘弁してくれと言う抗議の声が出る元気など無い。  
なのに、体も気持ちも期待している。  
メイドの奉仕は、「メイドが」満足するまで何度も続けられた。  
 
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「夕べはお楽しみでしたか?」  
屋敷本来のメイドが、朝食……いや、もう昼食という時間か。  
料理をテーブルに並べながら尋ねてきた。  
「見て解るだろ?」  
目の下にクッキリと残る、黒いくま。まさに一目瞭然。  
「ごめんね、大丈夫?」  
まだメイド服を着ている臨時メイドが、心配そうに見つめている。  
「いや、大丈夫……なんとかね」  
昼食を取りながら、昨夜の「事情」を聞いた。  
どうやら、窓ふきはスキュラとシルキーで企てた「口実」で、  
メインは昨夜の奉仕だったようだ。  
それも、奉仕とは呼べないだろうあれは。  
ここからは同情するスキュラの身の上なのだが  
彼女は魔女キルケーに下半身を蛇とタコに変えられた為に  
生殖器……つまり最も快楽を感じる場所すら失っているそうなのだ。  
そんな彼女は、それでも上半身の身体が求める快楽の本能をどうにか処理してきたようなのだが  
その結果、胸と口内が異様な程敏感になり、  
人が膣で感じる以上の快楽をそこで感じるようになったとか。  
くわえて、時折暴走する下半身を沈める為に「攻め」をせざるを得ないとか。  
つまり、彼女は「奉仕」という「過剰な攻め」でないと上下共に満足出来ない身体になったというのだが……  
その為のシチュエーションとして、メイドは最適だと最近思うようになり  
俺で試してみたと……そういう事らしい。  
 
「なら、初めから言ってくれても……」  
俺の抗議は当然の主張のはず。  
「でも、教えたら「攻め」にならないじゃない」  
などと、悪知恵の首謀者シルキーが口を挟んだ。  
「あの……それで、宜しければ……」  
申し訳なさそうにスキュラが尋ねたい事は、もう解っている。  
「……毎日は無理だけど、そうだな……二週に一度くらいのペースならどうにかなるんじゃないかな」  
俺の提案に、満面の笑みで喜ぶスキュラ。  
正直、あれは……俺も癖になりそうな程気持ち良かった。  
まだお尻が何かを挟んでいるような違和感を感じているままだが、  
これも慣れていくだろう。  
……そうやって俺は変態になっていくのかなぁと軽くへこむ。  
「どうせなら、次はシチュエーションを変えたら?例えば看護婦とか」  
またも横から口を挟むシルキーの言葉に、  
俺はすぐさま白衣の天使に扮したスキュラを妄想した。  
そして、あっさりと元気になる俺の蛇。  
なるほど、暴走するのはスキュラの下半身だけでなく、俺の下半身も同様なのだと今気付いた。  
 
 

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