リリムハウス。ここは「クイーン」と呼ばれているオーナーが経営する風俗店の一つ。
この店は表向き高級な風俗店にしか見えないのだが、
その実、従業員はオーナーを含め全員人ならざる者達という変わった店。
その事を知っているのは、オーナーに誘われ「VIP会員」になった客と
精の変わりに血の提供を求められる「裏」の客。
そして、オーナーと何らかの関わりを持つ「その筋」の関係者。
俺はもちろん、関係者としてオーナーと繋がりを持つ者。
裏へ血の提供くらいはするが、基本的に客としてこの店に訪れる事はない。
ないのだが……。
「うちの娘達に大人気なのよね」
俺は何故か、従業員全員に顔と名前が知られていた。
「さすがは「妖性」学者……と言ったところでしょうか?」
「オーナー、今意図的にニュアンス違う言葉を使わなかったか?」
以前俺はこの店に、新たなプレイのテストケースとしてエムプーサの相手をして欲しいと頼まれた。
その結果、エムプーサは店を辞め俺の館に住まう事になった。
これはオーナーの企みに乗せられた形であったのだが、詳しい事情を知らない店の娘達には
血と精の両方を渇望するあのエムプーサを「堕とした」男、として名前が広まったらしい。
堕としたという表現には語弊があるのだが……まあ、説明したところで「噂」はより尾ひれを付けて広まるだけだろう。
「ところで、エムプーサは元気にしていますか?」
俺を店に呼びつけたオーナーは、当たり障りのない会話から口火を切った。
「ああ。最近はアルケニーやメデューサと特に仲が良いみたいで、よく一緒にいるのを見かけるな」
正直、最初は心配していた。
特にアルケニーが少し前までエムプーサの事を避けているようなところがあったのだが
急に仲を良くしたらしく、今はよく一緒にいるみたいで安心している。
何かあったのだろうが、詳しくは知らない。やはり同郷なのが良い方へと状況を変えたのだろうか。
「ここの店にいた事もあってか、エムプーサの所に性的な悩み相談をしに訪れる来客が増えてね。
そういう意味じゃ、男の俺に出来ないトラブルとかも彼女が引き受けてくれるから本当に助かってるよ」
女性の悩みを解消するだけでなく、女性の性を標的にする悪しき者達を退散させるなどの活躍もしてくれている。
先日などは、「モン娘たんハァハァ」などと口走る電脳霊を撃退する活躍もしてくれた。
押しつけられるような形ではあったが、今は彼女が来てくれて本当に助かっていると感謝している。
「そうですか。それは良かった」
上品に紅茶の入ったティーカップを口元から離しながら、オーナーは満足げに微笑んでいた。
店から巣立った娘の活躍を、心の底から喜んでいるのだろう。
「で……俺を呼び出した本題は?」
エムプーサの事を聞きたかったのももちろんあるのだろうが、本題は別にある。
なんとなく押しつけられる用件が予測出来ている俺は、手早く済ませようと急かした。
「せっかちな殿方は嫌われてしまいますよ?」
クスクスと笑いながら、オーナーは本題へと話題を切り替えた。
「この度、新しい「コース」を設立する事になりましてね」
ほらきた。俺の予想通りだ。
表ないしVIP向けの新サービスを批評して欲しい。オーナーが俺を呼び出すのは、どうしてか「この手」の依頼が多い。
何故俺なのか。理由の一つは、俺が人手はない女性達との行為になんも抵抗もない事があるのだろうが
その程度なら、他にも沢山いるはずなのだが……幾度も理由を尋ねても、オーナーは笑うだけで真相を教えてはくれない。
自分で言うのも情けない話だが、「テクニック」とか「身体特徴」等は人並みかそれ以下のはず。
風俗店に勤める女の子達を悦ばせる程のものは何もないと思うのだが……。
「最近の流行言葉で言えば、「萌え」でしょうか? その萌えを刺激するようなサービスなんです」
オーナーの話では、「妹」のような店の娘が客に甘える、そんなプレイらしい。
性的なおねだりをされる。それを悦ぶ男性が多いのを見越してオーナーが提案したコースらしい。
「題して、注文の多い風俗店」
「宮沢賢治かよ」
どうしてこう、風俗店の名前やエロビデオのタイトルは、こういったダジャレ系が多いのだろうか?
ともかく、俺は細かい説明を受け、実際にその「注文の多い風俗店」コースを体験する事となった。
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出迎えたのは、異なった制服を着た二人のウエイトレス……に扮した風俗嬢。
一人は豊満な胸を持ちながら小柄であどけない顔をしたネコマタの娘。
コスプレとしてもよく用いられる、胸を強調するようなデザインの制服。
しかし強調すべき胸の部分に布地がないブラウスを着ており、豊かな胸は完全に露出しはみ出ている。
エプロン部にはハート形のネームプレート。そこには「ねこまた」と平仮名で名前が書かれていた。
どこかで見た事があると思ったら、この衣装は以前スキュラも着ていた衣装だ。ただ胸はちゃんと隠れていたが。
そしてもう一人、こちらはウエイトレスの制服と言うよりはメイド服に近いピンク色の衣装を着たサキュバスの娘。
少し細身で、幼さを感じる顔にはメガネがかけられている。そして背は若干低めで、胸も控えめ。
二人とも俗に言う「妹キャラ」という容貌をしている。なるほど、人選はこのコースのコンセプト通りという事か。
俺はまず、「服を脱いでくれ」という「注文」にしたがった。
元ネタである「注文の多い料理店」にちなんでいるのか……と思ったが
風俗店で服を脱ぐのは当たり前かと、俺は苦笑した。
次いで「シャワーで軽く身体を洗ってくれ」「歯を磨いてくれ」という、風俗店では当たり前の「注文」がなされ、俺はそれに従った。
「えっとぉ、ではお客様の事はなんてお呼びしますかニャ? お兄ちゃん? ご主人様? なにがいいかニャ?」
ネコマタの娘が舌っ足らずなしゃべりで俺に問いかけてきた。
「……その前に、二つ質問させてくれ」
俺は「モニター」として気になる事があり、それを問いただす事にした。
「一つ。その呼び名は……決めないとダメ?」
正直、恥ずかしいのだ。
「出来れば決めて欲しいニャ。でもお客様の名前でも良いですニャ」
コースがコースだけに、提示は必ずするべきだろうが……俺には恥ずかしい。
しかしモニターとして参加する以上は、恥ずかしくても提案された呼び名で呼ばせないとダメだろう。
仕方なしに、俺は「お兄ちゃん」と呼んで貰う事にした。
「二つ目。その「ニャ」っていう語尾は、わざと?」
「えっ? あの、やはりおかしいですか?」
ごく普通の話口調で返ってきた。やはり彼女は猫を被って奇妙な話し方をしていたようだ。
「まだ慣れていないので不自然さが残りますか?
でも甘えた口調で「この格好」なら、やはりベタベタでも「ニャ」は必然かと……」
愛らしい、付け耳ではないネコミミに二本のネコシッポ。確かにここまでくれば、むしろベタベタでも「ニャ」が欲しくなるか。
「わざとらしいのは好まない客もいるだろうから、そこは事前に選択して貰うと良いと思う」
とりあえず、今回は慣れる意味も含め、甘えた「ニャ」口調で通して貰う事にした。
「それで、君は?」
俺は先ほどから黙ったままのサキュバスに尋ねた。
「……ちょっと無口で内気な妹風なんですが……」
それは判りにくい。むろん好む人もいるのでこれも事前に選んで貰った方が良いと提案し、
今回は色々と積極的に「注文」をして貰わないと困るという事で、口調は普通にしてもらった。
その他、「着衣したままエッチ」「キス,フェラなどありありのフルコース」といった細かいところも打ち合わせた。
「ねぇお兄ちゃん。ぎゅぅ〜って抱きしめて欲しいニャ」
早速の注文に俺は応え、ネコマタを少し強めに抱きしめた。
小柄な彼女の顔は俺の胸板に、豊満な胸は俺の腹部に押しつけられる。
「んー、お兄ちゃん大好きニャ」
胸板に頬摺りしながら、ゴロゴロと甘えるネコマタ。
「あん、ずるいよネコマタちゃん。お兄ちゃん、私もぎゅっと抱きしめてぇ」
腕にしがみつき引きはがそうとするサキュバスを、俺は引っ張られた腕で引き寄せ抱きしめた。
ふむ、ロリコンではないと自負している俺だが、甘えられるのは確かに悪くない。
「お兄ちゃん、キスぅ。キスしてニャ」
腕の力を緩めはするが抱きしめたまま、俺は顔を下げ、見上げるネコマタの唇に己の唇を重ねた。
その唇に、ざらりとした感触。ネコマタの舌が唇を割り俺の口内に入ってきた。
ざらつく舌に、俺も舌を絡めていく。
「もー、ネコマタちゃんばっかりずーるーいー。お兄ちゃん、私にもキスしてぇ」
どうやら、ネコマタがまずおねだりし、そしてサキュバスがそれを追随するというパターンが確立しているらしい。
注文が入ったのだから従うしかないと、俺はネコマタから唇を放し、サキュバスの唇に重ねた。
「あー、もう。いいもん、私はお兄ちゃんの「コレ」貰うニャ。いいでしょ? お兄ちゃん」
了解を得ることなく、ネコマタは半立ちしている俺の肉棒を軽く握り、上下に擦り始めた。
ほどなくして完全に自立した俺の息子に、唇で感じた、ざらりとしたあの感触が伝わる。
「くちゅ、ん、ちゅ……おいしぃニャ、お兄ちゃん……んちゅ、ちゅぱっ、ん……」
唇で柔らかく、そして舌で強烈な刺激を与え続けるネコミミの妹。
深くくわえ込み棹を嘗める時は舌全体を絡め、
浅く先端を嘗める時はざらざらした舌でむき出しになっている肉棒を傷つけないように、
柔らかく触れるようにチロチロと舐める。
淫魔ではないはずのネコマタだが、ここに務めているだけあってテクニックは一流。
自分の身体的特徴を理解し、それを淫技に活かすとは。
「いいなぁネコマタちゃん。それじゃあ、私は「こっち」を貰おうかな」
パターンでいけば俺の肉棒を争うのかと思っていたが、どうやら別の物をご所望のようだ。
「お兄ちゃん、お尻舐めてあげるね。いいでしょ?」
やはり俺の了解を得ることなく、サキュバスは俺から唇を放すと後ろに回り込み、しゃがんだ。
そして尻に手を当て、顔を近づけ、菊座へ舌を伸ばしてきた。
「んっ、くちゅ……うふふ、お兄ちゃん期待してたのかなぁ? ちゃんとお尻もキレイにしてきたんだね。美味しいよ……ちゅぱ、くちゅ……」
まあ、ここに来るとどんな事もあり得るだけに、念入りに洗ってはいたが……期待は……まあしていなかったと言えば嘘になるか。
「ふふ、お兄ちゃんの急に大きくなったニャ。サキュバスちゃんの舌、そんなに気持ちいいんだ」
言葉にしなくても、俺の興奮がダイレクトに伝わる場所を舐めているネコマタにはバレバレだ。
「よーし、サキュバスちゃんに負けてられないニャ。お兄ちゃん、ちょっと待っててニャ」
ネコマタは俺の肉棒から唇を放し、部屋の隅へと駆けていき、何かを掴んですぐに戻ってきた。
「お兄ちゃん、「これ」をよーく胸に塗り込んでニャ」
俺の手に渡されたのは、一本のローション。
ネコマタは背をこちらに向け、ピタリとその背を俺に預けてきた。
俺はローションをたっぷり溢れる程手に注ぎ、そしてその手で露わになっているネコマタの豊満な胸を軽く撫でる。
撫でながら、面倒だとばかりにローションを直にネコマタの胸にかけていく。
垂れ落ちるローションがネコマタの衣装をも濡らしていくが、俺も彼女もそんな事は気にも留めない。
完全にローションを出し切った容器を俺は投げ捨て、両手でゆっくり大きくネコマタの胸を揉んでいった。
「あん、お兄ちゃん……ん、気持ちいいニャ。これだけで軽く逝っちゃいそう……ん、もっと強く揉んでニャ。んっ! そう、もっとお願いニャ……」
俺は「注文」通り、ローションを染みこませんばかりにネコマタの胸を強く強く揉んでいく。
弾力ある胸の揉み心地と、
そして菊座の周りから入り口から変化を付けながら這いずるサキュバスの舌の感触に、
俺の方こそこのまま逝ってしまいそうだ。
「んっ、いけない……お兄ちゃん上手だから、忘れるところだったニャ」
ネコマタは充分だと俺の手を掴みそっと胸から外す。
そして振り向き、しゃがみ、爆発しそうな俺の肉棒を濡れ濡れになった豊満な胸、その谷間に挟み込んだ。
「どう、お兄ちゃん。気持ちいニャ? ん、なんだか私も気持ちいニャ……ん、はぁ、ふわぁ……」
脇から胸を強く手で挟み、身体ごと大きく動かすネコマタ。
既にネコマタの膣へ挿入してるのかと錯覚したくなる程に心地よい胸の谷間。
荒くなるネコマタの息づかいも、俺の錯覚をより明確にしていく。
だが膣の中ではないという現実へ唐突に引き戻された。
膣の中ではあり得ない感触、時折先端に触れる感触は、ネコマタの舌。
胸で愛撫しながら、ネコマタは谷間から突き出る俺の肉棒をチロリと舐めている。
僅かに感じる、ざらりとした感触。それが膣の中ではあり得ない快楽となり、より俺を興奮させていく。
「んっ、そろそろ出る……」
限界だ。俺は射出の宣言をした。
「ん、出して。このまま、胸と顔にかけてニャぁ」
「ダメェ! 私にもかけてお兄ちゃん!」
俺とネコマタの言葉に慌てたサキュバスが、急いで俺の前へと回り込む。
「くっ、逝くぞ!」
ネコマタの胸からに公方を引き抜き、すぐに待ちかまえている二人の顔へと向けた。
勢いよく飛び出した白濁液は、口を開き待っていた二人の顔と口内、そして胸へとまんべんなくかけられていった。
「んっ……おいしぃニャぁ」
豊満な胸に貯まった白濁液を指ですくい、ネコマタはそれをちゅぱちゅぱと舐め取っている。
「これが……この味……はぁ、なんてステキなの……」
対してサキュバスは、半ば放心状態で「演技」も忘れ呟いている。
そうか。俺は思い当たる事が一つあった。
エムプーサと初めて結ばれた時に知ったのだが、俺の血と精子は様々な「成分」が含まれているらしい。
その成分には、催淫剤や媚薬の成分も含まれている。
それを敏感に感じ取れる吸血鬼や淫魔にとって、俺の血と精子は格別なのだとか。
つまり、同じ俺の白濁液を飲んだ二人でも、淫魔であるサキュバスと淫魔ではないネコマタとでは反応が異なる、という事だ。
……などと、冷静に分析している場合ではなかった。
「頂戴、もっと……もっと頂戴!」
興奮しているサキュバスが、ドンと俺を突き飛ばした。
その拍子で後ろにつんのめり、俺は尻餅をつく。
突然の事に驚いた俺は、肉棒を触られる感触で現状を思い返させられた。
もちろん、俺の肉棒を握っているのはサキュバス。
出したばかりでまだ元気を取り戻していない俺の肉棒を、懸命にしごき少しでも早く回復させようとしている。
「ちょっと、どうしちゃったのよサキュバスちゃん」
あまりのことに事態を把握出来ていなかったネコマタが、ようやっと我に返り「ニャ」も忘れてサキュバスを問いつめた。
「欲しいの、もっと欲しいの……」
ネコマタの質問に答えている……というよりは、うわごとに近いサキュバスの返答。
どうしたものかと困っているネコマタが、こちらを見ている。
俺は目で「好きなようにさせてやってくれ」と合図を送る。
「はぁ……仕方ないニャあ。じゃあお兄ちゃん。サキュバスちゃんの「注文」に従ってあげてニャ」
溜息の後にウインク。せめて自分だけは「演技」を続けようと再び語尾に「ニャ」を付け始めたネコマタ。
「大きくなった……これで……」
しごかれ続け、程よい堅さを取り戻した俺の肉棒にうっとりと視線を向け、サキュバスは俺をまたぎスカートをまくし上げた。
スカートをつまみながらでは難しい事を悟り、ネコマタが俺の肉棒を掴み入れやすいようにフォローする。
「んっ……はぁあ! これ、これが欲しかったの……ん、いい、あっ、んっ!」
挿入するやいなや、サキュバスは激しく腰を動かし始めた。
流石は淫魔の膣。俺の肉棒はすぐさま彼女の中でぐんぐんと大きくなっていくのが、膣の圧迫感でよく判る。
「ニャあ、私も混ぜるニャ。お兄ちゃん、私の舐めてニャ」
寝そべった俺の顔をまたぎ、スカートつまり持ち上げ、ネコマタは下着を着けていない秘所を顔の真上にもってくる。
ゆっくりと下ろされるネコマタの腰。俺の顔に彼女の腰が下ろされると、すぐさま俺は舌を伸ばし注文通り陰核と陰門を激しく舐めまくる。
「ん、お兄ちゃんの、舌、気持ちいい、ニャ、ん、ニャあ、んはぁ!」
軽く腰を振りながら、ネコマタは喘いでいる。
「あ、あ、ん、い、いい、ん、きも、き、きもち、い、ん、い、あっ、ん!」
小刻みに漏れるサキュバスの声が、彼女が懸命に動かす腰の激しさを物語っている。
俺も負けじと腰をしたから強く強く突き上げ、そして舌も忘れず激しく舐めていく。
「サキュバスちゃん、キス、ね、キス……ん、くちゅ、ちゅ……」
どうやら、俺の上にいる二人は唇を重ねているようだ。
端から見れば、そうとうわいせつな光景なのだろうが、いかんせん下からでは全く見えないのが残念だ。
「い、いく、ん、いく、いく、いく、いく、いく、いく」
何度も同じ言葉を繰り返し、サキュバスの腰は更に激しくなってきた。
「わたしも、いっちゃう、はぁ、ん、やん!」
極まりすぎて、再び「ニャ」を忘れたネコマタも限界が近いようだ。
むろん、俺も。
「いっしょに、いって、ちょうだい、いく、いくから、ね、いく、いって、いく、いく、いって」
「ん、さんにん、いっしょ、に、いって、わたしも、もう、あっ! ん、いっちゃう……」
ネコマタの腰も、下に俺の顔があるのを忘れているかのように動きが激しくなってきた。
そして俺の腰も、上のサキュバスをはね除けるのかとばかりに大きく突き上げていく。
「い、い、いく、いく、いっ、いく、いっ……あっ、ん、はぁあ!」
「いや! ん、いく、いっちゃ、いくか、はぁ、あん、は、あぁあ!」
三人は同時に、ビクビクと身体を震わせていた。
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「大変申し訳ありませんでした!」
何度も何度も、サキュバスが頭を下げている。
ここはオーナー室。ようやっと落ち着いたサキュバスと、
そしてそれに付き合わされる形になってしまったネコマタが
事の報告をする為に俺と一緒に訪れていた。
あれからサキュバスの暴走がすぐに納まるはずもなく
俺は彼女が気を失うまで……四回も立て続けに絞り出された。
そこまで搾り取られると、当然控えていたネコマタとの分は無くなるわけで、
サキュバスは正気を取り戻したところで俺とネコマタに何度も何度も謝罪を重ねる事となった。
「私はいいよ。一応、お兄ちゃん……じゃなかった、お客様にはまた来店してくれるって約束して貰えたし」
一応ネコマタも逝ってはいるので、消化不良という事はない。
しかしそれでも本番無しという事に不満がないわけがない。
その埋め合わせは、近いうちにまた俺が、ネコマタ一人だけを相手にする為来店する事で落ち着いた。
「俺の方もいいよ、仕方ないって。すっかり忘れていた俺も悪いわけだし」
同じ事を俺は何度も言って慰めているが、それでも俺は何度も謝罪されてしまっている。
淫魔たる者が正気を失い、精子を求め襲い続ける。
このような失態は許されないという淫魔としてのプライドも、彼女の何十もの謝罪に現れているのだろう。
「それで、あの……」
流石に謝罪ばかりでは前に進まないと悟ったのか、サキュバスがようやっと次の言葉を紡ぎ出そうとしていた。
「……ダメよ」
しかしそれを、オーナーが止めた。
「これ以上は彼にお願い出来ないわ。エムプーサの場合はあなたと事情が違うの。気持ちは判るけど、我慢なさい」
サキュバスが「お願い」を言い出す前に、オーナーは釘を刺した。
私も館に置いてくれ、と言い出す前に。
「……はい、申し訳ありません」
また謝罪に戻ってしまったサキュバス。
俺は何も言えなかった。
オーナーが言うように、エムプーサは彼女が吸血鬼であり淫魔であるという特別な種族だから引き取った事情がある。
彼女の場合、ここリリムハウスで摂取出来る血が足りないという事情が。
しかしサキュバスの場合、ここで得られる精力は充分なのだ。
故に、俺の精子が特別だからという理由では預けられないとオーナーは判断している。
俺として、そして館の住人達としては、もう一人増えたところで問題は……無いとは言わないが、どうにかなると思っている。
しかし今回サキュバスの事を許してしまうと、私も私もと店の女の子達が言い出しかねない。
キチンと歯止めをかける意味でも、彼女には悪いが我慢して貰うしかない。
「まあその、なんだ……その代わりと言っちゃ何だけど……」
落ち込む彼女を見ていられなかった俺は、励まそうと言葉をかけ、続けた。
「頻繁には無理だけど、また来るからさ……その時に又、相手してよ」
俺は今日のようにオーナーから依頼されないかぎり、客としてこの店には訪れない。
しかしこのままではあまりにも彼女が不憫だ。だから俺は客としてまた来店する事を約束した。
「ホントですか! 良かったぁ」
「ありがとう。あなたの英断に感謝するわ」
先ほどの雰囲気は何処へやら。サキュバスははしゃぎ、オーナーが微笑んでいる。
微笑んでいる? いや、あの笑顔はそんな優しい笑顔じゃない……。
「オーナー……はめましたね?」
ニヤリと、オーナーは口元をつり上げた。
やられた。またやられた。
ようやく、俺は全てを悟った。
全てが演技だったのだ。「注文の多い風俗店」というコース立案からして、既に罠だったのだ。
よく考えればそうだ。そんなコースを設けなくても、普通に「イメクラ」のコースはある。
おねだりプレイだって、イメクラに始めから入っているはずだ。
そしてサキュバスの暴走はまぁ演技ではなかったろうが
暴走が始まった時点で、一部始終見ていただろうオーナーが止めに入らなかったのは今考えればおかしい。
そしてサキュバスのしつこい程の謝罪。俺に気まずい感情を持たせる為の「演技」だったのだろう。
サキュバスのお願いとそれを止めたオーナーも、よく考えればタイミングが良すぎる制止だ。
……まあ、罠だと判った時点で来店の約束を反故にする事だって出来る。
出来るが、それを実行しない俺の性格くらいオーナーは見抜いているだろう。
「そんなに落ち込まないで、お兄ちゃん。たっぷり、サービスしてあげるから。ね?」
ちくしょう、そんなおねだりされたら嫌なんて言えないじゃないか。
男というのがどうしようもない生き物だという事を、俺は今猛烈に痛感している。
はぁ……これでまた、この店に妙な「噂」が広まるんだろうなぁ……。