「いい、そこ、ん、ああ、いいわ、ん、んふぁ!」  
過剰な程に声高な喘ぎ声が、スピーカーから聞こえてくる。  
目の前にある28ものディスプレイ。  
その1つに映し出されている様子が、スピーカーから聞こえている。  
私はここ、リリムハウスのモニタールームで、オーナーとしての勤めを果たしている。  
我がリリムハウスは、店名の通り従業員の半数以上がリリム、つまり淫魔で占めている特殊な風俗店。  
それ故、従業員と客とのトラブルが起きた際にすぐ対処できるよう、こうして常に監視している。  
客は監視されているのを知らないため、ある種のプライバシー侵害にもなりかねないのだが、  
精力を糧とする淫魔や血液を糧とする吸血鬼が、客の生命に関わるような失態をしてしまわない為の監視である以上、  
これはどうしても必要なこと。  
けして、私の趣味ではない。そう、けして。  
「あらあら、あの子も演義が上手くなったわね」  
まだあどけなさが残る新人が、VIP客相手に「中出し」され悦んでいる。  
とはいえ、どちらかと言うと性的な悦びよりは、糧、つまり精子を味わえた喜びの方が大きそうだが。  
しかしそれを悟られぬよう、相手の射精に合わせ喘ぎ声を高め軽く痙攣してみせるだけの「演義」は覚えたようだ。  
本当はまだ満足していないだろうに、笑顔で満足だったかのように事後の接客をしている。  
精力を糧とする淫魔の新人は、まずVIP客相手に実習を兼ねた接客をして貰っている。  
ここで「我慢」を覚えないと、「一般客」の相手はさせられない。  
何故ならば、人間の風営法によって禁止されている「本番」を積極的に求めてしまうから。  
うちの店では、一般客用12室とVIP客用16室を完備しており、  
表向きは一般客用だけの営業に見せかけている。  
この一般客を相手にする場合は、表の営業である以上人間達の「法律」を守らなければならない。  
むろん流れで「本番」に至ることもあるが、それを表だって行うわけにはいかない。  
淫魔の糧である精子を「外出し」させる。淫魔にとってこれほど「勿体ない」ことは無いのだが、  
人間社会の中で店を経営し続けるためには仕方のないこと。  
とりあえず、今接客を終えた新人はそろそろ一般客の相手をさせても問題無さそう。  
本人はずっとVIP客の相手だけをしたいだろうけど、人間と同じ外見を保てる者は、出来る限り一般客の相手もしてもらわないと。  
うちの店には外見を人間と同じには出来ない者達、つまりVIPしか相手に出来ない者達も沢山いるのだから。  
「それにしても……」  
改めるように、モニター28個を軽く流し見る。  
どの部屋でも、接客が行われている。  
今日は開店してからずっと満室、待合室も客であふれかえっている。  
これほど効果があるとは。  
今店では「バレンタインフェア」を開催中。  
このフェア期間中は、いつものローションサービスに使用するローションが「特性チョコレートローション」に替わっている。  
このローションは、先日親しい付き合いをしている魔女達に頼み制作して貰ったローション。  
なんでも「スライム」の生成をベースに完成させた特製品らしいのだが  
味も香りもチョコレートそのもので、むろん口に入れても問題ないという優れもの。  
チョコの甘い香りに包まれながらの淫行。これが大いに受けているようだ。  
フェアとしてはただローションを替えただけではなく、  
お好きな有料オプションを1つ無料にするというサービスも行っているので  
こちらの効果も当然あるのだろう。  
オーナーとしては、店が賑わうのはとても嬉しいこと。  
「なにより、チョコまみれの淫行というのが見ていてそそられるわぁ」  
……思わず本音を口にしてしまい、  
私は誰に見られているというわけでもないのに咳払いをしてしまう。  
そして何事もなかったかのように、私はVIP室モニタの1つに視線を移した。  
そこではちょうど裸になった男女が向き合い、これから「接客」が行われようとしていた。  
 
「んっ、くちゅ……くちゃ、ちゅ……」  
私が視察している部屋の音声をこちらの外部スピーカーに切り替えた途端、唇同士が奏でるいやらしい音が響いてきた。  
どうやらこちらのお客様は、無料にするオプションに「キス」を選んだ様子。  
なるほど、それも頷ける。何故ならば、彼女の「舌技」は絶妙だから。  
「ちゅ、くちゅ……ん、お客様の舌、美味しい……くちゅ、ちゅ……」  
男の少々短く太い舌に、彼女の長い長い舌がくるりととぐろを巻くように絡みついている。  
姿形からはむしろ、舌よりも身体でとぐろを巻きそうな彼女なのだけれども。  
彼女はラミアと呼ばれる種族。ギリシャから来た半人半蛇の吸血鬼。  
舌が蛇と同じように細く長い彼女の舌技は、その形状を利用した高度なテクニック。  
彼女の舌によって口内を自在に弄ばれる感触に、虜となる常連客は多い。  
見れば上気した客の顔は至福に包まれている。彼もそんな常連客の一人なのだろう。  
きゅっと舌に巻き付きながら、舌先は上あご、歯の裏側付け根あたりから中程までの間を優しくなで回しているはず。  
加えて唇による唇への、わざとらしく音を立てながらの愛撫。  
されるがままにされ尽くされるディープキスは、オプション料金では安すぎるくらいのサービスのはず。  
それを今日は無料で体験できるとなれば、彼にとってこれはチョコレートを貰うよりも幸せなことかもしれない。  
むろん彼女の舌技が、口内だけに止まるはずはないのだけれども。  
「んっ……んふふふ、お客様……そろそろ、あなたの長くなった蛇も味あわせてね」  
言うと、彼女は長い舌を唇から顎へ、胸元へ、腹へとそのまま這わせたまま下げていく。  
舌はそして、腰を通り過ぎ、彼のビクビクと脈打つ蛇へと辿り着く。  
わずか、舌を肉の蛇に触れたとき、彼女は上目遣いに客を見上げ、そして微笑んだ。  
このちょっとした仕草に、見下ろしている客は頬を赤らめ蛇の脈を更に高めていく。  
彼女は舌をゆっくりと蛇の根本から這わせ巻き付いていく。そして二枝に分かれた舌先は、チロチロと蛇の頭、穴の外側中側を軽く舐めている。  
この上で、今度は唇で蛇を甘噛みしくわえていく。  
じゅるじゅるといやらしい音を立てながら、唇によるしごき、舌による強弱ある締め付け、そして舌先による亀頭攻め。  
彼女のフェラ三点攻めに対し一分と持たせられる男を、私は数える程しか知らない。  
やはりというか当然というか、男はぎゅっと目を閉じ、そして彼女は動きを止め溢れ出る白濁液を口内に溜め込んだ。  
慎重に舌と唇を離し、そのまま軽く口を開けたまま見下ろしている客へ口内を見せる。  
彼女の口内に貯まった白濁液がしっかりと見えている。  
客がそれを確認したのを見届けてから、彼女はまた目尻を下げてそれを喉を鳴らし飲み込んだ。  
「おいしぃ……」  
笑顔は接客の基本。そしてこんな場なら尚更。彼女は実に、この店での接客業という物を心得ている。  
男性の精子は純粋な味だけで言えばそう美味しい物ではない。淫魔を除けば。  
彼女は吸血鬼だが淫魔ではない。故に精子の味覚に対しては人間のそれと変わらない。  
それでも美味しいと彼女は言う。そう言うことで客が喜ぶことを知っているから。  
客も半ば、自分の出した物が美味しい物ではないことを知っているだろう。  
それでも、いやそれだからこそ、美味しいと言って貰えることが至福となる。  
客と風俗嬢という関係。それを理解しながら、しかし一時の安らぎを求め与える関係。  
彼女の接客は、オーナーとして誇らしく思える素晴らしい物で、そして客も彼女の接客に大変満足して頂けているようだ。  
 
「次はあなたが、ここを頂いてね」  
指先で己の陰門を押し広げ、ぬめり光っている自分自身を晒す。  
先ほど出したばかりだというのに、客は興奮し蛇の鎌首をすぐにもたげた。  
くすりと微笑みながら、彼女は客に小さな正方形をしたビニール製の包み袋を手渡した。  
これはコンドーム。当店では淫魔以外との本番ではコンドームの着用を義務づけている。  
理由は二つ。一つは避妊であり、そしてもう一つは本来の目的である精子の回収にある。  
そもそも我が店は、淫魔と吸血鬼のために精子と血液の回収を目的として運営されており  
VIP会員はそれを承知して下さっているお客様ばかり。  
本来ならフェラの時にも着用して欲しいところなのだが、流石にそこまで要求は出来ない。  
コンドームを受け取ったお客様は、待ちきれないとすぐさま自身の肉蛇に装着し、そしてうちの風俗嬢に抱きついた。  
「あん……もう、せっかちなんだから。折角のローションは良いの?」  
いいながらも、片腕を男の背に回す彼女。余った片手は肉蛇を掴み、快楽の門へと導いていく。もはや特性ローションはどうでも良いようだ。  
彼女は蛇の尾を彼と自分をより密接させるように巻き付け、彼はゆっくり膝を折り二人は男を上にしながら横たわる。  
「んっ!」  
私からはよく見えないが、彼女の声でたった今二人が繋がったことを知る。  
それは二人の腰がうねるように動き出したことでもうかがい知ることが出来る。  
「あん、どうですか、お客様……んっ! 私は、気持ちいい、です……んっ、はあ!」  
客はと言えば、答えを聞くまでもないだろう。  
マイクは拾い切れていないが、  
見ているだけで二人の結合部からにちゃにちゃとした音が映像から聞こえてきそうな程激しい腰振りを見れば。  
「いきそう? お客様、いきそうなんですね? なら、なら、いいですか? 私も、もう我慢出来なくて……」  
彼の首筋に息を吹き掛けるように、彼女は尋ねてきた。  
男はただひたすらに首を縦に振った。彼女だけではなく、彼もその行為を待ち望んでいるのだろう。  
「では……頂きます」  
言うなり、彼女は客の首筋に噛みついた。可愛らしくも鋭い牙が、深々と刺さっている。  
吸血鬼である彼女が、今客から血液を貰っている。  
これはむろん、事前から了解を得ている行為。本来は献血で頂く血液を直に頂戴しているというわけ。  
そしてこの行為はプレイの一環にもなる。  
血を吸う彼女の興奮と悦楽に繋がるのはもちろんだが、お客様にも充分な快楽を楽しんで貰えているはず。  
貧血に似た、意識の遠くなる感触。そんな中でも下半身はより血をたぎらせている。  
この快楽を味わってしまうと、病み付きになってしまうお客様は多い。  
意識が遠のきそうになることで、むしろ結合の快楽だけに集中し際立ってくる。  
まるで夢精をするような、そんな快楽が全身を包み込む。  
案の定、お客様は口を半開きに目もうつろながら腰を振り続け、白昼夢に酔いしれているのがこちらからでもよく解る。  
そしてついに、最高点に達するときが今着たようだ。  
二人とも悦楽を声高に叫ぶことなく、しかし確実に快楽の完備を味わっている。見れば腰からは僅かに白濁液が垂れ流れている。  
彼女はしばらく客を抱きしめ余韻を愉しんだが、客の意識が完全に飛んでいるのを確認すると、すぐに腕と尾の抱擁をほどき、首筋に指を当て脈を確認する。  
血を吸ったことで当然弱っているが、命に関わることはないのを確認すると、仰向けにし止血の処置を始めた。  
ふむ、アフターケアも万全。さすが当店の誇る風俗嬢だわと私は宇奈月彼女の仕事ぶりをモニタ越しに褒め称えた。  
 
さて、では次にどの部屋を覗……視察しようかと、私はまたざっと無数のモニタを流し見た。  
目に飛び込んできたのは、セーラー服。どうやら無料オプションでコスプレを選んだお客様がいた模様。  
私は早速、その部屋の音声とこちらのスピーカーを繋いだ。  
「あは、私セーラー服って好きなんですよ。この服「KAWAII」ですよね」  
日本人よりも浅黒い肌を持つ彼女。肌のせいか白い夏服のセーラー服、その白さがより際立っている。  
彼女はインドから来たナーギニー、先ほどのラミアと同じく半人半蛇。  
ナーギニーとはナーガの名で知られる神獣一族の女性名。日本の「KAWAII」に惹かれ来日した女性。  
今世界では、日本の「可愛い」がそのまま「KAWAII」として広まり、若い女性に指示されているらしい。  
「知ってます? 今タイの学校でセーラー服が流行しているんですよ? あーあ、インドでも流行らないかなぁ」  
なんでも、タイでは今まで50人という生徒数だった高校でセーラー服を採用した途端、生徒が300人にも膨れ上がったとか。  
「まあでも、こうしてここで着られるなら良いよね。えへへ」  
屈託のない笑顔を客に向ける彼女。それは営業スマイルではなく素の笑顔。だからこそその効果は絶大だ。  
彼女はこの店で働くようになってまだ日は浅いのだが、むしろその、すれていない姿勢に人気がある様子。  
しかしすれていないからといって未熟だというわけではない。  
「じゃ、早速始めましょうか」  
両手で客の手をしっかりと握り、敷いたマットまで導く。マットの隣では、準備済みのチョコレートローションが用意されていた。  
彼女は桶に入れられていたそのローションを両手ですくい、まず客に見せるように桶へと垂れ流す。  
そして再びすくい上げ、それをセーラー服の上から胸元に塗りたくっていった。  
「あっ、普通のローションじゃないから汚れて見えちゃうね。でもこういうのもなんかエロくていいかも?」  
楽しげに笑う彼女に、客も、そして私も頷いた。  
エロい。確かにエロい。  
白いセーラー服がチョコで汚される。そして濡れたことで透けて見えそうだが、しかしチョコの色がクッキリとは服の下を透けさせてくれない。  
ところが、彼女の肌は浅黒く、チョコの色が肌の色に見えなくもない。  
セーラー服を所々汚したチョコ色が肌色にも見えてしまうのも、更なるエロ度を上げている要因。  
チラリズムにも似た、このエロティシズムは見事。  
彼女は始めから狙っていたのだろうか? それは私にも解らない。天然とも計算とも取れる微妙な行動が、彼女の魅力となっているのは確かだが。  
「それじゃあお客様、横になってね」  
マットの上に客を寝そべらせ、彼女はその上にまたがり早速胸を押しつけた。  
胸板から腹部を何度か往復させ、軽く小手調べ。  
客の反応を楽しみながら、少しずつ、往復する範囲を下へ下へと移していく。  
そして胸はいよいよ、客の股間へ。  
「あは、もうこんなにしちゃってる。もー、スケベなんだからぁ」  
スケベだからこそ、我が店に来てくれるわけだが……まあそこは突っ込むべき所ではない。  
というよりも、悪戯っぽく言う彼女の台詞そのものに一つの効果がある。それが功を奏しているのは客の反応ですぐに解る。  
照れた笑いを浮かべる客の顔を見れば。  
「そんなスケベさんには、こーしてやるぅ」  
濡れたセーラー服越しに、男の肥大したスケベ棒に胸の谷間を押しつける。  
そして胸脇を軽く押さえスケベ棒を挟むようにして、身体を前後に揺らす。  
「どう? 服の感触とか、痛くない?」  
ローションがなければ、おそらく擦れて痛いだろう。  
しかしたっぷりとチョコレートローションの染みこんだ、ポリエステルと綿の交じった生地は  
絶妙な滑らかさで、素肌でされるのとはまた違った感触を楽しめるはず。  
客の表情を見る限り、痛いということもなくむしろ恍惚といった表情を浮かべている。  
 
「あは、気持ちよさそうな顔してるね。よーし、もっと凄いコトしちゃうぞ」  
彼女はそう告げると、身を進め顔を近づけていった。  
そしてそのまま腰を持ち上げるよう客に願う。  
客が出来うる限り腰を持ち上げると、彼女は腰の下にするりと尾を滑り込ませ、二回り程腰に巻き付けた。  
巻き付いた尾と尾の隙間からは、器用に客のスケベ棒が飛び出している。  
「どう? こーいうのも良いでしょ?」  
巻き付けた尾を軽く進め、戻し、きつく締め、緩め、尾と尾の間に挟まったスケベ棒を様々に擦り圧迫していく。  
「ねえ、お客様。折角だから、胸揉んでよ」  
尾で擦りながら、彼女は客の両腕を自ら胸に導き押しつけた。  
最初は遠慮がちに手を動かしていた客は、しかしスケベ棒から伝わる悦楽に興奮し、次第に手の力を強めていく。  
「んっ! もっと、強く揉んでも、いいよ……あんっ!そう、もっと、強く、もんでぇ」  
服の上から変形する胸。彼女は客の手の甲に自分の手を重ね、さらに激しくもみしだくよう求めた。  
強く揉まれることで興奮した彼女は、尾の動きを更に激しくしていく。  
「あっ、もう、もう出そう? 出る? うふふ……、なら、もっと凄いコトしちゃうよ」  
彼女は名残惜しそうに客の手を胸から退け、顔を客の股間へと近づける。  
尾と尾の間から突き出しているスケベ棒、その先端。彼女はその先端に長い舌でピチャピチャと舐め始めた。  
「んっ、お客さんの先走ったおつゆと、チョコが交じって美味しい……ぴちゃ、んふ、このまま飲ませてね、お客さんのとチョコを混ぜた、ミルクチョコ……くちゅ、ぺちゃ」  
尾だけでは行き届かなかった先端への刺激。  
小さな穴の中にまで舌を入れてくる彼女の愛撫に、客は顔をしかめもっと長く楽しもうと懸命になっている。  
「あん、ダメだよ、我慢しないでね。この後、もっと気持ちいいところに入れて貰うんだから、ね」  
彼女の笑顔が止めになったのか。予告無く、唐突に白濁液は天に向け彼女の顔に向け、大量に吐き出された。  
「あん……あはは、たっくさん出たねぇ……んっ、おいしぃ……」  
顔にこびりついた白濁液を長い舌で綺麗にすくい舐めていく。  
くったくない笑顔にこびりつく白濁液。それだけで尾に挟まったままの棒はすぐに活力を取り戻すだろう。  
さすがは本場でカーマストラを学んできたと豪語しているだけはある。  
少女のような愛らしさを振りまきながらも、卓越した技を身につけた彼女に、心奪われた客は多い。  
今まさに、その彼女と交わり始めた客もその一人だろう。  
 
私は感心しながらその様子を眺めていたが、ふと隣のモニタ画像が視界に入り、今度はそちらに興味が移ってしまった。  
色々なシチュエーションを見て楽しま……全ての部屋に目を光らせる必要があると、私は次の部屋の視察に切り替えた。  
そこでは、客がまるでかぶりつくように風俗嬢の胸を愛撫していた。  
「あらあら。坊やは本当に甘えん坊さんですねぇ」  
先ほどまでの、少女のような風俗嬢とは異なり、こちらは大人の色気を漂わせた熟女。  
偶然かな、彼女もまた半人半蛇。濡れ女と呼ばれるここ日本出身の女性。  
彼女は人妻。そして子持ち。熟れた身体と色気、そして培った豊富な経験で客を魅了している。  
ただ彼女の場合、人妻で子持ちという身の上が人気の要因でもあり、彼女にしかできないサービスを求めてくる客が非常に多い。  
「どう? 坊や。おっぱいは美味しいでちゅか?」  
母乳サービス。これこそ彼女最大の武器。  
豊満な胸からあふれ出る母乳を求める客は、同時に「赤ちゃんプレイ」を併用して楽しむことが多く、このお客様もそんな一人のよう。  
「坊やは可愛いですねぇ。ほら、沢山お飲みなさい」  
客の頭を撫でながら、優しく接している。  
客は快楽も当然求めているが、それと同時に安らぎも求めている。  
一見相反しているように感じるが、理に適っている。  
男にとって女性は精の対象として快楽の材料になるが、同時に安らぎの場ともなる。  
快楽の果てにある安らぎ。安らぎの先にある精衝動。  
そのどちらも求め、お客様は我が店へと足を運んで下さるのだ。  
「あら、どうしたの? 坊や……あらあら、もうシーシーがしたくなっちゃいましたか?」  
もぞもぞと腰を動かす男。そこにはおよそ赤ちゃんにはあり得ない程にいきり立つ肉棒が。  
その様子を暖かい眼差しで見つめ、彼女はそっと大きな赤ん坊を胸から放す。  
「ほら、坊やは良い子だからシーシーする場所は判りますね?」  
両手の人差し指で陰門を押し広げながら、仮初めの我が子に場所を示す。  
大きな赤ん坊はよたよたと、その淫らなおまるに近づき、母親に肉棒を突き入れようとした。  
「こら! ダメでしょ? シーシーするときはこれをちゃんと付けなさい」  
母親はコンドームを手にそれを見せながら叱りつける。  
客が興奮しすぎて着用義務を忘れた……とも見えるが、ここで軽く怒られることをプレイの一環にしているのかもしれない。  
それは流石に第三者である私には見ただけで判断付かないが、着用義務を怠らないでいてくれるのはありがたい。  
「ほら、ママが付けてあげますから、こっちにいらっしゃい」  
素直に近づく坊やの肉棒を軽く握り、母親は優しく手早くコンドームを装着させた。  
 
「これでいいわ。さあ、いらっしゃい坊や」  
改めて、坊やは母親に中腰でだっこされるような姿勢をとり、改めて肉棒を突き入れていく。  
「あんっ! はい、よく、出来ました……そうよ、坊や……さあ、ちゃんとシーシーするにはこの後どうすれば……ふぁっ! そ、そうです。良くできましたね……」  
すぐに腰を振り始めた坊やを、喘ぎ混じりに褒める母親。  
坊やは膝で立ちながらただただ激しく腰を振る。  
そこにおよそテクニックという物はなく、ただ性の衝動にまかせ欲望のまま腰を動かしているに過ぎない。  
それでも仮初めの母は坊やを凄い凄いと褒め称える。  
母親相手だから出来る、遠慮も気兼ねも無い甘えたプレイ。坊やとなった客が求めているのはそれ。  
「いい、いいですよ、坊や……ん、ママも気持ちいいですよ……あん! またおっぱいですか? もう、お行儀の悪い……んっ、もっと、強く吸って良いのよ、坊や……」  
腰を振り胸にしゃぶり付き、まさに本能のまま衝動のまま。  
それを全て受け入れる母親は、愛しい坊やの頭を撫でながら、尾をひくつかせ自らも腰を振るい始めた。  
「そう、その調子よ、坊や……もっと、いいのよ、遠慮しないで……んはぁ! いっ、いいわ坊や……そう、もっと、強く……んんっ! そう、いいわよ坊や……」  
激しくされ激しく求め、しかしそれでも優しく接する母親。  
無我夢中でただ腰を振り続ける坊や。  
二人高まる悦楽は、いよいよ頂点を迎える様子が、見ているだけで伝わってくる。  
「出るの? 坊や、シーシー出るのね? いいわよ、ママの中でシーシーして! ほら、シーシー、シーシー、シー……んっ! ああ……良くできましたね、坊や……」  
ガクガクと腰を振るわせ、坊やは荒い息を吐きながら仮初めの母にもたれかかった。  
しばらく頭を撫でていた母親は、落ち着いたところで淫らなおまるから肉棒を外していった。  
「うふふ、たっぷり出しましたね。偉いわ、坊や」  
コンドームを外し、中身が零れないよう口の部分を結びながら、母親は坊やを褒めている。  
「ほら、そのままだとバッチイわよ。ママがキレイキレイしてあげますからね」  
力無く垂れ下がった肉棒に、母親は屈み唇を近づけていく。  
そして下でチロチロとその肉棒を舐め、軽くこびりついた白濁液を舐めていく。  
あの肉棒が再び天を突くようにそそり立つのも後数秒のことだろうなと眺めていた私の後ろで、不意に電子音が部屋に響いた。  
受付からの呼び出し音。それは私に「来客」が訪れたことを示している。  
「来たわね……うふふ、さて今日はどうやってイジメてあげましょうか」  
名目は一応「普段世話になっているのでチョコを手渡ししたい」と伝えている。むろんこれは口実。  
バレンタイン当日になると何人もの女性から熱烈なラブコールを受け取ることになるのだから事前に渡したい、とも伝えたかしら。  
まあ呼び出す利用はどうだったかなんて些細な物。来て貰えたことが重要で、もっと重要なのはこれからどうするか。  
「たまには直接私の相手をして貰おうかしら? 見ていたら私もあのローション試してみたくなりましたし」  
私は趣味と実益を兼ねた部屋を出て、もう一つの趣味と実益と、そしてあらゆる意味での「愛情」を兼ねた用件を済ませに向かった。  
 

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