「今日はぱんつ脱ぐの、禁止〜〜!!」  
 
バン! と、パジャマ姿の香奈が机を叩いて怒る。今、まさにパジャマの下を脱ぎ、  
ぱんつに手をかけていた彩乃と祐希は顔を見合わせた。  
「どうしたの、香奈? いきなり…」  
「いきなりはそっちです! なんでいつもパーティ始めようって言ったら、その  
とたんにぱんつ脱ごうとするんですか!?」  
「だって……今までそうしてきたし…」  
「ねぇ?」  
香奈を訝る様に彩乃と祐希が見る。  
 
「今までがえっち過ぎます! いつもいつも、みんなおかしくなっちゃうじゃない  
ですか!?」  
何故か今日の香奈は強硬に主張する。  
「だって……それが私達のパーティだったし…」  
それに口ごたえする彩乃。祐希も頷いて同意している。  
そんな二人を香奈は強い意志を湛えた目で睨みつける。二人は思わず竦み上がった。  
 
「私達、まだ13歳と15歳の、世間で言えば花も恥らう乙女なんですよ!?  
それが4人集まってパーティしようって言ったら、いきなり裸になって、電気アンマの  
かけあいっこ! 最後はいつも凄いことになってるじゃないですか! この前の  
彩乃さん家のパーティの時なんか、昼下がりからお部屋で電気アンマして、汗を  
かいたらみんなでお風呂に行ってそこでも電気アンマ。それからお部屋に帰ってまた  
電気アンマして、夜はお休み前に電気アンマ! 夜中少し寝返りを打ったらいきなり  
奇襲で電気アンマ! 朝は電気アンマで起こされて、朝ごはん食べたら腹ごなしに  
電気アンマ! 最後もお別れの電気アンマを2セット!! 1セットで私達は全員が  
かける側とかけられる側をするから、順列計算で4×3、12通りの電気アンマを  
するんですよ? つまり、一日100回以上です! ありえないですよ! しかも  
その間、身に着けた物は調理中のエプロンだけ! 丸一日中まっぱだかなんて  
信じられます!? ……そこ!ちゃんと聞いてますか? まったく……日本中の  
どこを探したら、ご飯食べている時以外全裸で電気アンマばっかりやってる女子  
中学生がいるんです!?」  
 
どういうわけかやたら数学に強いところを見せながら香奈がヒートアップして一気に  
まくし立てるのを、彩乃と祐希は何故か正座して聞いていたが、  
「そんな事言われたって……」  
「ここにいるけど……」  
彩乃が不満そうに自分たち4人を指差そうとすると、香奈はバン!と机を叩いた。  
すぐに二人は小さくなって正座しなおす。何故か、瑞穂も付随して。  
 
「いいですか? ここは私ん家です! 平凡な、庶民の、中堅どころの会社の課長  
代理クラスの3LDKの社宅なんです。彩乃さん家の様なお大尽の豪邸じゃないん  
ですよ? 万が一、そこの娘が両親の留守中に友達を呼んで全裸の乱交電気アンマ  
パーティを開いてる、なんて悟られでもしたら、うちのお父さんとお母さん、会社に  
いられなくなっちゃうんですからね!? あなた達は人の家庭を崩壊させるつもり  
ですか!?」  
「そんな大げさな……ねぇ?」  
彩乃が軽口を叩こうとすると、香奈の物凄いプレッシャーを感じてしまった。  
香奈の目は強い光を帯びている。女子中学生の目ではない。幸せな家庭を守ろうと  
する強い女戦士の目だ。思わず彩乃と祐希は肩を寄せ合ってしまう。  
 
「ですから、今日は大声を出しちゃうようなプレイは全面禁止です。裸も禁止!  
大声でY談も不可! いいですね?」  
キッと3人をねめつける香奈。さっきまで『電気アンマ』という単語を大声で  
連呼してたのは誰? と思いながら、香奈の迫力に負け、彩乃と祐希はコクコクと  
頷いた。瑞穂はいつもの通り、何で私まで…? と思いながら同様に頷く。  
 
「……コホン。いいですか、本来、私達がやっていた『えっちパーティ』はですね、  
出来る限り、他の人に悟られず、お父さんやお母さんが隣の部屋で寝ていても  
大丈夫な状態で如何にえっちな事をするか、がテーマだったのです」  
一同の了承を得たと見るや、今度はとくとくと言い聞かせるように語り始める香奈。  
(そうだったの……?)  
(ええ、まぁ……)  
彩乃と祐希がひそひそ話をするのをジロリ、と香奈が見咎め、慌てて二人とも  
正座しなおす。  
 
「そんな奥ゆかしい女の子の秘密のパーティが、いつから、どうして、あんな  
露骨でえっちっちな泥沼パーティに変身しちゃったんですか!?」  
じろっ、と彩乃を見る。  
「あ、ひど〜〜い! 香奈だって喜んでたくせに〜!」  
原因の追究が始まりそうになり、追い詰められる前に彩乃が先制の反論する。  
「……! そ、それはその……」  
香奈が真っ赤になる。  
「それじゃ私が元凶みたいじゃない? だったらどうして今までは嫌がらなかった  
の? その奥ゆかしいパーティにしようって言ったら話ぐらいは聞いたのに」  
とりあえず、元凶のくせに開き直って強弁する彩乃。実際、その話を聞いて彩乃が  
受け入れるかどうかは別問題だっただろうと思われるが。  
 
「だ…。だって……。彩乃さんとそういう事できるのが嬉しかったんだもん……」  
香奈が真っ赤になって言うと、意外な答えに彩乃も頬を染めてしまった。  
「だ、だけど…! それだったら、どうして彩乃さん家にしなかったんですか?  
いくら私ん家が明日まで両親が留守だとは言え、日を改めて彩乃さん家でしても  
良かったじゃないですか?」  
「それは……。香奈ちゃんのお部屋、見てみたかったんだもん……」  
「そ、そうなんですか?」  
「うん……」  
今度は彩乃が真っ赤になる。香奈も少し頬を染めた。  
 
「あ、あの……そういう事だったら別の日でも言ってくださいね? ちゃんと  
ご招待しますから……」  
「うん……そうするね」  
二人して見詰め合っていい感じになっている。香奈もさっきの勢いは何処へやら、  
彩乃と視線が会うと、恥ずかしそうに俯いた。  
「……って、あんたたち。いつまでそうしてるわけ?」  
そこに祐希が冷や水をぶっ掛ける。二人は慌てて本来の議論に席?に着きなおした。  
 
「え〜〜っと、その……。だ、だからですね、うちでは全裸パーティは、絶対  
ダメです! どんな事が起こるかわからないんですから。万が一、ご近所に…」  
「わかった、わかったってば。ちゃんとぱんつ穿いていればいいんでしょ?   
……ブラとかは?」  
「……の、ノーブラでいいです……。今までもそうでしたし……」  
「それに、パジャマの下も脱がすのはOKですよ。脱ぎっぱなしでウロウロする  
のはダメだけど」  
恥ずかしそうに香奈が答え、祐希が補足した。これは香奈が止めたそうにしたが、  
あまり自分の意見ばかり押しつけるのも躊躇われたので、しぶしぶ承知した。  
 
「ふ〜ん。大体わかった。後は大声はダメなんだよね?」  
「は、はい……出来れば」  
「香奈ちゃん、見本見せてくれる?」  
「え…? 何の見本……きゃああ!?」  
いきなり彩乃が香奈を押し倒した。6畳の香奈の自室に二人が寝そべると、余り  
スペースはなく、残りの祐希や瑞穂の目の前で絡む事になる。二人とも顔を見合  
わせて頬を染めた。  
「大きな声を出しちゃいけないんでしょ?」  
悪戯っぽく指摘しながら彩乃は香奈の首筋に舌を這わせた。  
「は、はい……あうん!!」  
体を震わせ、仰け反る香奈。  
「ほら、また大声出して」  
意地悪にちろちろと舌を首筋から耳朶にかけて念入りに這わしていく彩乃。  
香奈はあっという間に彼女のなすがままになる。  
 
「ん……くっ……うう…ん…」  
声を押し殺し懸命に耐えるのは香奈。その香奈をねっとりと執拗に責め立てる  
のは彩乃。彩乃は香奈のパジャマの前ボタンを外し、手を入れた。  
「ひゃん……! ……うぐっ」  
いきなりピンクの乳首に触れられ、声を上げそうになり、慌ててパジャマの襟を  
噛んで耐えた。切なそうにプルプル震える肩を愛おしげに抱き、耳たぶを噛む彩乃。  
香奈は更に悲鳴を上げそうになるが、一瞬目を見開いただけで懸命に耐えた。  
 
(これは、これで……)  
悪くないわね、と彩乃は思う。声を漏らすまいと懸命に耐える香奈はとても切なげで  
可愛らしい。このままじっくりと責めてやりたいと思う。  
「彩乃さん……これ以上はもう……」  
香奈が荒い吐息でこの甘美な辛さを訴える。  
「そうね……。じゃあ、ここまでにしておきましょうか」  
「え!? そ、それは……!」  
香奈が驚いたように目を見開くが、彩乃はするりと香奈に絡めていた体から離れた。  
(そんなぁ〜〜!!)  
内心で彩乃を非難するが、彩乃は気づかない。あるいはそのそぶりかもしれない。  
彼女は意地悪なのだ。  
 
「まあ、これで良くわかったよ。今の香奈ちゃんみたいに頑張ればいいのね?」  
「は、はい……でも……」  
香奈はまだ何か言いたそうに彩乃を見つめる。  
「でも、なぁに?」  
彩乃は優しげな微笑を返す。だけど、香奈にはちゃんとその奥に隠された意地悪な  
気持ちが伝わった。(ずるい〜〜!)と内心思うが、彩乃は寸止めで終わるつもり  
なのはわかっている  
「な、何でも……ありません」  
少し語気を強めて彩乃を睨んだ。彩乃は涼しい顔をしている。そっちがその気なら…。  
 
「それと、今日は電気アンマ禁止ですから」  
「「ええっ〜〜〜!?」」  
彩乃と祐希が同時に大声を張り上げる。瑞穂が横で耳を塞いでいた。  
「そ、それは横暴よ!」  
「そうだよ! 電気アンマがなかったらパーティの意味がないじゃん!!」  
これには流石にレジスタンス達も激しい抵抗を見せた。しかし、香奈はつーん、と  
横を向く。  
 
「だって、近所に声が聞こえちゃうもの」  
「それは……さっきみたいに声を我慢すれば……」  
「出来ると思うの?」  
「う……」  
無理かも、と4人とも思った。無理である。香奈の言い分は正しいがしかし……  
「じゃあ、猿轡するとか……」  
未練がましく祐希が言いかけるのを香奈が言下に否定した。  
 
「だめったら、ダメなの! 猿轡って私達がつけたってすぐ外れちゃうでしょ?  
電気アンマで絶頂の時にいきなり外れたりしたら……」  
「絶頂……」  
香奈の口からその言葉が出るのを聞き、彩乃が唾を飲み込むが、香奈ににらまれて  
しまう。  
 
「と言う事で、いいですね。全裸なし、電気アンマなし。本来のえっちパーティに  
今日は戻りますからね」  
香奈は不満分子がぶーぶー言ってるのにも耳をかさず、宣告すると、学習机の  
引き出しから二通りのカードとボールペンを4本、取り出してきた。カードは片方が  
トランプで、片方が白紙のカードだ。トランプをみんなの真ん中に置き、ペンと  
白紙のカードを3枚ずつ配る。  
 
「これは?」  
唯一事情を知らない彩乃が聞く。  
「そこに、その…自分がしたいエッチな内容を書くんです。3通り……。全部違う  
内容でもいいですし、同じ内容なら時間や回数を変えるとか……。みんなが書いた後、  
全部集めてシャッフルして順番に引いていきます。引いた人がする人で、その人は  
同時にトランプのカードを一枚引きます。トランプのマークをあらかじめ私達4人に  
割り振っておいて、該当するマークを引かれた人が、そのえっちな事をされる人に  
なります」  
香奈がとくとくと説明する。彩乃は頷きながら結構のめりこんで聞いていた。  
 
「へぇ〜……自分が書いた内容が自分に帰ってくる事もあるのね?」  
「はい。それに全員が平等にされるとは限りません。沢山当たる人と少ししか  
当たらない人、あるいは大変なえっちなのばかり当たる人とか……」  
「その辺がゲームなのね。面白そう」  
これは彩乃はちょっと気に入ったようだ。  
 
「じゃあ、みんな、後ろ向きになって書こうよ! あ、ジョーカーは誰でも指名  
できるからね、彩乃さん」  
にやっと祐希が彩乃に目配せする。ターゲットは勿論香奈だ。元々香奈を争ってた  
二人だが、今日は抵抗勢力同士、強い共感を得たようだ。  
「そうね……フフフ、見てなさいよ。……打倒暴君!」  
香奈に聞こえないように口の中で言う。  
「……?」  
訝しがりながら背筋に寒いものを感じる香奈。  
 
かくして全裸と電気アンマを封じた香奈だが、この事が、えっちパーティ史上、  
最悪の泥沼に陥るきっかけになるとは、この時の香奈には知る由もなかった……。  
 
 
「う〜ん……何を書こうかあ…?」  
祐希は考える。電気アンマが導入される前って何をやってたっけ……。  
「そうだ、あれ……!」  
にやりと笑い、カードに『全員からくすぐり』と書いた。  
「これを二通り。時間は……1分と…3分かな? 5分な?」  
暫く悩んだ挙句、にんまり笑って分数を記入した。『5分』と。  
「もう一枚は……なにか、変わったものに。……よし! あれだ!!」  
何かを思いついたらしく、悪戯っぽい笑顔で項目を記入する。  
祐希は満足そうな笑みでカードを見つめなおしていた。  
 
 
「ここの所、えっち過ぎるのばかりだもん、押さえ気味に……」  
香奈もペンを走らす。そこには『おさわり』と書かれていた。  
「どうせなら、全員から、長めに……これぐらい、いいよね?」  
自分に言い聞かせると、2枚を『全員からおさわり』にし、時間を3分と7分に  
設定した。  
「あとは……これ、彩乃さんに当たるといいなぁ……」  
軽く舌を出しながら『おっぱい揉み』と書いた。時間は……『10分』と。  
 
 
「香奈ってば酷いわよね〜。あれじゃ私が色情狂みたいなじゃいの」  
実は全くそうなのだが、心に棚を持つ美少女生徒会長・彩乃は、主催者香奈の横暴  
のみを問題にし、ぶつぶつ文句を言いながらペンを持って考える。  
「こうなったら、凄いの書いちゃおう……ふっふっふ。香奈ちゃん、泣かせちゃる」  
悪女のような笑みを浮かべて2枚をすらすらと書いた。そこには『カンチョー』と  
『また裂き』と書かれていた。  
 
「『また裂き』は5分、と。痛くて恥ずかしい内容にしてあげるから。最後の一枚は…」  
そう言うと、悪女の微笑みから悪魔の笑顔に変わった。すらすら、とペンを走らせた  
内容はなんと……『急所攻撃』!?  
「悪魔の必殺技でお仕置きしてあげるからね。見てなさい、香奈!」  
フッフッフッフッフ……と、残り三人がぎょっとするような声で笑う彩乃だが……。  
彼女はさっき自分で言った事を忘れていないだろうか?   
 
『自分が書いた内容が自分に帰ってくる事もあるのね?』  
 
 
3人がそれぞれの思惑の中、瑞穂はマイペースですらすらと書いていた。  
「やっぱり、これは必要じゃないかなぁ……」  
 
 
4人の思惑が込められたカードが香奈の手に集められ、シャッフルされた。  
いよいよ、彩乃を加えてから香奈の家で初めての『えっちパーティ』の開幕である。  
 

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