雲一つ無い晴天に今日も砂塵が舞う。ビルサ市に来てからこんな天気じゃなかった日  
なんてほとんど無いんだが、年中霧が出るような俺の故郷よりはいくらかマシだ。空気が  
カラカラだからノドは痛いけど。  
 
「師匠、そろそろ起きてください! 開店時間です!」  
「うー‥‥もうちょっと‥‥寝る‥‥」  
 部屋の三分の二を占めるバカでかいベッドの中で、もぞもぞ動いているのは俺の師匠。  
実はすごい魔導士だったりする‥‥んだが、いかんせん寝起きが悪くて昼過ぎになっても  
寝ていることが多い。  
「ダメです!!」  
「‥‥うるさいなぁ‥‥店番は任すよ‥‥あたしはもうちょっと‥‥ぐぅ」  
「起きてくださいって!!」  
 しばし格闘になるが、起きる気がない師匠を起こすなんてはっきりいって俺には無理だ。  
「おーい、ナイアさんよぉ、店はまだ開かねぇのかー?」  
 窓から外を見おろすと、待ちかねた客が声を張り上げている。  
「あ、ちょっとお待ちを! いま開けます!! ‥‥師匠、起きてくださいよ!!」  
 一応念を押し、バタバタと階段を下り、店を開けた。  
 
「‥‥うーん、俺にはちょっとそこまでは‥‥」  
「だから兄ちゃんじゃなくてナイアさんを呼んでくれよ、ラチがあかねぇ」  
「う、いやその、起こせるもんなら起こしたいのは俺も同じなんですが‥‥」  
 ヒゲ面のおっさんが好き放題に言ってくれる。ここは魔導具屋という種類の店。いわゆる  
「魔法の品」とか、魔導士用の道具とか、わけのわからん材料などなどを扱ってる――が、  
俺みたいな半端魔導士は素人相手に基礎的なことを教える程度ならともかく、専門家に  
高度な理論的応用について聞かれてもまるで駄目だ。つまり店番としてはどうあっても  
役に立たない。‥‥と前に文句を言ったら案の定「それも修行のうちよ」とか言われた。  
いや、あの、お客に迷惑じゃないのか?  
 ――と無言で愚痴っていると階上からズルっ、ギシっと音が聞こえてきた。助かった、  
師匠だ!  
 
「‥‥ったく、相変わらず要領が悪いわね‥‥なんのご用?」  
 階段からずるずると下半身を引きずって下りてくる。頭の後ろで高く束ねた濃い赤紫色の  
髪、けだるげな切れ長の眼、やたらに赤い唇、申し訳程度の衣装で覆われたでかい胸、  
くびれた腰、んでもって長いヘビの下半身。これが俺の師匠、ナイアさん。見たまんま、  
ラミアだ。異種族をあまり知らない人のために念のため言っておくと、いわゆる「蛇女」  
ってやつだ。あ、本人に言うと怒るので注意。  
「お、おぅ、ナイアさん‥‥おはよう。き、きょうもキレイだな」  
「あら、ありがと。で、ご用向きは‥‥?」  
 ヘビが嫌いでない限り、師匠に見とれない野郎はいない。さっきまで偉そうだった  
おっさんがたちどころに赤くなり、しどろもどろに話す様を見るのはなかなか気分がいい。  
が、そうはいっても二人の会話内容がまるで分からない。このおっさんも見た目はただの  
スケベ親父だが、案外名の通った魔導士らしいとか何とか。人は見かけによらないらしい。  
「ラート、あんた店番ができないならとっとと配達にでも行ってきな。中の倉庫に荷物があるから」  
「はいはいわかりましたよ」  
 師匠の寝起きが悪いからやむを得ず店番をやってたんだが、まぁいい。配達なら俺でも  
できるしな。  
「って、ちょっと師匠! なんですかこの大荷物は!!」  
「あん? きのう届いたのよ。ま、配達頑張ってね」  
 倉庫いっぱいに積まれたわけのわからん大荷物達を前に、俺は途方に暮れた。  
 
 * * * * *  
 
「ぜぇ、ぜぇ、うー‥‥まだかよ‥‥」  
 空気が乾燥しているおかげで汗はすぐ乾くが、それでも台車を引っぱって坂道を上がるのは  
非常につらい。それにしても何だよこの荷物は‥‥。重いわデカいわ変な臭いはするわ、  
苦しいったらありゃしない。  
「えーと、キダシュ先生んところは‥‥ここだな」  
 石造りのそっけない建物の正面には、かすれた金文字で「キダシュ医院」と書かれた看板が  
掛かっている。  
 
「先生ー! ナイアの使いです、お荷物のお届けに上がりましたー!」  
 玄関先で大声を張り上げ、待つことしばし。  
「先生、キダシュ先せ‥‥」  
「静かにせんか、きこえとるわい‥‥」  
 低い声と共に木戸がぎいぃっと軋み、黒々とした影からぬぅっと大トカゲの頭が出てきた。  
「あ、お荷物です、配達に来ました」  
「おお、来たか。む、ちょっと中まで運んでくれんか」  
 縦長の瞳孔がほそくなり、瞼がぎゅうっと下からせり上がる。いちおう「嬉しそう」と  
解釈すべき表情らしいが、リザードマンと暮らしたことのない俺はやはりとまどってしまう。  
 とにかくやたら重い荷物を運び込み、ひんやりと湿っぽい室内でちょっと一息。  
「ところで先生、これって中身は何ですか?  
とりあえず配達してこいって言われただけなんで‥‥」  
「ああ、あれじゃ、竜骨を切らしておったんでな、買えるうちに買っておこうと思うてな」  
 しゅうしゅうとかすれた声で話す老医師。  
「‥‥なんじゃい、その顔は。竜骨も知らんのか? 大昔におったドラゴン類の骨やら、  
干からびた皮やらじゃ。昔は街の近くにもときどき見つかったんじゃがなあ」  
「‥‥で、それはもしかして薬に‥‥」  
「それ以外のもんを医者がほしがると思うんかね」  
 ごもっとも。うう、先月熱を出した時に俺はそんなものを処方されてたのか‥‥。  
「安心せい、こんな高い薬をお前さんみたいに健康な若造には使わんよ」  
 先生は俺の頭を見透かしたかのように続けた。  
「このあいだ出したのは砂漠ムカデの丸干しと黒ダチョウの肝を練り合わせたやつじゃ。  
庶民にはそれくらいが定番じゃな」  
 ‥‥聞かなきゃ良かった。  
 
 
 キダシュ先生の所で最大の大荷物を渡した後は、武器屋、雑貨屋といった店、あとは  
大学教授や研究者、魔導士達の職場や自宅を飛び回る。いちおう言っておくと、店の  
お得意さんのうちで武器屋のオルゲン親方はドワーフ、ウェイン教授はエルフ、モルネ博士は  
ドリアード、さっきのキダシュ先生はリザードマンだ。他の街や国に住んでる人は、  
人間とそれ以外が共存してることを不思議に思うかも知れないけど、ここビルサでは  
これが普通‥‥らしい。俺も慣れた。  
 なんでも、もともとオアシスに多種族が雑居して交易所をなしているところへ人間が  
入ってきて、商都を築いたのがこの街らしい。人間が人口(?)の約半数を占める今でも、  
参議は種族ごとに議席が割り当てられてるし、市長も有力種族の輪番制になってる。いまの  
市長のヘスモク氏はコボルトの豪商だそうだ。見たことないけど。  
 いまでこそ俺も馴染んでるけど、初めてこの街に来た時はミノタウロスの城門衛兵に腰が  
へたって笑い者になったし、弟子入りしようと尋ねた「大魔導士ナイア」がラミアだった時には  
ぶっ倒れそうになった。‥‥まぁ、人間、慣れだな。  
 
 * * * * *  
 
「配達終わりました‥‥」  
 俺が配達を終えてへろへろになりながら帰ってきたのは、すでに日が砂漠の地平に  
落ちかけていたころだった。  
「ん、お疲れさん。‥‥そろそろ閉店にしようか」  
 そういって師匠は思いきりのびをした。くっそー、俺は一日中クソ暑い中で配達を  
やってたのに、師匠は涼しい店内で店番やってただけだろ‥‥。んでもって晩飯を作るのも  
俺か。くぅ、住み込み弟子はつらい。  
「ラート、今何か考えてたかい?」  
「い、いえ何にも!」  
 鋭い‥‥。  
 
「食事が終わったら‥‥そうだね、今日の疲れを癒してやるよ、ふふっ」  
「え、ちょ、そ、それは‥‥っ」  
「うるさいよ、決めたんだから」  
 そう言い置くと師匠は奥へと入っていった。  
 今の「疲れを癒してやる」ってのは‥‥その、たぶん、アレだ。アレ。正直、今日みたいに  
肉体労働した後にアレはかなりキツイ。もちろん嫌なワケじゃないんだけど‥‥。  
 
 * * * * *  
 
「ラート、今日はお疲れだったね。ご褒美、あげようか‥‥」  
 師匠はねっとりと甘い声でそういいながら、俺を抱きしめる。蛇の半身で俺の胴を  
ぎゅうっと巻いて軽く締め付けながら、腕を首に絡めてくる。色香に脳が痺れる‥‥。  
「横になりな‥‥たっぷりサービスしてあげる」  
 いやも応もなく師匠のベッドに押し倒される。そしてあっというまに服が全部はぎ取られた。  
「ふふ、すっかりおとなしくなっちゃって‥‥。初めて抱いてあげたときは泣きそうだったじゃない。  
『初体験がラミアだなんて』とか口走ってなかったっけ?」  
「う、あ、いえ‥‥すいません」  
 俺にのしかかってにやにや笑いながら言う師匠に謝る。そのとおり、俺はこの街に  
流れてきてナイアさんに師事するまで女ってものを知らなかった。前の師匠が「魔導士  
たるもの一生不犯」と言っていたからだ。ま、そのジジイに後ろを掘られそうになって  
逃げ出したんだけどな。ともかく、ナイアさんに弟子入りしたその日に「弟子になるための  
通過儀礼」とか言って女体‥‥というか蛇体を味わわされた。正直、初めての相手が  
異種族ってのは抵抗があったし、ラミア自体になじみがなかったから怖かった。だけど  
それも最初の夜の前半だけ。モノを巻き取り、絶妙な力加減で締め付けてくる長い舌の感触、  
身体を締め付けられて身動き取れないまま犯される感触、いやらしい唇とのとろけそうなキス、  
そういう感覚にあっというまに囚われてしまった。  
 余計なことを思い出しているうちに、師匠の長い舌が俺の身体に触れた。唾液を乗せて  
うねうねとくねりながら、ヘソのあたりから徐々に上に這い上がってくる。人間の舌の  
四、五倍の長さはあるから、肌に触れている面積が多くて気持ちいい。  
 
「うっ、あ、‥‥師匠‥‥っ」  
 その先が俺の乳首をちろちろとなぶる。  
「‥‥ベッドの上で『師匠』はやめろ、っていったでしょ‥‥」  
「す、すいません師しょ‥‥ナイアさん‥‥くぅっ‥‥」  
 さっきとは逆の乳首にナイアさんの舌が伸び、同時に張りつめたモノにひんやりと  
冷たい白い指が絡みつく。  
「ふふふ‥‥魔法の腕はまださっぱりだけど、こっちの持ち物だけは立派ねぇ。  
‥‥今夜も楽しませてよ、ラート」  
「あの、俺の疲れを癒すって話は‥‥」  
「細かいことを気にする男、女の誘いに乗らない男は嫌われるよ」  
 ぐ。俺が悪かったですスイマセンでした。  
「でもま、ご褒美なんだからちゃんと楽しませてあげる。胸でする? それとも舌の方がいい?」  
「りょ、両方‥‥とか言ってみたりして‥‥」  
「この欲張り」  
 くすっ、と笑うと、ナイアさんは俺をベッドに腰掛けさせ、その白くて張りのある胸で  
俺のモノを挟んだ。そして乳房を両側から手で押さえ、モノを挟んだまま上下させる。  
柔らかな肉に擦られ、揉まれ、俺の下腹部がますます張りつめてゆく。  
「んっ‥‥ふふ、ガチガチになってきた‥‥お楽しみはこれからなんだから、簡単に  
イくんじゃないわよ」  
 そう、ここからがナイアさんの本領。長い舌を延ばし、擦られるたびに谷間から顔を出す  
鈴口を何度か刺激すると、胸に挟まれたままのモノに舌をにゅるにゅると巻き付けてきた。  
「くうっ、うあ、ナ‥‥イアさん‥‥!」  
 思わず声が出てしまう。そんな俺をナイアさんは上目遣いに見つめ、妖艶に微笑する。  
はっきり言って目に毒だ。  
 巻き付けた舌をゆるめ、締め付け、蠢かせながらさらに胸を揺すり、揉み、こすりつけて  
くる。二重の圧迫感が強烈に気持ちいい。  
 
「あ、うあぁっ、ヤバイ、もう、‥‥く、ああっ!」  
 ぶびゅるっ! びゅくっ、びゅくっ、びゅくっ‥‥!  
 我慢の甲斐無く白い粘液をはき出す俺の分身。勢いよく吹き出した精液はナイアさんの  
顔を白く彩った。もともと妖艶なその美貌が俺の粘つく体液で汚れた様は、淫靡としか  
いえない美しさだ。‥‥って、やばっ‥‥!  
「す、すいません! すぐ拭きます!」  
「んふふ‥‥いいわ、別に‥‥。美味しい‥‥この量、濃さ、飛び具合、まさに若さね‥‥」  
 顔に付いた精液を指先ですくい取ると、それを長い舌で見せつけるように舐め取る。  
「ナ、ナイアさん――!!」  
 我慢できなくなった俺はナイアさんの肩をベッドに押し倒した。  
「やっとその気になった‥‥? 遅いわ、早くしてよ」  
 そういいながら微笑む。  
 彼女の求めに応じるべく、秘部にふれる。なめらかな鱗に覆われた下半身のすぐ上、  
普段は申し訳程度の装飾品に隠れているそこは、すでにじっとりと湿り気を帯びていた。  
俺は指先を唾で濡らすと、そこをじっくりとかき回す。もちろん口はナイアさんの唇を  
味わいながら。  
 くちゅ、ぐちゅっ、と音が聞こえるたびに目の前の顔が切なげに歪み、甘い吐息をつく。  
「んっ‥‥あっ‥‥はぁっ、は、早く入れて、もう‥‥我慢できないわ‥‥」  
「じゃあ、入れるよ――」  
 ずぶうぅっ!  
「――んああっ!!」  
 モノを秘部にあてがい、腰を使って一気に挿し貫く。仰け反りながら喘ぐナイアさん。  
うねうねとくねる下半身が俺の脚に巻き付いてくる。  
 ずちゅっ、ぬちゅっ、ぐちゅっ、‥‥湿った音がいやらしく響く。そのたびに目の前の  
美しいラミアは仰け反り、喘ぎ、腕を絡ませ、下半身全体で締め付けてくる。  
「あ、はぁっ‥‥! いい、いいわ、上手よ‥‥ふふふ‥‥もっと突いて、奥まで‥‥  
‥‥んぅっ、ああっ!!」  
 どんなに感じていても余裕を見せつけてくるのがナイアさんだ。そしてその余裕を  
押し破って悶えさせるのが俺の役目。‥‥そうしないと許してもらえない。  
 
「っく、ああっ!! お願い、もっと強く! はぁっ‥‥んあっ!」  
 そうは言っても下半身がぎっちりと巻き締められているので腰を使うにも上手くいかない。  
「っは‥‥ナイア‥‥さん‥‥ちょっと俺の脚をゆるめて‥‥」  
「あん‥‥しかたないわね‥‥」  
 ちょっと残念そうな顔をしては見せるけど、俺の意図を汲んで下半身をほどいてくれる。  
‥‥が、どうも膝から下は解放してくれないらしい。  
「ふふふ‥‥せっかく捕まえたんだから、逃がさない。これで腰は動けるでしょ?  
ほら、続けて。突きまくって――ああああっ!」  
 言葉が終わらないうちに思いっきり腰を叩きつける。  
 パンッパンッ、パンパンパン‥‥  
「あうっ! んあっ、あっ、あっ、あはぁっ‥‥! いいわ、その調子‥‥んはぁっ!  
イキそうでしょ‥‥っく、あ、‥‥がまん‥‥してよ‥‥! ふふ‥‥あ、ああぅっ!!」  
「‥‥くうっ‥‥はぁっ‥‥ナイアさんこそ‥‥!」  
 俺が腰を打ち付けるたびにそれに合わせて喘ぎ声をあげるナイアさん。じっとりと汗を  
浮かべ、綺麗な眉根を寄せながら。肉の割れ目からはどんどん蜜が溢れてくる。引き抜き、  
挿し込む時に聞こえる、じゅぶっじゅぶっという粘液質の音が徐々に大きくなってくる。  
 ナイアさんが甲高く声を上げつつ突然身体をよじった。蛇身の力強い動きで、二人は  
抱き合って繋がったまま横になり、あるいは上下が入れ替わり、絡み合い、互いに腰を  
こすりつけながらベッドの上でのたうち回る。それでも俺は休みなくモノを突き立てる。  
押し寄せてくる肉襞をかき分け、締め付けに耐え、ナイアさんの子宮口をずんずんと突く。  
「あぁっ、あああっ!! だめ、す‥‥ごい、っくぅ‥‥!!」  
 腕を絡ませ、大きな乳房を俺に押しつけ、ひたすらに喘ぐ。  
 モノを締め付ける力が一層強くなり、抱きしめる爪が俺の背中に食い込み、巻き付く  
下半身までがびくびくと震え出す。ナイアさんの上体が汗でぬるぬるになり、そこに  
長い髪の毛が張り付いている。  
 
「‥‥はぁっ、はぁっ、‥‥イっていいよナイアさん‥‥ほらっ!」  
 ズンッ!  
「ああ、くはぁっ! まだ、まだよ、もっと‥‥!」  
 虚勢を張ってるけど限界なのは明らかだ。もう一押し!  
「がまんしなくていい‥‥イけよ! 思いっきり狂え!!」  
 ドスッッ!!  
「あ、あああああああああぁぁぁ――っ!!!!」  
 わざと乱暴な言葉と同時に思いっきり深く貫くと、その瞬間に彼女はものすごい絶叫とともに  
背骨が折れんばかりに仰け反った。同時に蜜壺の締め付けも俺の限界を――  
「っく――ナイアさん――!!」  
 ドビュゥッ!!ドビュッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ‥‥!  
 爆発する俺のモノ。  
「あ、あつっ――そ、そんな、ああ‥‥っくぅぅ――!!!!!」  
 膣内に溢れる刺激に耐えかね、立て続けに絶叫。今度は俺にしがみつき、すごい力で  
抱きしめてくる。下半身も凄まじい力で締め上げられ――  
「っぐぁっ!! ナ、ナイアさん離し――ぎゃあああああ!!!」  
 
 * * * * *  
 
 気が付くと俺は自分のベッドの上にいた。顔の上には心配そうな顔の師匠と、例によって  
表情が読めないキダシュ医師。  
「あれ――なんで先生が――いだだだだだだっっ!!!」  
 起きあがろうとした瞬間、太ももから足首まで死にそうな激痛が走った。見ると脚に  
鱗模様のアザが全面にできて、青紫色のすごいことになっている。‥‥こ、これはっ。  
「むちゃをするでない。見たところ骨に異常はないが、しばらくは歩くのも大変じゃろうな。  
丸一日は寝ておれ」  
 先生は俺に向かってそういうと、今度は師匠に顔を向け、  
「‥‥それにしてもナイア殿,一体なにをやったらこんなことになるですかな‥‥」  
「‥‥ま、まぁ、その、『修行の一環』ってやつで‥‥」  
 師匠は明後日の方を向きながら答える。心なしか顔が赤い。  
 
「修行も結構ですがな、あんまり弟子にむちゃをさせるではありませんぞ。まぁ薬や治療は  
必要なさそうですから、お代は次の仕入れの時にほんのちょっと色をつけといてくだされ。  
では、お大事にな」  
 先生を見送ると、師匠は俺の耳元に顔を近づけ、  
「‥‥ちょっと気合が入り過ぎちゃって‥‥悪かったね。  
でも、あんたが二回も連続でイかせてくれるからよ‥‥ふふ、ほんっとに気持ちよかった。  
ケガが治ったらまたお願いするわ、ラート」  
 甘い声でそう言うと、俺の頬に「ちゅっ」と軽いキス。そして店の方へと戻っていった。  
 
――ま、今ので我慢しとくか。住み込み弟子も、案外悪くない。  
 
 
(終)  
 

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