森の中を二人が歩いている。ただし足の合計は6本。  
 後ろを歩いているのは、荒っぽい男達からすれば「お嬢ちゃん」と侮られそうな少年。  
前を歩くのは、普通の人間ではなく、いわゆるケンタウロス族、その少女だ。  
 この二人が知り合ったのは、つい二日ほど前のこと。  
 
 少年・ロンは、村に張られた防魔結界の効き目が危機的な状況になってきたため、結界の呪力を復活させられる魔法具を求めて魔法都市へ向かっていた。  
 最初は同行者が何人かいたのだが、旅の途中、海沿いの崖にあった道が崩落しており、そこを迂回することになった際、  
代わりの道として踏み込んだ森に強力な呪いが掛かっていたのだ。  
 哀れ、仲間達は森に踏み込んだ途端、呪いを受けてばたばたと倒れてしまった。  
しかし、何故かロンだけは何とも無かった。ロンは必死で倒れた仲間達を森の外まで何とか運び出した。  
 そこを通りがかった行商の馬車に、仲間達を町まで運んでもらうことが出来たのは不幸中の幸いだったと言える。  
町に着き、行商人にそれなりの謝礼を支払った後で仲間を診療所に連れて行った。  
 医師の診断は「かなり強い呪いのため、解呪薬の投与をする上での絶対安静、それでもいつ治るか分からない。」という診断。  
 しかし村の結界はかなり危ない状態、「いつ治るか分からない」病人の回復を待つわけにはいかない。  
仕方が無く、ロンは一人で魔法都市へ行く事を決めたのだ。  
 
 その後、再び件の呪いの森に向かった。  
地図を確認してみる、目的の方向に向かえるのは、崩落した道と、この森、あとは魔物の巣になっている沼地と海  
ロンには、「崖に新たな道が作られるのを待つ時間」や「魔物と戦う手段」は無い。  
魔物の出る海に船は出ないし、「空を飛ぶ」という交通手段があるにはあるが、大金が必要だ。  
もう、目の前の森を通るしかなかった。  
重たい足を踏み出す。ロンは一歩ごとに「父さん母さんごめんなさい、村が魔物に襲われたらそれは落ちた道と僕のせいです。」というような事をつぶやき続けた。  
しかしいくら経っても、ロンが呪いで倒れる事は無かった。不思議ではあったが、通れるのだからありがたいことだ。  
その内、森を出た。出たところでへたり込む。直後、ロンは山賊に襲われた。  
 
 道が無くなっているのだから通る物は居ない、通るものが居ないのなら襲う対象が無い、  
そんなわけで食い詰めていた山賊達は、とても凶悪だった。  
 荷物と所持金を奪われ、続いて命まで奪われそうになった。  
 
 その時、鋭く風を切る音が響いた。  
次の瞬間、長い矢がロンに刃物を突きつけていた山賊の腕を貫いていた。驚く間もなく次の矢が、また、次の矢が。  
 数分も掛からないうちに山賊の一団は完全に無力化されてしまった。  
 
 と、馬の蹄の音が近づいてきた。ロンは通りがかった何らかの戦士が助けてくれたのだと思った。  
馬に乗っているのだから、街道を見回る騎馬兵だろうか?  
 
 しかし、そこに現れたのは、戦士のようではあったが、人間ではなかった。そして馬の姿も無かった。  
4mに及ぶような長い弓を携えた、馬の胴体に人の上半身、御伽噺にしか聞いたことが無かったケンタウロス。  
 そのケンタウロスはロンをひょいと持ち上げると背中に引っ掛けて、走り始めた。  
ロンは、馬具の無いその背に必死でしがみつくしかなかった。周りがどうなっているかなど気にする暇もない。  
ただ、命の恩人(人?馬?人馬?)であるケンタウロスの背の肌にうっすらと滲んだ、健康的な汗の匂いだけが記憶に残った。  
 
それからかなりの距離を移動したように感じた。  
時間もそれなりに経過したはずだったが、ロンの頭の中は混乱しきっており、整理は追いつきそうに無かった。  
 
「もう大丈夫よ。」  
 少女の声がした。それもかなり近くから。  
「足を下ろしても大丈夫だってば。」  
 ロンは目を開けた。見えたのは真っ白い布。声は頭の上のほうから聞こえた。  
「聞ーこーえーてーまーすーかー!?」  
 いきなりの大声に驚いて、声の聞こえる方向に顔を向けた。  
向けた先で、少女と目が合った。しかしこの少女、何故かこちらを背中越しに見下ろしているような…  
…と、ここでケンタウロスという種族の特徴と、今の状態が頭の中で噛み合った。  
 自分はこの少女の背中にしがみ付いているのだ、と。  
 そして、今の自分には、彼女に言わなければならない事があるではないか。  
「あ、ああ、あの!」  
 言葉にならない。落ち着け。ありがとうございます、だ。  
「ありがとうございます!」  
 今度は言えた。…が、返答は、  
「んー、感謝されるのは嬉しいんだけど、まずは背中から降りてくれる?人を乗せるのは初めてで慣れてないから。」  
「え、あっ、すっ、すみません!」  
 足を、片側に、揃えて、降りる。これだけの事をするのにこんなに慌てたのは初めてだった。  
 彼女の背中から降りて、再び感謝の言葉を伝える。  
「まぁ、助けられる技量があるんだったら助けた方が良い、ってのは普通の考えでしょ?」  
 彼女はそう言うと、手に持っていた袋をロンに渡した。  
「はい、これ、あなたの荷物。走り様に掻っ攫っておいたの。」  
「あの、本当に何から何まで…」  
「んー、その様子を見ると、やっぱり魔法使いとか、抗呪具を持ったお金持ちってわけじゃないわね。そもそも抗呪の魔力は感じないし…」  
「…へ?」  
「ん、あなた、森の呪いの中を平気で歩いてたでしょ?そんな事ができるのは呪いに対する防御策を持ってる者だけ、なのよ。」  
「別に…何事も無く通れたけどなぁ。」  
 ここで一つ疑問が浮かぶ。  
「…あれ?何で森を通ったって?」  
 さらにもう一つ疑問が浮かんだ。  
「それに、何であんな街道沿いに?ケンタウロスって、御伽噺にしか聞いたことが無かったのに。」  
「あー、そのー…、うん、悪い人間じゃないみたいだから教えちゃうか。」  
 
「実はあの呪いは人間が近づけないようにするためのもので、何でそんな事をするのかと言えば、あの森の奥にわたし達の村があるの。」  
「ケンタウロスの?」  
「そう。で、私が村の外を散歩していたら、あなたが森の中を歩いていた。変だな、と思って後をつけていたのよ。後は知っての通り。」  
 だったらもう少し早く助けてくれれば良かったのに。とロンは思った。  
「でも、呪いを平気で潜り抜けるような人間がいきなり身包み剥がされちゃうんだもの、まさかと思ったわ。」  
 あ、そういうことか。とロンは思い直した。  
「ところであなたはあんな無茶な事をして何処へ行こうとしてたの?」  
「魔法都市へ、僕の住んでいた村の結界が壊れる寸前だから。結界がないと魔物が村を襲うから。」  
「なるほどね。…ところで、あの森を人間が通るのは、あなたの村の結界が特定の魔物に効果が無いのと同じ事になるんだけど?」  
「あっ、ご、ごめんなさい。」  
 ケンタウロスの少女の口調がやや厳しくなる。  
「これは謝ればすむって問題じゃないの、あなたがあの森を通ったって噂が広がったら沢山の人間が詰め掛けるわ。  
 その中にあなたと同じように呪いを潜り抜ける人間が居たら?その人間が私達の村を見つけてしまったら?」  
「…まずい、事に、なる。」  
「隠れ住んでるんだから、入ってきて欲しくは無いわよね。で、本当ならあなたがどういう人間か、を見極めようと思ってた。」  
 ここで一旦言葉を切った。  
「だけど、いきなり山賊に襲われた。あのまま見捨てていれば簡単だったかなー。」  
 ロンとケンタウロスの少女の視線が合う。  
 
嫌な沈黙が漂い始めた所で  
「…冗談よ、本気にしないでね。後味が悪いのは嫌だしね。」  
 ロンはなんとなく安心して息を吐いた。  
「さてと、しばらくあなたと同行していいかしら?」  
「えっ!?」  
「お目付け役ってことになるわね。本当なら私達の村連れていって、呪いが聞かない原因を分析するところだけど  
 今まで考えられなかった事を分析するわけだから時間がかかる。でも、あなたの村の事があるから、それを済ませるまで待ってあげる。」  
「ででででででも君と一緒に歩いたら余計に目立って…。」  
 ロンが言いかけた途中で強烈な光がケンタウロスを包む。そして、  
「これで大丈夫よ。」  
 目の前に立っていたのは、ロンと同じぐらいの背丈の少女だった。  
「…え?」  
「姿変えの呪、使いっぱなしだと疲れるから、人通りのある所だけにしたいけど。」  
 そう言って彼女は手を差し出した。  
「私、エレク。」  
 それが彼女の名だと気が付くのに少し時間が掛かった。  
「…あ、僕はロン。えーと、よろしく…お手柔らかに、かな?」  
「ふふ、よろしくでいいわよ、ロン。」  
 
 そういうわけで、この二人の旅が始まった。  
 
 
 これでやっと冒頭の部分に至った事になる。  
 エレクがロンを運んだ場所は街道からかなり離れていた事と、エレクが人里に近づきたくない事もあって山を突っ切る形になった。  
 食料は?ロンは山村育ちであり、エレクは豊富な知識と最高の弓術を持っていたためそれほど問題では無かった。  
 
 だが別の問題が発生した。  
 森の中を歩いているときにロンはそれに気付いた、どちらかというと気が付いてしまった。数時間前のことだ。  
 エレクの後ろを歩いていると、必然的に目に入るものがある。  
上から、彼女の束ねて垂らした髪、彼女の使う矢と矢筒、ずいぶん質の良さそうな白い服、  
下半身にあたる馬の背中、彼女の髪とよく似た尻尾、  
 そして、その尻尾が揺れる度、彼女が横に曲がる度に見える、見えてしまう、その部分。  
 それまでは二人になってから日常的な事だったのだが、気がついてみればとんでもないことではないだろうか?  
ロンは自分の顔が赤く熱くなるのを感じた。健康的な少年には少々強すぎる刺激である気もする。  
 気を紛らわそうとしても、一度視線をそらしても、やはりなんとなく見えてしまい、  
そのまま自分の反応した部分が恥ずかしく、なんとなく隠そうと、不自然な前屈みのまま歩くことになった。  
 何度も言おうと思った、一度は「あの。」まで言いかけた。  
しかし彼女に笑顔で「なに?」と聞かれてしまうと、流石にその先は言えなかった。  
 
 いつのまにか日は傾き、魔物の声が聞こえるようになっていた。動き回るよりキャンプをした方が良さそうだった。  
エレクは、腰に下げた鞄から小さな結界を作るための結晶を取り出し、配置した。  
ロンはその中心あたりに、歩く過程で集めた焚き木を置き、火を起こした。これで、よし。  
 
 …よし。どころではなかった。目の前にエレクがいるのだ。しかもこっちを向いて座っている。  
昼間中、いや、ここ数日、ずっと彼女のあの場所を見ていたロンは、目をあわせられるはずもない。  
しかし顔をそらしていても、目に焼きついた記憶は、ロンの雄の部分を刺激し、硬くさせた。  
これはまずいと、さりげなく腕を自分の股の上に置く。しかし問題が解決するわけではない  
「(どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうし)」  
「ロン、顔が赤いけど熱でもあるの?」  
「(!?顔に出てる!?いやそりゃまぁ出ない方がおかしいけど…、えーっとどうしようあああああぁぁぁぁ…)  
ダ、ダイジョウブデス、ナンデモナイデスカラ…(声裏返ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)」  
 と、いつの間にかロンの近くへきていたエレクがロンの額に手を伸ばした、  
エレクの手は剛弓を扱っているはずなのに胼胝一つ無く柔らかかった。  
「熱は…ないわね。」  
「だ、大丈夫だってば!(近づかないでぇぇぇぇぇぇっ)」  
 ロンはそう言って、エレクの手を自分の額から引き剥がした。  
…そういえば手で何かを隠していたような。…あっ。  
 
 遅かった。  
元々ロンを見下ろす形になるエレクの視界には、その区画が含まれていたらしい。  
「…ず、ずいぶん元気ね。何か精の付くものでも食べたの?…あっ…せ、精力リンゴ?さっき木に生ってたし、ね?私も摘んだけど、食べようか、迷ってたの。」  
 真実を言うべきか、嘘を言うべきか、  
 真実を言うのにはとても勇気がいる、勇気に加えて恥ずかしさに耐える心もいる。  
しかし嘘を言えば、この先の道のりの間もずっと下半身を痛くして、擦れないようにしていなければならない。  
一時の恥?関係を壊したら一時じゃ済まない。でも歩いている最中に、不意に刺激を受けたら?洒落にならない。  
そしてその時には、結局告白しなければならないことになる。今言うか、青臭い匂い付きで言うかの違いだ。  
 
「ぁぁぁぁぁぁぁああああああのあのあの…あの、エレク!」  
「うわっ、ど、どうしたのロン、いきなり大声出して、…あ、さっきの、構っちゃいけない事だった…?」  
 ロンは半分パニック、あとの半分は興奮が後押ししている。  
「い、いやそうじゃなくって、むしろ切っ掛けになったから…じゃなくて…エレク!ちょっと聞いて…い…い…かな…(ああ、もう引き返せない)。」  
 大人しげな少年のただならぬ様子に、エレクはやや戸惑った。  
「え…ええ、何か…?」  
 ロンの頭の中はぐちゃぐちゃになっていてまともな話になりそうも無かった。結果的に妙な切り出し方となる。  
「あの…その…あの…えーと、歩いてると…前が見えるよね。」  
「…は?それはまぁ、そうね。普通のことだけど。」  
 次に繋げなくてはならない。  
「…でぇ!その…この間からは、エレクが、僕の前を、歩いてる。」  
「そうだけど…?どうしたの?」  
 さぁ次!  
「僕からは、エレクが、見える。」  
「…?」  
 次!  
「えーと!正しくはエレクの後姿!」  
「…」  
 t!  
「後姿は、その、エレクのお尻が一番近い。(気づいて!)」  
 
「そうね、私は人間と違ってお尻が後ろにあるものね。」  
「え、…ああ、…そうなんだけど…」  
 ここでロンは、エレクに「その」羞恥心が無い事になんとなく気が付いた。  
多少切り出しやすくなった…ような気がする。でも  
「あー、エレクの…、エレクのお尻の…」  
「お尻の?  
「(あれを指す言葉が違わないでくれ!)その、お、オマンコがいつも見えてるんだけど!」  
 ロンの顔は真っ赤だ。  
「おまん…あ、あー、なるほどね。そーかそーか、そういうことね。人間はそういう所を恥ずかしがったり興奮したりするっていうもんね。」  
「…ぜー…はー…。」  
「なにもそんなに苦労しなくてもよかったのに。」  
「…ぜー…ぜー…あ、だって、も、そ、あの、恥ずかしいこと、かな、と思って…すー…はー…。」  
最大級の肩透かしで、山一つを駆け抜ける羽目になったような様子のロン  
「そうねー、私たちって、男の人は普通にオチンチンぶら下げてるし、女の人はお尻丸出しでいるし、  
人間の姿に置き換えれば、交尾の一歩手前の姿なのかもね。…ん?」  
 エレクが何かを思い出した。  
「そういえば、ロン、さっきオチンチンが元気だった…ん、今も元気みたいだけど、ひょっとして私のおまんこのせい?」  
 ロンの泣きそうな顔は、それ以外に何がある、と書いてあるように見えた。  
「それは、なんというか、悪いことしちゃったわね。でも教えてくれて嬉しいわ。」  
 エレクは満面の笑み、ロンは精根使い果たした表情。  
「今度からは布でも垂らさないとね。ロンの健康のためにも、ね。」  
 ロンが、深ーいため息をつき、簡単な夕食をとり、そして寝ることにした。  
 
 二人とも寝たはずだった。特にロンは気疲れを癒すためにしっかり眠るつもりだった。  
夜半ごろ、ロンの体に、柔らかいものがのしかかった。最初は夢の中だと思った。しかし暖かい、吐息を感じて、ロンは飛び起きた。  
エレクが上半身を寝かせて、ロンに抱きついていたのだ。  
「ちょ、ちょっと!エレク!何!?」  
「抱きついてたのよ。ロンって細いね。」  
「抱きついてた、って…」  
 その後に言おうとした言葉を、エレクの言葉が遮った。  
「ねぇロン、ロンは私のおまんこで興奮しちゃってたんだよね。」  
「んが○×ご△□え☆」  
 ロンの方は言葉にならない。エレクが続けた。  
「でもそれって、ちょっと変だと気が付いたの、だって、私のおまんこは馬のおまんこと同じ形なんだよ?」  
「だってそれは…!あー…」  
 言えない。自分の欲情を女性に向かって素直に言える純朴な少年というのは、まずいないだろう。  
「それは?続けて、お願い。」  
 しかし頼まれてしまった。  
「…あー…うー…うー…その…エレクが、…ヵヮィィ、ヵぅ…」  
「…それでも嬉しいけど、もっと大きな声でお願い!」  
「あー!エレクが可愛いから!エレクが素敵だから!見えてたのがそんな子のオマンコだって気が付いたから!」  
「馬鹿!エッチ!…でも嬉しい!ロン!」  
思いっきり抱きしめられた。そして、  
「むぐっ」  
純朴な少年にはちょっと熱烈すぎる、思いを向けた少女からの柔らかな口づけだった。  
 
「…はー…」  
 ロンの頭はふわふわ浮いているような感じだった。まだエレクは抱き付きっぱなしでもある。  
それでも聞かなければならないことがある。  
「ふぁ…その、エレク、何で僕なんかで、あの、嬉しいの?」  
「私の村には、同い年ぐらいの仲間がいないの。それに、ケンタウロスは“何でもできる一族”だから、  
逆に、他の仲間を心配したり、褒めたりっていう考え方があんまりないの。だから、かな。」  
「そうだったのかー…。」  
「うん。」  
 互いの温もりが、段々と染み込んでくる。  
「でも、それぐらいだったらもっと立派な人とか、人間にはたくさんいると思うよ?」  
「たくさんいても、私が初めて出会った人間で、最初に私を気遣ってくれたのはロンだもの。…ん。」  
 再び口づけ、先ほどのは愛情の点火〜爆発によるもの、今度のは確認のためのもの。  
ロンも、それを受け入れた。  
 ただ、次の言葉はやや走りすぎだと思った。  
「ねぇ、ロン、私と交尾しない?」  
 その言葉で、口づけで溢れた唾液を息とともに吹き出してしまった。  
「ちょちょちょちょっとまって!そんないきなりそこまで!」  
「でもロンのオチンチンは今とっても元気じゃない、交尾したいからじゃないの?」  
「うぐ。」  
 確かに、まだ以前の興奮が後を引いている、という程度ではなく、  
現在進行形で感じているエレクの体の柔らかさや匂いの刺激により、いわゆるビンビンな状態だ。  
なんとか処理しなければ眠れないか、眠れたとしても朝には下着が汚れているだろう。  
「ね、交尾してみようよ。」  
 さらに強力な誘惑。  
ロンは、完全に絡めとられる形となった。  
 
「あ、ちょっと待って。」  
 エレクが荷物から水袋を取り出してきた。  
「ごめん、これでお尻を洗ってほしいの、…自分ではかまえないから、あんまりキレイじゃないの…。」  
「ん、じゃ、じゃあそうするよ。…えーと、タオルは…」  
 ロンは荷物のほうへ向かおうとした、が、エレクがその手をつかまえて差し止めた。  
「待って、…あの…、…タオルじゃなくって…、…ロンの、ロンの手で洗ってほしいな。」  
「えっ。」  
「…やっぱり、汚いから嫌だよね。冗談冗談。あはははは…。」  
 しかし、ここでロンのほうが勇気を出した。  
「それじゃあ、手で洗うよ。タオルじゃエレクの大事なところを強くこすり過ぎるかもしれないし、ね。」  
「あっ…、…ロン…。」  
 また抱きしめられそうな気配がしたので、ロンはさっさとエレクの後ろに回った。  
「できるだけやさしく洗うけど、間違って痛くしても蹴っ飛ばさないでね、魔法都市にいけなくなっちゃうから。」  
「…うん、大丈夫。」  
 ロンはまず、エレクの尻尾に水をかけて、髪の毛と同じように洗った。  
そのあと、荷物からタオルを取り出して、濡れた尻尾を縛って纏めた。  
尻尾の下に隠れていた部分が常に見えるようになった。ロンの心臓の音が大きくなる。  
 数日間、ちらちらと見えていた場所だが、これだけ近くで見るのは初めてだ。  
エレクの下半身は、つやのある栗色の毛で覆われている。  
が、その部分だけは毛が無く、黒っぽい、敏感そうな粘膜だった。  
「エレク、水をかけてから…触るからね。」  
 水袋を傾けて、肛門の上辺りから水をかける。エレクは水の冷たさに、びくん、と震えた。  
水で濡れたエレクの肛門に、ロンの手が触れる。またエレクが体を震わせる。家族の女性以外がその場所に触るのは初めてのことだったからだ。  
ロンの指が、柔らかな粘膜をこする。時々、指が自分の中にまで潜りそうになるのを感じた、  
「(止めないと、止めないと!)んっ…、…ロン…。も…もう…。」  
思ったことが、言葉にならない。心のどこかでこのまま続けてほしいと願っているのだろうか。  
「…はぁっ…ん!…ロ、ロン!もう、もうお尻はいいから!」  
 やっと、正気のエレクとしてしゃべることができた。  
 
 ロンの方も、ややぼんやりしていたようだ。  
「…あ、ああ、うん。そうする。」  
 今度の場所の方が重要な場所ということになる。もう一度水をかけて、さっきと同じように、指を添わせた。  
だが、肛門の方はきゅっと引き締まっていたのに対して、こちらの粘膜はロンの指に絡みつき、包み込み、そして吸い付く。  
今までこんなに柔らかい存在に触ったことは無い…いや、自分の舌に残っている、エレクの唇や舌の柔らかさと同じような気がした。  
 ロンは、その場所を洗うという目的を忘れて、ただ弄ぶだけになっていった。  
その柔らかい肉襞に指を滑らすたびに、エレクが大きく悶える事にも気づかないほどに。  
指に、掌に、温かく柔らかい肉が吸い付いてくる。その度、無意識にロンはそこへ顔を近づけていった。  
気がつくと、鼻先にはエレクの膣口があった。そこは来るべきものを迎えるために、温かい粘液が湧き出していた。  
 ロンは何をしているのかもわからずに、そこにキスをした。  
舌が、エレクのごく浅い部分に潜り込む。  
「あはあっ!?」  
 エレクは、突然の事に大きな声を漏らした。自分の中に、自分の体の物でないものが混じるのを感じた。  
 ロンは、その突然の声に驚いて正気に戻った。口の中には、薄めた潮のような味が残った。  
さらにロンが体を離した拍子に、エレクの膣に差し込まれていた指が引き抜かれた。  
「んあんっ!」  
 エレクの体が大きく痙攣し、力が抜けて体を支えきれなくなった膝が、がくっと折れる。  
 
「ご、ごめん!ごめんエレク、だ…大丈夫?」  
 自分が引き起こしたことに責任を感じたロンは、汗まみれでがっくりとうなだれるエレクの前半身に近づいた。  
はあっ、はあっ、と、荒い息遣いが聞こえる。  
「大丈夫?エレク?大丈夫?」  
「はあ、はあ…うん、だいじょぶ。苦しいとかじゃなくって、気持ち良かっただけだから…。」  
 ロンは安心して息を吐く。そこへロンが話しかけた。  
「ねえ…次、…してくれるよね、…ね?」  
「…うん。」  
 ロンは唾を飲み込んだ。それには先ほど口に流れ込んだエレクの愛液も混ざっていたかもしれない。  
二人は少し落ち着くまで、じっとしていた。  
 それから二人で服を脱いだ。エレクの場合、上半身には関係無いのだが、ロンに合わせる形で服を脱ぐことにした。  
シャツの下から現れたエレクの乳房は健康的に上を向く形で、それを見たロンは思わず赤面した。  
 それからエレクは足を崩して、下半身が横たわる形に姿勢を変えた。上半身は崩した足の上に。  
いわゆる馬の寝る姿勢なのだが、首のかわりにあるのが上半身という大きな違いがある。  
「あのね…、こうすれば、…その、なんとか、ロンやお尻の辺りが見えるかな、って。」  
 ロンは、すでにエレクのお尻の前に座っている。  
「本当は、繋がる場所を見てみたいけど…私には無理だもんね。鏡でもあれば…あ、でも、とっても大きい鏡じゃなきゃ無理かぁ…。」  
「ん…、…僕、エレクのために買う!がんばって、いっぱい、大きな鏡を。」  
 技術的な問題で、大きな鏡は高価なのだが、現在のロンにはそれほどの問題には感じなかった。  
「ありがと…、でも、それ、私も手伝うね。」  
 エレクも同じ考えを持ったようだ。  
 
 しばらくの間、二人はまだ恥ずかしさが優っていて、動けないでいた。そんな中で先に口を開いたのはロン。  
「えーと…。」  
 意味を成さない言葉だったが、エレクはすぐに察することができた。  
「うん…そろそろ…。」  
 それに押されて、ロンも動けるようになった。  
「…そうだね、…始めようか。」  
 改めてエレクのお尻を見る。そこは分泌された液で濡れた反射をしていた。  
ロンは、もう一度指でそこに触れ、液を掬い取ったあと、それを反りあがった自分のものに塗りつけた。  
塗りつけた手で、それを握り、エレクの入り口まで導く。先端に粘着するような柔らかい感触を感じた。  
「入る…の…?」  
「…うん。」  
 腰をゆっくりと押し出して、それをエレクの中に突き刺していった。  
そして、それの全体が柔らかく温かい粘膜に包まれた。  
「こ…これ、ロンなんだよね。中に、私の中にいるんだよね。」  
 ロンは横に寝転んで、エレクの下半身の背中に縋り付いた。何かに掴まって耐えていなければ、すぐに果ててしまいそうだったから。  
しかしその忍耐も、体の中に発生した違和感に耐えようとするエレクの身動ぎで終わりを迎えた。  
「あっ!…」  
「んっ!」  
 腰ががくがくと震えて、ロンはエレクの中に精を送り出した。  
エレクの広い膣は、それを零すことなく受け止めた。  
二人とも、本能的な満足や安心を感じていた。そのせいかしばらく動けない。  
 しかし、ロンは同時に大きな後悔も感じていた。思わずエレクに対する謝罪の言葉が口をついて出る。  
「…ごめん!ぜんぜん堪えられなくて、僕だけ…!」  
「ううん、何も悪いことじゃないわ。これが最初の一回だもの。」  
 そう言いつつ、エレクは微妙に残念に思うことがあった。このままではどうしようもない。どうしようかと考え、自分のある技能を使うことを思いついた。  
 
「ねえ、ロン!ちょっとこっちに来て!」  
「う、うん。」  
 ロンが少し体を動かすと、ロンのものはエレクの中から滑り出た。  
そのまま立ち上がると、エレクのそこからロンの先端まで精液が白い色を引いた。  
それを見て、エレクは微かに頬を染めた。  
 ロンは、エレクに言われるがままに、エレクの上半身のそばに座った。  
「あっ…」  
 座ると、自分の股間でまだ熱く存在を主張しているそれが目立ったので手で隠そうとした。  
しかしそれをエレクが差し止めた。エレクの白い手がそれに伸び。やさしく掴まえた。ロンの背筋に冷たさが走る。  
「…、これが入ってたんだね…でも…。」  
 やさしい声を喋ったその口で、まださまざまな液体で濡れるそれに口づけをして、そのまま口の中に咥えこんだ。  
「うあっ!エ、エレク!ちょっ…。」  
 再び精を放とうとする体の欲に耐えるために、手の届く範囲にあった下半身にしなだれかかるエレクの体を抱きしめた。  
さらに続く、柔らかくて、温かくて、擦りあげる。耐え切れない!  
彼女の中に放ったのはこれが二回目だった。  
 連続して二回というのはやはり苦しく、ロンは荒い息をついていた。  
そんな中、エレクは口をロンのものから離した。ロンの腰にまわした腕を解き、そのまま上半身をまっすぐに立てる。  
体を横にしたままなので、上半身の腰を横に曲げている状態だ。  
 手を皿にして、口の中に溜めていた精液をとろり、と吐き出す。  
「ねぇ、これがロンの精だよ。これが私のおなかの中に入ると、ロンと私の赤ちゃんができるの。」  
 混濁しかけていたロンの頭は、自分の子供、という発言によって一気に正常な状態に戻った。  
?、おなかの中?先ほどそこに精を放ったような?  
「さっき、私の中に最初の精を出してくれたよね。」  
「あ…ああ。あ、子供、できるの!?」  
 ロンの中に生じた不思議な期待を否定するように、エレクは首を横に振る。  
「ううん、ちょっとできにくいと思う、ケンタウロスの子宮は馬と同じ場所だから、もっと奥にあるはずだもの…。」  
 ロンは自分には無理なのか、という考えにいたり、悲しくなってきた。  
 
 しかしそれをエレクが救うことになる。  
「大丈夫!あのね、もうちょっとこっちに寄って。」  
 ロンは無言で彼女の求めに応じた。  
「そこに座って。」  
 座る。座ったところで、エレクの手がロンのものへ近づいた。  
さっきと同じ事をされるのかと思って、身構えようとしたロンに、エレクが笑う  
「あ、大丈夫。今度するのは別のことだから。」  
 別のこと?別のことって?  
と、それの前にかざしたエレクの手が不思議な動きをした。いきなり強烈な光。あれ?これには覚えがあるような?  
光のあとにあったのは、ぼんやりとした光の塊、いや光の棒、それはロンのものを包み、そこから延びていた。  
「うわわわっ…なっ何これ!?」  
「うまくいった!…あ、あのね、エンチャントマジックの一種で、拳の部分や武器に宿っている魂を大きくして、  
それが物に触れる、物に当たる場所を大きくする魔法なの、“姿変え”の基礎みたいなものよ。  
これなら、私の奥まで届くから、きっと、ね!」  
 その時、ロンは破顔一笑というものを体験した。  
 
 しかしこれは大きい。太さはほぼ倍、長さの方は三倍以上あるように見える。  
さすがに戸惑うロン、そんなロンをエレクが今までで最も積極的に誘う。  
「ロン、来て!私の奥まで!」  
 先ほどと違って腰だけでは不十分なので全身を使うしかなさそうだ。  
とりあえず、先端の部分を、エレク自身にあてがう、光にもちゃんと感覚があるようで、そこの柔らかさが、ロンの脳裏にまで伝わる。  
さっきはするりと入ったが、今度は入り口の時点で抵抗がある。なかなか中へ入らないそれを腰の力で、押し込んだ。  
「ふっ、うう、ふううっ!」  
 エレクが呻き、喘ぐ。少し大きすぎるのかもしれない。  
少し気になったが、奥に届くまで止めるわけにはいかない。こうしている間にも射精欲がロンを覆い始めているのだから。  
だから、抵抗の強くなったその場所も、強引に貫いた。  
「あっ!痛い!痛いよっ!」  
 エレクは叫び、上半身を反らした。背中越しに見える彼女の瞳には涙が見えた。  
エレクの下半身がひくんひくんと震え、その震えがロンに対するさらなる責めとなる。  
「痛い…痛いよ…、待って…ロン、お願っ…あうっ!!」  
「くっ!」  
 ロンの先端が奥に突き当たった。ここで放てばいい、一瞬そう思った。しかし。  
「ロンんん…うぅ…うっ」  
 自分はまだ、この愛すべき者を頂点に導いていない、それに気がついた。  
「ごめん、少し抜くっ、動くよ!」  
 ずるっ、と粘膜同士が擦れ合う。  
「あうっ!ああっ!」  
 少しずつ引き抜いてゆくと、締めが緩くなる所があった。そこまで行くと、エレクの様子が落ち着いた。  
「こ、ここ、かな。」  
 自分の先端で、その抵抗する部分をやさしく突く。やはりさっきと同じような抵抗を感じた。  
 
 腰を揺らして、その部分を突いて、捏ねて、揉み解す。  
腰を揺らすたびに、膣口にはわずかに隙間ができ、溢れた愛液がそこでずちゅずちゅと音を立て、泡を吹く。  
「恥ずかし…やだぁ…うっ」  
ずちゅ、ずちゅ、ぐりぐり、はあはあ。  
「う…んっ!」  
ぶっちゅ、ぶっちゅ、ずん、ずん、はあはあ。  
「あっ…んうっ…」  
ぐっちゅっ、ぐっちゅっ、ずんっ、ぐりっぐりっ、ずんっ、はあっはあっ。  
「んあぁぁああああっ…」  
 あることに気がつき、強く、突いた。  
ぐちゅり、ぐちゅり、 ず ん っ ! !  
「ふあああっ!!!」  
 もう、その部分を貫いても、エレクは苦痛を感じることはないようだ。  
「あっ…ふっああっ…ロンんっあ…」  
 むしろ、そのことが快感を呼んでいるようでもある。  
「んんーっん、あう、あふ…」  
 自分の耐えもそろそろ限界に来ている、そしてエレクも。それなら、することは、ひとつ。  
 
 先端をキツい場所の手前で止め、体を前進させて、逆に腰を引く。  
それが見えないエレクは、胎内の快感が弱まり、一瞬、気を緩めた。  
 
  ず  う  ん  っ  !  
 
「…!!ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!…あぅ…」  
 
  ・    ・    ・  
 
二人はつながったまま、しばらく意識を失っていた。  
片方は初めての、それも強烈な絶頂を迎えたため、  
もう片方は日に三度も立て続けに強く射精したためである。  
魔法が解けて隙間の大きくなった接合部からは二人から分泌された大量の粘液がこぼれ、二人の体を濡らしていた。  
 
「はぁっっくしょん!」  
 大きなくしゃみで目を覚ました。どちらのものかはわからない。  
体が汗や愛液で濡れて、それが冷えたことにより体温が奪われためのようだった。  
二人は、軽く体を拭いたあと、それでも寒くて、身を寄せ合った。  
互いの体はとても温かかった。強く結びついた二人だから体を預けることに不安を感じることも無い。  
「赤ちゃん、できるかな?」  
「できると、嬉しいな。」  
「ロンがおとうさんだから、やさしい子だね。」  
「エレクがおかあさんだから、可愛くて頭のいい子じゃないかな。」  
「ふふふ。」  
「あはは。」  
 
 旅の先はまだ長い。二人の関係はそれ以上に長そうだ。  
それが楽しみで、幸せで、二人は安心して眠りに落ちていった。  
 

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