アキラくんとの出会いは一週間前。
授業中のクラスのど真ん中に突然彼が現れたことから始った。
真昼間に現れた半透明の男の子に皆はパニック。
そんな中、ちょっぴり皆よりオカルトに興味があった私は
彼に話し掛けていた。
『明日から夏休み』
「君は誰?」
「アキラ」
「どうしてこんな所にいるの?」
「ずっと昔からココにいるよ」
幽霊と普通に会話をする私をみてかパニックも治まった。
その後アキラくんと友達になった割と能天気なクラスメイトたちは
アキラくんに何があったのか?
なぜ幽霊になったのか?
なぜこの学校に残っているのか?
これらの謎を彼の断片的な記憶を頼りに解決していくことになった。
そしてこの一週間で見つけたアキラくんの過去。
あんなことがあったなんて思いもよらなかった。
思いもよらないと言えばこの事件をきっかけに幾つかのカップルが生まれたこともそうか。
柏木くんと楓さん、まひるくんと香澄さん、瑞穂さんと貴子さん、etc,etc…
まぁ、色々あったしね。
そんな風にカップル生み出したアキラくん本人は今日いなくなる。
そのことを考えると私は胸に黒いものが湧き出てくる。
謎なんて解けなければよかった。
そうすればまだアキラくんと一緒にいられるのに、なんて。
私嫌な子だ。
そんな事を考えて夕暮れの教室で落ち込んでいた私はこちらに近づいてくる燐光に気づいた。
「アキラくん」
「や、千佳ちゃん」
「どうしたの」
私は無理やり明るい顔を作って彼に話し掛ける。
今日でお別れなら泣き顔なんて見せたくない。
「うん、もうすぐ会えなくなるな〜、って思ったらここに来てた」
「へー、そうなんだ」
「千佳ちゃんこそどうしたの」
「ああ、うん、私がクラス代表でアキラくんのお見送りをね」
「そっか、うん、嬉しいよ」
ああ、そんな笑顔をしないでほしい。
あんな事を考えていた子にそんな笑顔を。
「そんなに嬉しい」
「うん、千佳ちゃんだからね、最初に話し掛けてくれたのは」
「そうだね、もう一週間も前なんだね」
「うん、もう千佳ちゃんのおかっぱ見れないと思うと寂しいな」
「あははっ、私もアキラくんに会えなくなるのは……」
言いかけて声が詰まった。
動いてよ、アキラくんに怪しまれちゃう。
一生懸命口を動かそうとしても動かない。
嫌だった。
初めて好きになったのに。
もう会えなくなるなんて嫌だった。
そう思った瞬間、口は勝手に動き出した。
「やだよ…」
「千佳ちゃん?」
「っ…私やだよ、アキラくんと会えないなんてやだ」
涙がボロボロ零れ出て声が震える。
気がついたら私はうっすらと光るアキラくんに抱きついていた。
「ひっく……私、アキラくんの事大好き、もう会えないなんて絶対にやだ。
……そう思ったら私ひどいこと考えてた、アキラくんの過去の事分からなければよかったって。
ごめん、ごめんねアキラくん」
「千佳ちゃん」
肩に俯いていた私をアキラくんが静かな声で呼ぶ。
何を言われるのか、嫌われてしまったのかと思っておずおずと顔を上げた私に
アキラくんはキスをした。
目を見開き固まっていた私に顔を離したアキラくんは申し訳なさそうに言った。
「千佳ちゃん、僕も千佳ちゃんの事大好きだよ」
「あ、きら、くん」
「僕も離れたくないけど、そうもいかないから千佳ちゃんに告白したら
千佳ちゃんによけいなことしちゃうかなと思って言えなかった」
「あきらくん」
「だから千佳ちゃんが僕のこと好きって言ってくれて嬉しかった」
「アキラくん」
「千佳ちゃん」
正直に言えば混乱していた。
けどそれ以上にアキラくんが私のことを好きと言ってくれたことが嬉しくて私は目を閉じた。
「「ん…」」
うん、大丈夫、今度は大人の人がするみたいなキスが出来た。
「アキラくん」
「本当にいいの、千佳ちゃん」
既に月光が満ちた教室の中、私は一糸纏わぬ姿で床に寝そべる。
もう会えないなら、アキラくんがいた証が欲しかった。
「うん…………もらって」
「分かった」
覆い被さってくるアキラくんの体。
そしてさっきよりも深いキス。
「ん、んふ」
こんこんと私の歯がアキラくんの舌でノックされ、私はおずおずとそれを通す。
私のとアキラくんのが絡まったり、押し合ったり。
互いの唾液を交換して喉を鳴らして飲み干す。
歯茎をなぞられ奥歯を舐められる。
その度に私は目の奥にバチバチとした光を感じいやらしい気持ちになっていく。
「ん、んァ…ふっ…ンン……あぁ」
ひんやりとした感触を左胸に感じアキラ君に触られているんだなと頭の隅で考える。
手はゆっくりとしたさするだけの動きをしている。
真っ白になっている私の脳はもう少し大きい方がアキラくんも喜んでくれただろうか
とか普段なら顔が真っ赤になるようなことを平気で考え付く。
「ん、ふゅッ、ちゅ、あ、アキラくん」
さすっていた手がしっかりと私の胸を揉みしだき始めたことで私は思わず唇を離してしまった。
そうしたら一瞬、唾液が細長くアキラ君と私を繋いでいるのが見えて
私は本当にえっちな事をしてるんだなと今更ながらに自覚した。
「千佳ちゃん、やっぱりやめ」
私の仕草を嫌悪から来るものからと感じたアキラくんは気遣わしげな顔でやめようと
言おうとしたらしいが私がキスをして黙らせた。
それでも目でいいのと聞いてきたのでやっぱり目でいいよと返した。
そんなやりとりの後、再びアキラくんの手が私の胸に伸びてきた。
アキラくんは両手で私のあまりない胸を持ち上げるような形で揉み上げる。
「ん、くすぐったい」
ぐにぐにと平たくした粘土を伸ばすような感じで形が変わる胸。
くすぐったかったのは最初だけでだんだんとじんじんするような感覚が生まれてきた。
「ん、ふぁ、あ、んん、はぁッ」
変な声が出るのが恥ずかしくて口を覆ったけどアキラくんが胸を舐めはじめたせいで
無駄な事になってしまった。
「ふァッ、ああっ、んぁ、ああん」
アキラくんは舌で私の胸を舐めたりちょっと大きくなった乳首をつっついたりして
私に変な声を出させるのが楽しくて仕方が無いらしい。
「ひゃッ、あぅ」
そんな風に胸に意識が行ってたせいか、股間をさらっと撫でられた瞬間、
一際高い声を出してしまった。
アキラくんはそんな私を見てもさっきみたいにやめようとせず
中指で私のをなぞったり、一指し指を浅く中に挿れてかき回したりする。
その度にする水音が恥ずかしくてアキラくんの顔を見れなくなるんだけど
それ以上にそれで感じる何かが大きくなってくる。
「アッ、あぁっ、あぁんっ、ア、アキラくん、私、わたし、もう!」
頭の中がどんどん白くなっていくのが怖くてしがみついた私を見てアキラくんは
こくんと、頷くと股間の何かを弾いた。
「っぁああ―――――」
真っ白。
一瞬で何にも見えない白い世界に辿り付く。
そこから落ちてきた私はすごい運動をしたみたいに息を荒くした。
「はぁはぁはぁはぁ」
「千佳ちゃん」
「っ、はぁ、あ、あき、らくん」
アキラくんの真剣な表情。
私を守ってくれたあの時の顔。
今ならまだひきかせるって言ってる顔。
それに私はキスを一つかまして言ってやった。
「きて」
「分かった」
やっぱり真剣な顔で頷いたアキラくんは両膝に手をかけ外へ開いていく。
そして、そして、お、おちんちんに手を添えて私のアソコへと近づけていく。
今の今まで恥ずかしくて見てなかったけどアレが入るのかなと思ってしまう。
今更な葛藤をしてる私をよそにアキラくんは私のそこにたどり着いようだ。
股間の入り口に何かが当たってる感触がある。
「千佳ちゃん、いくよ」
「……うん」
ズンって音がした気がした。
「はっ―――――」
いた、痛い、イタイイタイ、痛い、いたいいたいいたい。
なにコレ、なにっ。
頭を埋め尽くすのは苦痛の赤。
下半身が千切れたんじゃないかと思うかのような痛みが私を襲った。
「千佳ちゃん、大丈夫」
アキラくんの心配気な声。
涙でぼやけて見えないけどやっぱり顔も心配そうにしてるんだろうな、と思う。
けどそんな風に聞かれたらこう答えるしかない。
「ん、痛いけど…だいじょぶ」
「動かないほうがいいよね」
動かないでも痛いけどね。
けどそんな風に気遣ってくれるアキラくんが好き。
二人で裸で抱き合ったまま互いの体温に浸る。
しばらくそうしてる内に痛みの方は少し鈍くなってくれたような気がする。
そうすると現金なもので私はアキラくんと一つになったんだなと嬉しく思う。
「一つだね、私たち」
「そうだね」
ずっとこのままでも私は構わなかったけどアキラくんはそうもいかないだろうし。
「アキラくん……動いていいよ」
「えっ、けど」
「もう…時間ないんでしょ」
「……」
そう時間は有限だ。
「分かったよ、千佳ちゃん、けど…」
「けど…?」
「ちょっと乱暴になっちゃうかもしれない」
「……いいよ、忘れられないくらい乱暴にして」
真夜中。
アキラくんと最後にHなことをして服を着込んだ私はぶーたれていた。
「けだもの」
「ご、ごめん」
アキラくんはホントに乱暴だった。
ダメって言ってるのに恥ずかしい形になったり、
お尻を揉んだり、三回もしたり。
そりゃ最後の方はちょっと気持ち良かったけどさ。
「はぁー」
「ち、千佳ちゃん」
うろたえるアキラくんなんてのを最後に見れたし、
ま、いっか。
「いいよ、乱暴にしていいって言ったのは私なんだし」
「あ、うん、ありがとう」
「………………」
「………………」
「時間そろそろ?」
「うん…そろそろかな」
「そっか」
「うん」
それっきり背中合わせに床に座り込んで会話をしなかった。
そして深夜二時。
「千佳ちゃん」
「っ、な、何」
「ありがとう」
ふと背中の気配が消えた。
慌てて振り返ると、そこには窓を背にして、月光に体を透かせた、アキラくんが立っていた。
もう、さっき、私を抱いてくれた時のような。質感はない。
ぼやけていた、アキラくんの背後が、はっきりと見える。
「アキ、アキラ、くん…」
「千佳ちゃん、今日までありがとう、皆にもそう言ってくれるかな」
「う、っ、うん、言うよ、ちゃんと言う」
今にも消えそうなくせにアキラくんはいつも通り穏やかに語る。
私もそれに答えようと思うけど声がつっかえて目じりにどんどん涙がたまってく。
これが最後なのに。
ちゃんと、ちゃんと見ないと。
ぼやけた視界を拭ってアキラくんの顔を!
「あ、あ゛ぎらぐん」
酷い声だけど、辛うじて名前を呼んだ私に、アキラくんは微笑んだ。
「じゃあね、千佳ちゃん、大好きだよ」
そして、光がはじけ。
アキラくんは消えた。
後には何も残らず。
なるほど、正に消失というものだった。
「あぅ、あぁぁ、うう、うぁあああああああああああああああああああん
何でよぉ、何で消えちゃうのよ、好きなのに、こんなに好きなのに、何で、何で消えちゃうのよぉぉぉ」
それを自覚した私は真夜中の学校で私は盛大に泣いた。
アキラくんへ
どうも千佳です。
割と元気にやってます。
自殺なんてしないので、安心してください。
この手紙は、書いたら燃やします。
恥ずかしいし、そうしたら本当に届きそうな気がするので。
クラスの皆も、悲しがってました。
特に浩次とか俊介とか。
…あとは何を書こうかな。
うーん、特にないので、今日はここで終わります。
また書くと思うので、その気があったら、夢にでも立ってください。
それでは。
金釘千佳
PS
後悔なんてしてないし、私は幸せです。