淫獣軍団襲撃から2日目、黒川弥生は戦闘があった正門広場の校庭を歩いていた。
淫獣達の死骸はすっかりかたずけられている、
何体かは医学部および生物工学部などが一緒になって淫獣を解剖、研究をしている。
もちろんその中には上級淫獣のストレングスも入っていた。
弥生は淫獣の血が染み込んだ地面を見ながら2日前の攻防戦を思い出し呟く
「さすがは異世界ね、面白いイベントだったわ。でも、もう少し頑張ってほしかったわね……。
まあいいわ、今回は女子高生戦士達のミッションクリアーと言った所かしらね…クスッ♪」
もっと面白い事が起きないかと思いながら学園内を歩き回っていると、全裸の小柄ないかにもと言う不審人物が校内の様子をうかがっている。
弥生は(もしかしたら、面白い事のなるかも)と思い、ソイツに近付いて行き、話かけた。
「こんな所で何してるの?」
「!?」
相手が弥生に気付いた時、突然「ガバッ」と飛び付かれ、押し倒された。
「キャッ」
「騒グト、殺ス」
「さ…騒いだりしないわ、犯したければ好きなだけ犯していいよ…別に嫌じゃないから」
「フン…オマエノヨウナ年増ニキョウミハナイ、ソレヨリ サキ ト言ウチビメス、ドコニイルカ知ッテルカ」
「えっ…サキって名前の子なんて結構いるわよ、サキ、サキコ、サキエ、サキナ、ミサキ……ぁ!?」
ミサキの名前を出した時、弥生は「ハッ」と気付いた。
(そう言えばコイツ、さっき私の事を年増と言ってたわね)
「アンタが探してるサキって、もしかして仲岡美咲の事なんじゃないの?」
「ナカオカミ…サキ…」
「ナカオカ、ミサキ! アンタの言うチビメスの事よ…ホラ、これ位の小さな女の子でしょう」
弥生はサキの背丈位の所に手を置いた。
「オマエ、サキノ事ヲ知ッテイル…サキドコダ!」
(ヘェ〜異世界でもいるんだ、ロリコン変態ヤローって…での、コイツを使って色々と面白い事が出来るかも……)
「ねぇ、良かったら私がサキちゃんをアンタの所に連れて来てあげてもいいわよ、その代わり…クスクスッ」
そう言って弥生は意味有り気にイタズラっぽく笑う………。
弥生が悪巧みをしている時、唯は空手部の道場で大野房子や他の部員と組手をしていた。
「セェイッリャアァー!」
「フッ…と、昨日から随分と気合が入ってんな三上、私とも進んで組手をやりたがるし…今まであんまり使わなかった
変則蹴りやコンビネーション攻撃まで使い出してさ…あまりの頼もしさに私のアソコがジンジン疼いてるよ、
今夜ちゃんと責任とれよ………なぁ〜んてな♪」
「また下ネタですか…私、真剣に今より少しでも早く強くなりたいんですから真面目にしてください!
せっかく空手部で強さ、コンビネーション、共にNo1の大野先輩と組手して攻撃のバリエーションを増やしたいのに…」
房子は髪を掻き揚げながら「こう言う息抜きも大事なんだけどなぁ〜」と軽く溜め息をつく。
「そんなに焦って強くなる必要があるのか? お前は今でも十分強いぞ、この間の戦いだって淫獣を圧倒してたじゃねえか」
「ですが、アイツ等の大将の牛野郎には私の渾身の一撃が通じませんでした……それ所か私とメイとべスの三人がかりでも
奴は本気を出していない様に見えました。もし、あんな奴があと一・二匹いたら私達は完全にアウトでしたよ……」
唯は俯き、ギュッと握り絞めた拳を見ながら「今の私の力では、あのクラスには届かない…」と悔しそうに呟く。
「三上の気持ちは分かるが、何も一人で背負い込む事はないだろう、基本的に奴等の方が身体能力は上なんだから……
一人でダメなら二人、二人でダメなら四人と言う風にサポートしあえばいいじゃねえか、黛にしてやった様にさ。」
「…それは、そうですが……」
「ま、あまり無理はするなよ…ぉ、フフッ…それじゃ、お前はしばらく休憩してろ、ホレ おチビちゃん達が遊びに来てるぞ」
房子が道場の出入り口を見ながらクイッと顎で指す。
そう言われ唯は出入り口に視線を向けると、そこに幼い兄妹の姿を見てパッと顔を輝かせる。
唯は腕を胸の前で軽く交差して下ろしながら「押忍、失礼します!!」と元気良く一礼して、子供達の所へ駆けて行く。
房子は元気な後輩を見ながら、
「まあ、あの子達の為にも簡単には負けられねぇわな」と微笑む。
サキは唯に手を振りながら駆けて来る。
「ユ〜イちゃ〜ん、遊ぼ!」
「アハッ サキ、ユウよく来たな…アレ? お前達だけか、ミンと橘はどうした?」
「伊織姉ちゃんは弓の練習でミン姉ちゃんは拳法部で武器の使い方を習ってるよ」
「えっ、あのミンが武術を…そっか、どうやらユウを守れなかったのが、よっぽど悔しかったんだな…、
でも、武器なんて教わったからと言って簡単に扱える様になる物なのかな?」
唯の疑問にユウがウケウリで透かさず答える。
「ああ、今日はどの武器が一番扱い易いか、人通り使ってから教えてもらうみたいだよ!
それに拳法部の人が「弱い者が手っ取り早く強くなる方法は武器を持つ事だ」って言ってたよ」
「ミンも橘も、今より強くなりたいと思うのは同じなんだな……アレ?
ユウ お前、今日はパチンコを持ってないんだな…なんでだ」
「伊織姉ちゃんに「しばらく使ったらダメ」って言われて取り上げられちゃったんだ」
「プッ んまぁ、それは仕様がないんじゃない、ありゃ無茶しすぎだよ」
と唯は笑い飛ばす、しばらくそんな談笑を続け、楽しい時間を過していた。
そこに弥生が遠くの方から姿をあらわし、サキを見つける。
(サキちゃん、み〜つけた…さぁて、どうやってあの娘だけ誘い出そうかしら)
そう思いながら近付いて行く。
「さて…と、私はそろそろ練習に戻るよ」
「え〜、ユイちゃんもう少し遊ぼうよ」
「ワガママを言ったらダメだぞサキ……ねぇ 唯姉ちゃん、僕にも空手を教えてよ……。
練習の邪魔はしないから…お願いだよ、ちょっとだけ…」
「う〜ん…まあいいか、基本を幾つか教えてやるよ」
「ヘヘッ、やったぁ!」
「ユウ兄ちゃんまで……もぉ〜、みんな練習ばっかりでつまんな〜い!!」
頬を膨らまして怒るサキを見て弥生は(タイミングいいじゃない、誘い出すなら今ね)とサキに話かける。
「良かったら、お姉ちゃんが遊んであげようか」
「え?…お姉ちゃん、だぁれ?」
「お姉ちゃんの名前は黒川弥生って言うのよ、ヨロシクね」
サキは「ニコッ」と笑いながら「私は仲岡美咲です」と答える、
弥生も笑顔を作りながら「知ってるわよ、学園に子供は目立つもん」と言う。
唯は弥生の名前を聞いて考え込む…。
(黒川弥生……どこかで聞いた名前だな…ああ 思い出した、淫獣に襲われた
女子生徒達の一人だ、合うのは初めてだけど……元気そうね、良かった。)
「ねぇ 三上さん、サキちゃんと散歩に行って来てもいいかな」
「え、そりゃあモチロンだよ、って私の事も知ってるの」
「ええ、黛さんと同じくらい有名よ、それにアンダーソンさんや最近出来た保安部、
幹部の前部長さん達もみんな知ってるわよ、大活躍だったもん」
唯は頭の後を掻きながら
「有名って、なんか照れるな…結局 私じゃ、あの牛野朗には勝てなかったのに大活躍なんて……て
活躍したのは私だけじゃないや、エヘへッ」と顔を真っ赤にして照れる。
(クスッ バカね、それがいいんじゃない…強過ぎるキャラがいるゲームなんて面白くもなんともないわよ)
「ねぇ 弥生姉ちゃん、早く行こうよ」
「そうね 行きましょう、私ね、綺麗なお花が咲いてる場所を知ってるのよ、そこに行こうか?」
「本当! うん、行く」
唯は「サキの事をたのむな、黒川」と軽く手を上げる、
弥生は「ええ、まかせて」と笑顔を作る。
だが、後を向いた一瞬だけその笑顔がイタズラっぽくほくそ笑む物へと変わったは誰も知らなかった。
(うまく行ったわ、さあ これから「幼女強姦イベント」が始まるのね…楽しみだわ、クスクスッ)
弥生はサキを旧校舎の裏側へと連れて行く。
もう使われなくなった旧校舎には普段から人通りは少なく、どの学校にも良く有り勝ちな、
幽霊が出る、などの噂も手伝って不気味な雰囲気が漂っていた。
「弥生姉ちゃん、ここ何だか恐いよぉ…本当にこんな所にお花が咲いているの?」
「ええ、本当よ 心配しなくても大丈夫だって、それにお姉ちゃんが一緒だから恐がらなくてもいいのよ」
(一緒の間はね…クスクスッ)
「あっ あったぁ、あったよ弥生姉ちゃん」
サキは顔を輝かせながら掻けて行く、その後から「ホラ、言ったとおりでしょう」と弥生はサキに近付いて行く。
「うわぁ いっぱい咲いてる、すごく綺麗!」
「そうでしょ、それじゃあこの子達にお水をあげましょう………あ、いっけな〜い、
ジョウロを持ってくるの忘れちゃった、取りに行って来るからチョット待っていてね」
「ぇ……こんな所で一人で待ってるなんてヤダ、私も一緒に行くぅ」
「大丈夫、何も起こらないわよ、お姉ちゃん走って取りに行くから、すぐ帰って来るよ、だから待ってて、ね」
「ぅ…うん…早く帰って来てね、絶対だよ」
弥生は笑顔で「うん、すぐ戻って来るからね」と言って走って取りに行く…振りをする。
旧校舎をグルッと回って、反対側で身を隠しながら様子を見張る。
(クスッ ごめんね、サキちゃん…本当は用意してあるのよ! でも、もうすぐ楽しい事が起こるから許してね。
私があの場を離れると、イベントが発生しちゃう事になってるのよ、あっ、楽しむのは私だったわ…クスクスッ)
サキは先程から嫌な予感がしてならなかった。
この場所に連れて来られてから、ずっと体の隅々にヌメッと纏わり付く様な視線を感じていた、
それは助けを求めて、この学園に向かう途中の山道で感じたものとまったく同じであった。
サキはその時、自分達を見ていた不気味な人影を思い出し、少しでも不安を紛らわそうと、
しゃがみ込んで花を見る事に集中しようとするが、周りが気になって綺麗な花も目に写らなかった。
「やっぱり、私も一緒に行けば良かった……ひとりぼっちはヤダな…」
木の上でサキの様子を眺めていたフールは、「サキ、俺ノモノ…今日カラ飼ウ…」
そう言うとサキの真後へと飛び降り、ぺタッと思いのほか静かに着地する。
だが、今のサキは感覚が敏感になっていた為、そのわずかな物音にも鋭敏に反応し、
何者かの気配に体がビクッと強張った。
(弥生姉ちゃん…ううん、違う…帰って来るのが早すぎるもん……じゃ、誰? まさか、あの時の…)
自分の後ろに立つ者の正体が山道で見た不気味な人影なのだと直感した……。
サキの体は遠くにいる弥生の場所からでも分かる位、恐怖で震え上がっていた。
(どうしよう…どうしよう…)と考える、だが、気持ちが焦るあまり何も思い浮かばない、
体は硬直して動けない、もはやなす術がない絶体絶命の状態だった!
フールの手がゆっくりとサキの肩に掛り、
サキは「振り返りたくない」と言う自分の意思に反して、ゆっくりと顔が後に向いて行く。
そしてついにフールと目が合ってしまった……。
「サキ、ツカマエタ……」
「…ぁ……あぅ………ああ……」
―――― ユウ兄ちゃん…助けて…… ――――
唯がユウに空手を教えている所に房子が私服に着替えて近付いて来た。
「そんじゃ、おっ先!」
「大野先輩、もうあがるんですか」
「ああ これから保安具部に行くんだよ、ガラじゃねぇがこれでも一応、幹部の一人だからな…静香を手伝ってやらないと」
「保安部は出来たばかりだから色々とやる事があるみたいですね…それにしても私服姿の先輩を見るの初めてですよ」
「この間の戦いで制服があっちこっちビリビリのボロボロになっちまったからな……で、どうだ! 今夜、私を抱きたくなったろ」
そう言って房子は片手を腰に置き、少し胸を突き出しながら前屈みになり、
グラビア・アイドルがする様なポーズをとって、おどけて見せた。
「…なんて言うか…先輩って制服以外のスカート、似合いませんね…」
「うるさいよ、ったく………アレ? 美咲はどうした?」
唯は「ああ、サキちゃんなら…」と黒川弥生が来て、一緒に散歩に行った事を説明した。
「な……お前、二人だけで行かせたのか…何やってんだよ、迂闊すぎるぞ!」
「え?…」
「え、じゃねえ! 今までこの学園に淫獣が何匹も侵入して来たのを知ってんだろ! 今は、何時、何処から襲われるか、
分からない状況なんだ、美咲はもちろん、黒川だって戦えないんだぞ! 誰かが付いてりゃ安心て訳じゃねえんだよ、
何でそれが分らなかったんだ……二人にもしもの事があったらどうすんだよ!」
房子は厳しい口調で叱りつける、
唯は自分の浅はかさに、みるみる顔色が変わって行った。
「…ぁ…ス、スミマセン! 私…あの…」
「過ぎた事は仕方ねぇ、二人を探そう……私も手伝うから」
「サキ……」
騒ぎを聞き付け、道場に居た他の部員も「先輩、私達も手伝います」と集まって来る。
「助かる…それじゃあ、何人かは道場に残っていてくれ、戻って来るかもしれないからな、
そして、5.6人は校内を見て回ってくれ、念の為だ! 残りの者は二人一組で外の見回りだ、
その時、警備員に声を掛けて……て、おい、勇介 一人で行くな…ったくもぉ〜、皆それで頼む! 三上、追いかけるぞ」
「は、はい」
房子が部員にテキパキと指示をしている最中、ユウはサキの事が心配で一人で走り出した。
房子と唯は急いでユウを追いかけて行く!
ユウは房子の話を聞いて、急に不安になり、サキを探して走り回る。
「僕はどうしてサキと一緒にいてやらなかったんだ、何だか悪い予感がする…」
一方、ユウを追いかけていた唯と房子は完全にユウの姿を見失っていた。
「どこに行ったんだろ……勇介の奴、こんなに足が早かったのか」
「そう言えば、ミンがこの間の淫獣襲撃の時、捕まえるのに苦労したって言ってました」
「体操選手って結構、足が早かったよな……て事は、小学生の割には相当に早いな勇介の足は、
クソッ 美咲達だけじゃなく、勇介まで探さないと…とにかく、私はこっち、三上はあっちを探してくれ」
「はい、わかりました」
唯と房子は二手に分かれて、ユウ、サキ、弥生を探す事にするのだった。
そのころ、旧校舎の裏では「ビリビリィー」と辺りに布を引き裂く音が響き渡る。
それとほぼ同じに「あうぅっ」とサキが地面に倒れこんだ!
フールによってサキのワンピースが引き裂かれ胸肌があらわとなる。
「グスッ…酷い…よう、お洋服……破くなんて…」
「サキノ体、シロクテ綺麗ダ…モットミセテオクレ…」
「どうして、私の名前……知ってるの? 私、おじさんの事なんて知らない…ィャ…来ないでぇ」
サキは恐怖のあまり体が竦んで思う様に動けない、
フールはサキの下着に手を掛け脱がそうとするが、サキも手を掛け「やめてぇ、パンツ取っちゃヤダァ」と抵抗する。
だが、その抵抗も虚しく下着は剥ぎ取られた。
「ヒック……どうして…乱暴するの? 私、おじさんに何も悪い事してないよ……」
「イマカラ、カワイガッテアゲルヨ、サキ…ヒヒッ」
そう言うとフールのペニスが大きく立ちあがり反り返る、それを見たサキはさらに脅えるのだった。
「おチンチンが大きくなった…どうして? なんかヤダよ……一体、何するの? お願い、もうイジメないで」
「スゴッ フールって奴のアレあんなに大きくなるんだ……サキちゃんのアソコ凄く小さいのに、あんなの入れたら
壊れちゃってガバガバになるわね…ううん、ヘタしたら死んじゃうかも……お気の毒♪ クスッ」
フールはサキに歩み寄る、大きく勃起したペニスがサキの顔の数cmの所まで近付く、
「うわぁ、どうなるんだろ…フェラさせるのかな♪」と弥生は楽しそうに見守る。
だが、そこに小さな男の子が駆け付けて来た。
ユウは今、この状況が良く分からず一瞬、戸惑うのだった。
「…サキ……なんだ、一体…どうなってんだ?」
「ユウ兄ちゃぁん…グスッ、助けて…」
「チッ、ユウカ…イイ所ナノニ…」
「あん…ホントいい所なのにぃ……まあいいわ、大切なかわいい妹を助けられるかな、小さなナイト君♪」
弥生は思い掛けない新たなイベントの発生に、
「面白くなってきたわ、やっぱゲームはこうじゃないと」と心の底から喜んだ。
「アレ? あのお姉ちゃんがいない、どこに行ったんだ…いや、それよりもサキを助けないと…」
ユウは腰に手をやる…だが普段そこに差してあるパチンコは、今は無い事に気付く。
(しまった、パチンコは取り上げられていたんだ…チクショー、こんな時に……それでもやるしかない、
それにコイツ、よく見るとガリガリに痩せてるし、背だってそんなに高くない…コイツだったら僕でも…)
ユウは先手必勝とばかりに「よぉし、いくぞコノヤロー」とバカ正直に叫びながらフールに殴り掛る、
だが、フールは難無く躱しながらユウの足を引っ掛けて転ばせた。
「うわ………っ、クッソォー、コイツ…」
「ヒャハハッ、ドウシタ、ユウ」
「…ユウ兄ちゃん……」
サキの今まで見た事がない程の不安一杯の顔がユウの目に入る。
(そんな顔するなよサキ…僕はそんなに頼りにならないか? 心配するな、どんな事があっても絶対に守ってやるからな)
ユウは立ち上がり、再び「サキから離れろぉ」と叫んで殴りかかる、
しかし、ユウの腕が伸びる前にフールの拳がユウの顔面を「ゴッ」と叩き付けた。
「ブッ…グゥ゛……ううぅ…ぃって〜…」
「ナニモ道具ヲ、モッテイナイオマエ、ヨワイ…ヒャハハハッ」
「ユウ…兄ちゃ…血がいっぱい……出てるよぉ、ウゥ、グスッ」
ユウは地面に蹲り、両手で鼻を押さえる…指の隙間から赤い血がポタポタと流れ落ちた。
(チクショウ…本当にチクショー! 僕は負けられないのに、このままじゃあ……。
!? そうだ…今日、唯姉ちゃんに教わった空手なら……)
――――― えっと、確か ―――――
「いいかユウ、まずは右足を左足の一足分前に出してから、肩幅の位置まで開いて、
そんで脇を絞め、両腕を胸の辺りまで曲げ、アゴを引いて体の筋肉を引き締める、
これを「三戦立ち」と言って、基本練習の多くはこの立ち方でやるんだ」
ユウは鼻血を拭きながら立ち上がり唯に教わった三戦立ちを構える。
―――― これでいいんだよね、唯姉ちゃん ――――
「そう そんな感じ、次は正拳だ! 小指から順に握り締めて行って、親指は人差し指を覆う様に押さえる。
突きは左正拳を前に伸ばして、右正拳を突き出すと同じに左正拳を引く、これが「正拳突き」だ!
わかったか? じゃあ、やってみろ」
―――― いくよ、唯姉ちゃん ――――
ユウは正拳を作り、左手をフールの前にゆっくりと伸ばした。
フールにとってユウのこの行動は、まるで理解が出来なかった。
この異世界では決まった型の格闘技は存在しない、それぞれ自分の能力を生かしたオリジナルの戦い方をする。
たとえあったとしても、それは一子相伝の物である。
「オマエ、ナニガシタイ…」とフールが言うと同時にユウは正拳を突き放つ、
さっきまでの大振と違って、正しい型からの無駄の無い一直線の拳がフールを打ち、その衝撃が体を貫いた。
「グギャ…オオォ……」
「やった! どうだ、まいったか」
だが、ユウはこの時、大きなミスをした。
正拳突きを一発、当てただけで攻撃を止めてしまったのだ、基本的に子供は大人に勝つ事が出来ない……。
運良く突きが入ったからと言って、勝つ可能性がたかが10分の1出て来たに過ぎない、
攻撃を続けていたら勝てたかもしれないのだが止めてしまったため、その時点でユウは勝機を逃してしまったのだ。
「コノ、ガキ…チョウシニノルナヨ」
「え……うわぁっ」
フールは素早く走り込み、ユウを体当たりで押し倒し、馬乗りになった。
「クソッ、離れろよ コイツ」ともがくユウに上から容赦なく拳を叩き付ける。
「グアッ……アァ゛…やめ……ブッ……ゥグッ…」
「ヒャハハハハッ、サッキマデノイセイハドウシタ」
「グスッ イヤ…やめてぇ、ユウ兄ちゃんが……死んじゃう…」
ユウは始め、腕でガードしていたが、その上からでもたたき付けられる、
だんだん体力が奪われていき、ついにはガードをしていた腕がダラリと落ちた……だが、フールはそれでもユウを殴り続けた。
サキはユウを助ける為にフールの腕に飛び付いて、
「お願い、もうやめてぇ〜…何でも言う事聞くから、どんな事でもするから…ユウ兄ちゃんを殴らないでぇ」と哀願する。
そのサキの言葉にフールは「ニタリ」とヤラしく笑う………。
遠くで戦いを見ていた弥生は「あ〜あ! ユウ君、負けちゃった」と楽しそうに言い、さらに様子を見る。
サキはフールに言われ、犬の様に四つん這いの格好をして、やや高めにお尻を突き出した。
「なにアレ、すご〜い! あんなに小さな女の子でも、あんな格好したら、こんなにもエッチに見えるんだ。
それにしてもアイツ、フェラはいいのかしら……生ロリフェラ、期待していたのにな〜…」
フールは大きなペニスをサキの小さな割れ目に宛がい「グッ」と押し付けていく。
「え…なに? ヒグッ……ヤダ、やめて…痛いよぉ、何してるの?」
「クッ…キツクテナカナカ、ハイラナイナ……」
「イ゛ダぁ゛…無理ぃ゛ぃ゛……そこ、オシッコする所だよ…そんなの入いんないよぉ…」
弥生は犯されているサキに興奮して思わず股間に手を延ばし、自慰を始めた。
「…ン…ンン…いいな、サキちゃん……あんな大きいの入れてもらえるなんて…ハァ…アイツなんでガキにしか…
立たないのよ、勿体無い…ァン…小さいだけの……ションベン臭いロリマンコの…フゥッ…どこがいいんだか…」
「ヒャハッ、サキノマンコ…イリグチダケデモ、キモチイイヨ」
「ン゛グゥ…フウ゛ゥ゛……や゛め゛でぇ……死んじゃうよぉ…」
「…めろ…ノヤロゥ……」
ヨロヨロと立ち上がるユウに皆の視線が集まる。
「…ダメだよ、ユウ兄ちゃん…もうやめて……」
「チッ、シツコイヤツダナ」
「ちょっ…ユウ君、何で立つの? 本当に殺されるよ…困るわ、この世界で一人ずつ居ない、
貴重な子供キャラなのに、こんなので死なれたらつまらないじゃない!」
ユウはフラフラとフールに近付いて行く。
その時、唯が三人を探して旧校舎の近くまで来ていた。
「ユウ…サキ…黒川も、どこにいったんだろ…」
ユウは「許さないぞ…サキを泣かしやがって……」と呟きながらフールの目の前まで来て、
腫れた目蓋をなんとか開け「ギュッ」と拳を握り、振りかぶる。
「サキをイジメる奴は僕が許さないぞ!!」と叫ぶと同時に「ゴッ」と鈍い音がした。
フールの拳がユウの顔面に入り「オマエ、サッキカラウルサイ」と言う冷たい言葉がユウの耳に響く……。
ユウの膝が「ガクッ」と折れる、しかしフールはユウの胸倉を掴み上げる、
もはや、徹底的に殺るつもりなのは明白だった。
旧校舎近くにいた唯は、ユウの「サキをイジメる奴は僕が許さないぞ!!」と言う叫びを聞いた。
「!? 今のはユウの声…サキをイジメるって、黒川がか、まさか……確かあっちの方から聞えたな」
唯は妙な胸騒ぎを覚え、声のした方向に急いで駆け出して行った。
「ユウ、サキ、どうし……な…んだよ………コレは…」
「…ュ…ユイちゃぁん……ウァ…アァ〜ン…」
「マタジャマガ、ハイリヤガッタ…」
唯の目の前には信じられない、あってはならない光景が存在していた……。
全裸で犬の様に這い蹲る サキ、…顔を腫らし血を流す ユウ、…そしてユウの胸倉を掴んでいる気味の悪い奴。
この瞬間、唯の全身の血液が一瞬にして沸騰した!
「オマエが…こんな…グウ゛ゥゥ……てぇんめぇぇ…楽に死ねると……思うなよぉぉぉ!!!!!」
唯は叫ぶと同時にフールに向かって突進して行く、
フールは「ビリビリ」と伝わる唯の気迫に思わず兄妹を持つ手を離し、飛び退いた。
唯は一瞬立ち止まり、地面に倒れ、弱々しく呼吸をするユウと全裸で「グスグス」泣きじゃくるサキを見る。
(二人とも、さっきまであんなに元気だったのに…)
唯の目に涙がにじみ溢れ、さらに怒りが込み上がり、頭の中が真っ白になっていった。
今の唯にはもはやフールしか見えてはいなかった……。
「あらら、三上まで来ちゃったよ……でもまあ、タイミングは良かったかな…貴重なキャラを失わずに済んだもの」
弥生は事の成り行きに、ほっと安堵する。
だが、それはあくまで貴重キャラを失わずに済んだと言うものでしかなかった。
弥生は残念そうに立ち上がりながら苦笑する。
「さぁて、そろそろ私も戻らないと疑われるわね。 アイツじゃあ三上には勝てないだろうから、幼女強姦イベントは終了ね」
そう言って弥生は水の入ったジョウロを持って、来た道を戻って行った。
戻って行く途中、弥生は房子とバッタリ出くわす……。
(コイツは確か……3年の大野…落ち付け、普通にしていれば問題無いんだから)
「ん、お前は…黒川だな、美咲はどこだ?」
「はい、サキちゃんならこの先で待っています。 私、ジョウロを忘れていたので取りに行ってたんですよ」
弥生は後ろめたい思いを、平静を装って誤魔化し、何食わぬ顔で歩き出した。
房子も弥生の後を付いて行く。
「ごめんねサキちゃん、待った……キャッ、なによこれ…」
「どうした黒川……な、勇介! 美咲!」
弥生は白々しく驚きながらジョウロを「ガラン」と落とし、房子はユウとサキの有様を見て駆け寄る。
その時、遠くの方で唯が何者かと戦ってる姿が見えた…それで何があったのか理解した。
「勇介…クッ、ひでぇ…ここまでしなくても……黒川、ジョウロの中に水が残ってるだろ、持って来てくれ」
「は、はい」
(なにさ、偉そうに…)
房子はポケットからハンカチを取り出し、ジョウロの水に浸して濡らした。
片手で「ギュッ」と絞り、優しく血を拭き取る、
そして軽く洗い流してから、今度は腫れた部分にソッと押し当てて冷やしてやる。
「…さこ…姉ちゃん……」
「よく頑張ったな、勇介! カッコいいぞぉ、房子姉ちゃん お前に惚れちゃったよ」
「…ぅ…サキ…は……」
「美咲はこれから見るけど、大丈夫だ、ケガはしてないから」
房子はユウを弥生に託し、サキの傍による。
その際、着ているトレーナーを脱いでサキに頭の上からスッポリと被せてやる。
「女の子はいつまでも裸で居たらダメだからな……美咲、変な事されなかったか? 痛い所はないか?」
「変な事…されたよ……股におチンチン…押し付けられて……凄く痛いの……」
サキの言葉を聞いて房子は一瞬「ザワッ」と空気が震える位に震怒するが、何とか押さえ付け、我を保つ。
「美咲……ココに…その……アレが入っちまったのか?」
「ぁ…房子…姉ちゃん…」
房子はサキの股間を手で触り確かめる、穴は拡がってもいなければ、出血もしていなかった。
その間、サキは恥ずかしそうにモジモジしていた。
「良かったぁ……ぁ、ごめんね…お姉ちゃんまで変な事しちゃって」
「ううん、いいの…」
そう言いながらサキは下を向いて顔を赤くする。
つい、その可愛さに房子は(今夜、マジで抱きたいかも…)と思ったが、
そんな場合ではない事に気付き、思いを打ち消すのだった。
そして房子は唯の方を見る、唯の嵐の様な怒涛の攻撃は尽く空を切る……。
頭に血が登り過ぎて実力の半分も出ていないのがよく分かった。
「まったく、アイツは……よし! 待ってな美咲、お前達の落とし前…きっちり付けてきてやるよ」
(恐っ……落とし前って、ヤクザかコイツは…)
弥生の思いを余所に房子は立ち上がる
サキは房子のスカートの裾を引っ張り「房子姉ちゃん、気を付けてね…」と言う。
房子は親指を立てて「ニッ」と笑顔で答え、フールに向かって全速力で駆けて行った。
「オラッ 三上ぃ、熱くなり過ぎなんだよ、お前はぁ!」
「ぇ、大野先輩……いつから来てたんですか?」
房子は牽制でフールに蹴りを放つが素早く避けられる
だが、当ろうが当るまいがこれはどちらでも良かったのだ、房子はフールに警戒しながら唯の隣に立つ。
「そんな事よりも、私が奴の動きを止めてやるから、お前はデカいのを叩き込め、わかったな!」
「…連携ですか…ですが、いきなり言われても、そんなの一回もやった事ありませんよ」
「確かにな…だが、私等ならぶっつけでも出来るさ、今まで積み重ねて来た力を出せばいいんだ、自分を信じろ」
他ならぬ大野先輩の言葉に唯は「コクン」と頷く
「よぉし、仕掛けるぞ」と房子は掛け声を出して走り出し、唯は2テンポほど遅らせて、その後ろに付いて行く。
フールは自慢のスピードを生かし、房子達の脇を擦り抜けようとする
だが、房子はそれに反応し「させるかぁ!」と素早くサイド・ステップを踏んで行く手を遮る、
と同時に自分の空手のテリトリー内にフールを捕らえるのだった。
「チィ…ウットウシイ年増ノメスメ…」
「あ? 年増だぁ〜!」
ユウとサキの怒りに年増呼ばわりされた怒りが加わり、それらをフールにたたき付けた。
みぞおちに貫手、顎に掌底、喉に刀峰(喉輪)そしてローキックを当て、右サイドへ飛び退く、
そこへ唯が間髪を入れず「吹っ飛べぇぇ!」と、飛び後ろ回し蹴りを力の限り叩き込んだ。
「グギャァァァー―」
「よし、完璧!!!」
「出来た…これ以上無い位のタイミングで……」
房子の機敏な連撃と唯の渾身の一撃をまともに食らったフールは、しばらく悶え苦しんでいた。
(コノメスドモ強イ…マトモニヤッタラ勝テナイ……)
そう判断したフールは今回、サキを飼う事は諦め、一旦引き上げる事にした。
「イイカ年増ドモ、ツギコソハカナラズ、サキヲモラウカラナ」
そう言ってフールは気に登り、飛び移りながら学園の塀を越えて逃げて行った。
「誰がテメエにサキをやるか、この変態野郎!」
「そうだ、美咲は私の物なんだよ!」
「…………大野先輩、やっぱそっちの世界のなんですね…」
「おいおい、冗談に決まってるだろ」
「普通この状況でそんな冗談を言う人いませんよ、ユウとサキがあんな目に遭ったのに、何考えてるんですか!」
本気で食ってかかって来る唯に房子は申し訳なさそうな顔で、
「いや…少し空気を和ませようと思ってさ………その…面目ない」と誤る。
「もういいですから、早くユウを保健室に連れて行きましょうよ」そう言いながら唯は、
(この人、どこまで本気で言ってるんだろう? 下ネタさえ言わなければカッコイイのに……)
と思わずにはいられなかった。
弥生は学園の屋上で景色を見ながら一人、考え事をしていた。
ユウを保健室に連れて行って、少ししてから抜け出して来たのだった。
(今日は結構楽しかったわね…でも、サキちゃんの処女喪失を見られなかったのは残念だったわね)
それにしても…と、弥生は目を細め、今日の戦いを思い出す。
(あの大野って奴、以外に強かったわね…もしかしたら三上より強いかもね、
この間の戦いを見た時は三上の方が強いと思っていたけど…これは他の幹部もかなり強いかも、
あんまり保安部側が強くなり過ぎても面白くないのよね、どうしようかしら……)
弥生は(そうだ!)とある事を考え付いた。
(私も保安部に入って強い奴の弱点を見付ければいいんだ! それで邪魔になった奴は淫獣に…クスッ、
まずは幹部連中と2年生レギュラーと1年生エースの弱点ね…色々なイベントで楽しませてあげるわ)
弥生は「クスクス」笑うその目の奥には大きな暗闇が広がっていた。
そして弥生は校内へと消えて行った…。
フールに叩きのめされたユウは保健室で怪我の手当てを受けていた。
「これで良し! もう大丈夫ですよ」と保健婦の梨木可奈子は顔を綻ばせ穏やかに笑う。
「本当ですか! 本当に勇介は大丈夫なんですね!!」
「はい、強く殴られてたせいで腫れてはいますけど、内出血の心配もありませんし、骨にも異常はありませんので
もう安心です……ですが念の為、今晩は保健室で寝てもらいましょう」
梨木先生の言葉に3人は顔を見合わせて「良かったぁ」と安堵の笑みを浮かべる。
その時、慌しく2人の少女が入ってくる、明花と伊織であった。
明花はベッドで寝ているユウを見て駆け寄る。
「ユウ君……酷い…誰がこんな事を…」
「…本当に酷いわ… !? サキちゃんも、服はどうしたの?」
唯は顔を曇らせながら
「…ごめん…ミン、橘……全部…私の所為なんだ…」と言って顔を俯ける。
「……唯…どう言う事なの?」
「………………」
「実は…その……」
唯は自分が知る限りの状況を2人に説明した。
明花と伊織は、ユウが淫獣に殴られただけではなく、サキの犯される寸前だったと言う事に
『特に伊織は大きな』ショックを受けたのだった。
伊織はサキの前で屈み「…サキちゃん……本当…なの…」と声を振るわせる
「ぅ…うん……凄く恐かった…犬みたいな格好もさせられて恥ずかしかった……股に大きくなったおチン…」
「サキちゃん、もういいの……」
そう言って伊織はサキを「ギュッ」と抱き寄せ
「…何も分からない小さな子に……乱暴しようとするなんて…」と体を震わし、
涙を流しながら何処を見るでもない目で視線を床に落としていた。
今、伊織は強姦魔達」に犯されている自分を思い出していた……。
その時の泣き叫んでいる自分の顔にサキの顔が重なる。
「ダメ……そんなのダメよ…サキちゃんには私と同じ思いをしてほしくない………。
私達は……女の子は男のオモチャなんかじゃない…もう、こんな事やめてよ……」
「お…おい、橘…」
「…いけない…伊織、しっかりして!」
「伊織姉ちゃん…どうしたの?」
自分の世界に入ってしまった伊織には皆の声は届いてはいなかった、
伊織の精神は過去の悪夢と言う、見えない鎖にギリギリと縛り上げられて行く。
「…どんなに泣いても…どんなにごめんなさいを言っても…どんなにお願いしても、誰もやめてくれない……、
助けてもくれない…どうして?……ヤダ……恐いのも…痛いのも…苦しいのも…もうヤダよぉ……」
「伊織 大丈夫よ、もうそんな奴いないから…ホラ、私を見て…明花よ、分かる? しっかり見てよぉ、伊織ってばぁ〜!」
「ぁ!?…はぁ…ぁぁ……明…花……私…また…」
「…うん…でも良かった…すぐ気が付いてくれて……」
「……ここ2ヶ月ほど、こんな事なかったのに……毎日の様に見てた、あの時の悪夢さえ見てないのに…」
伊織は思い出した様に「ハッ」と顔を上げ唯、房子、梨木先生を見て一瞬(知られた…)と言う絶望的な表情をし、
3人の視線から逃げる様に「サッ」顔を横に俯ける。
唯が「橘……お前…」と言い掛けた時、
「ポン」と肩を叩かれ、横を見ると房子が無言で「止めてやれ」と顔を左右に振っていた。
「ぁ…その……ミ…ミン、本当にごめんな…今後、こんな事が無い様に気を付けるから許してくれ…」
「ぅ…うん、別に唯だけが悪い訳じゃないから……あんまり自分を責めないでね…」
「ミン……ありがとうな…」
そして房子は「それじゃあ、私等はこれで……行こうか三上!」そう言って出て行こうとする。
その2人にミンは「あの!」と声を掛けた、
房子は後ろを振り返り「安心しろ、橘の事は誰にもいわないから」と真剣な眼差しをしながらも「ニッ」と笑う!
その笑顔にミンも「ホッ」と安堵の笑みを浮かべ、深く頭を下げた。
廊下を歩きながら唯は顔を下に向け考え事をしていた……。
それに気付いた房子は、ぽそっと一言「橘の事を考えているのか?」と言った。
「ぇ……はい…なんか、信じられなくて……だって、強いイメージがあるから、そんなクズ野朗なんかに…」
「弓を持ってりゃ強いだろうが…普段から持ち歩く奴はいねぇよ、弓を持たない橘は普通の女の子だ!」
「だがな…」と房子は付け加える。
「問題はそれだけじゃねぇ…さっき橘は「どんなにお願いしても『誰も』やめてくれない」と言っていた……、
つまり2人以上…3.4人の男達に姦られたんだ……それに時期的な事を考えると……中学に入る前に…か」
「それって小学……そ…そんな、まさか…」
「たぶんその辺りかなって事だ…だってそうだろ、橘は中学の時、弓道で三年連続制覇してるんだ。
どんな事でもそうだが、特に弓道ってのは集中力がいる…もしそんな事があったら、とてもじゃないが……」
「そんな……」
唯は先程から自分達を見上げた時の伊織の顔が忘れられなかった!
他人に知られたくない過去を知られた事による、悲しみと羞恥………、
そして自分がその人にどんな目で見られるのだろう、と言う恐怖が入り交じる、まさしく絶望の表情だった。
『恐いのも…痛いのも…苦しいのも…もうヤダよぉ…』
伊織の言葉が唯の心にいつまでも響く……。
(ミンがかなり頑張っいてるのは、さっきのを見れば分かる…でも橘の心はまだ恐がってる、痛いくて苦しいって助けを求めてる。
だから私も手伝うよ、ミン……メイやべスにも手伝わせるからさ……皆で一緒に助けてやろうぜ! 本当の橘 伊織を…私達で…)
唯はそう自分の心に……いや、魂に堅く誓うのだった。