>act.1 introduction
「……マスター?」
「目が醒めたか。よかった」
私はベッドの上にいた。鉄くずとパイプを組み合わせた土台に干草をのせてシーツを被せただけの質
素なものだ。長年使っているせいか、ところどころに錆びが浮いていた。
マスターが心配そうに私を見詰めている。どうやら私は再起動したところらしい。
私の体に使われている部品の大半が耐用年数の過ぎたものだ。あの戦争が始まる前なら街角で簡単に
手に入れられた部品ばかりだ。残骸を漁る以外に手に入れる方法はない。
「私、また停止して……すみません、すぐにお仕事に戻ります」
「いや、いいんだ。そのまま横になっていなさい」
「でも今日の当番は私ですから……」
「畑は僕が見ておくから。おまえはゆっくり休むといい」
農業プラントが機能不全になって以来、外部区画に作った原始的な畑が食料源になっている。土地が
痩せているせいか実りは良くないけれど、マスターの胃に入る分は確保できた。害虫や病気にならない
ように毎日見回りするのが日課だった。
「……はい。マスターのご指示に従います。でも、あんまり無茶はなさらないでくださいね。
マスターも若くないんですから」
「僕はまだまだ若いぞ、特に下半身はな! ん、どうした?」
「やっぱり起きます! マスターは私が見てないと心配です!」
「お前な、もう少し僕を信用する気にはならないのか? 小さな子供じゃあるまいし」
「マスターの頭の中は子供と変わりません!」
「うーむ、そうきっぱり言われるのもなぁ……ま、お前の好きにすればいいよ。
だが、今日は何もしないでいいからな」
「はい、マスター」
私とマスターは、こうやって長い間生きてきた。
この荒れ果てた地上で。ずっと2人きりで。
(多分続かないw)