「パタパタ」  
 
ふと、夜中に目が覚めた。  
まだ五感は夢の中であるが、目が覚めてしまったという ぼんやりとした意識はある。  
今日は遅くまで寝ていたので、眠りが浅かったのだろうか。  
何とか意識を手放し 寝なおそうとするも、ひねくれた体は覚醒をすでに決定事項としたらしい。  
真っ黒な視界がだんだんと薄い光を捉えると伴に  
機能を取り戻した聴覚が この部屋の日常には無い音を伝えてきた。  
 
音は一定のリズム手絶え間なく 「パタパタ、パタパタ」と、どこからか聞こえてくる。  
遮光カーテンから漏れる薄い光を頼りに 目だけで音を追ってみるも  
どこから聞こえてくるのやら、さっぱり発生源がつかめない。  
気にせずに寝よう。  
再び目を閉じる。  
「パタパタ、パタパタ、パタパタ」  
明日は平日である。  
無駄な足掻きと知りつつも 寝ようとしている自分にとって、これは害でしかない。  
どこから鳴っている物なのか 確認して止めるべきだろうか。  
しかし、行動を起こすという事は 完全に目を覚ますという事だ。  
薄く目を開けた。  
あいまいな視界の中に電灯の紐がある 少し体を起こせば届く距離だ。  
「パタパタ、パタパタ、パタパタ」  
音が止む気配はない。  
 
・・・クソっ。 そう、うぶやきながら身を起こした時だった。  
「きゃっ」と、確かに小さな悲鳴が聞こえた。  
あわてて電灯を点け 辺りを見回すが、いつもの部屋があるだけである。  
先ほどから続いていた音は止んでいた。  
悲鳴を上げた主もいない。  
すぐ側で聞こえたのは確かである。  
女性の声だったように思うのだが、何が発したのだろうか。  
 
水でも飲んで気を落ち付けようと  
ひとまず腰を下ろし、ようやく状況に気づいた。  
寝る前につけたはずのトランクスは足首ずり下がって  
股間の毛がヘソの辺りまで、びっちりと編みこまれ  
すでにそれは毛ではなくて 布の状態にまでなっている。  
「女の仕業には間違いないわな・・・」  
そう、つぶやいて  
これは剃るべきか解くべきかと頭を悩ませる。  
朝までには何とかなるだろうか?  
 

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