「昨夜さまー、こーんにーちわっ!」
びくびくびくっ!っと三回ぐらい戦慄して振り向いたのは頼りになる上級生で名実共に素敵なお姉さま風味の立花昨夜さま。
「ななな、何かなお姉、じゃなかった妹子ちゃん!?」
どうやらあの一件から私こと小野妹子を妙に警戒というか恐れてるっていうか、本望なような不本意なような。
「昨夜さま、今日一緒に帰りませんか?」
ちなみに二人とも生徒会の役員会の帰りだったりする、休みの日はやるな。ていうか会長候補の昨夜さまはともかく何故飼育委員の私が呼び出されたかは全くの謎。
「ごめんなさい、妹子ちゃん。今日は私ストーキ・・・もとい大事な用がある日なの」
一瞬で元の優雅な立ち振る舞いに戻る昨夜さまは流石だと思います。
「・・・って、昨夜さま?今ストーキン」
「妹子ちゃん!」
びくっ!
昨夜さまが放つ裂迫の気に思わず気圧される。流石我が校に並ぶ者なきお姉さま。言うなれば今の気はお姉さま波。
「妹子ちゃん、それ以上はダメよ?」
「解りましたわ昨夜さま。でもまた今度遊んでくださいね」
びくびくっ!と分かりやすく反応する昨夜さん。この人はイマイチ掴み切れない。
しかし良いことを聞いた。あの昨夜さまがストーキングまでするほど焦がれる相手は誰なのだろうか。非常に興味がある。
私は反対方向に歩き去る昨夜さまを気配を殺して追跡しだした。
とは言ったものの、昨夜さまはびっくりするほど速かった。
流石我が校七不思議のひとつであるダッシュお姉さま。
一説では新幹線をブチ抜いた昨夜さまを目撃した生徒も居るとか居ないとか。
そんなこともあってか気配を消しながらだと追いかけるのも非常に大変なわけで。
そしてしばらくすると昨夜さまは立ち止まって電柱に身を隠す。
そんな今時巨人の星じゃないんだからと苦笑しつつも私は店の正面のポリバケツに身を隠した。
中から不二子ちゃんが出たらチャンスなのです。
さて、昨夜さまが様子を伺ってるのは近所でも有名なスーパーさざなみ。
ホークス応援セールをやったりドラゴンズ朝市をやったりとなんだか節操が無い。
最終的にはダイナマイトマンデーやら新台入替なんかやったりしてもはやスーパかどうかも怪しい。
そして昨夜さまは辛抱強く自動ドアを監視し続け、私はそんな昨夜さまを監視し続けるのだった。
しかし、こうまでして逢いたい相手というのは誰なのだろう。
そうこうしている内に自動ドアが開き、二人連れの兄妹らしき人物が姿を現した。
と、昨夜さまにも動きが・・・
す、すっごい目がキラキラしてる。なにやら波乱の予感が。
「待ぁってましたわぁー♪俺介さまぁ☆」
ええっ、嘘なにこの素で幼女化昨夜さま。幼女にでもしない限りこんな状態の昨夜さまはぶっちゃけありえない。
マックスハート
「ちょちょちょっとまちなさぁぁい!!!」
思わず私もバケツから飛び出していた、わたしゃタマか。
さて、俺こと俺田俺介は現在スーパーさざなみに来ている。
結局あの後手甲は反応なし、しーなサンは幼女化したままでハァハァ、じゃなかった困ったことになっている。
とはいえ「悩んでも仕方ないよ」と本人も言っていることだ。
なので俺はリアルひとりでできるもん・・・もといしーなサンの手料理を頂くことにした。
そして敵情視察もかねて現在に至る、というわけである。
「いくら韓流ブームだからって、棚ひとつキムチにすることないよねー」
まぁその大量のキムチの中から『韓流 ヨン様キムチ』を選んだしーなサンは凄いと思う。
「っていうか、ヨン様はないだろヨン様は・・・」
「だってだって、メガネが付くんだよ。どれが当たるかお楽しみなんだよ。やすし師匠のもあるんだよ!」
っていうかもはやヨン様じゃないだろ、それ。っていうかすき焼きにキムチ使ったっけ?
「すき焼きには使わないけど、オマケに惹かれちゃって」
アンタは買い物籠にこっそりお菓子入れる子供ですか。もしくは蛙星人。
「私アフロじゃないよ」
しーなサンは微妙に地の文を読んでる気がする。
「まぁいいや、帰ろうか」
うん!と元気に外に飛び出そうとするしーなサン。引っ張られる俺。
だが何か得体の知れない感覚が自動ドアをくぐろうとする俺を拒んだ。
「!!!!!!!!!」
「ど、どうしたの・・・俺介くん」
「い、いや・・・なんでも無いんだ。行こうか」
この扉をくぐったら何かとんでもないことが起こる。俺の感覚が警鐘を鳴らしている。
エマージェンシー、エマージェンシー、1・エマージェンシー!
途中でデカレンジャーの主題歌になったのは内緒だ。
しかし前に進まなければスーパーからは出られない。俺はソリトンレーダーを持ってないことを悔やんだ。
(だから3の難易度は高かったのか・・・)
恐る恐る店外へ出る、とそこで俺の視界の外から凄まじい衝撃が襲い掛かって、目の前のごみ箱が勢いよく開いた。
って、自分で言っててなんかよくわからないぞ・・・
「げっ。さ、昨夜・・・・」
「酷いですわ俺介さま、昨夜ここで俺介さまが来るのをずぅっと待ってたんですのよ!」
この女の名前は立花 昨夜。俺のいっこ下。中学の後輩。
懸命な読者諸兄なら気づいているとは思うが、俺はコイツに付きまとわれている。
「っと、あれ、俺介さま?この子は誰ですの?昨夜情報では俺介さまには弟さんしかいらっしゃらないはずですわ?」
才色兼備、容姿端麗、いいとこのお嬢。ここまでの好条件を積まれて俺がなびかない理由はぶっちゃけしーなサンへの恋心だけじゃない。
・・・怖いんだよコイツは、色々と。
「えっと、なら親戚さんか何かでして?昨夜にも紹介してほしいですわぁ」
しゃがみこんでしーなサンを見つめる昨夜、さっそく目が怖い。
ちゅうか俺の思い込みじゃなけりゃ多分奴はしーなサンに目で訴えてる
オレスケサマヲトッタラ×シマスワヨ
「ひっ・・・俺介くぅん・・・」
あの飄々としたしーなサンが明らかに怯えている。
と、そこに放置したままのゴミ箱の中の人が怒鳴りつけてくる。
「ちょちょちょと、アンタ昨夜さまの何なのよぅ!!!」
「っていうかお前は誰だ」
「えっ、妹子ちゃんなんでココに!?」
「た、たすかったぁ・・・アレ、妹子ちゃん!」
「やや、しーな先パイじゃないですか。そんなどっかで見たようなカッコでどうしたんですか?」
なんかもう収拾が付かない、整理しなきゃ。
昨夜のツレとおぼしき微ロリが俺のことを逆恨みしてて、昨夜はその微ロリがこの場に現れたのが予測不能で焦ってる。
微ロリは10歳しーなサンを一発で看破してしーなサンは微ロリと顔見知り。
で、昨夜は俺と浅からぬ関係であろうしーなサンの存在を真っ先に警戒、このままだとしーなサンが昨夜の雰囲気に飲まれる。
と、こんな感じか。
「やいやい、私の昨夜さまを取る気だなこの偽チャウシンチー!」
偽チャウシンチーって、俺そんなに中国っぽい顔してるかよ・・・
「そっちこそ、妹子って言ったな。しーなサンとどういう関係だ」
そう、それが気になるのだ。なぜコイツは幼女化したしーなサンの正体を看破するに至ったか。
「へへーんだ、教えないわよこのカンフーハッスル!」
はて、今のは罵られたのだろうか。
「畜生この微ロリめ、昨夜をココに連れてきたのもお前の策略か、なんかお前昨夜の手下っぽいし」
「失礼ね、どっちかというと立場は上なんだからぁ、それに昨夜さまをたぶらかしてるのはそっちでしょ!」
「知らん、くれてやらぁこんな危険人物!」
「・・・えっ?じゃあそれでOKじゃありませんか」
「・・・そういやそうだな。よし、昨夜帰っていいぞ?」
「よくなーい!!!昨夜俺介さまに可愛がってもらうのぉ!!!」
解決したかに見えた議論を昨夜が蒸し返す。
チッ、一気に帰すチャンスだったのに。
「妹子ちゃん!!」
裂迫の気を放つ昨夜、こういうところは素直に凄いと思う。
「・・・やっちゃいなさい、あとで一緒に遊んでもいいから」
ナニをヤっちゃう気なんだろう。微ロリ一人と思うが、忘れちゃいけない。
俺は喧嘩なら幼女化したしーなサンにも軽々負ける実力の持ち主なのだ。
「むぅ、不本意だけど仕方ないですね。昨夜さまを取られたくないけど、昨夜さまに嫌われるのも勘弁ですわ」
と、袖口から何かのチェーンを出してくるくると回す妹子。
「さっ・・・お覚悟ですよ」
と、チェーンを唸らせ俺を狙う。俺は身構えた。
「・・・見え見えなんだよっ!!!」
俺は紙一重でチェーンを手甲で受け止めた、なんていうか俺スゲー。
「・・・って、これは!?」
「直撃しなくてこかったですねぇ。でもこっからでも多分効果ありますわ!」
「や、やめろ、それは勘弁してくれぇ!!!」
絡みついたチェーンは、親父の作品である『地獄ロザリオ』
効果は、若返りだ。
「ふふふ、さぞ可愛いボウヤになるでしょうねぇ・・・エネルギー、全・開ッ!!!」
迸る黄金の奔流、まともに食らったらヤバいことに・・・・・ッ!!
「・・・なーんてね」
「な、何故ですの!確かに昨夜さまには効果がッ!!」
「残念だけどソレ、ウチの親父の作品なんだわ。俺そういうの全然信じてなかったけど」
一呼吸。今ならわかる、手甲が再びその命を宿していることを!
「でも、この手甲はウチのじいさんの作品だから、多分大丈夫と思ったんだよ!!!」
見栄を切ってやった、俺かっこいい、俺蝶スゲー。
「俺介くん、なんか微妙に自信なさそうな言い回しだよ」
しーなサンが「決まらないなぁこのヒトは」という目で俺を見ている。
やめて見ないでていうか忘れて。
「さーて、形勢逆転ですよ小さなレディ。どーしてくれようか」
自然に笑みがこぼれる。そうだ、コレが俺だよ。
「小さいのがいいか、大きいのがいいか、読者諸兄に選ばせてやるよ」
「私じゃないんですか!こういう時って基本的にやられたほうに選択権があると思うですけど!」
「俺はマンネリが嫌いなの!」
「まぁその点に関しては同感ですけど」
「さぁ、次はお楽しみのえっちなシーンだよ!私も加われるのかな、楽しみだね!」
しーなサンが綺麗に〆た。やっぱすげぇよしーなサン。
脂汗が流れる、流れまくる。今この数分だけで気持ち3キロは痩せた。ごめん、言い過ぎた。
「どうしたの、俺田くん、顔色が悪いよ?」
「さ、さあ、やるなら早くやりなさいよぉ!」
・・・結果は4対2、成長させることに大決定。
しかし、初撃は偶然受け止めたとは言え、この微ロリの戦闘力は正直高い、動きを見れば判る。
ここで成長でもさせてみろ、絶対に敵わない、それが、俺田俺介クオリティ。
さあ、考えろ。奴がこの事に勘づく前に・・・
「俺介さま、昨夜の出る幕はあるんですの?」
と、そこに今回のジョーカーである昨夜。
イヤ、確かにお前も加わればエロいよな。
・・・そうか、閃いたぞ!
俺は鎖を挟んで対峙していた微ロリとの間合いを一気に詰める。
「・・・おい、お前」
「妹子ですわ、なんですの?」
「取引をしないか?」
「さあ、こころのじゅんびはできたかこのめすぶため(棒読み)」
「くっ、どうにでもなさったらいいですわ(棒読み)」
「くっくっく、かくごしろ。ばくねつかんのんさまふぃんがーだ(棒r)」
「きゃあああああああ(r)」
見事にセクシー風味になる微ロリこと妹子。読者諸兄、俺は約束を果たしました!
ニヤリとする昨夜、が。
「昨夜」
「何ですの俺介さま?」
「次にお前は『チャンスよ妹子ちゃん、身体能力なら貴方が上だわ!』と言う」
「チャンスよ妹子ちゃん、身体能力なら貴方が上だわ!・・・はっ!?」
「掛かったな?」
相手が勝ち誇った時、すでにそいつは敗北している。
俺にも誇り高き血統は流れていました。
「へっ、マヌケだぜ昨夜!妹子、後は頼んだぜ」
「俺介さん?」
「なんだよ」
「頼まれたのはいいですけど、イかせちゃっても構いませんわよね?」
「頼もしいな、じゃっ!」
「じゃっ、じゃないよ俺田くん。私も参加したかったんだよ、だよ?」
しーなサンの目の色が変わった。
「ヒイッ、斧は勘弁!」
「ありゃ、あのゲームにヒントを得たんだけど、ちょっと効きすぎたみたいだね」
「冗談は勘弁してください、恐怖で喉をカッ切るところでした」
「それはともかく、早くあの二人を移動させないと。しょっぴかれちゃうよ?」
確かに、このまま放っておいたら路上でも始めそうな勢いだ。
まあそれはそれで。
「って、警察沙汰はマズいな、あの人が来る」
と、思案中の俺の視界に妙にきらびやかな電飾が。
「えっと、『ホテル はちゃめちゃ貴族』だって」
「このパロは東海圏限定だな」
「とにかくだよ、一旦あそこにブチ込むよ」
「よしきた!」
ブチ込むとか言い回しが不穏だが仕方ない。
「じゃあ戻すよ」
「うん、これなら二人ぐらいまとめて抱えちゃうよ!」
「いかん、始まるぞっ」
「・・・昨夜『ちゃん』、エロの貯蔵は充分かしら?」
「おらっ、続きはッ」
「ご休憩で、だよっ♪」
ポイっ。って、ココの支払い、誰が持つんだ?
「・・・既に準備オッケみたいだな」
既に昨夜は妹子の力でちんちくりんと化していた
「ううっ、この姿だけは見られたくなかったですの・・・」
「わぁっ、この娘が昨夜ちゃん!?」
「嘗めないで欲しいですのっ!」
小さくても敵意丸だし。逞しいけど可愛いぞ。
「お持ちK」
「ちょっとストップ、それ以上は勘弁、怖いから」
しかし、しーなサンはミニ昨夜に興味しんしん丸だ。
「んーっ、味見しちゃってもいい?」
「しーな先パイの頼みじゃ仕方ないですね」
「じゃあ遠慮なくっ。ぺろっ♪」
「ひぁっ、やめるですのぉ・・・」
いつの間にか三人全裸である、エロいけど蚊帳の外。
昨夜に巧みに舌を這わすしーなサン。忘れがちだがこの人はかなりエロい。
「ううう、ライバルにされるのは屈辱ですのぉ・・・んんんっ」
「昨夜ちゃんってすっごく感じやすいんだねぇ。しーなサンびっくりだなぁ♪」
「ひゃぁ、ちが、違ううううっ・・・んああっ・・・お姉さまぁ・・・しーながいじめますのぉ、たすけてほしいですの」
「はい了解、しーな先パイはそこの寂しいのの相手してあげてください」
「俺田くんお待たせぇ」
やった、俺の時代が来た。ていうか久々すぎ、嬉しい。
「ああっ、やっぱり俺介さま盗っちゃダメですのぉ」
「言い忘れたけど昨夜ちゃん。お姉さまの責めはもっとエロいわよぉ?」
「ひっ、いゃっ、あああん、切ないですのぉ・・・」
「さっ、俺田くん。こっちも始めようか?」