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「このように下着からも経過はだいたいわかりますが、一応こちらの検査もしておきましょう」  
 再度、舞衣に注目が集まる。舞衣を取り囲んだ人間たちの手には、手のひら二つ分ほど  
のフィルム状の物体が握られていた。  
(あれは……また)  
 ここに来た最初の日の記憶がよみがえる。全員が持っているということは、彼らが一人  
一人同じ行為を繰り返すということか。  
(やだな……)  
 いまさらではあるが、気が重くなる。見られるだけではなく、学生らの手がフィルム越しとは  
いえ、舞衣に触れることになるのだ。  
「時間ですので体温を記録します。……では、足を曲げて大きく開けて」  
 四本の体温計が外された。  
(大きくって、そんなの……できない……)  
 舞衣はいわれたとおり足を動かしたが、ためらいがあったため、とても大きく開いたとは  
いえない状態である。  
(これで……いいよね……?)  
「もう少し大きく」  
「あっ」  
 掛け声とともに、足首とひざを左右からつかまれ、強引に両足を大きく開かされた。強い力  
で、とても抗えない。  
(や、やだぁ)  
 これまで一筋の線のようだった舞衣の陰裂も、足の動きに従って左右に開かれ、その穢れ  
のない花園があきらかにされた。閉じることのないよう、両足はつかまれたまま固定されている。  
 コク、と誰かがつばを飲み込んだような音が聞こえた。  
「腹部の形態、膨隆、腫瘤、手術創、陰毛の生え方、範囲、量などをチェックします。外陰部、  
大陰唇・小陰唇、処女膜、クリトリス、尿道口、肛門の皮膚・粘膜の色・形態、痣、潰瘍、尿道  
ポリープなどに注意を払わなくてはいけません」  
 彼の言葉に従って、舞衣の陰部をチェックするべく学生たちが身を乗り出す。村松医師は  
舞衣の股間を適当にいじりながら、なお解説を続けた。  
 
 剥き出しの下半身に視線が集中するのを感じる。舞衣はショックで何も考えられなくなってきた。  
「当てるのはこの位置です」  
 つまびらかにされた舞衣の性器に、無造作にフィルムが置かれる。  
「強く押し当てる必要はありませんが、表面全体をよくなぞってください」  
「ん、ん、んんー」  
 説明が加わっているが、それ以外は特に変わることなく、村松医師の指は淡々と舞衣の  
秘陰を往復した。いくぶん慣れたとはいえ、徐々に舞衣の呼吸も乱れていく。  
「続けて検査しても病状の参考にはなりませんが、順にやってみてください」  
 学生らはわずかに躊躇したが、小声で話しあって「じゃあ俺から」と、一人の男子学生が  
舞衣の前に進み出た。  
(そんな近くで見ないでよう)  
 舞衣の願いも虚しく、フィルムが押し当てられていく。村松医師よりも強く、執拗な指が舞衣  
の体を襲った。  
(ん、んぁ、あー)  
 上からなぞられているだけとはいえ、少女のもっとも大事な部分を乱雑にいじりまわされて  
いるのだ。たまらず、あうやく声を大きくするところだった。  
 なんとか悲鳴を押さえ込んだが、舞衣の最も隠されるべき肉口に押し入った指が撤退する  
ことはなく、なおも執着しフィルムをこすりつけていく。  
 せめてもの抵抗で、ふーっと鼻息を荒くするが、それは学生の苛虐心をあおるものにしか  
ならなかったようだ。学生の指がいっそう深くフィルムを押し込もうと動く。  
 しかし、様子をうかがっていた村松医師の「そんなに強くこする必要はありませんよ」という  
言葉で、その学生は赤面して舞衣から離れていった。  
 ほっとするまもなく、続いて次の学生が同じ作業を繰り返す。  
(あ、やだ、左手が……)  
 彼らは、単に舞衣をなぞるだけではなく、添えるもう片方の手で、舞衣の太ももだとか、そう  
いったところをなでていくのである。くすぐったさに舞衣が顔をゆがめるのを見て、その反応を  
楽しんでいるのだろう。  
 最後に、舞衣を捕われた小動物のように見ている女子学生が舞衣の体に触れた。  
(この人、なんか怖い……)  
 彼女の手が舞衣に届いた瞬間、体がびくりと震えた。意図したものではなかったが、それを  
見た女子学生は舞衣の緊張を解くようにやさしく作業を始めたのだった。  
 
(あれ……なんだ)  
 繊細な手つきで、舞衣にまったく苦痛を与えない。空いた手で体をなでることもしていない。  
 見かけで人を判断したことを反省し、心の中で彼女に謝ろうと決心したときだった。  
 彼女は、他の学生や看護師、村松医師の注意――舞衣自身の警戒すらそれた一瞬を  
狙って、舞衣の陰裂の中にあるもっとも敏感な突起を器用に探り当て、フィルムごとぎゅっと  
つまんでつぶしたのだ。  
「いたいっ!」  
 我慢できるはずもなく舞衣は叫んだ。何事かとみな舞衣に注目するが、何が起こったのか  
はよくわからないようだ。  
 じっとことの成り行きを見張っていてもわかりにくい小さな行動だったのだ。女子学生が少し  
強く刺激しすぎたものとくらいが想像の及ぶ限界だったのだろう。  
(このひと、いま、わざと……!)  
 もちろん、当事者の一方の舞衣には何が起きたかよくわかっている。事故でも過失でもなく、  
彼女は故意に舞衣の体をもてあそんだのだ。そして、意図どおり苦痛に叫ぶ舞衣を見て、  
一瞬だけ満足した笑みを浮かべるのを舞衣は見逃さなかった。  
 彼女は、村松医師の「気をつけるように」という注意を受けて、舞衣にも「すみません。  
ごめんね」と素直に謝った。その顔も心底申し訳なさそうにしている。  
 だが舞衣には、彼女の顔はにやけた口元を必死に隠そうとしている男子学生よりもはるか  
に恐ろしく見えた。  
 彼女は、これから何をしてくる気だろう。舞衣に抵抗する手段はなく、ただ恐々としている  
ほかないのか。  
 しかし、舞衣は彼女のことだけを心配しているわけにはいかなくなっていた。  
 彼女も恐ろしかったが、それよりも切迫した試練が舞衣を襲おうとしていたのである。避け  
がたい羞恥の事態だ。  
(あ……なんで。急におしっこしたくなってきた……)  
 膣と肛門に体温計を入れられたためか、学生らに股間はなぶられたせいか、舞衣の中で  
尿意が急速に強まってきたのだ。といっても、まったく我慢できないほど切羽詰まっている  
わけではなかったため、彼女のいたずらの拍子に漏らすことは幸いにして避けられた。  
 ただ、まだしばらくは大丈夫だろうが、いつまでも我慢していられるかはわからない。  
(だめ、だめ)  
 このままじっと我慢していたとしても、いつかは限界が訪れる。  
 
 そして、多くの人間の前で失態を犯すことになってしまう。たった一人の、それも同姓の  
看護師に見られるのとはわけが違う。この場にいる、男性を含めた一〇人もの人間の眼前  
で、恥ずかしい水を放出しなければいけないのだ。  
 しかし、どうしたらいいというのだろう。もうずいぶんと長い時間がたったように思うが、冷静  
に考えればまだ舞衣の治療は始まったばかりのはずだ。これから何をするのかよく知らない  
が、どう考えても終わりまで耐えられるはずはない。  
 どうしようもなく舞衣が苦悶していると、河村看護師がそっと舞衣の耳に口を寄せ、ささやいた。  
「おしっこしたいの?」  
 様子をうかがっていたのだろうか。やさしく声をかけてくれた。救われた気持ちで、舞衣は  
小さくうなずく。  
 なんとかして、とかすかな希望をかける。  
「先生」  
 しかし、河村看護師の言葉を受けて、舞衣に向き直った村松医師の口から出たのは、舞衣  
の期待をまるで裏切るものだった。  
「尿意が切迫しているようですが、これは体温計の刺激によるものでしょう。今検尿はほとんど  
必要ありませんが、尿を排出させましょう」  
 そういって用意されたのは、初日にも見たガラス製の尿瓶だった。ここにしろということらしい。  
 男子学生の一人が口元に手をあてて声を出さずに笑った。  
「そんな、やだっ、みんな見てるのにっ」  
 あまりの展開に、舞衣は涙目になって拒絶の悲鳴をあげる。  
 手足は押さえつけられているため動かせないが、顔を左右に振っていやいやをする。  
「もういやだ、こんなの……」  
 治療の経過を記録するというのはまだわかる。医者になるという学生たちに観察されるのも  
なんとか我慢する。  
 でも、見られながらおしっこさせられるなんて絶対にいやだ。  
 手足を動かそうともがくと、ひるんだのか押さえていた人間が離れたため、足を閉じて体を  
隠す。  
「やだ、やだ」  
 泣きじゃくりながら同じ言葉を繰り返す舞衣の顔に触れる手があった。  
 両側からほほを強く押さえてくる。  
「三沢舞衣さん」  
 
 小さな声だが、舞衣を黙らせる強制力があった。  
「わがままいうんじゃないの」  
 ずっと手を押さえてきた山内看護師だった。舞衣の頭の上から覗き込んで、(舞衣から  
見ると)上下逆さまの顔を近づけている。  
 有無をいわせない強い口調で、とても怖い顔をしていた。  
「あなたは見られるのが仕事なのよ。それをわがままいって、いやだいやだって、そんなこと  
いちいち聞いていたら先に進めないじゃない。わかっているの? あなたは泣いてわめいて  
いればいいでしょうけど、そんなことされるとすごく迷惑なの。あなた一人のために時間が  
無駄になるのよ」  
 小さな声のままで、舞衣以外には近くにいる河村看護師くらいしか聞き取れなかっただろうが、  
そんなことは舞衣にはどうでもよかった。  
 舞衣は、こうやって大人から叱責された経験が少ない。成績もよく、素行に問題があるわけ  
でもない舞衣は、誉められこそすれ叱られることなどめったになかった。  
 だからこそ、こうして責められるのはこたえる。  
「……わがまま……」  
「ちがうの? あなたはみんなに見てもらわないといけないのに、見られるのがいやだって、  
騒いだのよ。わがまま以外のなんだっていうの」  
「そんな。わたしは」  
「わたしは、てなに? あなたが自分でいったいなにをするの? なにかできるの? あなた  
はしてもらわないといけない立場でしょう? そうでしょう?」  
 舞衣の言葉をさえぎり、畳み掛けるように質問をぶつけ舞衣を黙らせる。  
 だが、舞衣も叱られて泣くことしかできない子供ではない。社会と呼ぶにはあまりに小さな  
世界だったかもしれないが、子供とはいえ、いや子供だったからこそ理不尽な体験もたくさん  
してきたし、それで成長もした。  
 そのまま黙っていられずせいいっぱいの反論を口にする。  
「……でも。でも、おしっこするときくらい、見えないようにしてくれても……」  
 しかし、舞衣の主張など何一つ根拠のないもののように、山内看護師は鼻で笑った。  
「なにそれ? おしっこするのが見られたくないって、じゃあなんならいいの? あれはいや、  
これはいいって、誰が決めるの? あなたが決めるんでしょう? それって、やっぱりあなた  
のわがままじゃない。……本当に。しょうがない子ね。こんなことで大騒ぎして。いい? これ  
はあなたのお仕事なの。わかった?」  
「…………」  
「黙ってたらわからないでしょ。こんな風にわがままはいって実習を中断させる、謝ることも  
できない、そんなのだったら、お仕事やめてもらったほうがいいんだけど。そっちのほうが  
いい? 別に無理して続けてもらわなくてもいいわ」  
「え……それって」  
 それはできない。それだけはできない。  
 舞衣の胸中を知ってか知らずか、山内看護師はより具体的な言い方で、舞衣の抱える  
事情をつく。  
「もちろん、今日までの入院費を払ってもらわないといけないけど。個室だからちょっと高く  
なるかもね」  
「あ……あの、……ごめんなさい」  
「なに? なんで謝るの?」  
「……わがままいって、実習を中断させてしまってごめんなさい……」  
「……わたしに謝っても仕方ないでしょう? みんなに謝らないと」  
 そういって、山内看護師は近づけていた顔を離した。それまでは彼女の顔にさえぎられて  
いたが、再び、学生らの姿が舞衣の視界に戻る。  
 彼らはみな心配しているような、困ったような顔をして、舞衣を見守っていた。彼らは舞衣  
と山内看護師の会話はあまり聞き取れていなかったようだが、なんとなく流れはつかんで  
いたようで、舞衣が説得され実習を続ける気になったと考えているらしい。  
「あ……あの……」  
 いいよどむ舞衣に山内看護師が耳打ちする。  
「わがままをいって、大事な勉強を中断させてごめんなさい。もう恥ずかしからないで素直に  
いうことを聞きますから、どうか実習を続けてください。わたしの体をしっかり観察して、医療  
のために役立たせてください。よ」  
「……そんな」  
 万事に控えめに生きてきた舞衣でなくても、普通の少女がためらいなくいえるセリフではない。  
 それでも、何とかいおうと必死になる。  
「わ、わたし、いえ、わが」  
「ほら、早く。みんな続けていいかわからないでしょ」  
 
(いわないと……ちゃんといって謝らないと……)  
 山内看護師にうながされ、口をパクパクさせる。しかし、言葉にならない。だが、このセリフ  
をいわなければ、ずっとこのままだ。  
 覚悟を決め、思い切っていう。  
「あの、わ」  
 そこまでいったところで、舞衣の口にストップの手が伸びた。唇を軽く押さえ、しゃべらなくて  
いいというゼスチャーをする。  
 手を伸ばしたのは、河村看護師だった。  
「もう、ちゃんとわかったよね。わかってくれれば、それでいいんだから」  
 舞衣に笑いかけ、頭をそっとなでた。  
 それから村松医師や学生らに向かって  
「もう落ち着いたから、続けられるそうです」  
 といった。  
 それを聞いて村松医師も学生らになにやら話していたが、実習は再開されることになった  
ようだ。学生たちの中には困惑しているものもいたようだが、舞衣がおとなしくなったのを  
見て、距離をとっていたのをまた近寄ってくる。  
 屈辱的な謝罪を口にしなくてすみ、ほっとしたが、すぐに切実な問題が戻ってきた。中断は  
それほど長い時間ではなかったが、その間も舞衣の尿意はさらに高まっていたのである。  
(……もう、このままおしっこするしかないんだ)  
 押し黙ってしまった舞衣の様子をうかがいながら、村松医師が尿瓶の口をおしりの前に  
置いた。腰の下の枕は十分な高さがあるため、この位置でもそのままおしっこをすることが  
できる。  
 中断以前のように、バンザイした手を山内看護師が、ひざを曲げて大きく開いた足を河村  
看護師と村松医師が支えた。  
「……はい。どうぞ」  
 全員が見守る中、おしっこをするため下腹部に力を込める。と、山内看護師の勝ち誇った  
ような笑みが目に入った。  
(…………!)  
 いいしれない屈辱が心に広がり、とっさに行為を中止する。  
 そのため、大方の予想に反して、舞衣の股間からは一滴の液体すら出てこなかった。  
「どうしたの? していいのよ」  
 
「……したくないです」  
 あきらかな嘘だ。見られるのがいやでそういっているのだと、誰だって考えるだろう。真実  
はもう少し複雑なのだが、それがわかるのは舞衣自身だけか、あるいは山内看護師の二人  
だけかもしれない。  
「急に出なくなったんです」  
 だが、これが今の舞衣にできるせいいっぱいの抵抗だ。  
「そうなの。でもね、しておいたほうがいいのよ」  
「本当にしたくないんです」  
「先生」  
 かたくなになる舞衣に手を焼いたのか、河村看護師は村松医師に二、三告げる。  
「うん……まあしょうがないかな。じゃあそういうふうに」  
 彼女は何かの了承を村松医師からとりつけたらしい。  
「今後の手順のためにも排尿させておいたほうがよいので、簡単な強制措置をとります」  
(えっ!?)  
 その一言は舞衣を震え上がらせる力を十分に持っていた。  
(な、何をされるの……!?)  
「導尿用カテーテルを使用するほうではなく、陰肛門感応がすでに鋭敏となっていますので、  
尿道口を摩擦し、刺激する方法をとります。足を開かせたまま押さえてください。ではこのよう  
にグリセリンを指につけ」  
 説明をしているのは村松医師だが、実行は河村看護師によるようだ。左右に大きく広げら  
れた舞衣の足はそれぞれ別の学生がつかみ、身動き一つ取れなくなっている。  
(うわ、やだ、もうやめてっ)  
 こんなことになるのなら自分ですればよかった。いまさら後悔しても遅いが、さらに抵抗を  
試みれば、そのときはどういう事態になるかわからない。心なしか、舞衣の両手を押さえる  
山内看護師の力が、強まっている気がする。当初は握っているだけの感じだったのが、今  
でははっきりと舞衣を押さえつけようとしているようだ。  
 まだ誰も受け入れたことのない蜜壺の、その入り口部分を、河村看護師は丹念になぞった。  
当然のように手袋をつけているが、ゴムの触感を予期した舞衣の想像に反して、その感触  
はなめらかだった。  
(あう、ひん、ああぁあん、はぁん)  
 その指の動きは無駄がなく、舞衣の心地よい部分を余すところなく刺激していく。  
 
 声こそ出さないが、舞衣の顔は快感を浴びて淫靡な表情となっているだろう。顔だけでも  
見られたくないと思うが、両手を押さえる力は強く、まるで動かすことができない。  
 指が秘部のあちこちを無遠慮に触れ回り、尿道口を開かせつつその上にある小さな突起  
をなでまわしていく。指があてられ、円を書くように振動が与えられる。  
 快い感覚が抵抗する気力を奪っていく。  
 神経の集中する突起をくいっとつままれたとき、舞衣の快感は頂点に達した。  
(もう、だめ、我慢できない……!)  
 しびれるような感触が舞衣の全身を包む。  
「んん、あ、いやあ、あぁ……」  
 衆人環視の中、大開脚のまま固定された下半身をぴくぴくと震わせながら、舞衣は陶然と  
して尿を放出していく。  
 ビデオや写真にとられていることも一瞬忘れ、快楽にひたっている自分がいた。  
「はぁ、はぁ……」  
 それほど高さがなかったためか、あるいは尿が飛び散らないように気をつけられていた  
せいか、尿瓶にあたった音はそれほどではなかった。  
 ためこんでいたおしっこのほとんどが出終わると、そのままの体勢でいつものように蒸し  
タオルで股間が拭き清められた。  
「あん、いい、やあ、あー」  
 感応が高められ、体が敏感になっている今の舞衣には、その刺激ですら耐えがたい。口を  
半開きにしたまま、ほとんど無意識に声が漏れる。  
 ぼうっとなっている舞衣をよそに、村松医師は次の予定を進めているのだろうが、彼の声は  
あまりよく耳に入らない。  
 すると、手足を押さえていた力が弱まり、舞衣はやっとの思いで足を閉じることができた。  
続いて上体が起こされ、上着をするりと取り払われる。  
(あれ……?)  
 もうこれで、舞衣が身につけている衣服は存在しない。すでに隠されている場所などなかった  
が、羽織っているだけでも真っ裸よりははるかにましだった。しかし、その最後の一枚も取り  
払われ、舞衣は完全に裸体とされたのである。  
(今、わたし……)  
 意識がはっきりするにつれ、あらためて羞恥心がこみ上げてきた。周りにいる人間はきち  
んと白衣を着込み、全裸の舞衣を一方的に眺めている。  
 
「やだ、こんな子供でも……」  
 二人の女子学生もさすがに顔を赤らめて、なにやらひそひそとささやきあっていた。他の  
学生も興奮を押さえきれないようで、仲間内で言葉を交わしている。  
 当然その会話の内容は、たった今の舞衣の痴態についてだろう。あられもない姿で見られ  
ながら放尿していく舞衣と、それをあますところなく観察し、あれこれ感想を語り合う学生ら。  
 立場の違いを思い知らされる。一秒でも早くこの場から逃げ出したいが、それもかなわない。  
「はい、もう一回、寝転ぼうね」  
 やさしく肩を押さえられて、そのまま体を倒される。山内看護師によって、手も頭の横の  
同じ位置に固定される。体勢は同じなのだが、今度は胸部のふくらみを隠していた布切れは  
存在しない。  
 全裸のまま大勢の人間の前で体を隠すこともできずに横たわる。こんな体験はいったい  
何年ぶりなのだろう。赤ん坊のとき以来だろうか。幼児のときだって、こんな格好をした記憶  
はない。一人か二人の前なら、ひょっとしたらあったかもしれないが、こんな多くの人間に  
見つめられたことはなかったはずだ。  
 風呂場で衣服を脱ぐのとはまるで意味が違う。  
 全員が全員、裸の舞衣に注目して、白い肌を目に焼きつけているのだ。手足がすらりと  
伸びた、人生でもっとも多感な時期にこんな真似をさせられるのは拷問に等しい。  
 足を広げられたからといって容易に慣れるものでもなく、時間がたてばたつだけ恥ずかしいのだ。  
「皮膚の状態から、病状を視診します――」  
 村松医師の残酷な一言で、この拷問は簡単には終わらないことを悟った。学生たちは  
配られた写真と舞衣を見比べながら、熱心に皮膚の状態を確かめている。  
(写真――)  
 二日前、全裸にされ撮影された写真だった。素っ裸でいわれるがままのポーズをとる舞衣  
が、何枚にもわたって記録されている。それが焼き増しされ、学生の一人一人に渡されて  
いるようだ。  
(見ないで、見ないでよ)  
 舞衣の必死の願いも虚しく、学生たちも慣れてきたのか、当初は遠慮がちだったのが次第  
に舞衣に顔を近づけて、覗き込むように舞衣の体を見るようになってくる。  
 彼らの吐息が、間近に感じられた。  
 
「患者は上気して全体に赤みがかかっていますが、それよりも部分的に変化している部位が  
ないかよく探してください。色の変化だけでなく皮膚の硬化についても気をつけなければいけ  
ませんが、それについては後ほど――」  
 七人の学生たちは、場所を入れ替えながら舞衣の体を隅々まで調べ上げる。うちももを  
見なくては、と誰かがいって、足が再び開かされた。大きさ自体はそれほど開かされたわけ  
ではないが、しっとりと濡れた舞衣のスリットも同時にわずかに顔をのぞかせる。  
(ああっ、見ないで――!)  
 それは舞衣が受けた快感の証だった。カシャリ、とシャッターが切られた。  
 他にもいくつか気になる場所があったのか、そういった場所があるたびにカメラに収めら  
れていく。  
 泣きそうな顔で、舞衣は学生たちの視姦が終わるのを待っていた。七人とも体中を調べ  
終えて、これで終わりかと思ったら、背中を見せてね、とうつぶせにされた。小さいが丸く形  
のいいおしりが丸見えになる。  
(くうぅ……まだ終わらないの……? やん、やめて、広げないで)  
 学生の手によってしりが両側から押し広げられ、肛門があらわにされた。顔が隠されてい  
るのだけが幸いだが、この位置では逆にどこが誰によって見られているのかわからない。  
 そのことがまた、舞衣の心をいたぶるのだった。  
 
 
 
(続く)  

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