こんな時、どんな顔をしたらいいのか良く分からなくなるんだな―  
教室に入ってまず、遠藤だけがいるのを見つけた。  
それはいいだろう。  
別にコイツだって傘を忘れる事くらいあるだろうし。  
次に俺の席に座ってる事だが、これも百万歩譲って許そうじゃないか―恨みはあるだろうからしな。  
無論仕返しは受けて頂くが。  
最後に納得がいかないのが遠藤の顔が紅く熱を帯びている、この事だけだ。  
…俺の脳味噌にはお手上げの事態だな、まったく。  
とりあえずアイツを俺の席から引き剥がすとするか。  
と、俺の席の近くに行き奴の腕を引くと、  
「触らないでよっ!」  
ドサッ!  
…物凄い勢いで押されましたよ?  
やっぱり病弱なんてウソに決まってるよ、この女。  
今の押しは角界狙えますぜ。  
と、今の拍子に遠藤が俺の席から離れた。  
「バカめ!」  
隙を見て俺の席を確保しようとしたが、二度目の押しに阻まれた。  
…日本の女子相撲の将来は安泰だな。  
「座らないでって言ってんでしょっ!」  
…何をヌカすか、そこは俺の席だと何度言えば  
「しつこいっ!」  
また押し出された…今度は口に出してたみたいだな、以後気を付けよう。  
「では帰るか、…と見せかけてぇ!」  
「だ、だめぇぇっ!」  
一瞬の隙間を縫い、俺は自分の席を奪い取ろうとしたが、遠藤も必死で食らい付き、もみ合いながら二人とも倒れ、椅子の座る部分に触れた瞬間に俺は違和感を感じた。  
…べとついてる?  
 

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