終電だった。  
「…これ、乗れるの?」  
電車の中は人で溢れ、とてもじゃないがこれ以上、しかも2人も乗れるとは思えない。  
「乗らないと帰れないだろ…」  
仕方なさそうに呟くと、岩崎真と石川鞠緒は満員の最終電車に乗り込んだ。  
 
懐かしい日本の電車。  
といってもたかが1年の留学では、そこまで日本を懐かしむことはなかった。  
ただ、慣れない海外生活に苦労を感じる度に鞠緒を思い出した。  
岩崎は、鞠緒が好だった。  
柔らかそうな肩までの髪も、黒目がちなきらきらとした瞳も、  
ぷっくりとした口唇ももちろん好きだったが、それだけじゃない。  
鞠緒の根っこの部分に惹かれていたのだ。  
高校生時代、鞠緒はいつも笑顔だった。  
晴れの日も曇りの日も雨の日も、テスト前でも昼休み中でも帰り道でも、  
些細な事で喜んで笑っていた。  
人によっては年中ヘラヘラしやがってと思う者もいるだろう。  
しかし岩崎にとってはそのヘラヘラした笑顔が救いであり、癒されていた。  
そんな自分が恥ずかしくて、口をつくのは軽口ばかりだった。  
思いは伝えないまま卒業した。今更、何と言えばいいのかわからなかったし、  
この関係を壊したくなかった。  
 
日本に帰って来たのは、一昨日。  
同窓会も兼ねてみんなで集まり、騒ぎ、騒ぎすぎ、こんな時間になってしまった。  
二人きりの帰路となったのは、偶然か神の采配か。  
鞠緒は「こんな超ラッシュ、乗るのはじめて〜」などと言いながら、  
相変わらず笑っている。  
 
何とか列車に入り込むと、2人は向き合う格好になった。  
学生時代、毎日のように顔を合わせてはいたが、こんなに近付くのは初めてだ。  
一駅が過ぎ、また人が乗り込んでくる。  
ますます圧縮される車内で、鞠緒が押し潰されそうになっている。  
「大丈夫か?」  
思わず鞠緒の腰に手を回して、自分の体へ引き寄せた。  
(…って、何やってんだ俺!)  
勢いで抱いてみたものの、嫌がっていたらどうしようと、今更体が強張った。  
そのとき、背中に軽いものが触れた。  
鞠緒の指だった。  
おずおずと背に添えられた指は、少しの躊躇のあと、確かな力が込められて、  
細い腕が岩崎を抱き締めた。  
鼓動が速まる。  
そのまま強く抱きすくめる。  
愛しい相手が、今、この腕の中にいるのだ。  
心が、そして体が反応してしまった。酒も入っているのだ。  
もう止まらない。  
 
 
鞠緒は岩崎が好きだった。  
学生時代は何かとからかわれていた。  
「バカ」「頭弱い」「脳に皺がない」等々、その悪口のバリエーションには関心してしまう。  
でも嫌いにならなかったのは、それが口先だけと分かっていたから。  
みんなと歩いていても、トロいと嘆きながら自分の歩調にあわせてくれる。  
お前には任せられんと怒りながらさりげなくフォローが入る。  
岩崎の前ではいつも笑顔でいられた。  
場を繕うための作り笑いじゃない、自然に笑っていられた。  
告白はしなかった。  
距離を縮めたときに起こる変化が怖かったし、自信もなかった。  
ただ思っているだけで幸せだった。  
卒業して会わなくなっても、岩崎への思いは変わらずに心の中にしまわれていた。  
 
その岩崎に抱きしめられている。鞠緒の体が熱くなる。心臓が、他人にまで聞こ  
えてしまいそうなくらい強く打っている。  
そのとき、岩崎の大きな手が、腰の線に沿ってゆっくりと下り、柔らかな双丘に  
添えられた。  
 
(い、岩崎君!?)  
痴漢の経験はなくはない。が、知り合いにされるのは初めてだ。しかも好きな相  
手にだ。喜ぶべきなのか、怒るべきなのか。  
戸惑う鞠緒に構わず、手は縦横無尽に這いまわり、スカートの中にまで忍び込ん  
だ。  
腰は片手で押さえられている。逃げようにも逃げられない。逃げていいのかもわ  
からない。  
 
そのうち指が双丘の割れ目に沿い、下着の上からゆっくりと奥へ進んだ。  
心臓がギュッと縮まったような気がした。体の芯から熱いものが滲み出すのがわ  
かった。  
(やだ、濡れてる…)  
自覚することで気が付いた。  
鞠緒はその指を望んでいる。  
ようやく一番下まで辿りついた指は、押しつけるように擦りつけてくる。  
(あ、あ、あ、)  
ともすればもれてしまいそうな声を、ぎゅっと目をつむって鞠緒は堪えた。  
ドロドロと熱い液が溢れる。  
 
「濡れてるの…?」  
鞠緒の耳元で岩崎が囁いた。  
指が下着の中に入り込み、ぬめる秘部へと到達し、蜜をすくう。  
入り口を浅く、焦らすように擦りつけた。  
「っ!!」  
指が一番敏感な箇所を弾いた。全身が痺れる。  
円を描くようにくにくにといたぶられて、それだけで達しそうになった。  
しかし、指はそこまでで留まり、決してその奥へ進もうとはしない。  
気が狂いそうだ。  
(お願い、もっと!)  
鞠緒は懇願するように、岩崎の背中をきゅっと掴んだ。  
岩崎がまた囁く。  
「…何?」  
言えというのか、この状態で。  
期待と絶望と羞恥と快感が混ざり合って、眩暈がする。もう限界だった。  
岩崎の耳元へ口を寄せ、決して他人に聞こえないように、小さく叫んだ。  
「中に、入れて…!」  
ゆっくりと、指が沈んだ。  
肉壁が縮み、ひだの一枚一枚が岩崎の指に絡みつく。  
指を出し入れすると、温かい腟内はぬるぬると滑った。  
(岩崎君の指が、入ってる…)  
ぐちゅぐちゅになった鞠緒を、指は前後左右にかき回す。  
(ひゃ…はぅんっ)  
頭がくらくらする。理性など飛ばしてしまいたい。  
(だめぇっ…こんな、ところでっ)  
しかし、中で蠢く指に思考はおぼつかなくなっていく。  
わかるのは、岩崎への思いと、この快感だけ。鞠緒は、自分の絶頂が近いことを  
悟る。  
(好き、好き、好き、岩崎君、大好きっ)  
鞠緒の内が大きくひくつき、きゅうぅっと締まった。  
「ぃくぅッ…!」  
 
 
電車がホームに滑り込み、岩崎はぐったりと力の抜けた鞠緒を支えて降りた。  
自分の降りる駅はにまだ数駅あるが、鞠緒を一人では降ろせなかった。  
上気した頬と熱い吐息、潤んだ瞳に、また煩悩が頭をもたげた。  
岩崎自身にはまだ何も起こっていないのだ。  
そんな自分に自己嫌悪。  
「その…ごめんな、ホント。なんか、つい…」  
とにかく謝るしかない。謝るしかないが、我ながらどういう文句だと思う。  
ヘコみきって俯いた岩崎の手に、鞠緒の熱い手が重なった。  
「あのね…わたし、今、ここの近くで一人暮らししてるの」  
それって…。  
 
「…この淫乱女!」  
「ええ〜っ岩崎君なんて変態痴漢男じゃない!」  
「うるせーインランオブジョイトイめ」  
「そのダジャレは精神的レイプだよ〜」  
 
要するに、2人は両想いなのだった。  
―おわり―  
 
 

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