「貴様、いったいどういうことだ?」  
昼休み。友人の樋上がいきなり突っかかってきた。  
くそ。こいつもか…今日でもう五人目だ。どいつもこいつも…そんなに俺が曲常と一緒に登校してたのが気に入らないのか…(なぜか朝の記憶があいまいだが)これまでの四人には嘘をついてきたがもう嫌だ…疲れた。こいつには本当のことを話してやる。  
そう覚悟を決め机に突っ伏していた俺は身体を起こし、足を組んで話を始めた。  
「昨日の放課後、机に手紙が入っているのに気付いた………」  
…………  
そして俺が曲常と暮らすと決めたところ(もちろん足でいじめられたことは隠した)まで話したところで樋上が俺の話を遮った。  
「もういい、わかった話したくないんだな…」  
呆れたような顔でそう言う我が友人。やはり信じてはくれなかった。  
「つまり、貴様とても人に話せないような手で曲常ちゃんを脅迫しているというわけか!!」  
今度は俺が呆れた。というかそんなことを大声で喋るな。教室中の視線が集まってくる。  
「やっぱりそういだったか…」  
「おかしいと思ってたんだ…」  
「おい、警察に電話だ…」  
教室中からそんな声が聞こえる。ちょっと泣きたくなってきた。  
俺は涙をこらえて鞄から曲常が作ってくれた弁当を取り出して食べ始める。  
「む。お前に似つかわしくないかわいらしい弁当箱だな」  
樋上の野郎が目ざとく気付きやがった。余計なお世話だ。  
「まさかそれ…まがつ「そうだよ」  
言い終わる前に答えてやる。  
「貴様、弱みを握って交際を強いるばかりか弁当を強奪するとは!!許せん!外道!!」  
教室中から最低コールが起こる。誰か助けて。  
 
その時だった。  
「あの……」  
気弱な声がいつの間にかドアのところに立っていた少女から発せられた瞬間、教室中が静まり返った。  
俺も樋上も誰もがその少女を見る。曲常理。  
その光景を見て少しビクリとした曲常だったが、俺を見つけると嬉しそうに笑い近づいてきた。  
「あの…先輩…一緒にお弁当…食べませんか?」  
再び親愛なるクラスメイトたちがざわめきだす。うん、黙ってろ。  
「ああ、ここで食べる?」  
「えっ、あの…ここでは…ちょっと…」  
ちらちらと俺の首の辺りを見る。ああ、さすがにここで血を吸うわけにもいかない。  
「じゃ、どっか行こうか…」  
俺は立ち上がり、曲常の手を引き教室を出た。後ろのほうでさまざまな憶測が飛び交っていたが気にしない。  
「そうだ、図書室行こう。あそこなら誰もいない…」  
「あ、はい…」  
コクリと頷く曲常と共に図書室へと向かった。  
 
「先輩…どうかしたんですか?」  
「なにが?」  
図書室に着いたとたん、曲常が尋ねてきた。何のことか皆目見当もつかないので訊き返す。  
「教室で…廊下まで聞こえていたのですが…その…先輩と私のことを話していたようなので…」  
「ああ…俺と曲常が朝一緒に学校来てたのはどうしてか?って訊かれて…」  
「あの…ごめんなさい…私のせいで…」  
いや待て。どうして曲常のせいになるのか…と、朝を思い返してみる。  
 
 
「先輩、起きてください…朝ですよ…」  
棺桶で寝ている俺を曲常が起こしてきた。昨日の夜俺にお前は枕だみたいなことを言って抱き枕代わりにして寝てたのに俺より起きるのが早い。さすが吸血鬼だ。  
「……おはよう…」  
「おはようございます」  
寝ぼけ眼で挨拶しると曲常は嬉しそうに笑って手を差し出した。  
「朝ごはん出来てますよ」  
 
案内された部屋には花が飾ってある三十人は座れるのではないかという高そうなテーブルの上に、朝食が一人分ぽつんと用意してあった。  
曲常が作ったというそれはとても美味しかった。  
で、そこで美味しかったと曲常に言おうとしたところで、曲常が俺の首に噛み付いていてきたんだ。確か。  
その辺りからいまいちよく覚えてなくて…はっきりと覚えているのは最初の授業が始まった辺りからだから…  
 
「その…ごめんなさい…吸いすぎちゃって…先輩が…」  
曲常が謝る。なるほど。ただ登校しただけじゃなくて曲常にもたれかかっていたように見えたのか…しかしそう考えてもクラスの連中の反応には許せないものがあるが…  
「それで…ですね…」  
ふと気付くと、曲常の髪の色が変わってきている。  
綺麗な黒い髪が、輝くような金髪へ…  
「曲常…髪が…」  
「これですか?興奮すると…変わってきちゃうんですよ…」  
その言葉どおり、目が据わってハァハァと息が荒くなっている。  
「ちょ、ちょっとだけ落ち着こうか…な?」  
「ふふ…なに言ってるんですか?お弁当のくせに…大丈夫ですよ…吸いすぎには…注意しますから…」  
曲常は頬を上気させながら言うと、かぷりと、俺の首に歯を立てた。  
「あぅ…」  
歯が衝きたてられた場所から血が吸われていくのが分かる。  
本当なら痛いのであろうが、しかし曲常の口が温かいためか、なぜか心地いい感覚だった。  
「ん…んぅ……っはぁ…先輩…」  
ちゅぱっと曲常が口を離す。時間的には前の二回よりも遥かに短かった。  
 
「じゃ、じゃぁこれで終わりで…」  
「なに言ってるんですか…先輩…」  
「なにって…うわっ!なにを…」  
曲常が制服の上から俺のものを触ってくる。  
「どうしてここ…こんなに硬くしてるんですか?」  
抵抗しようとするが、昨日と同じように動けなくなる。  
「もしかして…また血を吸われて…気持ちよくなっちゃったんですか?」  
カチャカチャとベルトが外され、ズボンがトランクスごと下ろされる。  
「そんな変態さんには…おしおきですね…」  
「ひっ!」  
曲常はずるりと皮をむくと鈴口を舌先で刺激してきた。  
「あっ、うぁ…」  
「食べちゃいますよ…」  
そう言うと、曲常は先のほうだけを咥えてきた。  
「ん、んふ…んん」  
「あ…ぅ、ああっ」  
生温かくぬるりとした舌に敏感な部分を刺激され思わず声が漏れる。  
「んふ……へんふぁい…ひもひいいんへふか?」  
「あっあぅううっ、しゃっしゃべられたら…うああっ!も、もう…」  
口の中や舌が振るえ、その刺激によって、俺は早くも限界を迎えそうになった、が。  
モノの根元をベルトのようなものでギュッと縛られ、達することが出来なくなってしまった。  
「まだダメですよ…もう出しちゃったら、おしおきにならないじゃないですか」  
「そ、そんな…ひぅっうぁあああっ!」  
 
 
それから十五分後、図書室には涙を流す俺と涙目になって謝る曲常がいた。  
あまりの疲労に授業を受けることなど出来るはずも無く、その日は早退した。  
 
 
 

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