「雪宮さんお昼一緒にどう?」
「遠慮しますわ」
お嬢は一緒にお昼をすることをかたくなに拒否する。
このやり取りは学年とクラスが変わった日から毎日続いていた。
俺もこのグループで一緒に食事しているとはいえ、どちらも折れることは無い。
「雪宮もこっちで食べないか?今日は雪宮の分も席を用意しておいたんだぞ」
同じクラスで一緒に食事をしている幸島が今度は誘う。
お嬢はちらりとこちらを見てため息をつくと、お弁当を持って立ち上がった。
「仕方ありませんわね」
おぉ!?お嬢が折れた?
ひょっとしてお嬢は幸島のことが。
なるほど。そういうことか。で、あれば。
俺は幸島と席を取り替えてもらおう。
こうすれば元々空いていた俺の隣の席にお嬢がやってきて、お嬢は必然と幸島の隣の席となるわけだ。
「というわけで、幸島。席を替わるぞ」
「何がどうというわけなのかわからんが、それはしない方がいいんじゃないか?」
おぅ?幸島は何をおびえているのだ?
俺の後ろに何が…………お嬢?
なぜ、手を振り上げているのです?
それどころかその手に持たれた凶悪そうな木製の弁当箱は?
それは角が当たるとものすご〜くいたいんですけど。
「お嬢……何か怒ってます?」
「胸に手をあててよ〜く考えなさい!!」
がふ。
お嬢、中身の詰まった弁当箱の角は立派な凶器です。
「馬鹿なことは言わずに、あなたはそこでお昼を食べてしまいなさい」
「……はい」
俺の隣に座るお嬢。
本名、雪宮木葉(ゆきみや このは)。黒髪のストレートの日本人形のような綺麗な女性。
雪宮財団総帥の娘で、自他共に認めるお嬢様だ。
ちなみに俺は木戸真(きど まこと)。俺の親父がお嬢の父親のボディーガードをしており、なし崩し的に俺がお嬢のボディーガード見習いとなった。
と言っても、俺はあまりすることもなく、普通に高校生活を楽しんでいるわけなのだが。
雪宮家の夜は早い。
お嬢の両親である、旦那様と奥様は普段からこの本宅にはあまり帰ってはこない。
都心にマンションがあるらしく、二人はそこで生活していると聞く。
お嬢も高校入学を機に引っ越してこいと言われたらしいのだが、お嬢が拒否したためにお嬢だけが本宅に住んでいた。
もちろんお手伝いさんなどがいるにはいるが、お嬢の夕飯後には皆帰ってしまう。
「真。いますか?」
「はい」
今、この本宅にいるのは俺とお嬢の二人だけだ。
だから、俺がお嬢の側を離れるわけにはいかない。
「姿を現しなさい。貴方は忍者じゃないんですよ?」
「いや、障子を挟んで廊下いるだけなんですけど」
「3つ数える内に部屋に入ってこなければ、明日のお弁当は無しにしてもらいますわよ。ひと〜つ」
ぐ。弁当無しは正直言ってきつい。
学食はあるのだが、とてもじゃないがこの雪宮家の食事に慣れてしまった俺には不味くてしょうがない。
ボディーガードの分際でとか言われそうだが、物心ついたときからお嬢と一緒に食卓についていたのだから勘弁してほしい。
「ふた〜つ」
「失礼します」
はっきり言って俺にはお嬢が何を考えているのかわからない。
こうやって部屋に招きいれてくれる日もあれば、絶対に入るなと言われる日もある。
一度、呼ばれたので部屋に入ったら、中から小柄が飛んできて死にそうな目にあったことも。
以来、呼ばれてもすぐには部屋に入らないようにしているのだが。
「はじめからそうすればよいのです」
やはりお嬢の考えは俺にはわからん。
「ご用件は?」
「寝付けなかったら話し相手に呼んだだけですわ」
なるほど。
しかし、普段なら布団に入ると同時に寝てしまうようなお嬢が今日はどうして。
「次の日曜。わたくしはお見合いをします」
「はい」
「……相手はお父様のお決めになった方。形の上でのお見合いではありますが、多分、その方と」
お嬢は小さな声で内縁を決めることになります。そう言った。
その時のお嬢の顔は寂しさと悲しさが混じった、泣きそうな表情だった。
「はい。私としても、お相手がお優しそうな方でよかったと思っています」
お嬢のお見合い相手は、高学歴の背格好のよい人だ。写真を拝見した上では優しそうな人だと思う。
「本当にそう思われているのですか?」
「はい」
「貴方は……真は……わたくしが。見ず知らずの殿方と添い遂げてよいとおっしゃるのですか?」
涙。
俺はお嬢の涙を見たのは初めてだった。
綺麗な顔立ちのお嬢の流す涙は、俺の空けた障子から差し込む月の光に反射され、まるでお嬢を飾る宝石のようだった。
「私は、ただのボディーガードです……そのようなこと考える権限はありません」
お嬢が俺を好いていてくれているのは感じている。そこまで鈍感ではない。
しかし、俺はそれを許されぬことだと考えていた。
今更身分などと思われるかもしれないが、俺の体術の師匠でもある祖父がそういった時代錯誤的な考えの持ち主で俺はよくもわるくもその人の孫だ。
「お嬢」
「……真。わたくしを連れて逃げてはくれませんか?わたくしがお父様とお母様の下へ行かなかったのは…貴方がいたから」
「できません。それをしてしまったら、私の父と、私を信じてくださったお嬢のご両親に申し訳が立ちません」
「…………でしたら、わたくしがよいと言うまでそこから動かないでください」
お嬢が寝床から這い出し、俺のすぐ側までやってくる。
そして、動くことの出来ない俺の手を取り、それを自らの胸へとあてがう。
お嬢の激しい心臓の鼓動が伝わる。
お嬢が俺のことを好いた目で見るようなときは、自らそれを別な方向へ持って行こうと努力してきた。
しかし、今この場ではそれは不可能だ。
「せめて、せめてわたくしの…純潔だけは真に」
あげた顔は上気し、瞳も潤んでいる。
これを美しいと言わずして何を言うのだろうか。
俺はお嬢の顔に見ほれてしまった。
ダメだ。ここで理性を無くしてしまったら、本当におしまいだ。
俺だけではなく、お嬢だって不幸になる可能性だってある。
「……わたくはそんなにも魅力がありませんか?」
違う。お嬢は魅力的だ。少なくとも俺の中では世界で一番。
「貴方と添い遂げられるなら、この雪宮の姓すらも必要ないと言うのに」
俺だって出来ることならお嬢と一緒にいたい。
「無理を言ってしまってごめんなさい……真……おやすみなさい」
…っ。
いいのか。本当にこれで。俺は間違ってはいない……いないはずなのに。
なんなんだ、この虚無感は。
俺の心を闇が覆ってしまったような寒さと悲しさは。
「お嬢!」
「ぁっ」
ダメだ。お嬢と離れたくない。離したくない。
柔らかなお嬢の身体が、抱き締めた俺の腕を通して感じられる。
暖かい。心を覆っていた闇が全て晴れていく。そんな感覚だ。
「真」
「お嬢。どこにも行かないでくれ……俺とずっと一緒にいて欲しい」
「真……わたくしも、わたくしも行きたくありません。ずっと、ずっと真と一緒にいたい」
お嬢の涙が俺の腕に伝わる。
熱く。それでいてお嬢の寂しさの冷たさの伝わる涙。
俺はお嬢を抱き上げ、自分の方に向ける。
申し合わせたかのような間合いで俺とお嬢は目を瞑る。
「んっ」
お嬢の唇は柔らかく、お嬢の身体からは甘い香りがした。
唇を重ねるだけの口付け。
だが、お互いの気持ちを確認するにはそれだけで十分だった。
お嬢の白い肌が上気してくる。
「あまり、ジロジロ見ないで……恥ずかしい」
「お嬢。とっても綺麗だ」
お嬢が寝間着にしていた浴衣を、肩の部分からゆっくりと下げてゆく。
形のよい乳房が俺の目の前に現れる。
大きすぎず小さすぎず、俺の手にちょうど入るくらいの乳房。
「ゃぁ。見ないで」
雪のように白い肌。
俺はその肌に直に触れる。
「っ………」
下唇を噛んで、懸命に声を殺すお嬢。
「お嬢。恥ずかしがらずに声を出してもいいんだよ」
「だって……そんなの」
「ほら、感じてるんだろ。ここがこんなになってる」
白い乳房の頂点についた真っ赤な乳首。
微かに勃起したソコを指でつまみあげる。
「んひゅぅ……し、しりません」
「さっきまでの素直なお嬢はどこにいったんだ?」
俺はその乳首を口に含む。
甘くよい香りが口の中に広がった。
「そ、そんな……こ、子供のすることです」
「子供が出来る前の予行演習さ」
俺はそこを舌で搾るように嘗め回す。
「ぁっ…ゃ…ぁぁ」
まだ声をこらえる。
屋敷には二人っきりだと言うのに、これ以上何を恥ずかしがるのか。
お嬢。もっともっと、俺を感じて欲しい。もっともっと、気持ちよくなって欲しい。
「お嬢。愛している」
「んっ、二人の時は……木葉と呼んでください」
「木葉」
二度目の口付け。
俺が舌をお嬢の口に滑り込ませると、一瞬お嬢が身体を引く。
「んっ!?……っぅ」
だが、俺がお嬢の頭を抱き、無理矢理お嬢の口の中で舌と舌を絡ませ犯す。
「ぁっ……はぁ」
口を離すとお嬢の目には快楽と恐怖の色が残っていた。
「真…わたくしには、刺激が強すぎ……ます」
息も絶え絶えなお嬢が俺の顔を見て言う。
俺は何も言わずに次の工程へと進む。
「ぁっ。す、少し……少し…待って…ひゃぅ」
俺はお嬢の乳房に先ほどよりも執拗に舌を這わせ、円を描くように揉みしだく。
片手で器用にお嬢の浴衣の帯を解く。
帯は難なく解け、浴衣はお嬢の膝元へとストンと落ちる。
「ぁ…ゃ。こんな…恥ずかしいこと…わたくしは」
「綺麗だ」
「……嬉しい」
お嬢の身体が見る間に朱に染まる。
先ほどの恥じらいの紅と上気の赤。それがお嬢の肌の白さと相まって、見事な朱を作り出していた。
俺はお嬢の身体を抱き上げると、そのまま寝床へと運ぶ。
「真…真の……も、見せて…欲しい」
「木葉」
「わたくしだけが……裸で居るのは…」
俺は着ていた服を脱ぐ。
「ぁっ」
お嬢が息を呑む。
俺の身体は幼少の頃からの修行で傷らだけになっていた。
お嬢を守ると決めたその日から、大人と同等の修行を受けた結果だ。
「……真……痛くはないのですか?」
「木葉を守るためについた傷に、痛みなんて」
上半身裸の俺の身体にお嬢が擦り寄ってくる。
胸の、一番大きな傷。
そこを指でなぞり、顔を近づけ口付ける。
「わたくしは、今まで真のことを何一つ知ろうとしませんでした。もっと、もっと早く……真に本心を打ち明けていたら」
「いいんだ。今は木葉が俺の側にいてくれる。それだけで十分だ」
お嬢の身体を抱く。
初めての肌と肌とを触れさせた抱擁。
お嬢の身体は本当に小さく、力を込めたら壊れてしまいそうな、ガラス細工にも似た繊細さだった。
「ぁっ」
お嬢の顔がまるで火を浴びたかのように真っ赤になった。
ん?
「ま、まことの……イチ…モツが……わたくしに」
「木葉があまりにも魅力的で俺のが反応したんだよ」
俺は立ち上がりゆっくりとズボンと下着をおろす。
俺のモノはすでに準備できており、それが丁度お嬢の目の先に現れる。
「これが、殿方の……わ、わたくしの中に、このようなものが」
「そう。そういう風に出来ているんだ。大丈夫、優しくするよ」
俺はお嬢の前に再度膝をつく。
お嬢はその場で身体を前に倒し、俺のモノに手を当てる。
「紅く、大きく、まるで話しに聞いた鬼のような……痛みは無いのですか?」
完全に痛みが無いかと言えばウソにはなるが、そんなものは昔から毎朝のことだ。いまさら痛みなど気にもしない。
だが、俺の表情をどう受け取ったのか、お嬢は俺のモノを口に含む。
「木葉!?」
「んっ…ちゅっ……むっ…んぅ…熱い…脈打って…」
「っっ…どこでフェラなんて覚えたんだ?」
「へら?そう呼ばれているのですか?んっ、真のここが痛そうであったので、舐めただけです」
つまり何も知らずにしたってことか。
無知なお嬢ほど怖いものがないような気がする。
「真も昔、わたくしが指を怪我した時に、舐めてくださいましたでしょう」
それとこれとは違うんだが。
「木葉、今度は俺がしてあげるよ。床に仰向けに横になって」
「はい」
お嬢は俺に言われたとおりに寝床の上に横になる。
「何をするのですか?」
俺はお嬢の足元に回り、脚の下に手を入れる。
「きゃっ」
俺は脚を持ち上げ、そのまま手をお嬢のお尻の下にまで滑り込ませる。
お嬢のお尻は乳房とはまた違った柔らかさと硬さを併せ持っていた。
「ま、真……何を」
「木葉のも舌でしてあげるよ」
俺はお嬢の両脚の間に顔を入れる。
そして、薄毛の恥部に口付ける。
「ひゃっ!?」
お嬢の悲鳴を無視し、俺は外向きの襞に舌を這わせる。
「ぅ…んっ…ゃぁ……真…汚い」
「綺麗だよ。木葉の身体の中で汚い場所なんてないさ」
月並みのセリフだが、それは真実だ。
それ以外の言葉なんて浮かんではこない。
「お?」
「……どう、しました?」
軽くお嬢の膣口に指を入れる。
「っっぅ」
お嬢の身体が初めて入れられた異物に軽く仰け反る。
抜いた指には俺の唾液ではない、ヌルヌルとした液体が付着している。
「木葉。見てごらん……木葉の身体は俺を感じてくれて、こうして濡れているよ」
「濡れて?……わたくし…おもらしをしてしまったのですか?」
「いや。これは、女性がエッチな気持ちになると自然と出てくるものなんだ」
「……わたくし、エッチ……なのでしょうか?」
お嬢が俺の方に向けていた顔を背ける。
お嬢にとってはそれはとても恥ずかしいことなのだろう。
「いや。どんな女だって、そうなんだ。木葉に限ったことじゃないよ」
「そうなんですか。よかった……真に…嫌われてしまったかと思いました」
どこをどう判断すればそうなるのか。
けど、知識の無いお嬢にとっては、それがいいことなのか悪いことなのかが判別できないのかもしれない。
俺は嫌いになっていないと答える代わりに口付ける。
今度はお嬢の方も俺の舌を受け入れ、俺の真似をして舌を絡ませてくる。
「んっ…ふぅ…んふっ」
お互いの口が離れ、混ざり合った唾液が糸を引く。
「木葉」
「……はい」
俺は木葉の脚を持ち上げ、その脚の間に身体を入れる。
「あぁ。好きな人の前でこのような……姿を晒さないといけないなんて」
手で顔を隠す木葉。
確かに、女性の中にはこの正常位をカエルがひっくり返ったような形なので嫌だという人がいると聞く。
どうやらお嬢もその一人のようだ。
「大丈夫。木葉は綺麗だよ」
俺は自分のモノを木葉の膣口へと当てる。
「んっっ」
腰に力を込め、ゆっくりと膣内に進入させる。
お嬢の膣は濡れており十分な湿り気を帯びてはいるが、やはりかなりの狭さだ。
「力を抜いて」
「……はっ…はひぃ」
お嬢の手が下に敷いてある布団を強く掴む。
膜が破れる時の痛さというのは、人それぞれと聞くが、お嬢はかなりの痛みを伴っているようだ。
「辛いなら」
俺は身体から力を抜く。
それを察してか、お嬢が目を開き俺の方を向いて微笑む。
「いえ……わたくしは…平気…です。だから…お願いします」
まともに呼吸すらも出来なくなっているお嬢。
俺はお嬢をこの苦しみから早く解放してあげたかった。
「いきます」
俺は再度力を込め、お嬢の中へとねじりこむ。
「っっぅぅ」
お嬢の口から血が出ている。
「お嬢!?」
「……木葉と呼んでください……大丈夫…です」
最初の時のように、声を出さないように唇を噛んでいたのだろう。
くっ。お嬢。
俺はお嬢の辛い顔を見ないようにしながら奥へ奥へと腰を動かす。
「っぁぁ……はぁ……はぁ…はぁ」
俺とお嬢の身体から力が抜ける。
俺のモノは完全にお嬢の中に納まりきった。
「木葉」
「真……一つになれたのですね」
「はい」
長かった。時間にしたらそれほどでもなかったのかもしれないが、お嬢の苦しみを考えるとかなり長かっただろう。
「真。わたくしのお父様がなんと言おうとも…真のお父上がなんと言おうとも…わたくしを、真の妻にしてください」
「木葉」
俺はもう迷わない。
この先に何があろうとも、俺はお嬢を手放すなんてことは絶対に出来ない。
「一生…俺についてきて欲しい」
「はい」
木葉の瞳からこぼれる大粒の涙。
そして、いままで見たことの無いような極上の笑顔。
幸せとはこのことを言うのだろう。
「ぁっ」
俺のモノがお嬢の膣内で一度跳ねる。
お嬢の膣内は、暖かく、きつく、それでいてやわらかさを持ち、俺のを締め付けている。
黙っていても、出てしまいそうなくらいに気持ちがいい。
「少しだけ。痛みが引きました……真がしたいようにしても…かまいませんよ」
俺はゆっくりと、腰を引き上げる。
お嬢は一瞬顔をしかめるが、先ほどのような痛みではなさそうだ。
「動くよ」
お嬢はコクンと小さく首を縦に振る。
ゆっくりと、お嬢の身体をいたわるように腰を上下させる。
徐々にではあるが、お嬢の膣内が先ほど以上に湿り気を帯びてきている。
それに伴い、その顔にも痛みだけではなさそうな表情が見て取れる。
「ぁ……ぁっ…っ…ぁ、ぁ、ぁ」
声にもその反応が現れ始めた。熱を帯びた艶のある声。
「っ………ぁ。ゃ…だ、だめ……んっっっ」
一瞬お嬢の動きが止まったかと思うと、急にお嬢の膣が俺のを締め付けてくる。
「っぅ」
俺は出そうになるのを我慢して腰を引く。
だが、お嬢の脚が俺の腰を絡め離さしてはくれない。
「お嬢!?」
「出してください……ちゃんと…知っていますから」
限界だった。
俺はお嬢の膣内へと精液を吐き出す。
「ぁぁ…暖かい…真の子種がわたくしの中に」
それで満足したのか、お嬢の脚が解ける。
俺が身体を離すと、少し遅れてお嬢の膣口から白と赤の混ざった液体がこぼれ出る。
「お嬢」
「……3度目ですよ…ちゃんと…木葉って呼んでください」
どうも、呼びなれているせいか、意識していないとお嬢と呼んでしまう。
「木葉。今日は大丈夫なのか?」
「大丈夫とは?」
「安全日って言うのか…ほら、妊娠しにくい日」
「ふふ。どっちだと思います?」
お嬢が小悪魔のような微笑みで俺に語りかける。
「ま、出来たら出来たで、ちゃんと一緒に育てていこうな」
そうだ。どっちだって関係はない、俺はお嬢と生きていくと決めたのだから。
「はい。真……愛しています」
4度目の口付け。
それは、どの口付けよりも自然に触れ合った。
俺とお嬢は客間へと案内された。
客間は和室となっていて、畳のいい匂いがする。
「お久しぶりです」
席に着いた俺とお嬢。
テーブルを挟んで、お嬢の両親が座っている。
「………ワシに話しがあるとはなんの用だ」
うっ。さすがは雪宮財閥の総帥。
いやいや、この程度で飲まれてなるものか。
「ご無礼を承知でお話し申し上げます。私を木葉お嬢様と結婚させて下さい」
俺は真っ向から旦那様の目を見る。
やばい。背中には冷や汗がダラダラと流れ落ちている。
「明日。木葉が藤桜の御曹司と見合いだと知って言っているのか」
「はい」
俺と木葉の最初にして最大の難関。
旦那様に俺とお嬢のことを認めてもらうこと。
時間が無かったとは言え、いきなりはまずかっただろうか。
「ダメだ。雪宮の名に傷がつく」
やはり。
そうすんなり行くとは俺も思っては居なかった。
が、先ほどと表情も何も変わっていないところをみると、心の一端を揺らしたとかいう状況ですらなさそうだ。
「無理は承知で申し上げております。御一考をお願い致します」
「たかが木葉の付き人の分際で何を言う」
「私は真剣です。付き人とかそういった身分は」
「身分など関係ないとでも言うつもりか?」
「関係ありません」
熱くなってはダメだ。冷静に話し合わないと。
相手は経済界では百戦錬磨の男。
相応の態度で臨まねば。
「…帰れ。木葉は今日はここで休み、明日の見合いに備えるんだ」
「お父様」
今まで沈黙を守っていたお嬢が口を開く。
「わたくしは、真と結婚します。藤桜家の長男だかなんだか知りませんけど、見ず知らずの男には会いたくありません」
「見ず知らずだからこそ、見合いの席で話し合うのだろう」
「それに。わたくしは、もう真と床を共に致しました」
さすがに、今の一言に旦那様の眉が動く。
「わたくしの中に何度も何度も、子種を注いでいただき、きっと、わたくしのお腹の中には真との子が宿っていますわ」
まて、お嬢。
お嬢を抱いたのはあの日だけだし、あの日だって一度しかしていないのだが。
これが駆け引きというものなのか?
バカ正直に本当のことだけを言っていてはダメだということだろうか。
「まぁ、相手は木葉よりも大人だ。処女がいいと言うわけでもないであろうし、子は可愛そうだが堕ろせばよいことだろう」
「そんな……お父様は、わたくしと真の子を殺すとおっしゃるのですか!?」
「当たり前だ。それだけではなく、娘を傷物にした罪も償ってもらわねばな」
「お父様!!」
お嬢がテーブルを叩き、立ち上がる。
「わたくしは、お父様に絶望しましたわ。わたくしは真と家を出ます。今日から雪宮の姓を捨てさせていただきます」
「お嬢……それはいけません」
「真!?何を言うのです。貴方もわたくしと一緒にいてくれるのではなかったのですか」
「それは本当です。しかし、私は旦那様に何があろうとも許しを請うつもりです」
「無理ですわ!!」
「お嬢!!」
俺は立ち上がりお嬢と唇を重ねる。
いきなりのことにお嬢も驚き、しかし、その身体を俺へと預けてくれる。
「わかりました。後は真にお任せいたします」
「旦那様。私は……いえ、俺には木葉が必要なんだ。そして、木葉も俺を必要としてくれている」
微かに震えるお嬢を強く抱きしめる。
「こんなことをして、今まで養っていただいた恩を仇で返すような結果かもしれない。もう一度言います。木葉を、俺にください!!」
「お父様……わたくしも、真が好きです。他の殿方の妻になるくらないなら……」
今のお嬢は弱々しく、簡単に折れてしまいそうな……割れてしまいそうなほどか弱い少女だ。
「お父様」
「はーっはっはっは」
「まったく、アナタも本当に意地が悪いのですから」
突然旦那様が大きな声で笑い、今まで沈黙を守っていた奥様も着物の袖で口を隠し微笑んでいる。
「まさか、この年になるまで決着がつかんとは思わなかったぞ」
「お父様?お母様?」
「真君……木葉をよろしく頼む」
旦那様と奥様がそろって俺たち二人……いや、俺に向かって頭を下げる。
「え?あ、えっと……はい」
「さぁさ。向こうに食事を用意してあります、今日は一緒に食べましょう」
旦那様と奥様が客間から出てゆく。
「ど、どういうこと……なのでしょう?」
「よくわからんが…俺たちのことを認めてくれたってことか?」
俺もお嬢もいきなりの事に全く展開についてゆけていない。
とりあえずわかることは。
「お嬢。せっかくだからご馳走になろう」
「そうですわね」
俺とお嬢はもう一度唇を重ねる。
もう、何度目かは数えていない。どうせ、これからは星の数ほど重ねるのだから。
結局、木葉の見合いの話は最初から無かったとのことだった。
旦那様も奥様も俺とお嬢が互いに惹きあっているのは知っており、にも関わらず結果のでない二人にやきもきしていたそうだ。
それで生まれたのが、木葉の嘘見合い話で二人に本心で語り合わせよう計画。
そして、今の俺とお嬢はものの見事に旦那様の計画通りにことが進んだ結果だった。
「酷いですわ、お父様」
「しかしな、煮え切らない二人が悪いのだぞ」
その話を聞いた後から、お嬢はずっとこんな調子だ。
「でしたら、わたくしにだけでも一言いっていただければ……そうすれば、真にあんな恥ずかしい姿を」
最後の方はごにょごにょと小さな声になる。
まぁ、隣に座っている俺には聞こえているわけだが。
「二人はいまどきの若者にしては、積極性にかけておったからな。これくらいが丁度いいじゃろうて」
「真さん。木葉のこと……本当によろしくお願い致しますね」
奥様が俺の手を取って見つめてくる。
「あ。いえ。至らぬ点の多い私ですが、木葉お嬢様をお守り致します」
お嬢ももう少しすれば、こんな大人の色気をかもし出す女性になるのだろうか。
そんなことを考えていると、奥様の手が俺の手を何度も撫でる。
「綺麗な肌。それでいて、整った体……真さん…私のようなおばさんはお嫌いかしら?」
「へ?」
微かに頬を染め、俺の方を見て微笑む。
ヤバ。色気が。
「お母様!!わたくしの真を誘惑しないでください!!真も、そんなに鼻の下伸ばさないでほしいものですわね」
「うっ」
「あらあら。怒られてしまいましたね。ふふ、これからは私も家族ですわね。よろしく、真さん」
ものすごく前途多難な感じがする。
はぁ。
「どうしたんですの?溜息なんてついて」
「いや。ないでもありません」
先が思いやられるなんて、この面子の中で言うことはできませんって。
「じゃあ、お母様。お父様。おやすみなさい」
「では、休ませていただきます」
俺とお嬢は本宅の前で車を降りた。
普通なら、専属の運転手がいるのだが、今日は旦那様が自ら運転してくださった。
「真君。木葉をよろしく頼むよ」
「ふふ。私ももうすぐおばあちゃんになるのですね。楽しみだわ」
旦那様と奥様が行ってしまう。
「お嬢……これから………お嬢?」
俺が話しかけてもお嬢は返事をしてくれない。
「お嬢?お嬢?…………あ、木葉」
「なんですか?真」
微笑んで答えるお嬢。
本当に先が思いやられる。
「木葉。これからも木葉を守り続けるよ」
「当たり前です。アナタは私の伴侶である前にボディーガードなんですから」
「あら。素直じゃないなぁ」
「これでも、素直なつもりですわよ」
ツンとした顔で明後日の方を向いてしまう。
ホント、素直じゃないんだから。
「布団の中ではあんなにも素直なのに、どうして今は素直じゃないんだい」
「ぁ」
お嬢を抱き寄せる。
「今日はもっともっと……愛してあげるよ」
耳元で囁くと、お嬢の顔が見る間に真っ赤になる。
雪のような肌と月のように輝く瞳。そして、花のごとく美しさ。
「愛してるよ」
「私もです」