「……リスちゃん……クリスちゃん!」  
耳元でやかましく名前を連呼される。  
(その呼び方は止めなさいって何度も……)  
闇の底に沈んでいた意識が浮かび上がってきて、最初に思ったのがそれだった。  
そのことに思わず吹き出しそうになって、背中の痛みに邪魔をされる。  
(ああ……そういえば最後に一撃受けて……)  
何とか術の起動に成功して発動までは確認したものの、さすがに気が抜けて意識を失ってしまったのだ。  
目を開けると至近距離に大粒の涙を零す少女の顔があった。  
「何、泣いてるの。……つっ、あの狸見た目通りの馬鹿力なんだから」  
起き上がろうとすると背中が痛むが、我慢できないほどでもない。  
背中に手をやってみると修道服の生地がズタズタになっている感触があった。  
とはいえ、命に比べれば少なすぎる被害と言ってもいいくらいだろう。  
「ごめ……っく、ごめんね……わたしをかばったせいで……」  
「別にあなたをかばったわけじゃ……」  
霊的に強化された修道服を着ている分、自分の方が攻撃を受けても被害は小さい。  
防御の手段を持たない日和が仮にあの一撃を受けていれば、まず間違いなく命に関わるほどのダメージを負ったはずだ。  
だから避けられないと判断した時点でクリスは自分が受けることを決めた。  
1人無傷で1人死亡と、1人軽傷で1人無傷。  
どちらがいいかなんて考えるまでもない話だ。  
それだけの話。  
 
それを説明しても、目の前の少女は一向に泣き止まない。  
「そ、それに……そもそもわたしがいなければ、あの攻撃自体なかったはずだし」  
挙句の果てにはそんなことを言い出す始末だ。  
クリスの術による白炎は人間には害がないが、今の日和にまで効果がないかはわからない。  
というより十中八九日和もまとめて焼き尽くすだろう。  
日和の身体を化け狸から引き剥がし、さらにある程度離れるためのタイムラグを考えなければ、確かにあの一撃を受ける前に術を発動させることはできた。  
だから日和のその言葉に、一応の理がないわけでもない。  
ただまあ前提からして間違っているわけだが。  
「そもそも、あなたがいたから先手が取れたんでしょうに。正面から戦っていれば、一撃程度では済まなかったはずよ」  
「でも……」  
それでもなおも食い下がろうとする日和にさすがにクリスも疲れ始めてきた。  
次は、自分が捕まらなければ、とか言い出すんだろうか。  
(それこそ見当違いもいいところなのに……)  
クリスは日和を助けに来たわけではない。  
断じてそんなことはないのだ。  
「ところで、私はどれくらい気を失っていたの?」  
まともに相手をしていると、無限に続きそうな日和の言葉を遮るためにこちらから問いかける。  
「ごめんなさい……わたしも気を失ってたから……」  
「いちいち落ち込まないの」  
デコピン1発。  
「いたっ、まだ最初の頭突きのが残ってるのにぃ……」  
「ふぅん、それならそんなに長く寝ていたわけではないわね」  
「ひ、ひどいぃ……」  
やっと止まった涙をまた零しそうになりながら、日和は唇を尖らせた。  
 
「とにかく帰りましょうか。服だって何とかしないといけないし。あなたの、ミコショーゾク……だったかしら、あれは反対側の道にあるの?」  
「あ、あると思うけど、狸のあれでドロドロにされちゃったし着たくはないかも……」  
「それは……嫌ね。なら近くの町で調達しないとか……」  
そう言って立ち上がった瞬間、周囲の様子が一変した。  
無機質な岩壁が鮮肉のような桃色に染まり、巨大な生き物の腸の中にでも瞬間移動したかのような錯覚に陥る。  
足の裏に感じるブヨブヨとした柔らかさは、生理的な嫌悪感を呼び起こす感覚だ。  
(足の裏……?)  
直に触れるその感覚。  
膨れ上がる違和感に視線を落とし、クリスは驚きのあまり身を強張らせた。  
身を包んでいた修道服が一片も残さず消え去っていたのだ。  
頭に手をやってみるが、その手に返ってくるのはヴェールではなくショートカットにした金髪のさらさらとした感触。  
下着すら消え、日和同様完全に一糸纏わぬ姿になったクリスは、慌てて隣にいる日和に視線をやった。  
「日和っ!」  
日和はその状況の変化に気付いていないようだった。  
それよりももっと切実な問題が起こっていたのだ。  
腹を抱えるようにして蹲り呻き声を上げる少女に、クリスの混乱に拍車がかかる。  
 
その混乱の中でも、これが幻であることにクリスは気付いていた。  
周囲の変化だけなら強制的な転移の可能性もなくはなかったが、服が消えている点からそれはない。  
問題なのは誰が何の為にやっているかだ。  
いや、この際何の為にという方はそれほど重要ではない。  
そんな物はおおよそ見当がつく。  
本当に重要なのは誰がの方だ。  
多少消耗しているとはいえ、こうもあっさりクリスが幻術にかけられるということは術者はかなりの力を持っているはず。  
「うぅ……いたぁ、動か……ないでぇ……」  
周囲の気配を探っていたクリスの耳に届いた日和の声。  
(動く……? まさか!?)  
最悪の想像に驚愕するクリスに追い打ちをかけるように、周囲の状況にさらに変化が起こった。  
天井や壁から肉色の触手が2人目掛けて飛び出してくる。  
それを視界の隅に収めて反射的に飛び退こうとしたクリスの身体がガクンと揺れる。  
見れば床からも生えた触手が足に巻き付き、彼女の移動を封じていた。  
迎え撃とうにも聖具は全て修道服ととも消えてしまっている。  
本来のクリスは服もそのままで、触手なんて存在しない洞窟の中にいるはずだが  
それがわかっていてもこの世界の中では何の役にも立たない。  
素肌に巻き付く触手の感触は吐き気がするほどリアルで、表面の細かな凹凸さえも感じ取れるほど。  
というより、むしろ普段より感覚が鋭敏にされている気配すらある。  
そうこうしている内に腕や胴にも触手が纏わりつき、成す術もないまま空中に持ち上げられてしまう。  
日和の方に視線を向ければ、空中に持ち上げられてこそいないものの、ほぼ彼女も同様の状態だった。  
だが、触手への嫌悪感よりも腹を襲う激痛に身をよじり、顔には大量の脂汗を浮かべている。  
あれではそもそも触手に拘束されていることに気付いているかどうかすら怪しかった。  
 
その日和の腹がクリスの見ている前で徐々に膨らんでいく。  
通常の妊婦が1年近くかけて行う変化を、わずか1分足らずで見せつけられる。  
時折その腹の1部がボコボコと蠢くたびに、日和は痛々しい呻き声は上げた。  
そのまま破裂してしまうのではと思うほど膨らみ続けた腹が成長を止める。  
そして産婦人科の内診台に括りつけられたように広げられた足の中心から、大量の液体が溢れ出した。  
それが破水と呼ばれる現象であることをクリスは知っている。  
その現象が何の前兆であるのかも。  
「や、……なにか出てく。やだ、やだぁ……こわれ、ちゃ」  
産みの苦しみを紛らわすように、唯一拘束されていない尾がめちゃくちゃに振り回される。  
「ひ、日和……」  
魅入られたように視線を外せなくなったクリスの見る前で、出産というこの世で最も神聖な儀式が執り行われた。  
産み落とされた赤ん坊は見た目は人間の赤子と相違ない。  
状況を考えれば父親であることに間違いない化け狸や、そして母親である日和ですら持っている尾さえない完全な人間の姿。  
ただ、人間と同じなのはせいぜい見た目くらいのものだった。  
臍の緒すらそのままに、赤子は急速に成長していく。  
クリスが感じる気配は、日和にも似た人と妖の混ざり合ったもの。  
ただそこから感じる力の量は、両親が持っていたものを足し合わせても遠く及ばないほど強大なものだ。  
愕然とするクリスが見守る中成長を続けていた赤子、今では少女と呼ぶべき存在が目を開いた。  
母親譲りの黒い瞳は、けれど母親のそれが持っていた輝きを徹底的に削ぎ落としたかのような深淵の色。  
同じく吸い込まれるような深みを持つ漆黒のおかっぱ頭の下の面立ちは、なるほど母親の幼い頃を彷彿とさせた。  
と、外見年齢で言えば十を手が届くかどうかというあたりで、唐突に少女の成長が止まる。  
 
「あれ? あれ? なんで止まっちゃうの?」  
可憐に咲く花のような唇から、外見相応のまだ多少舌たらずな声が紡がれる。  
そして自分の身体を確かめるように、薄い胸やまだ硬そうな臀部を中心にペタペタと手の平を当てていく。  
「あー、もう、なんでなのよぉ」  
不満げにそう呟き、瞑想するように瞳を閉じた少女。  
目を閉じた直後こそ表情と呼べるものが抜け落ちたものの、見る見るうちにその顔に不満の色が戻ってくる。  
「ったくもう、パパったら中途半端なとこで止めちゃうんだから。まあ、あの状況じゃ仕方ないけど」  
あろうことか自分で臍の緒を千切りながら、自分が生まれる前のことをまるで見たきたかのように言う。  
いや、実際に今の数秒の間に見てきたのだろう。  
過去に起きたことを知ることができる能力があると、クリスは以前聞いたことがあった。  
「あ、あなた……」  
声に混じる震えを抑えられない。  
それでも気力を振り絞って声をかける。  
その声を聞いて初めてクリスの存在に気付いたらしく、少女はクリスに視線を向けた。  
「誰? ……あー、パパを殺した人ね」  
言葉の内容の割りにどうでも良さそうな口調。  
「あ、てことは、あたしの成長がこんなとこで止まっちゃったのはお姉さんのせいじゃない!」  
父を殺したことより、自分の成長を止めたことの方が重要だと言わんばかりの言葉。  
掴み所のない態度にクリスは当惑する。  
もちろん父の仇と憎まれることを望んでいるわけではないのだが。  
 
「あなた、本当に日和の子ども、なの?」  
自分の目で彼女がその少女を産み落とした現場を見ても信じられない。  
「そうよ。あ、その顔は信じてない顔ね」  
「だって、そう簡単に子どもなんてできるはずが……」  
人間同士のできちゃった結婚とは違うのだ。  
前例がないわけではないが、人と妖の間にある壁はそう低くはない。  
元が人間だった類の妖であればまだしも、狸と人では本来そのあり方が違いすぎる。  
「そりゃあ、そうよね。だからその為に準備してたんじゃない。ママの尻尾がただの飾りだとでも思ったの?」  
その言葉に頭を金槌で殴られたような衝撃が走る。  
日和の身体に同化した化け狸の1部。  
(人を妖の側に近づけることで……)  
「まあ、せっかく準備をしてたのに、当日までそれを忘れてたんだからパパも間抜けだけど」  
 
「どうしようかなー、ママはこんなだし」  
日和はもはや意識がないのか、ぐったりと触手に身を預けている。  
「そうだ! ねえ、お姉さん、あたしのパパになってくれない?」  
突然の、しかも予想もしていなかった問いにクリスは言葉を失った。  
唖然とするクリスに構わず、少女は「そうよね、だいたい邪魔したのはお姉さんなんだから、責任は取ってもらわないと」などと呟きながら歩いていく。  
その先にあるのは肉床の上にこんもりと盛られた白い灰の山。  
生きていた時に比べれば随分体積が減ってしまってはいるが、あの化け狸の名残だ。  
「あーあ、こんなになっちゃって……」  
横から窺えるその表情に哀しみの色はない。  
むしろその声音には蔑むような雰囲気すらあった。  
「あなたの父親なんでしょう?」  
その様子にクリスは思わず問いかけてしまう。  
妖の家族意識がどんなものかは知らないが、人間に当てはめてみるとあまりにもドライな反応だ。  
「殺した張本人がそんなこと言うんだ? まあ、いいんじゃない? 子孫が残せたんなら、後はいつ死んでも」  
そして「このへんかな?」と呟きながら、灰の山に手を差し入れその一部を掬い上げる。  
少女の小さな手の平に乗せられた灰が命を持ったように蠢き、見る見るうちに化け狸の手の平へと姿を変えた。  
ここが少女の作った世界である以上、何が起こっても不思議はないとも言える。  
それでも、その光景にクリスは息を飲んだ。  
「残念、外れー」  
少女は父親の身体の一部を無造作に投げ捨て、再び灰を掬う。  
再び手の平の上で化け狸の身体の一部が姿を取り戻し、そしてすぐに打ち捨てられた。  
「あー、これこれ」  
何度かそれを繰り返した後、ようやく目当ての物を見つけたのか少女が嬉しそうな声を上げた。  
その手にあるのは、力を失いだらりと垂れ下がった肉の棒。  
紛れもなく日和の口や膣を蹂躙した化け狸の性器だった。  
 
「うーん、別に種が欲しいわけじゃないから、これだけでいっか」  
その黒ずんだ肉塊を手に、今度はクリスの方へと歩み寄ってくる少女。  
その姿にクリスの背筋に寒気が走った。  
逃げようにも身体は触手で拘束されたままだ。  
そもそも世界そのものが少女の思うままになっている以上、逃げ場などあるはずがない。  
「こ、こないで……」  
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。邪魔をしたのはちょっと許せないけど、まあママの身体を守ってくれたし、やさしくしてあげる。  
 さすがに受精直後であの炎に巻かれてたら危なかったしね」  
少女の手が、クリスの大きく広げられた両足の中心に宛がわれる。  
「あれ、もう濡れてる? もしかしてパパとママのエッチ見ながら興奮してたの?」  
「そ、そんなことあるわけが……」  
化け狸に犯され甘い声を上げる日和の姿が脳裏に蘇る。  
彼女のことを可哀想だと思いながら、心のどこかでその熱い吐息に胸が高鳴った。  
「ふふ、思い出したら、また濡れてきちゃった?」  
少女の指が割れ目の内側へと入ってくる。  
細いとはいえ、教えを守り自慰すらしたことがないクリスにはそれでも痛みが走った。  
「それでもまだちょっと準備が足りないかな。あたしがしてあげてもいいんだけど……」  
しばしの思案。  
「そうだ、お姉さんが新しいパパになるなら、ママとは夫婦ってことになるんだよね。それならママにしてもらおう」  
「な、なにを……」  
少女の意を酌んだ触手によって、日和の身体が運ばれてくる。  
全身に巻き付く触手によって取らされたのは、腰の高さを合わせお互いに秘唇を向かい合わせるような体勢。  
 
「や、やめさせなさい! さもないと……」  
その言葉を言い切ることもできない内に、下の口同士での淫猥なキスを強制される。  
触れ合った日和のそこは、クリスのもの以上に熱くぬめっていた。  
「ぁ……あ、きもち、いい……」  
状況を認識するだけの余裕もなく、ただ与えられる感覚に身を任せた日和が腰を動かし始めた。  
クチュクチュという卑猥な音がして、クリスの身体を甘い感覚が走り抜けていく。  
「ひ、日和……目を覚ましなさい……ひぁ、動かな、あひぃ!」  
2人の身体が同時に跳ねる。  
日和が腰を動かしている内に、お互いの最も敏感な肉真珠が接触したのだ。  
「あ、ここ……ここ、いいよぉ……」  
味をしめた日和がそこを中心にさらに腰をくねらせる。  
経験したことのない鮮烈な快感にクリスは翻弄されていた。  
秘すべき場所を日和と擦り合わせているという背徳感すらもいつしか甘い物へと変わっていく。  
「イク、イッちゃう……イッちゃうよぅ!」  
日和の声が上擦っていく。  
自分の中で高まってくるのが日和の言っている『イク』という感覚なのかはわからないが、何かが近づいていることをクリスも感じていた。  
そこに手が届こうとした瞬間、「はーい、そこまでー」という少女の言葉とともに刺激が途絶えてしまう。  
2人分の体液で濡れそぼった秘唇の上を空気が通りぬける冷やりとした感触に、薄れかけていた理性が多少戻ってきた。  
けれどそれは一時の安息にすぎない。  
 
「これだけ濡れれば、もういいよね」  
少女が手にもった肉塊を擦り付けてくる。  
その命の火が消え温くなった一物の感触に、クリスの肌が粟立った。  
根元の方から差し込むように少女は手を動かすのだが、硬さを失ったペニスでは表面をぬるりぬるりと滑るだけで入っていかない。  
「そ、そんなの入れないで、お願いだから」  
おぞましい死体の一部を体内に挿入される恐怖に懇願してしまう。  
それを恥ずかしいと思う余裕はもうなかった。  
「うーん、うまく入っていかないなぁ。仕方ないなぁ」  
諦めて欲しかった。  
けれど現実はクリスの期待には応えてはくれない。  
少女の手の平の上で肉塊がビクンと跳ねたかと思うと、芋虫のようにウネウネとその身を捩らせる。  
そして、その一端が再びクリスの割れ目に押し付けられた。  
「い、いやぁ……入って」  
狭隘な肉路をむりやり押し広げるようにして肉塊が進んでくる。  
身を引き裂かれるような激痛と、身体を内側から汚される嫌悪感に気が遠くなっていく。  
「寝ちゃダメだよ。これからが本番なんだから」  
いっそ気を失えれば楽になっただろう。  
けれど少女が頭に触れると、薄れつつあった意識が強引に引き戻される。  
 
「ぅあ……な、なによ、これぇ」  
膣の1番奥、子宮口を突かれているのにまだ侵攻は止まらない。  
「うふふ、これでお姉さんも立派なパパになれるのよ」  
限界まで引き伸ばされ悲鳴を上げていた膣壁が肉塊に癒着していき、急速に痛みが薄れていく。  
代わりに感じるのは、クリスの中に収まりきらなかったペニスの先端が風にくすぐられる感覚。  
日和と淫核を擦り合わせていたときに似た快感が腰を駆け抜けていった。  
「あ、大きくなってきた」  
少女の手が添えられ、やさしい手付きで撫で上げられる。  
それだけの刺激に、クリスは慄いたように腰を引いてしまう。  
「や、やめて。触らないでぇ」  
次々と与えられる未知の感覚に、クリスの脳はもはや限界だった。  
苦痛の類なら耐えられたかもしれないが、理性より先に本能の方が恭順してしまう快感には抗い切れなくなっていく。  
「手だけでこれじゃ、あたしの中に入ったらどうなっちゃうんだろ」  
身体の位置を少し下げられ、少女がその上を跨いでいく。  
性毛もなく、1本の筋しか見えない少女の秘唇は、その未成熟な外見に反して濡れ光っていた。  
「だめぇ……こわいのぉ……」  
空気に撫でられるだけですら気が触れそうな愉悦が走り抜けていくというのに、そこに入れられてしまったら自分がどうなってしまうのかわからない。  
「あたしの初めてをあげるんだから光栄に思ってよね」  
恥も外聞もなく許しを乞うクリスに構わず、少女の腰がクリスの下腹部で隆々と立ち上がったペニスに向けて下りていく。  
 
「それにしても、こんなに元気になるなんて予想以上かも」  
お互いの一部が触れるまでにあと数センチというところで少女の腰が止まる。  
怯えるクリスに艶然と微笑んで少女は言葉を続けた。  
「そうだ、パパの頭をくっつけたらお喋りできるかしら」  
「ひっ……そ、そんなのいやぁ……」  
自分の身体にあの化け狸の頭を植え付けられるというおぞましい想像に、ついにクリスの青い瞳から涙の粒が零れ落ちた。  
少女が身を乗り出すようにして、その涙を指で拭う。  
「冗談よ。古いパパになんか興味はないわ。だってお姉さんが新しいパパになってくれるんでしょ?」  
「な、なります。なりますから」  
とにかくその最悪な提案から逃れることだけが全てだった。  
「ありがと、お姉さん……ううん、パパ。それじゃ、いただきまーす」  
あどけない外見にそぐわない蟲惑的な舌なめずり。  
そして、少女の秘唇がクリスの昂ぶりに口付けをした。  
 
「うあああ、だ、だめぇっ……こんなの、くるう、くるっちゃうぅ!」  
先端を飲み込まれただけで、腰が溶けそうな愉悦が広がっていく。  
グチュグチュと纏わりついてくる肉襞の感触。  
猛り立った肉筒の中を何かが走り抜けていく。  
「でる……でちゃう!」  
外からは肉襞、内から擬似精液によって両方からペニスを擦り上げられ頭が真っ白になる。  
「あはは、もう出してる。どう、男の人の絶頂は?」  
「あが……ぁ、くふぅ……」  
「ああ、お姉さんは女の人の絶頂ってまだ知らないだっけ? せっかくだから比べてみる?」  
耳から入ってくる少女の言葉。  
けれどそれは快感の処理で手いっぱいの脳では理解するまでに至らない。  
「ママもさっきの続きがしたいみたいだしね」  
辛うじて脳が掬い取ったママという単語に、ほとんど反射動作だけで日和の方へ視線をやる。  
その先には腕ほどありそうな触手で膣を掻き回されている日和の姿があった。  
口の端からよだれを垂らしながら悶えるその姿が徐々に近づいてくる。  
「ママの穴は使用中だから、尻尾が寂しいんだって。ね、ママ?」  
休むことなく腰を上下させ、クリスから最後の1滴まで精液を搾り取りながら少女が言う。  
「あぁ……はい、いれたい、……いれたいです」  
日和の願いを叶える為にクネクネと揺れていた尾に触手が巻き付き、クリスの排泄のための穴へと導いていった。  
 
「そこ、使っていいよ、ママ。初めてだから、きっとすごーく締め付けてくれるよ」  
本来の用途とは逆の方向に異物が通過していく感触にクリスは目を見張った。  
にもかかわらず、そこに悪寒や痛みのようなものは最初から存在しない。  
「お姉さん、ううん、パパったらまた出してる。そんなにあたしの気持ちいい? それともママの尻尾かしら?」  
もうどちらがいいかなんてわからなくなっていた。  
全身が快感の塊になってしまったかのような錯覚。  
その中で日和と繋がることができたという倒錯的な悦びすら感じながら、クリスの心は快楽の海に沈んでいった。  
 
 
 エピローグ 
 
洞窟の中に2人分の喘ぎ声が木霊していた。  
「娘の前だっていうのに見せつけてくれちゃって。まあパパとママが仲良しなのは悪くないけど」  
そういっておかっぱ頭の少女はあくびをする。  
その視線の先では日和とクリスが飽きることもなく身体を重ねて喘ぎ声を上げていた。  
クリスのペニスは日和の膣に、そして日和の尾はクリスのアナルへと挿入されている。  
2本の肉で連結された彼女達は、それですら足りないとばかりにお互いの身体を強く抱き締め腰を振っていた。  
「あーあ、結局、1度固定化されちゃったら、もう姿は変わらないみたいだし」  
クリスから吸い取った力のおかげで、少女の持つ力はさらに増していた。  
だがその姿には全く変化がない。  
もちろん少女にとって力を使えば姿を変えることなど造作もないことだろう。  
それでも、そういったものを取り払った本来の姿というものは、それなりに少女にとって意味があるらしい。  
「さてと、何だか飽きちゃったし、そろそろ外に行こうかな」  
そう言って少女は立ち上がる。  
「じゃあね、パパ、ママ。末永くお幸せに」  
その言葉を最後に、少女は振り返ることもなく歩み去っていく。  
残された2人は少女が去ったことにも気が付かないまま、ただただお互いを求め合っていた。  
 
 

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