周囲を岩壁に包まれた洞窟の中に1人の少女がいた。
どういった原理か岩壁が放つほのかな光に照らされた少女は巫女装束に身を包んでいる。
薄く汗を浮かべ、頬をわずかに上気させながら少女が視線を向ける先には、小柄な少女の倍はあろうかという大狸がいた。
実際の狸というよりは信楽焼きの置物に近いずんぐりとした体型のその化け狸こそが、今回その巫女装束の少女――日和に与えられた任務の標的だった。
人間の言葉、しかもなぜか関西弁を放っていた化け狸の口から今迸っているのは洞窟を崩落させるのではと思うほどの絶叫だ。
その原因は風船のように膨らんだ腹に刻まれた1筋の裂け目。
それを作ったのは彼女が手に持っている刃渡り3寸ほどの短刀だった。
(手応えはあったし、これで終わってくれれば)
大きさこそ化け狸の巨体に比べてあまりにも頼りない武器ではあったが、霊的に強化されたその短刀は妖怪の類にはわずかな傷でも容易に致命傷となるはずだった。
永遠に続くかと思われた化け狸の断末魔の絶叫が萎むように小さくなり、そのままゆっくりと後ろへと倒れていく。
倒れた化け狸はそのまま動かない。
だが日和はまだ気を緩めてはいなかった。
こちらを油断させる演技かもしれないのだ。
それを確認するために慎重に距離を詰めていく。
いつ化け狸が動き出してもいいように短刀を構えながら。
果たして日和の予想は当っていた。
手を伸ばせば届くほどまで近づいたところで化け狸の体に異変が起きる。
しかしその変化の内容は日和の予想していたものとは全く異なるものだった。
日和自身が付けた化け狸の腹にある大きな傷。
その傷から元の化け狸をそのまま縮小したような姿をした無数の小狸が飛び出してきたのだ。
大きさはまちまちで、大きいものでは成人男性の握り拳程度のものから、小さいものでは虫程度のものまでいる。
「きゃっ……!」
反射的に後ろに飛び退りながら短刀を振る日和。
破魔の短刀の軌道にいた何匹もがあっけなく消滅するが、そんなものは後から後から涌いて出る小狸達から見れば無視できるほどの損害なのだろう。
1対1ならばともかく、全く怯むことなく押し寄せてくる大群の前に短刀1本ではあまりにも分が悪すぎた。
手足に小狸がしがみついてくる感触。
次の瞬間、手足にしがみついる小狸の重さが何倍にも増した。
鉛の固まりでもくくり付けられたような重さは、普通の少女に比べれば鍛えている日和でも耐えられるものではない。
抵抗できたのも一瞬、すぐに四つん這いの姿勢で立ち上がることすらできなくなってしまった。
「あててて、まったく殺す気かっちゅうねん」
内容の割に緊張感のない声とともに、傷1つない腹をさすりながら大狸が体を起こす。
「そんな……、あれが効いてないの!?」
「んー、ちゃんと効いたで。せやから治療費は払ってもらわんとな」
大狸の口の端がいやらしく上がる。
戦闘の最中とは違い、値踏みするような粘ついた視線を感じ日和は背筋が寒くなった。
治療費と言っても目の前の大狸が人間の金を欲しているわけがないことは、それほど実戦の経験がない日和にもわかる。
「ち、治療費って……ひゃぅ!?」
1段高くなった日和の声が洞窟の中に反響する。
小狸の中でも特に小さいものたちが袖や裾から侵入を開始したのだ。
追い出そうにも手足を動かせない日和はせいぜい身体を揺することくらいしかできず、その程度では明確な意思を持って進んでくる狸の食い止めることはできない。
そして巫女装束の下に潜り込んだ小狸は思い思いの場所に陣取ると舌を這わせ始めた。
膝裏、腋下や脇腹などの敏感な部分で這いまわる軟体の感触に日和は身を捩る。
「や、やだ……入ってこないで。くすぐったいから舐めないでぇ」
「動いて汗かいたせいか、ちょっとしょっぱいで」
感覚が繋がっているのだろう、大狸の口にした感想に日和は頬を染める。
ただ、そんな羞恥は次にされることのまえでは文字通り前菜のようなものだった。
「そ、そんなとこ匂いかいじゃだめぇ」
小狸の1匹が下腹部でクンクン鼻を動かしているのが感じられたのだ。
「ここは小便の匂いがしよる。ちゃんと拭かなあかんで」
大狸の無遠慮な言葉の直後、少女にとって最も大切な部分を舌がなぞった。
「ひうううぅぅぅ」
くすぐったさを上回る怖気に日和の口から細い声が上がる。
だが何度も往復する内に不思議な感覚が沸き上がってきた。
今も全身を這いまわる舌によるくすぐったさとは少し異なる痺れるような感覚。
「お、こっちの方が反応しとるわ」
「いたっ! いたいよぉ!」
下腹部に意識を向けていたところで、いきなり別のところを襲った痛みに日和は悲鳴を上げた。
下腹部と同様、まだ未成熟で膨らみかけたばかりの胸に取りついて舌を這わせていた小狸がその先端に歯を立てたのだ。
先端が噛み千切られそうな鋭い痛みに涙を浮かべると、今度はまるで慈しむように優しく舌を這わされる。
ジンジンとした痛みが解きほぐされて、下腹部から生まれるものとは似ているようで異なる何かが込み上げてくる。
それを繰り返しされている内に痛みは減り、その不思議な感覚だけが強くなってきた。
頭の芯が痺れるような感覚の中で終わりが近づいてきているのがわかる。
そこへ至ればもう戻れないだろうという直感的な恐怖と、早くそこへ辿り着きたいという本能的な欲求。
「やだ、なにかくる。きちゃうようぅ!」
唯一自由に動かせる首を振って耐えようとする日和。
しかしそれを嘲笑うように小狸は責めの手を緩めない。
「んひゃぁ、だめ、だめええぇぇぇ!」
止めは日和の秘唇で本人も知らぬ間に硬さを増していた小粒を甘噛みされたことだった。
包皮の上からとはいえ、一瞬で頭の中を白く焼き尽くされ初めての絶頂を味あわされる。
「あ、あぁ……」
背筋が反り返り搾り出すような声が漏れる。
そして関節が砕けんばかりの痙攣の後には、反動のように弛緩が訪れた。
下腹部に生まれた尿意。
止めなければと思う暇さえなく溢れ出した小水が袴の緋色を濃く染め上げていく。
「せっかく綺麗にしてやろう思たのに、また汚してどうすんねん。これはお仕置きせなな」
「お、おしお……ひゃ」
新たに不浄の穴に生まれた舌の感触に、日和は反射的にそこをキュッと窄めた。
その反応をまるでたしなめるように、全身で我が物顔で動きまわる舌の動きが激しさを増す。
倍増するくすぐったさに意識が逸らされた隙に、肛門を狙っていた舌が先端を潜り込ませてきた。
先端だけとは言え、体の中で別の生き物の1部が入ってきている感触に日和は身を震わせる。
しかも小狸は舌先だけではなく、その全身を潜り込ませようとしてくるのだ。
「はいってくるぅ。こんなの」
もはや力が入れられない日和の括約筋は驚くほどの伸縮性を見せ、小さいとはいえ狸の全身を飲み込んでいく。
「むりぃ……むりだよぉ……」
なんとか全身を捩じ込もうと身を捩る小狸の体毛に尻穴の中と外を同時にくすぐられる。
やがて尾だけを残して小狸が腸内へと納まると、まるで日和自身から尾が生えているかのようになってしまった。
「はっはっはっ、四つん這いで尻尾まで生やしとる。こりゃ譲ちゃんの方がよっぽど狸みたいやで」
「う、うぅ……」
大狸の勝ち誇った声が響く中で、日和は体内の異物感にただ呻き声を上げることしかできない。
だがそれもわずかな間だけだった。
息苦しいほどの異物感が、あたかも氷が溶けるように薄れていくのだ。
1秒ごとに楽になっていく自らの体に、日和は安堵よりも不安を覚えていた。
「中に入ったんが同化しとるんや。これで一生尻尾付きやな。まあどうせここでずっと暮らすんやから問題ないやろ」
「そ、そんな……」
自分が人でなくなっていく。
不安を肯定する言葉に日和の中に絶望感が込み上げてくる。
「穴が塞がっても、排泄物はそいつが吸収してくれるから心配せんでもええで」
「ほなせっかく尻尾が付いたんやから、それ使ってみよか」
大狸のその言葉とともに、日和の尾がちょうど自身の秘園を覆うように身体に密着し前後に動き始めた。
「ふわぁ……や、やぁ……」
尻尾の毛が刷毛のように秘唇全体を擦り上げる。
特に最も敏感な小粒にチクチクと刺さってくる痛痒感がたまらなかった。
加えて日和の意思に反して分泌される愛液を尻尾が吸うことで生み出される快感が一層高まってくる。
先ほど初めて経験した高みが、再び急速に近づいてきた。
「だめ、また……あ、あ、あああああ!」
加減を付けて噛まれる胸の先端や全身を這いまわる舌の感触に後押しされて、日和は成す術もなく2度目の絶頂へと打ち上げられた。
2度目の絶頂に日和の全身がガクガクと痙攣する。
それが治まる頃、ようやく下腹部に張りついていた尾がその身を離した。
しかしそれによって日和が安堵を覚えたのは一瞬のことだった。
今度は秘唇全体ではなく、その中の1点に尾の感触が触れたのだ。
絶頂の余韻で霞む頭の中でも、それが何を意味しているのかがわかった。
「そ、それだけはぁ……だ、ひゃわああ」
静止の言葉も言い終わらぬ内に、滴るほどに粘液を吸った尾が膣内へと一気に埋没する。
先端から根元の方向に撫でられることで逆立った毛が膣襞と絡み合い、痒みと快感の混ざり合ったものが爆発的に沸き上がる。
「おーおー、キュウキュウ締め付けよる。そんなにええんか?」
「ひゃ、ひゃいぃ……きもひいいれすぅ……こんなの、おかしくなるぅ……」
経験したことのない感覚に翻弄され自分が何を言っているのかもわからない。
ただ大狸の質問に感じているままを口にする。
「そうかそうか、正直になった褒美に尻尾の方の感覚も繋げたるわ。良すぎて狂うかもしれんけどな」
直後、尾によって膣壁を擦り上げられる感覚に、尾の側が膣壁によって締め付けられる感覚が加わって日和の蕩けかけた脳を貫いた。
大狸の言葉通り気が狂いかねない快感に、もはや言葉にならない叫びが上がる。
地面に四つん這いになり尾を生やし、言葉とも呼べない吠声を上げながら快感を貪ることだけに集中する。
その姿にもはや人間としての尊厳はなく、完全な牝と成り果てていた。
そんな日和の姿を眺めながら大狸は満足そうに笑みを浮かべた。