俺はロキ。ガキの頃、戦争で両親を無くし、気付いたらこの孤児院にいた。  
 
そして、目の前で長剣を構えている銀髪の女性はレイナ。俺の師匠であり、同じ孤児だけど、姉さんとして俺は慕っている。…何故なら、  
 
『…う、うわ!?』  
 
俺は、剣を弾かれる。弾かれた剣は、数メートルの所まで離れた。  
 
『踏み込みが甘いわよ、ロキ』  
レイナ姉さんは、自分の剣を俺の前に突き出す。  
 
『少しは手加減してくれよ…レイナ姉さん』  
 
 
…レイナ姉さんは剣術がとんでもなく強い。  
俺は何回も手合わせして貰ってるが、一度も勝った試し無し。  
 
『ロキもまだまだ子供ね』レイナ姉さんは、微笑みながら剣を鞘にしまった。  
 
『…ちぇっ』  
俺は少し不機嫌そうな顔をする。  
 
『…次は、もう少し私を楽しませてよね』  
レイナ姉さんが、立ち去ろうと後ろ向いた!  
 
『隙あり!』  
 
むにゅ…むにゅ…  
 
俺は、レイナ姉さんの豊満な胸を後ろから両手でまさぐった。  
 
『…やっ!……ロキぃ〜〜〜!!!』  
 
怒ったレイナ姉さんは、顔を真っ赤にしながら再び鞘から剣を取り出す。  
 
だが、俺は既に逃げ去っていた。  
 
『…ったく、逃げ足だけは早いんだから……』  
 
 
 
俺は…強くなりたい。  
 
強くなってレイナ姉さんを好きにするのが俺の夢だ。  
 
でも、レイナ姉さんは俺と1歳しか歳が変わらないのに、どうしてあんなにも強いんだろう?元々、強い部族の出身だったのだろうか?  
 
俺は、普段疑問に思っていることを考えながらも、いつもと同じようにひそかにレイナ姉を越えるべく修行を始めたのだった。  
 
 
 
『…ただいま』  
 
クタクタになったまま、俺は孤児院に帰宅した。  
気付いたら、もう辺りは暗くなっていた。  
 
『兄ちゃん、お帰りなさい〜』  
孤児院のチビっ子達が、いつもの様に俺を迎え入れる。  
 
『ちゃんといい子にしてたか〜?』  
 
『うん!』  
 
俺は、チビっ子達の頭を撫でてやる。  
 
『…あれ?レイナ姉さんは?』  
俺は、見当たらない姉さんを疑問に思い、チビっ子達に聞いてみた。  
 
『台所でお料理してるよ〜』  
 
そうか。もうそんな時間か…。  
 
 
 
孤児院と言っても、元々は廃墟だった場所を俺と姉さんが勝手に住みやすくして、その代わりにレイナ姉さんの提案で身寄りのない子供を引き取って育てている。  
…レイナ姉さんは、剣術が強いだけでなく、何より優しい。…そして、美人でスタイルも最高!…だから絶対に未来の俺の嫁。  
 
『何よ、ニヤニヤして…』  
 
良からぬ妄想をしていた矢先、レイナ姉さんが料理を持って俺の前に出てきた。俺は、思わず慌ててしまった。  
 
『レ、レイナ姉さん、ただいま!』  
 
『お帰りなさい…夕食出来てるからね』  
 
『…うん』  
 
俺は、チビっ子達とテーブルに着いて合掌をし夕食を頂く。  
 
 
 
夕食を済ませ、俺は自分の部屋に戻って、今日は疲れたのでベットに横になった。  
 
そういえば、以前レイナ姉さんに夜ばいをかけたことがあったっけ。  
 
俺は、過去の回想を始めた。  
 
 
露出度の高い寝間着のレイナ姉さんが寝息をたてていた。  
…俺は、たまらず生唾を飲んだ。  
 
『姉さん…』  
俺は我慢出来なくなり、レイナ姉さんの肩を掴もうとした瞬間、  
 
ムギギギッ!!!  
 
『イテテテ!!!』  
俺は、レイナ姉さんに間接技をくらわされていた。  
 
『…夜ばいなんて、いい度胸じゃない』  
 
『いや…その、つい出来心で……昔みたいに一緒に寝ようかと……うがガガァ!!!』  
 
さらに、姉さんは強めに締めてきた。  
 
『ゴメンっ!!!反省するから!!!』  
俺は、必死に謝った。  
 
『…分かれば宜しい』  
と、レイナ姉さんはようやく間接技を解除してくれた。  
『イテテテ…ひどいよ……姉さん』  
 
『ロキが悪いでしょ?寝ている女の子の部屋に勝手に入ってくるなんて最低よ!それに……』  
 
『それに?』  
 
『…仮にも、あなたは私の弟なのよ!』  
 
『別に、俺が憧れる人が誰だろうといいだろっ』  
 
すると、レイナ姉さんは少し顔を赤らめた。  
 
『…そうねぇ。じゃあ、私の好みの男性って、自分より強い人なの。…ロキが私より強くなったら、恋人でも奥さんでも何でもなってあげる』  
 
『ま…まじか?』  
 
『早く私より強くなってね♪』  
 
『…うん。レイナ姉さん、俺、頑張るよ!……その前に、前払いということで今日だけ一緒に……』  
 
と、俺は姉さんのベットに入ろうとする。  
 
すると、姉さんは剣の鞘を取り出したので、  
 
『お、オヤスミ!レイナ姉さん!』  
と、俺は一目散に自分の部屋に逃げ出したんだ。  
 
 
 
…今となっては、いい思い出だったのかも知れない。  
 
 
しかし、  
″早く私より強くなってね″  
 
……この言葉にレイナ姉さんの深い意味が隠されていたなんて、俺はまだ知るよしもなかった…。  
 
 
 
次の日、俺とレイナ姉さんは、食料調達の為、孤児院から少し離れた森林に訪れていた。  
 
食料となる獲物、草や木の実など植物を調達し終えて、俺と姉さんは孤児院に帰ろうとしたんだ。  
 
…すると、  
 
『ロキ……孤児院の様子が何か変じゃない?』  
 
『…言われてみれば…』  
 
遠くだから少しわかりにくいが、たしかに煙らしきものが見える。  
 
すると、姉さんは顔を真っ青にして、  
『…凄く嫌な予感がする……ロキ、行くわよ!』  
と、俺の腕を掴む。  
『お、おい、レイナ姉さん!』  
姉さんと俺は、荷物を地面に置いたまま孤児院に向かった。  
 
 
『…そんな……』  
 
俺とレイナ姉さんは、目の前に光景に目を疑った。  
 
孤児院は、倒壊し荒れ果てた姿。  
 
代わりに狼の様な化け物がいた。しかも、通常の狼よりも数倍も巨大な体だ。  
 
『…あれは、……魔狼・フェンリル』  
 
『…な、なんだって!?』  
俺も、聞いたことがある。…魔界に生息し、神をも飲み込むとも呼ばれる伝説の魔物。  
…一体、どうしてこんな化け者が…。  
 
さらにフェンリルの後ろには、黒い鎧を身にまとった赤毛の男が。  
 
…この魔狼を従えるとしたら、一人しかいない。  
 
魔界の王……魔神・スルト。  
 
どうしようもない恐怖心が俺を支配した。  
 
…だが、レイナ姉は剣を抜いていた。  
 
『レイナよ…貴様を迎えにきた』  
 
『父上……ここにいた子供達はどうしたのですか!?』  
 
 
…父上!?  
 
 
レイナ姉さんは、あの魔神の娘だったのか!?  
 
 
『…ああ、貴様が我の言葉を大人しく聞かないそうなのでな……フェンリルの餌にしてやったよ』  
 
 
……悪夢だ。きっとこれは俺の夢の中なんだ……と、自分に言い聞かせるしかなかった。  
 
『……許せない!』  
 
レイナ姉さんは、構えていた剣でフェンリルに立ち向かった。  
 
『…いいだろう。我、娘の成長ぶりをとくと拝見するとしよう……フェンリルよ、行け!』  
 
スルトの合図とともに、フェンリルはレイナ姉さんに襲いかかった。  
 
フェンリルの猛烈な突進!  
…だが、レイナ姉さんは軽々とそれをかわした。…そして、  
 
『グルオォォォォォ!!!』  
 
…フェンリルの断末魔が。  
レイナ姉さんの剣が、フェンリルを一刀両断していた。  
フェンリルは、静かに地面に倒れる。  
 
…俺は、未だ目の前の光景を信じられずにいた。  
 
『…さすが、我が娘だ。魔族としての力は衰えてないようだな』  
 
『……!』  
 
次の瞬間、さらにレイナ姉さんはスルトに向かって斬撃を繰り出した!  
 
…しかし  
 
ギィィィィィン!!!  
 
スルトは、おぞましいほどの赤く染まった剣で、レイナ姉さんの剣を受け止める。  
 
『…魔剣・レヴァンティン。……我が娘に振るうことなろうとはな』  
 
『父上……どうしてこんなことを……』  
 
『レイナよ……忘れたではあるまいな!……魔族にとって、人間を滅ぼすことが使命。……貴様も、魔族と同じ血が流れているのだ!』  
 
『私は、そんなこと望んではいない……どうして、人間と共存してはならないの、父上!』  
 
『…まだ、そんな馬鹿げたことを言っているのか、レイナよ……魔族の恥を知れぃ!』  
 
スルトの目付きが変わり、レヴァンティンが姉さんの剣を押し出すと同時に……姉さんの腹部を切り裂いた!  
 
 
レイナ姉さんの血が、地面に滴り落ち、崩れる様に倒れた。  
 
…一瞬の出来事だった。  
 
 
 
『…レ、レイナ姉さん!!!』  
俺は、倒れた姉さんに叫んだ。  
『…安心しろ、人間よ。我が可愛い娘を本気で殺す真似はせん』  
 
『……ロ…キ…………父上……お願い…です……ロキ…だけは……殺さないで………うっ』  
レイナ姉さんは、最後にスルトに訴えたと同時に、気を失った。  
 
スルトは、倒れたレイナ姉さんを抱きかかえた。  
 
『…例を言うぞ、ロキとやら。我が娘を今まで大事に見守っていたのだな。……褒美に、魔族として貴様を迎え入れようぞ!我と共に人間族を滅ぼすのだ!』  
 
 
 
…俺は心底、コイツを憎んだ。  
孤児院のチビ達を虫けらの様に殺した上に、俺のレイナ姉さんまでも……。  
 
『……ふ、ふざけるな!!!……うおぉぉぉぉぉ!!!』  
俺は、自分の剣を抜き、スルトに向かっていった。  
 
『…それが答えということか……やはり人間は、愚かな生き物だな!』  
 
スルトは、片手を広げた。  
スルトの手から発せられた巨大な衝撃波のようなものが、俺を襲った。  
 
…俺は吹き飛ばされ、まるで人形の様に地面に叩きつけられる。  
 
 
 
…俺がかなう相手じゃなかった。  
 
 
 
『……死に行くと共に、自分の愚かさを存分に後悔するがいい』  
 
 
 
…ち、ちくしょう……  
 
 
 
段々、俺の意識が薄れていった……。  
 
 
 
…気がついたら、俺は見知らぬ部屋のベットで寝ていた。  
 
『…うぐっ!』  
すぐに体を起こそうとすると、全身に激痛が走った。  
 
『やっと目が覚めたみたいだな……もう丸3日も寝てたんだぞ』  
 
部屋の奥から、きこりの様な風格の青年が姿を見せた。  
 
 
…そうだ。俺は……  
 
 
『…あんたが俺を介抱してくれたのか。すまない…礼を言うよ』  
 
俺は、体を無理矢理起こした。  
 
『…礼には及ばんが、一体、そんな体で何処へ行くんだ?…もう少し休んだほうが…』  
 
その青年は、俺を止めようとする。  
 
『あんたのお陰で、なんとか歩ける。……俺は一刻も早く、しなければならない事があるから……世話になった』  
 
『…お前さんがそこまで言うなら仕方ないが……気をつけるんだぞ』  
 
俺は青年に手を振り、青年の家を後にした。  
 
 
 
…たしかに、もう一度スルトと戦っても結果は同じ。せっかく拾った命だから、ムダには出来ない。  
 
スルトは、レイナ姉さんを連れ戻しにきたのだから、暫くはレイナ姉さんは無事だと思うが……スルトが人間族を滅ぼそうとすることはたしかだろう。  
 
俺は昔、レイナ姉さんに己の強さを磨くのに最適な職業が存在するというのを聞いた事があった……。  
 
 
 
……竜狩士(ドラゴンバスター)。  
 
 
 
竜族の中には、神々と同等な力を持つと呼ばれる竜が存在という。  
その竜が守っている先に、秘剣・バルムンクが眠っているらしい。  
 
…俺は、その秘剣を目指そうと思う。  
 
その秘剣があれば、魔族と互角に戦えるはずなんだ。  
 
…そして、レイナ姉さんを必ず取り戻す。  
 
 
…思いを胸にしまい、まだ15歳の俺の長い旅が始まったのだった。  
 
 

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