平成十七年七月某日。この日、地球は後にジャッジメント・デイと呼ばれる大災害に  
見舞われた。手早く言うと、NASAもびっくりの流星群が、地球をかすめたのである。  
本星の直撃こそまぬがれたものの、直径が十キロメートル以下の隕石は地球の引力  
にめげて、次々に落下してきた。その数、大小あわせて数億個。それらは嫌がらせの  
ように世界中へ降り注ぎ、その結果、人類のほとんどは淘汰されてしまう。さらに、何  
とか生き残った人々には、過酷な環境の変化が待ち受けていた。  
 
 
「そろそろかなあ」  
舞は二、三日前から、ずっと手紙を待っている。差出人は、アメリカに住むジェニーと  
いう文通友達。会った事は無いが、写真で顔だけは知っている。年は舞と同じ十歳。  
白い肌にそばかすがいっぱい散った、可愛い女の子である。  
「あ、あれかな?」  
舞は水平線の向こうからやってくる何かを見つけた。それは大きな鳥だった。足にアメ  
リカの国旗をイメージした輪っかがついている。間違いない。あれは、アメリカから来る  
定期郵便鳥だ。舞は大きく手を振った。  
 
「ここだよ!」  
手を振る舞のもとへ、鳥はやってきた。が、しかし、それは鳥と呼ぶには恐れ多いほど  
大きい。体長は二メートルもあろうか、羽は伸ばすと舞の視界を完全にふさぐほどの長  
さになる。どうみたって、ただの鳥ではなさそうだ。けれども舞は鳥を恐れる事無く、優し  
い目で見やった。  
 
「長旅、おつかれさま。ゆっくり休んでね」  
舞は鳥の足に添えられた鞄を受け取ると、背負っていた麻布のリュックからトウモロコシ  
を取り出した。鳥はそれを美味そうに食べると、近くに建っている小屋の屋根へ移動。羽  
を休めるつもりらしい。相手が鳥なので、洒落にはならないが、文字通りの羽休めだ。  
 
「あった!MAI・SIKANO・・・あたしあての手紙だ」  
鞄の中から取り出した一通の手紙。それこそが、舞が待ち望んだ物だった。ジャッジメント・  
デイ以降、世界はこうやって私信のやりとりをするようになっている。世界中を結んでいた  
電話回線は失せ、今じゃテレビすら無い。世界に降り注いだ隕石は、ありとあらゆる文明の  
利器を破壊してしまった。作り直そうにも、すでにその技術は無い。それどころか、人類は  
もとの人口の数百分の一にまで激減していた。国そのものが消滅した所もある。はっきり  
言うと、人類は生きるだけで精一杯の状況だった。  
 
「ありがとう、ジェニー・・・後で大切に読むね」  
舞は手紙を胸にあて、目を閉じる。まだ見ぬアメリカにいつか行ってみたい。行って、ジェニ  
ーに会いたい。きっと、二人はいい友達になれるだろう。舞は手紙をもらうたびに、そんな事  
を考える。  
「いつかきっと、この海を越えて行ける・・・アメリカに」  
気がつけば水平線に夕日が落ちていた。舞は慌てて郵便鳥が持ってきた鞄を手にして、波  
打ち際まで駆けて行く。  
 
「ねえ、ちょっと」  
舞はその辺にいた亀に声をかけた。亀といっても、並みの亀ではない。なんとその大き  
さは直径五メートル近く。一メートル三十そこらの舞から見れば、相手はかなりの大物  
である。しかし、大きさもさることながら、何とも面構えがふてぶてしい。その上、亀は舞  
を一瞥すると、鼻を鳴らしてそっぽを向いた。中々の曲者と見える。  
 
「ねえ、ちょっと!って、言ってるでしょ!」  
ガツン、と亀の尻を蹴る舞。しかし亀は知らん顔だ。小娘の蹴りなぞ、何事があろうか。  
そう言っているようだった。  
「ねえ・・・ちょっと、頼みを聞いてよ」  
今度は猫なで声に切り替えた。しかし、亀はそっぽを向いたまま、尻の先にいる舞に放  
屁をする有様。完全になめられているらしい。  
 
「く、くっさーい!煮て、食べちゃうぞ!この!」  
そうは言っても亀はまるで動じない。舞が亀を食べないのを知っているからだ。さらに追  
い討ちをかけるように、亀は糞まで漏らし始める。それを見て舞は頼み事をあきらめた。  
「はーあ・・・亀はあてにならないか」  
とぼとぼと波打ち際を歩く舞。実は今、人間は地球の王者では無くなっていた。あのジャ  
ッジメントデイ以降、人類は食物連鎖の頂点から滑落し、今やしがない一生物と成り果  
てている。それは、この亀の態度を見ればお分かり頂けるだろう。特に舞のような少女は、  
どちらかといえば弱者にあたる。  
 
「亀に乗せてってもらうつもりだったんだけどなあ・・・」  
舞は小さな浮き島に一人で住んでいた。父母の顔は知らない。育ててくれたのは以前  
ここに住んでいた老人である。その老人は、この浮き島と少し離れた本島の間で郵便物  
を届ける役目をしていた。そして老人が死に、舞はその跡を継いだのである。島の郵便  
屋。そう呼ばれている舞は、何とか手にした鞄を今日中に本島へ届けたかった。手紙を  
待っているのは、自分だけではない。皆、異国から来る便りが楽しみなのだ。  
 
「鳥さんは・・・お疲れ気味か」  
小屋の上にいる郵便鳥は長旅を終え、眠りについている。となると、後はやはり・・・  
「こいつしかいないのか」  
今も波打ち際に佇む亀。それしかいない。しかし、屁を垂れ、糞も垂れではかなわないの  
で、舞は亀の前に回り、もう一度頼む事にした。  
「お願い!後でおいしいゴハンおごるから!」  
手を合わせ、亀にすがる舞。ここいらが弱者の悲しさである。けれども、亀はそんな舞を  
見ても知らん振りを決め込んでいた。誠意が足りないのではないか。亀はそんな眼差しで  
舞を見下ろしている。  
 
「くッ・・・腹立つなあ・・・」  
仕方が無いので舞は亀の前に伏せ、頭を砂浜につけて服従のポーズを取った。すると亀  
は首をちょっと横に振る。  
「えっ?後ろ向けって?」  
嫌な予感がする。しかし、舞はゆっくりと体を入れ替え、亀に向かって尻を向けた。  
 
「ちぇッ。急ぐのに・・・」  
舞は砂を掘って、そこに身を潜めた。そしてハーフパンツとショーツを脱ぎ、ヒップを高く  
上げると、亀が巨体を揺すって前に進み出る。  
「手早く済ませてね。今日中に本島に行かなきゃ駄目なんだから」  
舞は両手を広げて、思いっきり自分の尻たぶを左右に割った。そこをめがけて、亀の性  
器が迫っていく。サイズは小さいが、生々しい肉感があった。  
 
「うッ・・・つ、冷たいなあ」  
自らくつろげた女穴に、亀の性器が入ってきた。舞は目を瞑って、それが奥まで入りきる  
のを待つ。  
「ああ・・・どうして、こんな事をしたがるんだろう・・・不思議だな」  
舞はこの行為自体が、何を意味するのかは知らない。ただ、亀が求めるので、応じてい  
るだけである。しかし、胎内にねじ込まれた何かが、体の芯を熱くする事だけは分かって  
いた。それは、不思議な感覚だった。  
 
「今日も、中でおしっこみたいなやつ・・・出すのかなあ。アレ、やられると後始末が大変  
なのに」  
何か肉っぽい物が、中で蠢いている。舞はジンジンと疼く股間に手をやった。最近、皮が  
向けっぱなしの小さな肉の蕾を触ると気持ち良いので、舞はそこを指でそっとなぞる。  
 
「あ、うん・・・な、何か変な気持ち・・・」  
亀の性器に女穴を満たされた舞は、自然と淫らな気持ちになっていた。肉の蕾をいじり、  
しばらくすると素晴らしい時が訪れる。それが絶頂だという事は、もちろん知らない。  
 
「あッ・・・来る・・・いつものやつが」  
腰の辺りがカーッと熱くなり、全身が何かに包まれる。舞は絶頂の瞬間を、そんな風に  
とらえていた。それに合わせ、亀が引導をくれてやった。射精をしたのである。  
「あッ!やだッ・・・」  
砂の中へ突っ伏し、舞は受精した。相手は弱みに付け込むあざとい亀。しかし、弱者で  
ある以上、舞はそれを受け入れねばならない。亀の射精は長く、また粘液の量もおぞま  
しいほど多かった。  
 
「ああ・・・」  
頭の中が白くなり、舞はふと気を失いかけた。絶頂が身を包んだときに見る、白昼夢の  
ような何か。舞はおぼろげにそれを追う。  
「気持ち・・・いいなあ」  
認めたくは無いが、それは事実だった。だから亀がそれを求めても拒まない。また拒む  
気も無かった。  
「また・・・出されちゃった」  
女穴を満たす粘液。舞は亀の性器が抜かれると、それを指で掻き出した。割れた女唇  
が赤く充血し、忌まわしい動物の子種を染みさせている。舞は性毛すら生えていない  
小さな道具で、きちんとおつとめを果たしたのであった。  
 
亀は行為を終えた後、舞をちゃんと本島に連れて行ったくれたので、何とか郵便屋の  
仕事は遂行できた。皆、手紙を喜んでくれたので、舞も嬉しかった。  
「さて、あたしもジェニーからの手紙を読もうかな」  
手作りのランタンに火を入れて、手紙の封を開ける。異国の空気が入っているかも。舞  
はまず、手紙の匂いを嗅いだ。  
 
「なになに・・・お元気ですか、舞。うん、元気よ」  
舞は英文をすらすらと読み、いちいちそれに受け答えをする。英語は死んだ老人から  
学んでいた。  
「アメリカは徐々に復興しつつあります。もしかしたら、近い未来に日本に行けるかもし  
れません。そうかあ・・・凄いなあ、アメリカは」  
ジェニーと知り合ったきっかけは、数年前にあてもなく流した瓶詰めの手紙だった。それ  
がアメリカに流れ着き、ジェニーという少女の手に渡ったのである。そして彼女との文通  
により、ジャッジメント・デイ以降の世界の情勢が少しずつ分かってきた。  
 
「あたしの写真をまた同封します。舞のところにもカメラがあればいいんだけど・・・カメラ  
ってなんだろう?写真を作る道具かな。あっ、ジェニーが笑ってる」  
舞は手紙に添えられた写真を見た。そばかすまみれのジェニーが笑っている。その後ろ  
には家族だろうか、たくさんの人々が一緒に写っていた。  
 
「どんな事があっても希望を捨てないで、舞。きっと、会えるから、その時を楽しみにして  
ください。ジェニーより・・・か」  
手紙はそう締めくくられている。舞はふと窓の外を見た。今日は月夜なので、富士山が良  
く見える。  
 
「希望を捨てないでって・・・どういう意味だろう?変なジェニー」  
舞は月がかかった富士山の姿を見た。いつもの通り、すぐそばにある。それこそ泳いで行  
けるくらいの所だ。そう、泳いで──  
「そうだ、返事を出さなきゃな。明日には郵便鳥も帰っちゃうし」  
ジェニーに返信をと、舞は机に向かう。紙は本島で何枚か貰ったやつがある。ペンは木を  
削ったもので、インクは墨を摺った物だ。  
 
「ジェニーへ。手紙が届きました。届いたのは満月の日で、夜でも富士山が綺麗に見えま  
す。私はさっそく一緒に届いた手紙を本島のみんなへ届けました・・・」  
流れるような筆記体で手紙を書く舞は、最近あったすべての事を綴るつもりだった。今日は  
筆の滑りが良い。やはり、亀とあの行為をしたからだろうか。しかし、これは手紙には書か  
なかった。  
 
「この前、ジェニーが手紙でたずねてきた事のお返事を書きます。私が住んでる場所は  
富士山のすぐ近く。泳いで五分くらいの所です。夏はきれいな花が咲きます。一度、ジェ  
ニーにも見て欲しいです」  
ジャッジメント・デイにより、地球の環境は激変していた。地表に激突した隕石は噴煙を  
巻き上げ、厚い雲が空を被ってしまった。それにより地熱が包みこまれ、温暖化が進ん  
でしまう。そうして暖められた地球は、北極と南極の氷を溶かしてしまった。  
 
「ジェニーが前に書いてた、日本はもともと山ばかりの国ってホントなの?私の家からは  
見渡す限り海なんだけど・・・山なんて、目の前にある富士山くらいよ。それだって、歩いて  
登れちゃうほどの山だし」  
今、日本の大半──いや、世界の大半は水没している。比較的山が多かった日本でも、  
生き残ったのは数えるほどしかおらず、広大な土地を有するアメリカでもそれは同じだ。  
 
「会いたいね。ううん、絶対会おうよ。私、待ってる。ジェニーと会える日を。もしかしたら、  
私の方から会いに行くかも。その時は、驚かないでね。それでは・・・」  
舞は手紙を書き終えるとランタンの火を消した。もう、眠くなっていた。  
「さて、寝ようかな」  
小屋の隅にあるベッドに寝転び、舞は布団を被った。目を閉じると、笑っているジェニーの  
姿が脳裏をよぎる。舞はその晩、アメリカの夢を見た。  
 
おしまい  
 

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