「泉美、お前って浴衣似合うな」
あいつが唐突に言ったのは、町内会の七夕祭りでのことだった。
「……あんたに言われてもねえ」
確かに今日は髪も束ねているし、浴衣も少し背伸びした感じの柄を選んだけれど。
特に気にしたようなそぶりも見せないようにして、私は用意された短冊とペンを手に取る。
私の幼馴染の亮太は、年齢の割にはかなり子供っぽい。
しかも背は私のほうがずっと高い事もあって、昔から私が姉のように色々と世話してやっていた。
「相変わらず、子供なんだから」
亮太は年齢問わず、町内の他の子と色々話して回っている。ノリがいいからどの世代にも受けがいいのだろう。
そんな亮太を見ているのが好きなのか──思わず、私は微笑んでいた。
「なあなあ、泉美は短冊に何て書いたんだ?」
一通り回ってきた後で、亮太が私に短冊を見せてくる。
何でもない、しかし亮太らしいお願いが、そこには書かれていて。
「……亮太、ここ字が間違ってるよ」
「え? まあ、別にいいじゃん」
「もう、そんなんだからこの前の全校一斉テストでもダメダメな成績になるんじゃない」
構わず短冊を飾ってしまう亮太に向けて、苦言を言う。それでも。
「いーんだよ、いざとなったら俺には泉美がいるんだから、な?」
「もう……」
「それより、泉美は何て書いたんだ? 俺にも見せろよ」
私の手に握られている短冊に興味を移したのか、亮太が聞いてくる。
「秘密。見せてあげない」
くすりと笑って、私は短冊をひらひらさせて踵を返す。当然のように良太は追いかけてくる。
「何だよ、いいじゃんか。長年の付き合いだろー?」
私の願いは、ほんの些細なもの。文面にはっきりとは書かないけれど。
──この楽しくて優しい幼馴染と、ずっと一緒にいられますように。