西暦2100年、エイズをはじめとする性感染症で人類は存亡の危機に立たされた。政府は結婚相手以外との性行為を禁止する。
その裏で性ビジネスは発達を遂げ、遺伝子操作で改造された様々な性玩生物が人々の性欲を満たした。それらとの交わりは、妊娠や感染症の恐れが無い為、政府は公認し、未成年者との接触も暗黙する。
そして、女性向けの風俗店が誕生した。そこでは、性玩生物が女性達の接客をする。少女達は、それらの生物を初体験の相手としていた。
一人の少女が、或る店に入って来た。
「いらっしゃいませー!今日のお遊び相手はどれにされますかー?」
「あのー、初めてなんですけど」
店内にずらりと並んだ写真。
「こちらの大蛸などはいかがでしょうか?たくさんの吸盤が体中の性感帯を吸い尽くしてくれますよ!」
「でも、体に痕が付きそうで…」
「では、ニシキヘビなどは?力強い抱擁は、息が詰まるほど気持ちいいですよ!」
「いや、それはちょっと」
こんな場所で絞め殺されるわけにはいかない。
「あっ、これは?」
ひとつだけ美しい花のような写真がある。
「これは新人の巨大イソギンチャクです!毒の代わりに媚薬による全身マッサージは絶品ですよ!」
人でもないのに”新人”というのは変だと思いつつ、「じゃあ、これでお願いします」と決めてしまった。
「それでは、ごゆっくりお楽しみください!」
部屋に案内された。そこは小さな前室になっている。内側から鍵を掛け、そそくさと服を脱ぐ。大人向けの色っぽい下着は、この日の為に買ったものだ。その姿を鏡に映し、気合を入れる。
(よしっ!がんばるぞ!)
後ろを向き、初めての体験に期待と不安で胸をドキドキさせながら裸になる。恥らいが残る初々しい処女の姿だ。そして、両手で前を隠しながら、奥のプレイルームに入った。
「何、これ?…うっ!」
吐きけをもよおした。部屋に立ち込める生臭い磯の香り。そこに、丸いソファーの形をしたグロテスクな肉の塊。表面はべっとりと粘液にまみれ、心臓が脈を打つようにドクン、ドクンと蠢いている。
(あの写真と全然違うじゃない!)
一瞬、躊躇した。これとするのだ。でも、引き返すのはもっと嫌だ。
(えい!やっちゃえ!)
深呼吸をし、思い切って、その上に腰掛ける。
「くううーーっ!」
おぞましい感触が尻に伝わる。やがて、彼女の体温を感じたのか、もぞもぞと動き始めた。
「くっ、くすぐったい。ふっ、ふふっ」
すると突然、尻の下から百本にも及ぶ触手が現れ、一瞬で彼女の体を包み込んだ。
「いやああああーー!」
あまりの気持ち悪さに絶叫をあげる。全身を腐った内臓に包み込まれているようだ。
「うわあああー!うわあああー!」
胴と太腿に巻き付かれ、もう逃げる事は出来ない。そして、粘液に含まれた毒−媚薬が皮膚から浸透しはじめた。女の体を知り尽くした触手の愛撫が始まる。
胸を包み込み、ゆったりと揉みほぐし、乳首をいじる。
胴を心地よく締めつけ、背中をさする。
内股をくすぐりながら、足と手の指の間を這う。
「あっ、ああっ、すごい…ほんとうに…きもちいい」
時折、股の溝をヌルリと舐める。
「はあっ!」
濡れ具合を確かめているのだ。
「もう、がまんできないよ…。はやく…はやく」
目の前で一本の触手が変形し、男根を形作る。少女を傷つけないように少し小ぶりだ。それは淫唇へとあてがわれた。堅く閉ざされた入り口をほぐしながら、ゆっくりと中に入ってくる。同時に尻の穴、そして尿道へと細い触手が滑り込む。
「おおっ!おおっ!」
少女は快楽に陶酔した。
そっと目を閉じる。これは幻覚だろうか?自分は海の中を泳いでいる。美しい珊瑚礁、色とりどりの熱帯魚。まるで人魚にでもなったように大海原を自由に泳ぐ。なんという気持ちよさだろう。自然と自分が一体になった気分だ。
漆黒の深海に光を見つけた。その光めがけて潜ってゆく。もう、戻れないかもしれない。それでも少女は、深く、深く、潜っていった。そして、眩い光に包まれた。
「ああああああっ!!」
初めての絶頂だった。
気が付くと、イソギンチャクの上に座ったままだ。体に絡み付いた触手が徐々に離れて本体に戻ってゆく。
一筋の涙が流れた。少女が女に成った瞬間だ。
一ヶ月後、他の少女がその店を訪れた。
「えーと、噂のイソギンチャクは?」
「申し訳ございません。本日は予約がいっぱいで…。あっ、そうそう、期待の新人が入店しましたよ!巨大ウミウシです。身体に絡み付いて、ぬるぬるマッサージで何度でもイかせてくれますよ!」
未来の歓楽街は、少女達の歓喜で満ち溢れている。