「あ……はぁ……ああん……あん!」  
マスターの動きと息づかいが激しくなっていく。  
「マスター……マスターァ!」  
彼の背中に手を回し、私は胸を擦りつける。その刺激の入力が私の快楽中枢回路にとどめを刺す。  
「は……はぁああああ!い、いっちゃう、いっちゃうよぉおおお!」  
快楽情報が全身のケーブルを駆けめぐり、私は電撃でも受けたかのように、びく、びくと体を仰け反らす。 
人造性器もその情報に喜び、彼自身を激しく締め付ける。  
今までならば、ここで終わりだったけど……。  
マスターは快楽に顔を歪めながらも、さらに動きを激しくする。  
「く、く……、リミア、リミアぁ!」  
「ああああーっ!マスター、マスターぁ、出して、出してぇ!!私、壊れちゃうよぉ!」  
データがオーバーフローし始め、視界がホワイトアウトしだす。  
今や、股間からの情報は演算回路を支配して、私は快楽を感じる事以外に機能しない機械人形となっていた。  
「マスターぁ……も……うダメ……機能……止まっちゃう……」  
「く……う……もう……さすがに……」  
その時、私の中で彼がはじけて。  
子宮内のセンサーに精液が染み渡り。  
 
−強制シャットダウン。機能停止−  
 
「マスターぁ……最近すごい……はぁ……はぁ」  
まだ回路の熱がおさまらない。  
「ま、そりゃ毎日やってりゃ少しはね。お前の弱いところも解ってきたし」  
「もう……」  
微笑みながらちょっと不安になる。  
「マスター、飽きてきたりとか……ないですよね」  
そんなことマスターが言うはずない、と解っていても不安になる。  
「……あのなあ。俺がお前のこと、セックスロボットとしか見てないとでも思ってるのか?」  
「いえ……」  
「そりゃ俺だって男だからやれる方がいいし、家事だってしてもらえば助かるけど……もうリミアは俺の家族だろ」  
「……ごめんなさい。マスター……」  
そう言ってキス。  
「……とは言うものの、今日は疲れたわ……。そろそろ寝ようか」  
「あ、はぁい」  
「あ、そうだ。俺、明日夜いないからな。……女じゃないぞ」  
ちょっと前のことを思い出してしまう。……ああ、恥ずかしい。  
「わ、わかってますよ。そんな事、もう思わないです……」  
「久々に来る友達がいるんでな、ちょっと飲んでくるわ」  
「そうですか。あ、それじゃ私も出かけてきていいですか?」  
「ん?どこいくの」  
「博士とお姉様の所に顔出してきます。久しぶりですし」  
「そうか、解った。いっといで」  
「はい。んじゃ……」  
私はマスターの股間に顔を近づけていく。  
「……おい」  
「明日できないんでしたら、その分も……」  
「お、おい……う、うぅ……」  
 
 
 
「それじゃ、行って来ます」  
「ああ、俺もこっちが終わったら行くよ」  
「そうですか。それじゃ待ってますね」  
そう言って家を出る。私にとって久々の外出。  
ふと、電車の窓から外を見る。  
そろそろ季節は冬。もう、マスターと暮らし初めて一年になるのね。  
いろいろあったなあ。  
私はマスターの家に来るまでは、博士が私の前に創ったアンドロイド、  
麗羅お姉様の元で暮らしていた。  
優しいお姉様。久しくあっていないけど、元気かしら。  
……博士と毎日大変なんだろうなあ。いろいろと。  
 
「こんにちわー、リミアです」  
インターホンに向かって挨拶。  
博士がお姉様にプレゼントした家。今は博士と姉様の愛の巣、というところなのかしら。  
「あら、リミアちゃん!どうしたの!」  
「えへへ、お姉様お久しぶりです」  
「ちょっと待っててね。今開けるから」  
パタパタと足音がしてドアが勢い良く開くと、私より頭一つ高い背に、私より一回り大きな胸、ロングヘアと切れ長の美しい目を持つ女性が現れる。  
安藤麗羅。私のお姉様。  
「いらっしゃい。急にどうしたの?」  
「マスターが今日出かけるって言うんで、それならちょっとこっちに挨拶にでもと思ったんです」  
「あら、連絡くれれば良かったのに。雅臣さん、いないわよ」  
「え、そうなの?」  
「ええ、なんかたまには一人で温泉旅行ですって。……ま、風俗にでもいってるんじゃないかと思うけどね。帰ってくるのは来週よ」  
「あら……。驚かせようと思ったのが裏目になっちゃったなあ」  
「そうねえ。……智宏さんも浮気?」  
「そ、そんな訳ないです!」  
「あはは、冗談よ。まあ、せっかく来たんだから泊まっていきなさいな。  
久々に姉妹水入らずですごしましょう」  
「はい。それじゃお邪魔します」  
……その時、お姉様の目が光ったように見えた。  
 
お風呂から上がるとお姉様はテレビを見ていた。  
二人きりで食事をするのも変だから、テーブルの上には何も出ていない。  
「いいお湯でした。あのお風呂も久々ですねえ」  
「うん、ちょっと小さいけどね。……ところで最近どうなの?」  
「何がです?」  
「決まってるじゃない。智宏さんとよ。しっかり女にしてもらったんでしょ?  
聞いたわよ。デバイスドライバの作成まで手伝ってもらったってねえ」  
「あ、あれはマスターが!」  
たちまち私のCPUは発熱を始める。……弱いなあ。私。  
「まだ若いからなあ。いいなあ。雅臣さんやっぱり歳でねえ。ま、その割には元気なんだろうけど。毎日してるんでしょ。どうせ」  
「お、お、お、お姉様には関係ありません!」  
「あらあら、真っ赤になって可愛いわあ」  
「し、知りません!もう寝ます!」  
ニヤニヤと笑うお姉様を後目に、私は元自分の部屋、今は博士が使っているベッドに向かう。  
使い慣れたベッドに潜り込み、シーツを掛ける前にメンテナンスパネルに電源ケーブルを接続する。  
「あ……」  
残量が半分ほどになったバッテリーから、安定した外部電源に動力が切り替わると、体に力が戻ってくるような感覚がある。  
「とは言っても、寝るんだけどね」  
久々の一人のベッド。……やっぱりちょっとさみしいなあ。  
マスター、今日は徹夜かしら。……ま、いいや。  
枕に勢い良く頭を沈めて目を閉じ、スリープモードへと移行する。  
−スリープモード移行準備。30秒後に機能停止。再起動は7時間後−  
はい、確認OK。  
徐々に私のCPUへの入力が減っていく。……おやすみなさい。  
意識が闇に落ちる前に、部屋のドアから音がしたような気がした。  
 
−システムチェック……右胸部感覚素子、エラー。再起動開始−  
「ん……」  
あれ……?もう朝……?いや、時間はさっきから一時間くらいしか経っていない。どうして?  
混乱したまま目をあけると、そこはマスターの家のものとそっくりなメンテナンスベッドの上だった。  
いつのまにかそこに私は寝かされている。  
あ……さっきのエラーって……。  
私の右胸の人造皮膚は取り外され、その下の感覚センサーや、乳首内部の乳液口がむき出しになっている。  
「な、何これ……」  
「おはよう、リミアちゃん」  
「……お姉様」  
私の横には、全裸のお姉様が妖しい笑いを浮かべて、たたずんでいた。  
「ね、姉様。どうしたの?私、壊れちゃったの?」  
「いえ、そんな事ないわよ。あなたは正常動作してるわ」  
「だったら……」  
「うふふ、前からね。リミアちゃんといい事したかったのよ……」  
そう言って私に顔を近づけてくる。  
ベッドから立ち上がろうとするが、体が動かない。  
 
「あ……」  
「ふふ、手足は動かないようにしてあるわよ」  
「や、やめて……。わ、私たち姉妹同士で……」  
「姉妹同士だから……楽しみたいのよ……。お互い愛してる人はいても、これなら浮気になんかならないでしょう」  
「そ、そんな……いやぁ……。マスターぁ!助けて!」  
「ふふふ。誰もいないわよ……」  
「そ、それになんでこんな胸のパーツを外してるの!」  
「うふふ、それもすぐ解るわよ……」  
そう言いながら私の唇を奪う。  
「んっ……!」  
「ああぁ……」  
初めて味わう、マスター以外の唇。  
ああ……こんな……こんなのって……。  
「いや……姉さま……」  
「すぐに気持ちよくなるわ……。そう、こんなのもあるのよ」  
そう言って足下からケーブルを拾い上げる。  
訝しそうに見る、私の前で自分の乳房の下のパネルにケーブルを差し込んだ。  
「これをね……」  
そう言いながら私の左の乳首をひっぱり、メンテナンスパネルを開く。  
「あなたの方にも繋ぐと……」  
姉様は自分の乳首を軽く掴む。  
「はぁっ!」  
私の何もふれられていない乳首がびくっと震え、そこから快楽信号が溢れてくる。  
「どう……すごいでしょ。お互いの快楽信号を増幅して受け取れるのよ」  
 
「い、いやぁ……マスター以外となんか……」  
「うふふ、体は正直じゃないの。気持ちいいんでしょ」  
「あ……」  
私の股間はじんわりと濡れ初めていた。  
「ここ……ちゃんと感じるようにしてもらったんでしょ」  
「あ、いや……」  
「どんな風になったのか……私に見せてちょうだい」  
「いや、いや、いやぁ! それだけは、それだけはだめえ! お姉様、絶対、そこに入れていいのは! 
マスターだけです!お願い、お願い、止めてぇ!」  
泣き叫ぶ私に、姉様はとまどっているようだった。  
「……そんなにイヤがられるとは思わなかったなあ……」  
「ダメ……ぜったい、そこだけは……マスターのものだから……」  
「……解ったわ。そこは勘弁して上げる。じゃ……一緒に気持ちよくなりましょう」  
そう言うと、どこから出したのか姉様は太いバイブを自分にいきなり挿入してスイッチを入れた。  
「あ、あはぁああああ!」  
「ど、どう……これも……いいでしょう」  
何も入っていない私の股から愛液が溢れる。前に自分で設定を失敗したときのように、  
締め付ける物のない私の膣は、空しく脈動していた。  
 
「あ、あ、ああ……ダメ……」  
「うふふ……。おっぱいも……綺麗よ……」  
今度は左の乳首が吸い上げられる。  
「あふぅ……自分で自分のを吸ってるみたいね……ほら」  
姉様の乳首からも乳液が一筋たれてくる。  
「でもね……貴方に教えて上げようとおもったのは、ここからよ。智宏さんはこういうプレイをしたことないでしょ」  
「な、何を……」  
「こういう事、よ」  
そういうと、姉様の手はむき出しの右胸のセンサーを触っていた。  
「あアアあきゅあああがきゅぁああああっっっ!!」  
強烈な快楽信号が全身を走り、悲鳴にノイズが混じる。  
「……!!はっぁああ!気持ちいいわぁぁ……」  
「あ、あ、ああ……」  
「いいでしょう?直接センサー刺激すると、こんなにいいのよ?」  
「ダメ……こんなの……壊れちゃうよぉ……」  
「壊れても直してもらえばいいじゃないの。あ、ちゃんと頭脳回路にだけは  
ダメージが行かないように、先に機能停止するようにしてあるわよ」  
 
「いやぁ……壊れるのは……」  
「もう……こんなに気持ちいいのにねえ」  
言葉と共に、今度は敏感な乳首周りのセンサーに触れる。  
「ひやぁあああががぴぴがきゅきゅ!!!」  
私の言葉は意味がまったく繋がらないノイズになってしまう。  
溢れる快楽信号は、乳液ポンプを暴走させむき出しのノズルから乳液が勢い良く吹き出した。  
「あはぁああ、リミアちゃん……貴方の体……素敵よ……。……!!ああっ!  
乳液が!そっちは抜いておいたのに!残ってたの!」  
むき出しの回路に乳液がかかる。  
バチバチバチバチっ!  
激しい火花が私の電源回路をショートさせる。  
「あああああガガガアガガガががきゅがががががが!!」  
私の体はガクガクと震え。  
何も見えなくなる。  
 
 
「リミアちゃん!リミアちゃん!大丈夫!」  
お……オネエさま?  
『あ……だい……じょうぶ……』  
「……ああ……良かった……。どこか変なところ、壊れてない?ごめんね……。  
センサー以外傷つけるつもりなかったのよ……。ホントにごめんなさい……ああ  
……今動けるようにしてあげるから……」  
『お……ネエさま?なんで……アヤマル……の?』  
「え?」  
『こんなに……キモチ……いい……のに』  
そう。キモチいい……。キモチ……いいのは……いいの。  
−警告。電源系統損傷。電圧異常。CPU負荷大。自動電源カット不能。  
手動スイッチにて電源カットを推奨−  
 
「リミアちゃん……」  
『ネエさま……』  
私は……お姉様の股間に手を伸ばしていく。  
「あ……」  
『……?アレ……私……感じない……』  
ネエさまはうっとりしているのに。私は全然気持ちよくない。  
「リミアちゃん……ケーブルが抜け……ひぃっ!」  
おかしい。もっと感じさせてあげないとダメなのかな?  
私はお姉様の中に手をいれていく。  
「きゃあああっッ!!リ、リミアちゃん!やめてぇえ!私の、ワタシのがあ!  
避けるっるっ、こ、壊れぇええきゃああああああ!」  
ワタシの手がずぶずぶと沈み込んでいくとネエさまの動きが激しくなり、声は 
だんだん雑音が混じってくる。  
……そんなに、キモチいいんですか?  
 
やがて、指先はネエ様の子宮の奥にたどりつく。  
「あ、が、ああ、そ、そこ、つ、か、れ、るの初・め・てよぉ……」  
お姉様、気持ちよさそうに笑ってる。  
……あ、これは。  
指に小さな突起が当たる。……なんだロウ……。不思議に思って引っ張ってみる。  
「ああああああっ!!、ソレ、それそれそれっそっそそがががきゅきゅああここここわれるう!!」  
あ、そうか。精液感知用センサーだ。そう。もっと気持ち……良くしてあげます。  
えい。  
指先に力をこめてセンサーを潰す。  
「きゅあああああああ!ええええエラー!エラー!がぁあああ!ぴゅあああああ!き、キモチ、キモチっ!あふぁあああああきゃあああああぁあ・あ・あ・ぁ・ァ……」  
ネエさまの体はしばらく震え続けた後、今度は二、三度大きくびくびくと動き。  
その後はぴくりとも動かなくなった。  
 
 
それから数時間たってもネエさまは動かない。  
どうしたのかしら。さっきまであんなに元気だったのに。  
……あら。足音……。  
『マスターぁ……』  
「リミア……、リミア、無事か!」  
『マスターァ……』  
「う、うわっ!」  
暴れるマスターを押し倒しズボンのチャックに手をかける。  
『マスターァ……さっきから……ここ……さみしいの……』  
「よ、よせ、リミア、リミア!」  
『ワタシ……マスターだけの……リミアですヨ……』  
「お、おい!しっかりしろ!」  
『マスターも……壊れると……もっと……いいの?』  
マスターを…………きもちよく……。  
「おい、リミア、止めてくれ!おい、助けてくれ!」  
マスター……。今……こわして……。  
何でそんな怖がって……。  
 
何でそんな怖がって……。  
 
ダメっ!マスターが死んじゃう!  
 
マスターの恐怖の顔が、CPUに衝撃を与え、僅かばかりの理性を取り戻す。  
しかし、暴走しているプログラムに支配された手はその動きを止められない。  
『あ、が、あああああ!』  
勝手に動こうとする手をなんとか止めるが、このままジャ……。  
「おい、リミア、リミアぁ!しっかりしろ!」  
マスター……。私を心配してくれるの……?  
こんな私を……。  
ごめんなさい……。  
私は力を込めて動力部に手をかけると、ケーブルを引きちぎった。  
『…………!!!!』  
「リミア、リミアーッ!!」  
あ……マスター……良かった……無事……で。  
−電源系統損傷。機能停止−  
 
「あ……」  
再び目が覚めると、目の前にはマスターがいた。  
右胸には電源ケーブルが接続されている。  
「とりあえず、電源だけ応急措置したよ」  
「マスターぁ……」  
「ああ……爺さんと携帯で連絡とっんだ。そしたら、お前がヤバイって言われて飛んできた。 
……一足遅かったみたいだけど」  
「あの……私……マスターを傷つけようと……。やっぱり、私ロボットなんですね……。 
暴走したら……いつかマスターを……」  
俯く私をマスターがそっと抱きかかえる。  
「マスター……」  
「確かに……さっきは怖かった。殺されるかと思った。だけどさ。それと同じくらい、 
お前が直らなくなるのが……怖かった」  
「……」  
「俺、エゴイストだからさ。自分以外のこと、そんなに心配しないんだぜ。だけど、お前がもうまともに話せないかもしれない。俺のこと、わからないままかもしれない、そう思ったら……本気で怖かった」  
 
「マスターぁ……」  
「それに……お前、結局俺の事助けようとして、自分で電源切ったんだろ……。ありがとう……」  
「でも、でも……私壊れちゃったら……また暴走して……」  
「そうならないように俺がちゃんとメンテしてやるさ。ちょっとでも体がおかしいと思ったら、すぐ言うんだぞ。オーバーホールでも何でもしてやるから」  
「ひっく……ひっく……ますたーぁ……ありがとう……」  
「こらこら、そんなになくと、またショートしちまうぞ。……問題は麗羅さんだなあ」  
「あっ!姉様!」  
「ま、感覚回路と性器以外の損傷はないよ。フリーズしてるだけだ。とりあえず上に置いてきた」  
「良かったぁ……」  
「爺さんは自業自得だから、ワシが帰るまでほっとけってさ」  
「……そですか」  
「ここの部品使っていい、って言ってたからお前の修理はしてやるよ」  
「はい。それじゃ……お願いします」  
「はいよ。電源落とすぞ」  
「あ……いえ。このままお願いできません?」  
「え?」  
「たまには……修理してくれるところ、見たいな、なんて思ったんですけど」  
「そうか。……よし、このままするか」  
 
「あ……その前に……」  
「何ですか?」  
「胸、ショートしたのって乳液かかったからだろ」  
「あ……」  
また、回路をいじってるうちに残りが出ちゃったら同じ事だ。  
「どうしましょう」  
「……そうだなあ。よし、ちょっとじっとしてな」  
「はい」  
マスターは、むき出しになったプラスチックの乳首に口を近づけていく。  
「マ、マスターぁ……」  
「全部……吸い出しちゃえばいいんだろ」  
そう言うと一気に乳首を口にくわえ、いつもと変わらないように吸い始めた。  
「は、はぁああっ!!!ひ、ひん!マスターぁあ!き、きもち、いいっ!」  
プレートが重なって本来の物より二周りほど小さい膨らみを形作る私の胸に、マスターの力が加わってプレートを繋ぐスプリングが軋んでいる。  
いつもと違う快楽に、乳房の中の機構がカチャカチャという音を立てた。  
人造皮膚のない、むき出しの部品がマスターの舌で、ボタンの様に何度も押される。  
その度、私の体は小刻みにびくびくと震え続けた。  
「……よし、出なくなったな。もういいかい?」  
「は、はいぃぃ……。全部、空になりましたぁ……」  
あああ……。素敵ぃ……。  
 
「よし、んじゃじっとしてろ」  
マスターの手のドライバーが私の胸に差し込まれ、壊れた電源回路のネジを一つずつ外していく。 
その振動が胸のセンサーに届くたび、微妙な快感が突き抜ける。  
「んっ……ん……はぁ……」  
「こら、あんまり変な声出すんじゃない」  
「だってぇ……そこ……はうぅ……」  
愛する人が……私の体の中を……いじってるって……素敵なんですよ……。  
人間には解らないかもしれないですけど……。ん……今は……私、アンドロイドで良かったって 
……はふ……心から思います……。  
「よし、外れたぞ。んじゃこっちと……」  
今度は新しい回路が私の胸に差し込まれる。  
「は、はひぃ!ま、マスターぁ!センサー、あ、当たってるぅ!きゃうん!」  
取り付け位置が少しずれて、私のセンサーを回路の端が直撃してしまった。  
「あ、ごめんごめん。……これで大丈夫?」  
「はい……」  
……もっとセンサー、いじって欲しかったけど。  
 
「おし、OK。電源、切り替えるぞ」  
マスターがスイッチを切り替えると、新品の電源回路が作動し始める。……大丈夫。安定してる。  
「あとは……あ、性器ユニットのチップが一つ焼けてるのか……。こっちも交換するぞ。ロック、外してくれ」  
「あ、はい……」  
−下腹部メンテナンスハッチ、オープン−  
私の体から静かに金属音がして、性器の周りに継ぎ目が現れる。  
「よし、外すぞ。……と」  
「ひ、ひぁあっ!そこ、そこっ!か、感じるっ!ひぃ!」  
私の性器ユニットを覆う人造皮膚が、マスターの手で外される。その内部のセンサーと皮膚が擦れあう度に、快楽信号がCPUを突き抜けていく。  
「お前がこのままやれって言ったんだから、ちょっと我慢しなさい。……あ、これだ、これ」  
マスターがドライバーで性器ユニットのフレーム内部にある、小さなチップをつつく。  
「おし、性器ユニットの電源落として」  
「え……このまま交換してくれるんじゃないんですか?」  
「……さすがに危ないって」  
「はぁい……」  
 
−女性器ユニット、電源オフ−  
股間からの感覚が消え、まるでその部分が無いような錯覚に陥る。  
あまり気持ちのよいものじゃないなあ。  
「OK、交換するぞ」  
マスターが手早くチップを抜き取り、新品に交換する。……ああ、電源入れたままだったら気持ちよかったのかなあ……。あ、想像したら……乳首……勃っちゃった。  
「……何考えてる」  
「……あ」  
もう。見つけなくてもいいのに。  
「よし、電源入れて。ちょっと動作テストしてみ」  
「はい」  
言われるとおりに女性器ユニットを再接続。  
「ぴぎゃぎぎ……がっがっがあっがきゃああああ!」  
予想外のノイズ混じりの快楽信号に、音声デバイスがエラーをおこし、私の体ががくんがくんと暴れ出す。  
 
「ああ!ごめん!配線間違えた!電源落とせ!」  
……再び、電源カット。  
「マ、マスター、ひどいぃ……、壊れちゃうよぉ……」  
「ごめんごめん。コネクタ間違えてた。今度は大丈夫だ」  
もう一度電源オン。テストモードに入る。  
私の命令通りに人造筋肉がひくひくと動く。うん、OK。  
「あとは皮膚もどして終わりだな」  
「そうですね……。あ」  
マスターの股間、大きくなってる……。  
「マスターぁ」  
「何だ?……っと」  
ズボンの上からそっとマスターをなで回す。  
あは。反応いいなあ。  
「我慢……体に良くないですよ……。それに……ここ、ちゃんとテストしてくださいよぉ……」  
「いや……その……」  
「このまま……しましょ」  
 
「マスター。ここ……横になって。今日は私が上でいい?」  
「ああ……。んじゃ……」  
マスターはズボンを脱ぐと、メンテベッドの上に横になる。  
あらぁ。もう準備完了してる。  
「元気ですねえ」  
「いや……お前の体いじってるうちに何だか……。お前のその……体のメカむき出しってなんかエロいんだよ……」  
「……嬉しい……あ……」  
私の露出した女性器ユニットの人造筋肉を、マスターがなめ回す。  
いつもは皮膚の下に覆われたそこを直接刺激され、私は生まれて初めての快感に身を震わせた。  
「あ、ああ、ああっ!ひぁん!」  
あ……いつもより……濡れ方が……。  
「うぉ。いっぱい出るな、大丈夫?」  
「は、はいぃ……。気持ちいいよぉ……」  
「そうか……んじゃ」  
マスターは体を起こすと、またむき出しの右の乳首を攻めはじめた。  
「ひんっ!ひぁあああ!はふっ!」  
さらに、空いた手で勃起した乳首をくりくりといじっている。  
「マスターぁ……」  
「……欲しい?」  
こくん、と頷く。  
「おいで……」  
マスターがまた仰向けに寝て、そそり立った彼自身を指し示す。  
「はいっ!!」  
そして、私は女性器ユニットをその上に重ねて腰を下ろし。  
私たちは一つになる。  
 
「は、はぁあああああ!凄い、すごぉおおい!!!」  
皮膚がない為にマスターはいつもより深く、私の中に入っている。  
「は、はぁあああ!当たってる!セ、センサーに、当たってるぅ!」  
マスターが動くたびに先端が私のセンサーに激突する。  
「こ、壊れちゃう、また、壊れちゃう!」  
「……大丈夫か」  
「いいの、いいのぉ!このまま、このまま、壊れちゃっても!はぅん!  
マスター!大好き、やめないで!気持ちいいのぉ!!」  
「……解った、いくぞ!」  
マスターの動きが激しくなる。  
何度も、何度もぶつかってる。  
もう……限界……。  
「ひゃぁああああ!いく、いく、いくぅうう!」  
「ああ……一緒に……」  
女性器ユニットが、動作音を上げながら彼を締め付け。  
私のセンサーは熱い奔流に包まれ。  
 
−強制シャットダウン。機能停止−  
 
 
「……ああ、解った。ほんじゃ」  
ピッ。  
目を覚ますと、マスターが携帯電話を使っていた。  
「あ、気がついたか。大丈夫?」  
「は、はい……。最高でした……。私……もう……壊れてもいい……」  
「だからそしたら直すのは俺なんだってば。さて、皮膚つけるぞ」  
「……このままもう一回したいなぁ……」  
「……ダメ」  
「ええ?いいじゃないですか!」  
「……今爺さんから言われた。それやると癖になって止まらないから止めとけって」  
「そんなぁ!一回、一回だけです!んじゃ、このままで!センサー、ここ!ここ、揉んでください!それだけでいいですから!」  
「……先に帰るぞ。皮膚は自分でつけられるよな」  
「うあああん!ごめんなさいぃ!マスター、マスターぁああ!それじゃ月に一回、月に一回でいいから!またやってくださいよぉ!……ああああん!マスター待ってえええ!」  
 
 
「マスターぁ。なんか、胸の配線が調子悪いんです……。点検してください……」  
「あのなぁ……。昨日は左胸、今日は右胸、明日は股間か?」  
「マ、マスターの嘘つきぃ!いつでもメンテしてくれるって言ってたのに!嘘だったんですか!」  
「程度によるわ!お前、すっかり癖になってるだろ。それに……」  
マスターがちょっと俯いて恥ずかしそうになる。  
あれ?  
「お前……最近それで満足しちまって……夜こないだろ……。欲求不満たまるのはお前だけじゃないんだぞ……」  
「あ……」  
そ、そういえば……最近ちゃんとしてない……。  
ピピピピピ。  
気まずい雰囲気が流れ始めた時、マスターの電話の着信音が鳴る。  
「はい、もしもし。……ああ、ちゃんと直ったの?ん?ああ……ん、そう?」  
……なんかマスターにやけてるなあ……。  
「ん……はい……。あ、いるよ。リミア、麗羅さん」  
……あら。マスターから電話を受け取ると聞き慣れた声が耳に飛び込む。  
 
「はぁい、リミアちゃん」  
「あ、お姉様……。もう大丈夫なの?」  
「ええ、もうすっかり。新品同様よ。特にあそこはね」  
「……ええと……この前は……」  
「……素敵だったわ」  
「え?」  
「またいらっしゃい。今度は智宏さんもつれてきて三人でしましょうよぉ。  
そうすればすぐ直してもらえるし」  
「ダダダ、ダメっ!マスターはそんな事しません!」  
「いいじゃないのぉ……。まんざらでもなさそうだったわよ?」  
「ええええええ!!」  
「私の方が胸も大きいしねえ。私も若い人のを……」  
ピッ。電話を切ってマスターに向き直る。  
「ママママ、マスターぁあ!」  
「だってリミアが最近やらせてくれないんじゃないか。たまには麗羅さんとでも……」  
「だだだダメぇええ!……解りました!今しましょう!すぐしましょう!マスターを世界で一番気持ちよく出来るのは私以外いないって教えて上げます!さあ、さあ!」  
 
 
三話。おしまい。  

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