―――3ヶ月ほど前、中体連の前日。  
冬樹は部活の帰りに、塾の帰りだという夏江と会い、途中まで同行することにしていた。  
「今試合やった方がいい結果になるくらいだぜ」  
「アンタにそっちの心配は要らないことはわかってるけど」  
「……それは褒めてるのか?」  
「何でアンタを褒めなきゃいけないのよ」  
「……キツさばっか健在してんなよ」  
「そっちこそ私の事もっと褒めてくれたっていいでしょ」  
「何で?」  
「……この前昂くんが私の事何て言ってたか覚えてる?」  
「魔女おんな」  
「何濁してんのよ!「マドンナ」でしょ」  
「そうとも言ったか」  
「……調子に乗らないでよ?」  
――危ない、もう少しで夏江が噴火する。  
「わーったって、ごめんごめん」  
多少(?)意地やからかいも出し、仲良く(?)喋る。「あの4年間」の日常と変わらない。  
「でもマドンナってーとちょっと違うよな」  
「何よ?」  
「なんて言えばいいのか……  
ほら、お前「美しい」というよりは「かわいい」だろ」  
「……えっ」  
夏江が目を見張る。  
「聖母とかなんて全然イメージ違うじゃん?  
もっとこう、子供っぽくてうるさくて…」  
――拍子抜け。  
「……調子に乗らないでって言ってるのよ?」  
「いやごめん、ほんとごめん」  
そうこうしているうちに、二人は冬樹の家の前に着いた。  
 

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