司は玄関を開けてまっすぐ進み、、目的の人物がなにやらダンボールを抱えて右往左往しているのを見つける。  
こっちはクソ暑い中自転車を飛ばしてきたというのに、期待してきた冷気がまったくない。  
というか、外と気温が変らない。  
「…先生。なんでクーラーつけてないんですか?」  
暑い時間を狙って部屋におしかけてきた司の台詞はもっともだ。  
「うぉ、勝手に入ってきたのか?…いやな、ちゃんと掃除しようと思って窓全開にしてるから…」  
「失礼な。ちゃんとチャイム鳴らしましたよ」  
そうか、と汗だくで応える隆也の目の前には、たしかにごちゃごちゃと物が積まれている。  
「…ついでに昔のものを整理しようと思ってな」  
その手に持っているのは、写真の束。  
「…見てもいいですか?」  
「うん?あぁ…ちょっと待て、整理が終ったやつから…これならいいぞ。大学のときのだ」  
礼を言って受け取った司は、荷物の隙間に埋まるようにソファに腰を下ろす。  
片足だけあぐらをかく様は男だが、写真を見る目は女という、なんともアンバランスな格好である。  
司は一枚一枚の中に隆也を見つけ、なんともいえない気持ちでページを繰る。  
「悪いな、暑くて。何か飲むか?」  
思い出したように顔を上げて言う隆也に、手だけ振って応える。  
「おかまいなく。この状況じゃどうやったってくつろげませんし」  
「…だな。よし、さっさと片付けるか。」  
今よりも”やんちゃ”していただろう隆也の写真。屈託のない笑顔は変っていない。  
流石に少しは落ち着いたかな。あぁ、アホ面して。これって酔っ払ってる?バカだなぁ。  
口には出さないが、司の頭には次々に感想が生まれてくる。  
片づけが終ったら解説してもらって、それにいちいちつっこみをいれてやろう。  
隆也は手伝えと言うわけでもなく、黙々と整理を続けている。  
ふと、司の手が止まる。  
「…これ…」  
声に出したつもりはなかったが、隆也は気付いてこちらに歩み寄ってくる。  
「ん?どした?」  
「なんでもないです。いいからさっさと片付けてください」  
しっしっ、と追い払うような仕草で言われると、気になることは気になるが。  
 
さっさと片付けてしまいたいのは隆也も同じなので、不本意ながらも片付けにもどる。  
「…?あぁ…」  
 
「…と、よし。とりあえずこんなもんか。クーラーつけるか?」  
途中からは司も片付けに参加して、汗だくになりながらの掃除はようやく終了した。  
「ここまで汗かいちゃったらつけてもつけなくて同じじゃないですか?」  
「それもそうだけど…あぁ、じゃあシャワー浴びてこい。俺は最後の整理してるから。ついでに部屋も冷やしといてやる」  
笑う隆也に微笑を返し、司は浴室に向かう。  
冷たいシャワーを浴びると、頭の中まですっきりしてくる気がする。ざわざわと落ち着かない胸も、きっと静まる。  
風呂場の姿見に映った自分の姿は、悪くはないがさほど良くもない、と司は目を伏せる。  
腰が細いのは嬉しいが、胸は小さい。短く切ってしまった髪が長かったら、彼は喜ぶだろうか。  
「…でもそんなのやだ」  
かっこいい自分でいたかったし、男らしくなりたかった(男に、ではなく)。  
身体を鍛えようともしたし、所作はほぼ完璧に男に近付いた。それを嬉しく思っていたのに。  
いつになく低い声で呟いた。  
「…だっせぇ、俺」  
「何がだ?」  
間違いなく浴室の中に響いた声に、思わず振り向く。  
戸が開いていた。  
「せ、せんせっ…何して…っ」  
微妙な隙間から少し顔をのぞかせた隆也に、他にかける言葉が見つからない。  
「あ、悪い…シャンプー切れてたなと思って…」  
照れたのか顔を背けるが、いっこうに出て行く気配がない。  
照れるくらいなら最初からさっさとシャンプーをおいていけばいいものを、わざわざ開けたのは確信犯としか思えない。  
司の手はシャワーにのびる。  
「あぁ、これ」  
「遅い!」  
シャンプーを差し出した隆也に、司の反撃。  
ぶしゃ、と水がかけられる。  
「…っお前なぁ!」  
大きな声に、司は思わず身をすくめる。けれどバタン、と大きな音を立てて、隆也は戸を閉めた。  
―怒らせた。何やってんだ俺…  
じわりと胸が痛んで、涙がこみ上げてくる。座り込んで、弱気な言葉をもらす。  
「…もぅヤダ…」  
 
だが、自己嫌悪はすぐにどこかへいってしまった。  
がらりと、勢い良く戸が開けられる。  
「!?」  
司の目に飛び込んできたのは、全裸の隆也。…の腰の辺り。  
「こー濡らされちゃ俺も入るしかないだろ?」  
慌てて視線を顔に持っていくと、照れて顔を赤くしながら、笑っている。  
「…え?…えぇ!?」  
しゃがみこんだまま立ち上がれない司の横に座り込んで、頭を撫でる。  
「…俺が風邪引いてもいいのか?…ってな」  
泣き顔はあっという間に赤く染まり、手はタオルを求めている。  
「…よ、良くはないけど…その、だからって一緒に…」  
「そう照れるなよ、俺も恥ずかしいんだぜ?」  
たしかに隆也の頬もほんのり染まっている気がしてほほえましいのだが。  
なんとかタオルで前だけ隠した司は、ほほえましいどころではない勢いで心臓が鳴っている。  
「じゃあなんでわざわざ!」  
このツッコミももっともである。そのもっともなツッコミをうけて、隆也はちょっと顔を背けて呟いて。  
「…そりゃ見たいからだろ…あ、いやでも、ほんとに嫌なら出てくぞ」  
確認するときにはじっと司の顔をのぞきこむ。  
こうなると司は、この素直で優しい年上の男の言うことは、却下はできない。  
「………恥ずかしいし、ヤだけど………」  
「…けど?」  
聞き返す声の調子があからさまにウキウキしているのも、なんだか微笑ましくて毒気が抜かれてしまう。  
「…いい、よ…」  
視線を反らして言う司を、後ろから抱きしめる。  
「…ありがとな」  
本当に、可愛くて仕方がない。濡れた後ろ頭に唇をおしつける。  
「よし、んじゃまずはお背中流しましょうかね」  
言いつつタオルを手にとって、一方で蛇口をひねり湯船に湯を張る。  
「え、お湯はるんですか?」  
「ん。今部屋冷やしてるからな、身体冷やしすぎると良くないぞ」  
隆也の手の中ではスポンジにボディソープがつけられ、泡立てられている。  
 
膝立ちのままでは流石に辛い。司はぺたりと床に腰をおろして、膝を抱える。  
隆也はとりあえずあぐらをかいて、綺麗な背中を傷つけないようにと、軽く滑らせる。  
「っ…先生、くすぐったい……もっと力入れて大丈夫ですから…」  
ちょっと身じろがれると、変に期待してしまう。  
「ん、そうか?」  
言われたとおり少し力を入れて、首の後ろから肩甲骨、背骨をつたって下の方まで…と手を伸ばそうとしたら、司が振り向いた。  
「背中はもういいですから…俺が流します。先生そっち向いて」  
「ん、そうか?」  
ご要望にお答えして泡を流してやると、くるりとこちらに向き直る。  
タオルで前を隠してはいるのだが、透けて乳首がうっすら見えるのがなんともいやらしい。  
とはいえここで下半身がうずくのもマズイので、わざとトボけてみせる。  
「前はいいのか?」  
「自分でします!」  
断言。いや、何から何までもっともなのだが。  
ちょっとムキになって怒ったような照れたような赤い顔が、おもしろくて仕方がない。  
「なんだ、そうか…いや、俺は前も洗って欲しいんだけど」  
ちょっと困らせてやろうと思ったら、目論見どおり眉をしかめて。  
「……でも背中から」  
大人のような逃げ方をする。あんまりご機嫌を損ねると遊べなくなるので、おとなしく後ろを向く。  
「ん、はいはい」  
その隆也の背中が、司は好きだ。  
しっかりと締まっていて、大きくて、憧れに近いものを感じる。  
「………」  
学生時代は運動部だったんだ、と言った隆也の台詞が頭を回り始める。  
学生時代。その響きが、今は胸に痛い。  
馬鹿らしいことだとはわかっている。こんな自分も好きではない。女々しいな、と苦笑すらしてしまう。  
それでもこのわだかまりを、どうにかしたい。  
「…先生」  
「ん、何だ?」  
子供のように大人しく背中を預けている隆也に、自分は何を聞こうとしているのだろう。  
「さっきの写真。学生時代の」  
 
努めて平生と同じ声を出そうとする。小ざかしい、なんて単語は自虐的だろうか。  
「あぁ、あれがどうかしたか?」  
「…先生の元カノ、写ってたでしょ?髪の毛栗色でロングの可愛い人」  
隆也の表情が変った気がした。もちろん顔は見えないのだが、ひょっとしたら身体も強張ったのかもしれない。  
可愛い人だった。明るい笑顔で、さっぱりとしていて、でも、とても女の子らしい、可愛い人。  
全然違う。  
動揺を押し隠して、優しく背を洗い続ける。  
「……よくわかったな。二人っきりのは全部昔処分したのに」  
司が想像していたよりも重くない声だ。それに少し、安心する。  
「先生の顔見ればすぐわかるよ。学校じゃ見ない顔してた」  
「そっか。良く見てるんだな、司は」  
見てるよ、と言いそうになって、司は口をつぐむ。  
ずっと前から見ているのだ。女の身でありながら男として生きている自分の存在を悩ましく思いながら、それでも。  
ただ、それを今伝えてどうなるだろう。喜んではくれるかもしれない。けれどそれだけではないか。  
過去をひきずりたくないと、思ったのは自分なのに。  
「…司?」  
黙り込んだ司を不審に思って、首だけ振り向く。  
手を止めて視線を床に落とした司は、ひどい顔をしていた。今にも泣き出しそうな、苦しそうな。  
「司?おい……いや、悪い。俺が何にも考えずに写真見せたから…」  
それだけでこんな表情をするとは思えないが、他に理由が見当たらない。  
せまい室内で無理やり身体の向きを変えて、司の頭を撫でる。それが余計に、司の涙腺を刺激するとも知らずに。  
こぼれないうちに涙をぬぐって、顔を上げる。  
「はは…なんか、不安になっちゃって…俺、こんなだし…」  
自虐的な響きに、思わず強い言葉が出る。  
「馬鹿言うな」  
言ってから後悔する。司の頭が垂れた。  
「……ごめんなさい。先生のことは、先生が言ってくれたことはちゃんと信じてる。でも…」  
自信ない、と言う言葉が小さく続いて、それがどうしようもなく隆也の胸を痛めた。  
どうしてこんなに繊細な子が、男として生活してこれたんだろう。  
いや、男として生活してきた理由も、ここにあるのかもしれない。  
「司」  
 
考えても仕方ないことだった。これは司本人しか知らないことだ。  
ただ、そのまま司の本心を遠くに置いておくことはできない。心を引き寄せたくて、身体を抱きしめた。  
「…俺に伝えたいことがあるなら、ちゃんと言ってくれ。ゆっくりでいいから…司が、言いたいときでいいから」  
こく、と頷く感触。  
さっき洗ってやった背を撫でて、極力優しい声をかける。  
「それとな、これだけは守ってくれ…自分のことを、悪く言うな。俺は今のまんまのお前が好きなんだから…」  
司の腕が背に回る。濡れた体がぴたりとくっついて、自分に依存しようとしている。それが少し快い。  
言い出すのを迷ったが、このタイミングしかない、とも思ってもう一度口を開く。  
「…あとな、これは本当に、司が言いたくないなら言わなくていいんだけど」  
「なんで男やってるか?」  
先を読まれたことに驚くよりも、声が震えていないことに安心した。  
「ちゃんとした理由はないよ。ただ女の子やるよりこっちのほうが俺には自然だっただけで」  
すらすらと出てくる言葉は、言いなれたものなのだろうか。  
「…そっか。なぁ、別に…何かに傷ついて、とかじゃないんだな?」  
わずかに。体を抱いていなければわからないくらいの微細な身体の震えを感じて、思わず抱きしめる腕に力がこもった。  
「…あのね」  
「うん」  
先を聞くのが少し怖かった。  
「ほんとに、前からこうだったんだ。中学のときから、一人称は俺、だし。でも、男になりたいとは思わなかった。  
 女の子に恋したことはない。ちゃんと、男が好きだった。でも」  
逡巡しているのがわかって、頭を撫でる。ゆっくりでいい、と手で示す。  
隆也が思っているよりも、司はしっかりした声を出す。  
「でも自分が男に好かれるタイプじゃないこともわかってた。…それでも、付き合ってくれる奴がいて」  
また言葉が途切れる。あぁ、きっと言いづらいことなんだろう。ひょっとしたら、言いたくないのかもしれない。  
「…そいつとHしようとしたら、そいつが起たなくてできなかった。で、そのまんま卒業しちゃったから  
 ………女やっててもしょうがないのかなぁ、って思った」  
衝動的に司の頭を抱えて、口付けた。すこし表情が緩む。  
「…大丈夫。ちゃんと話せるから」  
ひょっとしたら、自分のほうが酷い顔をしていたのかもしれない。  
「…うん」  
自分が情けない。こんなにしっかり話してくれているのに、こちらが怖気づいてどうする。  
 
「で、高校入るときにほんとに男やろうって決めて。男の友達ができて。…親友、もできて」  
それが誰をさしているのかは、隆也にもわかった。一年生のときから同じクラスの少年だ。  
「そいつにバレちゃったんだ、女だって」  
「え!?アイツ知ってんのか!?」  
自分の間抜けな声が浴室に響いて、司が笑う。結果的には空気が軽くなったので無問題。  
「うん。それでね…アイツが、俺の初めての相手」  
「………」  
今度は声も出なかった。傍から見ている限りでは、二人は普通に男同士の親友に見えたのに。  
まさか男と女の関係だったとは。  
「…いや、まてよ。でもそれって…」  
「……なんかね、恋人じゃなくて、セフレみたいな感じだった。お互い、こいつだったらシてもいいかなぁ、って」  
軽く頭痛がする。自分の生徒の考えについて行けない。  
いや、この思考回路は一般に理解できるものではないのかもしれないが。  
「でも結局、男同士の友達が一番合ってるって気付いたから、元に戻ったんだ。…俺は」  
続く言葉を予想して、軽く凹む。  
「…嫌だった?」  
「ううん。…先生のこと、好きになっちゃったから。ちょうど良かった」  
凹み損だった。というか、こういう形で自分が喜ぶとは思っていなかった。  
思わず唇を重ねて、啄ばんで、舌を差し入れる。さっきまで膝を抱えて泣きそうになっていたはずの司が、それに応じる。  
ちゅくちゅくと、水音が響いて身体を熱くする。  
「んは…司…」  
唇をつなぐ銀の糸が切れる前に、笑ってみせる。  
「俺の背中、泡ついたまんまだ」  
「…そうだっけ。じゃあハイ、後ろ向いて」  
身体を離して言う司の表情は明るい。  
「いや、流す前に前洗ってくれるか?言ったろ、俺」  
隆也のおねだりに、司は顔を赤くして俯く。  
「…ヤダ」  
それはそうだろう。隆也の息子は半分たちあがりかけているのだから。  
これで司が刺激なんぞしようものなら、息子さんが本気になるのは目に見えている。  
肩を押してむりやり身体の向きを変えさせようとする司に逆らわず、後ろを向く。  
 
どうも身体を動かすたびに壁やら浴槽やらにぶつかる。  
やっぱり浴室は広い方がいいなと思いながら、背にあてられる温かな水流を感じる。  
「ほら、今のうちに自分で前洗っててください」  
「はいはい…」  
手早く身体を洗って、司からシャワーをうけとる。  
後ろで司がごそごそと動いているのに気付いて振り向くと、こちらに背を向けて身体を洗っている。  
「…洗ってやるって言ったのに」  
「俺はいらないって言いました」  
たしかに言われたが、だからといってこの距離で黙って見ていられるほど大人ではない。  
「…わっ!?」  
後ろから抱きしめて、油断した司の手からスポンジを奪い取る。  
「人の親切は素直に受け取るもんだぞ?」  
うなじに口付けて、手は首から鎖骨、胸へと滑らせる。  
実際はもうほとんど洗い終わっていたのだろう。泡だらけの身体を掌でなでていく。  
「ひゃ…親切、じゃないっ…」  
腕から逃げ出そうとする司の腰をしっかりと抱き、胸を掴もうとしたが、泡で滑ってうまくいかない。  
それでも司が小さく声を出したので、ボディソープを手にとって撫で回す。  
硬く立ち上がった突起をつまむと、確実に高い声が響く。  
「んぅ……やだ…」  
手を押さえつけられて、仕方なく胸を弄ぶのは諦める。かわりのそのまま下に滑らせて、腰の細さを確かめるように掴んだ。  
そのまま右手を太ももの間にすべりこませて、恥丘を蓋う茂みを指で梳く。  
「ちょっ…先生!」  
 
床に手をついて身体をねじろうとした司の上体が傾く。手が滑ったらしい。  
それをそのまま胸で受け止めて、右手はさらに奥へと指を動かす。  
「…っは…ぅ」  
すっかり身体を預ける格好になった司は熱くて、思わず耳にかじりつくと可愛い声で鳴いた。  
硬く立ち上がった雄が押し付けられているのに、司はとうに気付いているはずだ。  
「……可愛いな……」  
柔らかなひだをひとしきり撫でてから開かせて、その真ん中で指の腹を上下させる。  
舌は石鹸の香りがするうなじを往復させている。  
「ふぁ、ん…っ」  
陰毛が泡立って、しゅくしゅくと柔らかなを音を立てる。  
滲み出した蜜をからませて、陰核を擦る。指の腹で、ぬるぬると、優しく、もどかしく。  
「ひあ…や、やだ、先生っ!」  
浴室はよく声が響く。司の耳が羞恥に染まっている。  
もう逃げ出せないだろう。腰を抑えていた手で再び胸をもみしだく。  
「あ、は…はぁ…」  
かすかに震える彼女の耳元で、何を囁こうか。  
「…手、届かないから足は自分で洗えよ?」  
「…っサド!変態っ!」  
叫ぶ司の一番感じるところひっかいてやる。サドらしく、ちょっと強めに。  
「ひ、やぁっ!」  
ビクン、と身体が跳ねて、それからぐたりと身体を預けて、肩を上下させる。  
「はぁ、は、はぁっ…」  
軽くイってしまったらしい司の足の付け根を、ゆるゆるとさする。  
司の粘液とボディソープがまざりあって、太ももの内側をじわじわと愛撫する。  
「…は……や、だ…先生…」  
手を押しとどめられ、悪戯を諦める。泡を綺麗に落としてやって、頭を撫でる。  
「…ん…風呂、入るか」  
「…うん…」  
こくりと頷く様子が、子供のようで少しおかしい。さっきまで喘いでいたのにと思うと、自制が効かなくなりそうだった。  
 
二人で湯船に浸かると、だいぶお湯が溢れた。向かい合うように、司を腿の上に座らせる。  
司は躊躇いなく身体を隆也に預けようとしたのだが。  
「あ…」  
秘裂にあたってぴくぴくと震える肉棒の感触に、思わず腰を浮かせそうになる。  
けれど隆也はしっかりと司を抱きしめて、首筋にキスを落とす。  
「っ……先生…」  
ぴくんと震えた司の口を塞ぐ。  
「ん、む…っ」  
舌を絡ませるよりも唇を啄ばみあうのが好きらしいと、この間気が付いた。  
ときおり舌先でくすぐってやりながら唇を十分に味わうと、非難がましかった目がとろんと溶けてくる。  
「んは…ここじゃ嫌か?」  
我ながら、ちょっとずるい気もするが、こういうときは真剣に言ってみる。そうすると司は、NOと言えなくなるのだ。  
「は…嫌………嫌って、いうか…中にお湯入りそうで……」  
恥ずかしそうな赤い赤い頬に苦笑して口付けて、笑う。  
「大丈夫だろ。ふたしちゃえばさ」  
「ふ、ふたってっ…」  
まずは上の口から、と再び唇を啄ばんで、腰を浮き上がらせる。  
「ん、んぅっ…んふ…」  
達したばかりだから、キスだけでも感じてしまうのかもしれない。力のない手が首に回される。  
抵抗がないということは問題ないということだろう、という希望的観測を根拠に、勝手に照準を合わせる。  
そのまま少しずつ腰を落とさせていくと、きつくて柔らかな場所に自分が飲まれていく。  
びくりと勝手に震える肉棒に合わせて司の身体も揺れる。  
「んは……お湯、入るか?」  
だらしなく口をあけたまま、無言で首を横に振る。どうやら本当に蓋になったらしい。  
最後まで腰を沈めさせると、お湯の中よりも温かくて気持ちがいい。そのうえ、ときおりきゅう、と締め付ける。  
「んっ…ほんとに、気持ちいいな、お前の中…」  
「や…ぁ…」  
少し腰を動かしてやると、司の声が途中で途切れる。水中で軽くなった分、動かしやすくていい。  
「ぁ、ちょっと、なんか…お湯、入ってく…ぅ、やぁっ」  
首筋を舐め、耳を甘噛みしてやると、高い声が響く。  
「…音響は最高だな」  
 
「…っやぁ、せんせっ…ん、ぅっ…」  
ぱちゃぱちゃと水面が波打って浴槽からこぼれる当たる音がなんともいえない。  
不安定な身体を下から突き上げて、さらに水を波立たせる。  
「ふぁ、あっ…あんっ…」  
何時になくはっきりと声が聞こえるのは、体位や反響のせいだけではなさそうだ。  
司の太ももが隆也の腰を挟んで、それと同じように膣が肉棒を絞る。  
「…っん…イイか?司…」  
司の腰を動かして少し角度を変えて、Gスポットにあたるように浅い位置を突いてやる。  
「んっ、い、いよぉっ…あ、あっ…」  
泣くとうか、鳴くというか、そんな声を耳元で聞かせられたら、興奮しないわけがない。  
はやる気持ちを抑えて、ラストスパートへの体勢を整える。  
「…は、そっか…ちょっと身体、離して、そう…手はこっち…」  
「ん、はいっ…」  
腰を動かしやすいようにと指示すると、司は実に従順にそれに従う。  
これから自分がどう乱されるのか、わかっているのだろうか。  
「…いくぞ…」  
ぐ、と司の腰を沈ませて、いっきに最奥までつきたてる。  
「っひゃあっ…!」  
びくり、と司の背がしなる。子宮口に当たったようだ。  
「な、なんか、今のっ…奥に」  
不安そうな司の髪を梳いてやる。簡単に腰が浮いてしまって、なかなか難しそうだ。  
「大丈夫…ごめんな、ちょっと急ぎすぎた…」  
「う、ん…大丈夫、だから……」  
あまり従順すぎると、不安になるというのもわがままな話だろうか。  
いや、先ほどまでの会話で、彼女が無理をしているのではという疑惑が浮かぶのは仕方ない。  
「…嫌だったら、ちゃんと言ってくれよ?」  
「………嫌だったけど」  
司の手が隆也の髪を撫でる。今までにないほど、色っぽい表情で。  
「…今は、してほしいから」  
溶け出しそうに熱い膣の中で、肉棒が跳ねる。  
「は…まいったな…」  
 
ほんとに、余裕がなくなりそうだ、と呟いて。  
さっきと同じことを繰り返さないように、調整しながら腰を振る。  
「っん、あ……あ、はっ……」  
下から突き上げるのにあわせて、司も自分から腰を振り始める。  
「ふぁ、あ、あっ…せんせっ…」  
切なげな声と水音が響いて、小さな胸が揺れる。  
腰を沈めようとするたび下腹部に力が入り、肉棒への締め付けが強くなる。  
「ん、司…っ」  
「あぅ…んっ……せん、せぇ、だめ、なんかっ…」  
隆也の胸に置かれていた手が軽く握られる。  
「なんか、いつもよりっ……あ、いっ…ちゃ…!」  
「はっ…ん、いいぞ…俺も…」  
司の腰を掴んで、何度押し開いても締め付ける膣肉をこすり上げる。  
そのたびに快感が駆け抜けて、頭の中が白くなっていく。  
「あっ……い、くっ…あ…あぁあ…っ!」  
絶頂を迎えると同時に肉棒を強く締め付ける膣の動きにつられるように、最奥に熱く滾った精液を放つ。  
「っく、は……はぁ…」  
最後までしぼりとろうと膣が収縮する感覚に追い討ちをかけられながら、倒れ掛かってくる司の身体を抱きとめる。  
「はぁ、は…は…」  
息をするたびに上下する肩を抱いて、上気した滑らかな頬にキスをする。  
「ちゅ…ん……司…好きだ…」  
「は、うん…先生…」  
少し身体を起して隆也を見つめた司の口からは、少し意外な言葉が出てきた。  
「…ありがと…」  
「……なんか、照れるな…」  
照れくさそうに笑って、司の頭を撫でる。同じような笑いを浮べて、司も隆也の髪を撫でる。  
「俺、先生を好きになってよかった」  
はにかみ笑いがたまらなく愛しい。  
「…嬉しい事言ってくれるな、この口は」  
軽く触れるだけのキスをして、少しの間見つめ合って、また笑った。  
司の腰を浮かせて引き抜くと、ぶわりと湯の中に白いものが混じる。  
 
「…とりあえず、もう一度身体洗うか…」  
「…うん…」  
 
それからまた騒がしく身体を洗いあって、髪を乾かしながら隆也のアルバムを見て笑いあって。  
…二人仲良く風邪をひいたというのは、また別のお話。  
 

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